トロピコ
【とろぴこ】
ジャンル
|
箱庭SLG
|

|
対応機種
|
Windows 2000/XP
|
国内発売元
|
イーフロンティア(廉価版)
|
発売元
|
(原版) Gathering of Developers (Steam) Kalypso Media Digital
|
開発元
|
PopTop Software
|
発売日
|
2001年12月6日
|
定価
|
日本語ベスト版:3,990円 Tropico Reloaded(Steam):898円 |
判定
|
良作
|
概要
南米のカリブ海の島を舞台に、統治者(プレシデンテ)となって国家運営を行うシミュレーション。
通常のシミュレーションと異なり国家元首であるプレイヤーには通常1年ごとの任期が有り、選挙で勝てなければ失脚するという、この手のゲームにしては珍しいゲームオーバー要素がある。
システム
-
一見『シムシティ』のように思われるが、政治・選挙といった要素も絡むシビアなゲーム。
-
プレイヤーは任期を終えるまで(もしくは政権を追われるまで)プレシデンテとして如何にして島の産業を発展させ、島民の支持を得ながら統治するか、というのが目的である。
-
プレイヤーは選挙に落選するか、大国に島を侵攻されるか、反逆者やクーデターにより宮殿が破壊されてしまう等の理由で居場所を失うと島からボートで逃げ出すことになる。
-
ちなみに、舞台は嵐で有名な地域という設定になっている。
-
まず、プレイヤーの分身たるプレシデンテの作成は、特性を決めていくことで得意分野と欠点を決める。
-
特性は内政や産業分野のプラス効果を助長したり、またはデメリットを付与する。
-
欠点は最低1つは選択する必要がある。「盗癖持ち」「アル中」「偏執的」「尊大」「短気」等。
-
ゲームの目標以外は特に制約はなくプレイヤーのスタイルで統治を行える。
-
例えば島民に好かれる民主的な指導者になるもよし、選挙を実施しない上に子飼いの軍隊を率いて叛乱者を弾圧する独裁者プレイもよし。初め善政、後で独裁者というのもよし。逆もよし。
-
このゲームの真の骨頂は独裁者プレイにあるといっても過言ではない。何しろ説明書にでてくる歴代プレシデンテ解説やゲーム内プレイヤーのテンプレートからして独裁者プレイを推奨している。
-
教会から破門・投獄・暗殺・逮捕 → 刑務所で「再教育」を受ける、プロパガンダ放送等そういったコマンドも充実。
-
圧政の度が過ぎれば住民が反発してゲリラとなって破壊工作・襲撃を行ってくる。隙あらば反乱を起こし、政権を奪取するべくプレシデンテの宮殿を襲撃することもある。
-
善政プレイで民衆に不満を持たせない限り、これを防ぐには強力な軍隊を作るしかないが、軍隊がクーデターを起こすこともあるので軍隊の給料は高めにしよう。彼らにはまさに命をかけて働いてもらうのだから。
-
1960〜70年代の冷戦の世相を繁栄してアメリカとソビエトからの干渉も受ける。味方につければ投資もしてくれるが敵対すればアメリカは軍艦を派遣し砲艦外交を行ってこちらに様々な要求を出し、険悪になると侵攻してくる。
-
到底小島の軍隊で防げるものではなく、海兵隊に上陸されたらその時点でゲームオーバーである。中立を保つにせよ、陣営の傀儡になるにせよ外交での大国への尻尾振りも重要な仕事。
-
オプションでゲーム開始前に大国の干渉の程度を変更可能。初期設定はそれなりに干渉がある状態。
-
トロピコの島民は島民一人ひとりに個性が有り、出自・思想・学歴・年齢・職業…といった要素が設定されており、それに基づいて移民もしくは誕生から始まり、寿命・離島…あるいは不本意な死を遂げるまで生活を送る。
-
例えば、職業が運送屋の島民の場合は一日を職場から貨物を運んで仕事を終えた後パブで酒をあおり、休日には教会でミサに出席するなどといった行動がシミュレートされている。その為、個々の住民の生活を眺めているだけでも楽しい。
-
島の建造物は公共施設から商業店舗に至るまで、島民が従業員として働かないと機能しない。
-
その為、よく考えてインフラを配置し人員の割り振りを考えた政策を行わないと、例えばいつまでたっても建築屋の人員が足りず島民用の住宅が建設されない、農園が休業してることで原材料が足りず工場で加工品が生産されず輸出が赤字になってしまうなど、機能不全を起こすことになる。
-
学歴が必要な職務の人員が足りなければ海外から招聘することも可能である。ただし、招聘には金が掛かるため、できれば自国で人材を供給できるようになるのが望ましい。
-
ただし、人員が余ると失業者が増えてしまうという問題が生じる。バランスが肝要。この人口政策はかなり気を使うプレシデンテの課題の1つである。
-
また、10年経つと島民から選挙を行う様に要求が出され、実施をするか、しないかの選択が必要となる。
-
選挙を実施することにすると、島にある一番険悪な派閥の代表者の中から対立候補が立候補する。
-
島という小規模な状況のため多数の候補者は票が割れて現政権を越えられないと思われるためか、対立候補は毎回1人に絞ってくる。
-
常にあなたと対立候補の一騎討ちである。選挙開始までにはしばらく余裕があるので、ここで減税や支持を期待できる派閥へのゴキゲン取り等を行って選挙を有利に導くのである。それでも、効果が薄いようなら現k…実弾を飛ばすこともできる。
-
だがこれらを行ったとしても、島民の中からプレジデンテ以上に聡明でリーダーシップに溢れて、支持率に勝る対立候補が現れることもある。どうあがいても勝てない相手が出馬したときは…諦めるしかないだろう。
-
え?権力を手放したくない?その時は…幸福度と人気が下がるのを覚悟の上でそもそも選挙を実施しない、票の「解釈」、暗殺等いろいろあるが…どれも多大なリスクを伴うので注意。なに、政権に居座れさえすればなんとでもなるのである。不正な選挙や独裁はアメリカの感情を害すが…。
-
選挙対策以外にも、内政において民衆のニーズや派閥を掴む必要がある。特に人口が増えてくると移民やより良い生活を求める国民がこちらにより高い水準の要求を投げつけてくる。
-
選挙で勝つにはなるべくプレシデンテの出自や自国の進路に合致する思想を持った国民を増やすように派閥の人数を調整したり、児童に思想教育を行ったり、メディアを誘導する等の戦略が必要になってくる。
評価点
-
南国らしく陽気なラテンミュージックは聞いていて飽きない。
-
明るい色彩のグラフィックの島は豆粒のような住民1人までも作りこまれており、古いゲームながらも美しい。必要スペックもノートPC程度で十分快適に動く。
-
観光国家・工業国家・軍事国家・宗教国家等、好きな様にプレイヤーのプレイスタイルで統治を楽しめる。それなりの工夫も必要だが、それが良い刺激になるバランス。
-
国民の支持(と国家予算)さえあれば何時までもプレイ可能なので、後述の様に様々なプレイヤーのリプレイ動画が投稿されている。
-
1回のプレイは大体30~60分程度なので気軽に遊べる。
-
任期(初期設定は50年)を終えるまでの島の繁栄の結果がスコアとなるので、ハイスコアを目指してプレイするのも熱い。以降も継続できるため、限界まで開発して遊ぶことも可能。
-
スイス銀行の個人口座に溜め込んだ金額もスコアに大きく影響してくる辺りがこのゲームを象徴していると言って過言ではあるまい。
-
江原正士氏の一癖も二癖もあるプレシデンテの秘書の吹き替えは必聴。ぜひ日本語版の購入をお勧めしたい。
問題点
-
貿易が輸出しかないので、資源等は基本的に自国内での自給自足に限られてしまう。
-
慣れるまでは中々任期を長く全う出来ず、選挙で早々に負けてしまうことも多い。
-
コツを掴むには他のプレイヤーのリプレイ動画や関連サイトを参考にするとよい。
-
プレイモードの中に「シナリオ」があり、箱庭SLGの経験がある初見プレイヤーはチュートリアルの次に選択してしまいがちだが、実はこのモードが全然初心者向けではない。
-
基本的にはランダムマップ(=フリーモード)で腕を磨いてから挑戦すべきモードである。
-
しかも、シナリオ一覧の最上段にある「難易度:普通」とされたシナリオは全く普通の難易度ではない。simple<very easy<easy<normal<hardのnormal相当である。チュートリアル直後にこのシナリオを選択して撃沈、そこでゲームを投げ出してしまう初心者も少なくない。
-
ゲームに馴れてきた~やり込んできたプレイヤーにとっての腕試しには適切である。特に日本のSLG経験がある初見プレイヤーが引っかかりやすい罠となっている。
-
拡張パックの日本語版が入手困難。英語版なら『Tropico Gold』を買うとセットになっているのだが。
-
有志による日本語訳のファイルもあるので日本語化は可能だが、江原ボイスが(ry
-
無印の重大なバグである「建物の向きを変更できない」というのが拡張版で修正される為、日本語版ユーザーは江原ボイスかバグか金の中から1つを犠牲にしなければいけない。
-
ただし、日本語版無印を購入し、そこから江原ボイスを英語版『Tropico Gold』にコピーすれば江原ボイス&日本語化で楽しむことが可能になる。
総評
ルーチンワークに成りがちな経営シミュレーションゲームに、選挙という大きな壁をスパイスとして加えたことで程よい緊張感を持たすことに成功している。
島の未来図自体に鉄板といえる物もないので、プレイスタイルや発想次第で南国のユートピアから某国の様な「地上の楽園」等、幾らでも形を変えることができるため、毎回のプレイにテーマを持たせると末永く楽しめる一品。
その後の展開
-
デベロッパーのPopTop Softwareは『Tropico 2』の発売後の2006年に『Civilization IV』や『Sid Meier's Alpha Centauri』等で知られるTake2 Interactive傘下のFiraxis Gamesに吸収合併される形で会社組織は消滅した。
-
その後、2008年にKalypso Mediaが『Tropico』シリーズの版権をTake2 Interactiveから譲り受けて以降、シリーズ全作のパブリッシャーはKalypso Mediaになっている。
-
2020年10月にKalypso Mediaの日本法人である「カリプソメディアジャパン株式会社」が設立され、日本法人の代表取締役である上田和弘氏のインタビューでは「今後日本市場での販売とローカライズは直接弊社が行う」とのこと。
-
2022年現在はKalypso Media傘下のRealmforge Studiosによる『Tropico』シリーズの最新作を製作中であるとしている。
続編・派生作品
-
『トロピコ2 ~海賊の島~』(Win 2003年11月13日発売)
-
ナンバリング第2作。開発は1作目とは異なりアメリカのFrog City Softwareが手掛けている。海賊の首領となり、アジトを発展させてゆく。本作のみ大きく毛色が違う。
-
また、2009年7月には『Tropico GOLD』(1作目+拡張パック)と同梱された『Tropico Reloaded』の形によるDL配信がSteamにて開始された。
-
『Reloaded』の発売開始以降、1作目と2作目は各単体でのDL購入が出来ないシリーズ作となっている。
-
『トロピコ3』(Win 2010年6月25日発売 360 2010年5月20日発売)
-
ナンバリング第3作。この作品以降、パブリッシャーがKalypso Mediaとなり、開発も『Imperivm III: The Great Battles of Rome』『Grand Ages: Rome』を手掛けたブルガリアのデベロッパーであるHaemimont Gamesが担当することになった。
-
内容は『1』のほぼリメイク版となっている。2Dで描かれたオブジェクトが3Dに書き直されたり等、グラフィックの向上が施されているため動作させるためのPCのスペックもそれなりに必要となった。
-
『トロピコ4』(360 2012年1月26日発売 Win 2012年2月24日発売)
-
内容は『3』のアップデート版であり、物品の輸入ができるようになったのが最大の変更点である。
-
故にシリーズで一番ヌルいとされているが、初心者の入門には丁度いい難易度となっている。
-
『トロピコ5』(Win 2014年5月24日発売 PS4/360 2015年4月23日発売)
-
『4』のDLC「Modern Times」に含まれていた近代化の要素が本編に取り入れられ、さらに現代まで拡張されている。日本ではPS4/360版の日本語版が2015年6月25日にスクウェア・エニックスより発売された。
-
Win版は日本語ローカライズ版が発売されなかったが、2020年10月にKalypso Mediaの日本法人が設立されたことにより、2021年9月1日にSteamで配信中のWin版が日本語対応となる。
-
同日に発売中であるPS4版の『5』と『6』の販売権がカリプソメディアジャパンに移管され、以後は同社が販売元となっている。
-
2017年10月5日には全DLCを同梱した完全版『MEGA盛り トロピコ5 コンプリートコレクション』が発売された。
-
『トロピコ6』(PS4/One/Win 2019年9月27日発売 Switch 2021年4月22日発売 PS5 2022年3月10日発売)
-
ナンバリング第6作。開発は過去に『Might & Magic Heroes VI』『Might & Magic X: Legacy』を手掛けたLimbic Entertainmentに変わった。マップが広大になっており、別の島へ橋を架けて拡大してゆく形式となった。
-
こちらも日本では当初PS4日本語版がスクウェア・エニックスから発売された関係で、Win/One版は日本語ローカライズ版が存在しなかった。
-
だが、日本法人であるカリプソメディアジャパンが設立され、日本での販売/ローカライズの権利を引き継いだことでWin版は2021年6月、One版は2022年5月に晴れて正式に日本語対応となった。
最終更新:2024年12月01日 10:52