バイオハザード
【ばいおはざーど】
ジャンル
|
サバイバルホラー
|


|
対応機種
|
ニンテンドーゲームキューブ Wii
|
発売・開発元
|
カプコン
|
開発元
|
【Wii】ジャンクション
|
発売日
|
【GC】2002年3月22日 【Wii】2008年12月25日
|
定価
|
【GC】7,140円 【Wii】4,190円
|
廉価版
|
【Wii】BestPrice! 2009年12月3日/2,990円 2011年6月30日/2,100円
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
名作を最新の技術でリメイク
|
バイオハザードシリーズ
|
概要
カプコンの大ヒットサバイバルホラー『バイオハザード』シリーズ第1作のリメイク作品。
基本的なゲームシステムやストーリーはオリジナル版とほとんど変わらないが、演出・グラフィックの強化や新要素の追加がなされている。
本作からタイトルの英語ロゴが小文字表記に変わっており、ハード性能の向上により柔軟かつ緻密なゲームデザインが可能になった新世代『バイオハザード』の第1作ともとれる。
オリジナル版からの追加・変更点
新たな敵
-
一度倒したゾンビは一定時間経つと「クリムゾンヘッド」と化す。
-
クリムゾンヘッドは通常のゾンビより体表が赤く、鋭い爪で襲いかかってくる。
-
特にその動きは通常のゾンビとは比較にならないほど俊敏になっており、逃げる主人公に追いすがってくる。
-
ゾンビのクリムゾンヘッド化を防ぐには、部位破壊か武器・灯油による焼却が必要となる。
-
灯油は各所に存在するが、使用回数が限られている上に持ち運び用の携行缶が必要。
-
いつクリムゾンヘッドと化すかは基本的にはランダムだが、難易度とゲーム進行のスムーズさによって変動する。最短で5分、最長で150分。
-
クリムゾンヘッド化する場合は主人公が近くを通ったタイミングで蘇るが、時には灯油による焼却をしようとした途端に蘇って襲ってくることもある。
-
前半の中ボスとして、「クリムゾンヘッドプロト1」という、最初にクリムゾンヘッド化した個体も登場する。
-
余談だが、ゾンビの復活要素そのものは実は原作の時点から存在した。研究所の廊下等にいる裸ゾンビがそれで、一度倒しても部屋を跨ぐと再配置される形で復活する。
-
本作を語る上で外せない追加クリーチャー「リサ・トレヴァー」
-
人の顔の皮をまとっているため素顔は見えず、手錠をはめられ、拘束具の鎖を鳴らしながらゆっくりと追いかけてくる不死身のクリーチャー。
-
前方、後方への攻撃手段を備えている上にその威力は総じて高く、大量の弾薬を用いても一時的にダウンさせることしかできない。
-
会話では「鎖の化け物」と称され本名は明かされないが、散在するファイルの数々から次第にその正体が明らかになってゆく。
-
悲劇的な過去と狂ってゆく過程を記したファイル、不気味な登場箇所、そしてなによりそのビジュアルから、多くのプレイヤーに強烈なインパクトを与えた。
新たな探索場所・イベント
-
以下にその代表的なものを羅列する。
-
洋館の西側2Fの構造や攻略順がオリジナル版と大きく異なり、最初にこっちを一度通った後2度目に洋館に来た際に図書室付近を攻略する流れになっている。
-
洋館に3階、墓場エリアを追加。
-
洋館墓場、洋館地下にボス戦を追加。
-
中庭に森林~謎の小屋エリアを追加。
-
中庭地下エリアを拡張。
-
寄宿舎地下の水槽エリアを拡張。
-
中盤のリチャード関連のイベント分岐を追加
-
マルチエンディングの分岐箇所の変更
-
これらに伴って多くの仕掛けも変更されているが、特にオリジナル版経験者に対する引っ掛け的な変更点も存在する。
+
|
ネタバレ
|
例えば、オリジナル版ではムービーでのみの登場だった洋館玄関を開けた際のケルベロスが、実際に襲ってくるようになった。
|
新たな武器
-
アサルトショットガン
-
通常のショットガンよりも装弾数・威力で優れており使いやすい。
-
あるイベント分岐によって入手できるかどうかが決定する。
-
バリーの44マグナム
-
ジル編のみ入手可能な箇所があるが、こちらもイベント分岐次第。弾薬(44口径マグナム弾が入手できないので使い捨てだが威力は圧倒的でタイラントさえ一撃で倒せる。
-
護身用拳銃
-
レミントンデリンジャー。威力が高い上に発射後の隙も少ないが、1発しか撃てず弾薬(22口径マグナム弾)も存在しないため、使用後は用済みとなる。
-
入手場所を見れば分かると思うが、作中の絶望的な雰囲気を強調するための演出的な存在。
-
サムライエッジバリーVer.
-
隠し武器のハンドガン。弾数は無限。
-
威力はわずかに通常より高い程度だが3点バースト機能を持つ上に、貫通性能を有する。
-
ロケットランチャー(隠し武器型)
-
作中ラストに登場するロケットランチャーとは仕様が異なり、見た目がライフル型になっている。
-
本シリーズのロケットランチャーにしては珍しく、上段・下段攻撃ができる。
ディフェンスアイテムの登場
-
ディフェンスアイテムとは、持っていると敵の攻撃を受けた際に(自動又は手動に設定可能)使用され、敵の攻撃を無効にしつつダメージを与えるアイテムである。
-
取得するとアイテム欄とは別の場所にストックされ、クリス・ジル共に2種類を複数個持ち歩くことが可能。
-
基本的にこちらを拘束する攻撃に対して使用可能。全ての敵の攻撃に対応できるわけではないため、単純な「保険」にはなっておらず、戦闘バランスを崩してはいない。
-
ディフェンスアイテムは「ダガーナイフ」「閃光手榴弾」「バッテリーパック」の3種類。
-
ダガーナイフはクリス・ジル共に入手でき、攻撃してきた敵に突き刺して反撃する。ゾンビに刺した状態で頭部を破壊すれば、拾って再利用が可能。拾わずにそのままにしておきレベッカ操作時に拾えばレベッカも使用できる。
-
閃光手榴弾はクリス専用。攻撃してきた敵に閃光手榴弾を咥えさせる。相手の頭を砕いて即死させ周囲の敵も巻き込む(こちらは即死にはならない)が、距離が近いと自分もダメージを受けてしまう。
-
スタンガンはジル専用。攻撃してきた敵に電撃を食らわせる。即死ではないがクリスと違いリスクは無い。使用にはバッテリーパックが必要(スタンガン本体は初期装備)。
-
ちなみに、ラスボスにもこれらの武器は使用可能だが、ひるむだけでノーダメージとなっている。なお、閃光手榴弾はどう見ても爆風圏内だがクリスもノーダメージで済む。
豊富なクリア後の隠し要素
-
シリーズ恒例の隠し武器は前述のサムライエッジバリーVer.と隠し武器仕様ロケットランチャー。
-
ちなみに、隠し武器は初期装備のサバイバルナイフと入れ替えで所有され、入手条件が厳しいロケットランチャー側を優先的に保有するようになっている。
-
例えばサムライエッジ入手条件は満たしたがロケットランチャーがまだの場合は、クリスは初期装備がサムライエッジのみ、ジルはサムライエッジと通常ハンドガンでナイフは最初からアイテムボックス内に移動。
-
ロケランの条件を満たすと装備のサムライエッジがロケランになり、サムライエッジ自体はアイテムボックス内といった具合。
-
難易度にかかわらず1度クリアすると、特定の場所でコスチュームチェンジできる鍵を持った状態でプレイできる。
-
隠しコスチュームはオリジナル版から一新されており、クリス・ジル共に2種類。ただしクリアした方のみが解禁される。
-
クリスで隠しコスチュームを着用するとレベッカのコスチュームも変わる。ただし、ジルで隠しコスチュームを着用してもバリーのコスチュームは変わらない。
-
隠しコスチュームを着てゲームクリアするとランク画面のイラストが変化する。
-
中でもストリートタイプコスチュームのクリスでクリアした時のイラストは必見。タイラントを鉄拳制裁するクリスが見られる。
-
主人公・難易度にかかわらず1度クリアすると、「ハードモード」が選択できるようになる。
-
敵の体力や攻撃力は変わらないが、入手可能弾薬・回復アイテム数が減少し、後述のゾンビ復活時間が短くなる他、敵の配置も少し変わる。
-
一部の仕掛けの謎解きの制限時間やミス条件もシビアになる。
-
主人公を問わず難易度ノーマル以上でクリアすると、「リアルサバイバルモード」が選択できるようになる。
-
難易度がハード固定・自動照準無効・アイテムBOX同士のリンク無効・隠し武器使用不可となっている。
-
ただし一部の制限が緩和されるという、僅かなバランス調整も行われている。
-
両主人公を難易度ノーマル以上でクリア、またはリアルサバイバルモードクリアで「インビジブルエネミーモード」を選択可能になる。
-
難易度は選択可能でアイテムBOXはリンクしているが、自動照準無効・隠し武器使用不可はリアルサバイバルモードと同様。
-
その名の通り全てのクリーチャーが完全に見えなくなる(主人公が攻撃を受けた際だけは姿を表す)。声や足音で判断するしかない。
-
ただし見えなくなるのは「クリーチャ本体のみ」であり、鏡や水溜りに映る鏡像・クリーチャー周囲のエフェクト(クリムゾン・ヘッドの茶色い息やヨーンの這う時の埃(?)など)・反撃でこちらが刺したダガーナイフなどは見える。
-
本作中では最高難度と言えるモードであり、クリア特典として設定原画集やディレクターの三上氏からのメッセージを見ることができる。
-
クリス・ジル共に難易度ノーマル以上でクリアして2周目をプレイすると、洋館内に爆弾ゾンビが出現するようになる。
-
クリムゾンヘッド並みの素早さがあり攻撃手段は通常ゾンビと同様だが、体中に爆弾を巻きつけており、攻撃したら即ゲームオーバーとなる。これはナイフ攻撃であっても例外ではない。唯一の例外はクリムゾンヘッドの殴り攻撃による同士討ちだが、敵同士のダメージはないためこれで撃破は不可能。
-
フォレストゾンビの出現に伴って、敵の配置がやや変化する。ちなみに元々のフォレストの死体も消える。
その他細かな追加・変更点
-
敵の強さや行動パターンなどがかなり変化している。ぱっと見で分かるものとして以下のようなものがある。
+
|
... |
-
ゾンビの噛みついてくる回数が1~2回に抑えられ、振りほどくのが遅くてもオリジナル版ほど極端にダメージを受けない。
-
反面、受けるダメージにランダム性が追加され、場合によっては1回だけ噛みつかれてもジルやレベッカなら最低でも1/4は削られるほど攻撃力が増している。
-
ケルベロス・ハンター(旧作の首刈りとは別)・キメラ・ヨーン・スーパータイラントに隙はデカいものの即死攻撃が追加。
-
旧作ではプレイヤーのライフが一定未満でないと即死攻撃を使わなかったが大抵の敵、特にケルベロスはライフに関係なく使ってくるので、気を抜けなくなった。
-
アダー、ハンターは体色が赤の個体が追加。その場合、アダーだと噛みつき攻撃で確定で毒状態になり、ハンターだと即死攻撃を繰り出すようになる主人公のHPの上限が上がっており、純粋に通常個体よりも強化されている。
-
ネプチューンとプラント42が大幅に巨大化しており、ネプチューンは親個体の攻撃がすべて即死・子が旧作の親並の強さ(ただし水中でも倒せる)。
-
プラント42は銃器系は「動かない本体めがけて攻撃」になったため、旧作の半分の確率で攻撃外れる要素がなくなったが花弁状の器官でこちらの攻撃を防御するようになった。
-
クモ系の敵を倒した際の子蜘蛛が、ただの背景で無害になっている。逆にクモ本体死骸から毒液が噴き出て毒状態になることがある。
-
タイラントは大幅に強化され、初戦が推奨武器のマグナムリボルバー(旧コルトパイソン)基準だと、HPが2倍近く(撃破に約3発 → 6発)に引き上げられている。
-
スーパー版は爪のない右手側に回り込むと捕まえて上述の即死攻撃(つかまれてからでも回避は可能)を使うようになった他、2周目以降だとロケットランチャーを回避することも行うようになった。
|
-
ハンドガンでクリティカル判定が発生する。発生条件は変化しており、攻撃回数で決まる。
-
ジルのキーピックの性能が下がり「剣のカギ」の扉を開けられなくなった。
-
グレネードランチャーの弾を撃ち終わる前に交換できるようになった(『2』以降と同様の仕様)他、「グレネード弾」は「榴弾」に、「火炎弾」は「焼夷弾」に名称が変更された。「焼夷弾」はゾンビに対して焼却効果があり、倒すと同時にクリムゾンヘッド化を防ぐことも可能。
-
オリジナルでは入手が中盤以降だったマグナムリボルバーが中庭に配置された。
-
ゲーム進行で例えると中~終盤から序~中盤始め位の時期に変更された。尤も全武器の中では最後の方の入手になるのだが、これによりハンター出現に間に合うようになった。
-
全てのムービーが実写からCGムービーに変更され、一部の残虐描写がカットされている。
-
一部のキャラクターの外観の変更
-
レベッカがバンダナではなく、チョーカーを着用している。また性格もオリジナル版に比べると幾分落ち着いた印象になった。
-
バリーの髭が剃られており、口元がすっきりした。
評価点
シリーズ最高峰の恐怖演出
-
本作が名作たる最大の理由は、オリジナル版の良さを損なわず「恐怖演出」の質を最大限に引き出したことにある。
-
リメイク作品はオリジナル版と比較されるのが常であり、時に劣化部分が大いに批判されることがあるが、本作にそういった点はほとんど見られない。
-
恐怖演出の基本はオリジナル版にあった「雰囲気で魅せる恐怖」である。
-
安易にパニックホラー的要素を大量追加してオリジナル版の良さを打ち消す…なんてことはなく、オリジナル版の良さを十分継承しつつ強化して恐怖を演出している。
-
「雰囲気で魅せる恐怖」はハードパワーによるグラフィック強化と非常に相性が良かったため、臨場感と恐怖演出はオリジナル版の上位互換といってもいい出来。
-
「動画背景」と呼ばれる演出手法によって、薄暗く不気味な洋館や鬱蒼とした森などが特筆すべきクオリティで作り込まれている。
-
光源処理も効果的で、頼りなく揺らぐ電灯や月光の差し込む廊下が恐怖を一層引き立たせており、逆にセーブポイントのランプの光がプレイヤーに与える安心感も増している。
-
現在でも大きくは見劣りしないため、グラフィックの粗さからオリジナル版のプレイが憚られるという人にもお勧めできる。
-
オリジナル版と同様に固定カメラ切替方式のみを採用しており、『コード:ベロニカ』にあった移動カメラ方式は無い。
-
固定カメラ視点はオリジナル版よりも工夫されており、先に進む恐怖や臨場感を煽りつつ、映画的な見栄えもする視点になっている。
-
固定カメラ視点を利用した恐怖演出も多く盛り込まれており、まるでプレイヤー自身に向かって敵が襲いかかってくるかのような場面も存在する。
追加クリーチャーの存在感
-
クリムゾンヘッドの存在は作業的になりやすい探索パートに戦略性とスリルを盛り込むことに成功している。
-
厄介なクリムゾンヘッド化を避けるために各アイテムを計画的に使ったり、該当エリアをできるだけ通らないルートを選ぶといったの戦略性が重要。
-
一方で、意を決して強行突破を試みたり、部位破壊を狙って攻撃したり、複数のゾンビをまとめて焼却できるように倒す位置を調整したりといった戦術性も求められる。
-
シリーズの象徴にもかかわらず、近作では単なるザコ敵となっていたゾンビに再び脚光を当てたという点も無視できない。
-
「ただのゾンビ」の死体がいつ蘇るか分からない恐怖と緊張感は、ゾンビ(腐った死体)でありながら非常に新鮮。
-
主人公が通りかかるとまるで糸で操られたマリオネットのように不意に起き上がる様は衝撃が大きい。
-
なお、このためか洋館内に「最初から横たわっている死体」があり、実際には大半が背景か危険の少ない這いずりゾンビだが、初見ではこれも十分怖いはず。
-
本作の恐怖の象徴とも言うべき「リサ・トレヴァー」
-
「ひたすら追ってくる」「不死身」というコンセプトを持つクリーチャーは『3』のネメシス-T型が初出であるが、リサはネメシスと違い走って追いかけてきたり、ロケットランチャーを撃ってきたりはしない。ただゆっくりと…ゆっくりと…鎖の音を響かせてにじりよってくるのである。
-
上述のようにダメージを与えてもネメシスのように撃退することはできず、すぐ復活してしまうために文字通りに逃げるしかない恐怖とプレッシャーを叩きつけてくる。
-
そして「敵が意図的に対象抹殺のため送りこんできた存在」であり、拘束具を着てロケットランチャー装備とわかり易い外観のネメシスに対し、こちらは詳細を知るまではその正体についても襲い掛かってくる理由についても不明のまま。
-
「理解できない異質な存在がじわじわと、それでいて着実に迫ってくる」という点では、「雰囲気で魅せる恐怖」に非常に馴染んだ存在となっている。
-
その悲惨な経緯が記された作中のファイルも手伝って、ややもすれば単なる排除対象でしかなかったクリーチャーにシナリオ的な深みを担わせることに成功している。
1シナリオあたりのボリューム増加
-
探索場所や仕掛けが増えたことで、必然的にオリジナル版に比べ1シナリオあたりのボリュームがアップしている。
-
本作までのシリーズ作品を振り返っても、『コード:ベロニカ』に比肩しようかというボリューム。
-
探索場所が増えたが、ショートカットできる場所も増えてマラソン感が多少緩和されたのも地味に嬉しい点。
賛否両論点
隠し武器の微妙な要素
-
サムライエッジ(バリーver.)は三点バースト発射・貫通性あり・弾数無限と確かに通常ハンドガンの上位互換である。
-
だが、飽くまでハンドガンなので威力が低い。よって上記のケルベロスなどの強化もあり、ゾンビと一撃で倒せる小型の敵以外に使うと近距離では倒しきれずに反撃される場合もある。
-
かといって弾数無限なのをいいことに離れきって撃ちまくる安全策をやってもいまいち爽快性はない。
-
ただ、従来のシリーズとは異なり、後述の無限ロケットランチャー取得の際にこのサムライエッジを使用してもいいようにされている。感覚的には後の『RE2』における無限ナイフに近いポジションと考えれば、ある程度その性能にも納得がいくだろう。
-
ロングマガジン化やスライドの重厚化で見た目はゴツくて非常にカッコいいので、ライトミドルな性能の無限武器でスマートなプレイングを開拓していく楽しみはある。
-
S.T.A.R.S.現役時代のハイパワーなバリー仕様のサムライエッジが登場する唯一の作品でもあるので、設定面での魅力はふんだんに用意されていると言えるだろう。
-
ちなみに、ロケットランチャーの方はすべての敵を一撃で倒せる火力に加え、連射速度が速い(重火器としては)、上下に打ち分け可能、近くに着弾しても自爆ダメージ無し、構え動作・発射後硬直が通常武器と変わらない隙のなさ、アイテムスロットも1枠しか使わない、と歴代トップレベルの強さとされている。
-
唯一の欠点は部位破壊が起きず、焼却効果もないため、ゾンビのクリムゾンヘッド化を防ぐことができないことくらい。しかしそのクリムゾンヘッドも敵ではなくなるので不意打ちに注意すれば些細な問題である。
-
旧作では無限マグナムや無限マシンガンといった爽快性に溢れた隠し武器が用意されていたので、本作ではバリーの44マグナムや火炎放射器などの限定武器の無限版をおまけ要素として用意しても良かったのでは? という声もある。
-
お色気描写が追加された
-
ジルの特定衣装において乳揺れの描写があるのだが、『バイオハザード』にこのような描写を求めない層からは苦言を呈する声もある。
-
もっとも、これは特定の衣装に依存する表現なので、その衣装を使用しなければ回避できる問題ではある。
-
旧作にあった「倒しても敵が無限に出現し対処法のないマップ」がすべて削除
-
寄宿舎の蜂のいる部屋は、旧作同様その場で何度倒しても巣から増援が出てくるが、この部屋で拾える殺虫剤で全滅できるようになった。しかもキーアイテム入手に必須。
-
倒しても戻るとまた出てくる研究所の裸ゾンビは復活しない(クリムゾン化さえもならない)と旧作より大幅に弱体化した。
-
ゾンビの部位破壊要素が増したのだが実感が薄い
-
旧作ではクリティカル発動で「頭部破壊(即死する)」と武器攻撃で時々「片腕破壊(振り解き易くなる)」で『2』から下段攻撃で「脚部破壊(這いずりゾンビになる?」が追加されたが、今作ではさらに両腕破壊も追加された。
-
しかし、発動条件は「特定の銃器(ショットガンやマグナムなど)攻撃が胴体に命中で25%」か「特定の銃器攻撃が側面から腕に命中で100%(ただし腕に当たる確率はランダム)」というもの。
-
側面から何度も攻撃すればある程度は狙って出せそうな気がするが、後の『4』のように主観視点ならともかく、リモコン操作ではそもそも距離が離れるとゾンビが画面外に出ることが多く、近づくとゾンビがこちらを向いて側面攻撃ができなくなる。
-
さらに言うと、腕破壊で得られるメリットは「両腕(片手だけではだめ)を破壊されると胃酸攻撃だけしかしなくなり、撃破してもクリムゾン化しなくなる」だけ。そんなことをするぐらいなら「特定の銃器」を引き付けてから頭部に撃ち込み頭部破壊(発動で即死、クリムゾン化もしない)を狙ったほうがよっぽど早い。
-
無意味すぎたのか『0』では、破壊できるのが頭部と脚部のみに戻っている。
問題点
フィールド内の暗さ
-
雰囲気作りに一役買っているといえど、あまりに暗い箇所が多い。
-
その筆頭が新しく追加された中庭の森地帯。明るい部屋でプレイすると、蒸発現象によって地形の把握が非常に難しくなる。明るすぎるとホラー性の縮小に繋がるが、本作はやや暗すぎると言えよう。
-
また、この頃の『バイオハザード』シリーズで画面の明るさのオプションにて「この線が見えない明るさに調整して下さい」などの指示があるが、調整するのはそれぞれの家庭のテレビ側。ゲームに合わせて調整すると本来のテレビ放送に影響してしまう。
リメイクに伴う各クリーチャーの調整のばらつき
-
リメイクに伴いクリーチャー間の強弱が見直されたが、その上方修正・下方修正のばらつきが大きい。
-
ケルベロスは飛び掛かる瞬間に撃たなければハンドガンでは怯まなくなった他、動きも素早いため、ただ撃つだけでは対応しにくくなった。
-
特に複数を相手にする場合が顕著。ラジコン操作も相まって、初心者では素早い動きに翻弄されてそのまま殺されてしまう事もある。
-
ハンターはオリジナル版同様、こちらのHPが多く残っていても即死攻撃を繰り出してくる上、基本攻撃の火力も上昇している。
-
さらに地上での爪振り払いでこちらが大きく怯むようになり、そこから即死攻撃のコンボを繰り出すこともあるなど、より凶悪度を増している。
-
追加されたもう1つの即死攻撃は阻止そのものは楽だが、ここでダガーナイフを刺すとハンターが暴れながら前進してくるのでダメージは小さいものの引っかかれてしまうおまけつき。
-
一方でオリジナル版ではほぼ予備動作なしで即死攻撃を繰り出してきたのに対し、雄叫びを上げるという予備動作が追加されたため、その間に回避したり阻止しやすくなっており、必ずしも強化点ばかりではない。
-
プレイヤーを視認する以外の察知手段がないこと、ジャンプ攻撃の下をくぐり抜けやすい弱点もそのまま。
-
ヨーンはあからさまに動きが鈍くなっており、特に撃破必須な2回目は本棚が部屋にあるのでこれを盾に利用すれば、攻撃のできない尾部だけ狙ってナイフでもノーダメージで倒せるようになってしまった。
-
ゾンビはさほど変わりないが、HPのばらつきがやたらと激しい。ハンドガン3発で死ぬ時もあれば12発でようやく死ぬ時もある。
-
本作は序盤の弾薬の入手量がかなりシビアなため、高耐久のゾンビに運悪く連続で当たってしまうと、最悪弾薬が枯渇してしまう場合も。
-
新キャラのクリムゾンヘッドはHPこそゾンビ準拠だが、中ボスのプロト1は「まずクリムゾンヘッドとして基本HPを範囲内からランダムで設定+そこからボス補正で固定値上乗せ」なので、プロト1戦で最低HPが当たると「タフなゾンビ / クリムゾンヘッドより耐久力が低いあっさり倒せる中ボス」になってしまうことがある。
-
一方、終盤で登場するキメラは即死攻撃が追加されたものの、逃げようとすると抱きついたりトリッキーな動きをしてきたオリジナル版と比べて動きが悪化するなど弱体化している。
-
強くすることで戦闘バランスが悪化する懸念があるとは言え、オリジナル版体験者からは物足りない強さに落ち着いてしまっている。
-
タイラントは上述のように体力こそ増えたものの、動きは散漫なままなので根本的な能力は旧作とほぼ変わらない。攻撃動作や攻撃後の隙も大きくなったので、むしろ弱体化気味。
-
スーパータイラントも同様に予備動作が増えた他、休みなく猛攻を仕掛けてきた旧作と違い背中に回っても攻撃してこなくなったりとこちらもやや動きが悪化している。
クリムゾンヘッド対策の煩わしさ
-
クリムゾンヘッドの存在自体は恐怖を煽る要素として一定の評価を得たが、その発生を抑える対策は煩わしさも孕んでいる。
-
部位破壊は確実性に欠けるため焼却が基本対策となるが、それに必要なアイテムが有限かつ散在しており、気軽に入手できるものではない。
-
加えて、焼却用アイテムは数少ないアイテム欄を圧迫するため、アイテムボックスとの間を頻繁に行ったり来たりする羽目になる。
-
特にジルに比べて2つもアイテム所持数の少ないクリスで顕著。火炎弾のような焼却武器がゾンビの居る場所で登場しない事も足を引っ張る。
-
かといってクリムゾンヘッド対策を怠ると倒したゾンビが片っ端から復活してしまうため、サボると物資弾薬を激しく浪費してしまう。
-
先述の通りクリムゾンヘッドは、作業的になりやすい探索にスリルを盛り込む要素だが、初見プレイ以降はこの対策自体が作業と化す。
-
対処法がないわけではなく、洋館は兜の鍵入手後にハンターが出現する都合上、途中で大半の部屋の敵配置がリセットされるため洋館の初回と寄宿舎の攻略を速攻で行えば、再配置されない一部の部屋を除いてクリムゾン化させずに研究所に到達できる。
-
つまり、処理のため何度も燃料ボトルを取りに戻る手間をかけるより、あまり焼却をせずに先に進んだ方が安全という事である。
-
しかし、これを意識するとクリムゾン化抑制のために迅速な攻略を余儀なくされ、落ち着いた探索・攻略ができない。そもそもルートや配置等を予め吟味しておく必要があるため、相応にやり込まなければ難しい。
-
開発側もこれらの問題点を認識したのか、このクリムゾンヘッドが登場する作品は本作のみであり、以降の作品には現在に至るまで登場していない。
謎解き関連
-
基本的に謎解きパートの仕掛けがクリス・ジル共に同じであり、もう片方の主人公でプレイした時の新鮮味が薄い。
-
もちろんイベントが異なったり、別々のパートナーの介入があったりはするのだが、謎解きの内容自体はほとんど一緒で代わり映えがなく、『2』のように主人公によってルートやキーアイテムが変わるなどもない。せっかくのリメイクだけに惜しい所。
-
謎解きの増加に比例してキーアイテムも増加しているが、主人公のアイテム所持数はオリジナル版から変わっていないため、小まめにアイテムボックスに戻らないとすぐに所持数が埋まってしまう。これもクリムゾンヘッド対策同様クリスで顕著。
-
本作のオリジナル版のみにあった「アイテムのアングルを回して調べる」という要素が拡張され、本作では多数のアイテムに要求される。
-
元々オリジナル版において「本を開く」「特定のアイテムを別のアイテムにはめ込む」などのバリエーション豊かだったものがそれらに加えて更に多様性を増したのだが、全体的に「裏返す」「何度も調べる」などの単調な内容のものも目立ち、ゲームプレイや謎解きの面白さへの貢献度が高いものはそれほど増えてない。
-
例えば「救急箱」は、少しアングルを変えて調べるだけであり、ただ入手に無駄なひと手間が追加されただけとなっている。
-
謎解きも数が多いだけで全体的に単調であり、面白味より手間を感じやすい。特に4つのクレスト(風日月星)は槍玉に挙がりやすい。
-
事前に入手したウィンドクレストをはめ込むと残り3つのクレストを追加入手でき、その3つの裏側を全て調べた後に、すぐ隣の窪みにはめ込むとマグナムを入手…いくら何でもおかしすぎやしないか。
-
はめ込むとマグナム入手という不自然さは兎も角、はめ込む窪みがすぐ隣にあるのなら、わざわざ3つ拾わせて裏側を調べさせる必要性が全くない。
-
クレストを1つはめ込んでマグナム入手という仕掛けに作ればいいだけであり、二度手間三度手間にしかなっておらず、多くのプレイヤーから突っ込まれた。
-
仮に手間を掛けさせるにしても、クレスト1つをはめ込むと挑戦できるパズルにするなど、いくらでも工夫できるはずである。
-
その上でパズル内容にオリジナルに出てきた4種のクレストを関わらせれば、オリジナル版経験者へのファンサービスも両立できる。
難易度・操作キャラの格差
-
オリジナル版でもクリス・ジルのイベントや装備の差が問題になったが、今作ではより顕著になってしまっている。
-
先述の通りマグナムの入手時期が早まり、護身用拳銃等の武器が追加されたが、そのほとんどは両主人公で手に入るため差別化には至らず。
-
むしろジル編はアサルトSGの入手時期が非常に早い上、超強力なジル編限定武器が追加される等、狭まるどころかさらに格差が広がっている。
-
スタンダードアイテムのおかげでクリス編はライターを常に所持しているが、上で述べたようにアイテム所持数が僅か6つしかない。
-
しかも、ゾンビの焼却に関してはグレネードランチャーの火炎弾でも可能なので、釣り合いが取れているとはお世辞にも言い難い。
-
以上の点から、難易度はともかくそもそもゲームプレイの楽しさの面でも大きな差が生じてしまっている。
-
ジル編は様々な武器を活用して探索する楽しさがあり、難易度も適度、定期的にバリーが介入するためストーリー面でもメリハリがある。
-
一方クリス編は武器が少ないためゲームプレイの幅がジルより狭い。レベッカの回復イベントこそ強みだが、出番はバリーほど多くはない上に救出イベントに至ってはこなすのであればただの負担でしかない。
-
何よりアイテム所持数の少なさに起因するストレスが非常に強く、特に序盤はただでさえ少ないアイテム所持数を小さな鍵に圧迫されるため、クリス編は難しいのではなく面倒なだけとは決して間違った評価ではない。
-
一応の擁護点として、クリス専用のディフェンスアイテム「閃光手榴弾」は極めて強力で高い性能を誇る。
-
その気になればアイテム欄を全く圧迫せずにゾンビの処理とクリムゾンヘッド対策が同時に行えるほどの強みはある。
-
しかし閃光手榴弾も相応に貴重品であり、やはり格差を埋め切るまでは達していない。
-
そもそも原作で格差があったのは操作キャラで難易度が決められていたからであり、リメイク化によってキャラによる難易度設定が無くなった点も考慮すると、上記を総合しアイテム所持数の均等化や使用可能な武器などもう少し格差を無くす配慮が必要だったと思われる。
-
本作は全体的に、「プレイヤー側の利便性を削ぐ・手間を掛けさせることで高難度にバランス調整している」という印象が否めない。
-
先述したアイテム管理の難しさに始まり、数度通るとドアノブが壊れて一方通行になるドア、キーアイテム「燃料」を運ぶために走行と攻撃を禁止させる・ゾンビの焼却処理など、このバランス調整はそこかしこに見られる。
-
クリア後に追加される2つのモードは正にこれで、敵の透明化・アイテムボックスの繋がりがなくなる・自動照準無効と、いずれもプレイヤーに不便を強いるものである。
-
もちろん、こういったバランス調整自体は悪いものではないが、本作は些かそれを多用しすぎており、もっと別の部分で調整してほしかったところ。
-
ちなみに、これの問題が顕著なのが「リアルサバイバルモード」の階段通路突入部位で、ここを通って研究所に行くまでに「鉄と石製のオブジェ」が2つ、「オオワシのメダル」「オオカミのメダル」の4つのキーアイテムが必須でベストエンドのためにはこれに加え「MOディスク」もいる。
-
つまり、アイテム所持欄6つのクリスだと、アイテムボックスのつながりがないせいで「他のアイテムボックスから往復を2回以上しないと研究所に持ち込めるアイテムはただ1つ」という事態になる。
-
前半にあった「4つのデスマスクを集める」と違い、配置関係や設置場所の都合で「事前に通りかかった際に設置する」もできない。
-
もっとも、単調に敵の火力や堅さや数を引き上げて戦闘や弾薬集めを間延びさせられるよりは余程マシであり、アクション性に乏しい本作のゲーム性ではこのぐらいしか難易度を上昇補正する手段も無いのだが…。
シナリオ面の問題
-
リメイク化に伴い洋館の初期探索可能場所が一本道化したが、シナリオのセリフには変化が無い。
-
このためジル編の場合、バリーの「俺は食堂を調べるから反対側の調査を頼む」という提案通りに進められず、結局食堂側を調べなくてはならず矛盾してしまっている。
-
クリス編のバリーの扱いは本作でも改善されなかった。
-
クリス編の場合、序盤に一緒に洋館に逃げる途中でバリーははぐれ、そのままエンディングまで一切言及されない。これはオリジナル版からそうだったが、本作でも同じである。
-
バリーは公式設定では生き残っているのだから、リメイクである本作でその補完をしてあげても良かったのではないだろうか。
-
また旧作同様、隠しコスチュームが用意されていないという面でも不遇。彼の専用武器は隠し装備としてプレイヤー用に用意されてはいるが…。
-
ちなみにジル編でもレベッカが登場しないが、オリジナル版同様最初からレベッカの存在自体がオミットされているため、ストーリー上は違和感が無い。
-
クリス編クライマックスにおける起爆装置作動の展開は「研究所を滅菌するためレベッカが作動させる」というものから変更されず。
-
クリス編から『2』に繋げるとクリスたちの浅はかな判断で証拠を隠滅してしまったようになってしまうので、ここも何らかのフォローが欲しかったところだが、一切手が加わらなかった。本作では『2』の人物が本作の黒幕に送ったメモがファイルとして追加されているので、余計に際立ってしまっている。
-
一方で後年に「本作の黒幕はタイラントに殺されたと見せかけて復活」と設定されたためか、ジル編でも自ら復活させたタイラントに襲われてから起爆装置を作動させるという形に変更されている。クリス編にそうした調整が入らなかった理由が謎である。
-
ブラヴォーチームメンバーの扱いもやはりまちまち。多少なり描写は追加されているが、新たな謎が生まれるなど別の問題が発生している。
-
旧作ではケネスの遺体を調べると「ベレッタのマガジン(ハンドガンの弾)」が入手できたが、今作では「ケネスのフィルム」というファイルが入手に変更されている。
-
これを終盤の研究所で再生して見るとケネスがゾンビに食い殺される直前の場面が見れるが、「パニックになった彼が銃を乱射して弾切れを起こしゾンビに殺される」という描写になっている。
-
…冒頭で聞こえた銃声は旧作では位置関係から「ケネスが撃った」と言うのが定説だったが、聞こえてきた銃声は旧作・今作共に1発だけ。ケネスのものではないとすると一体…? という、新たな謎が生まれてしまった。
-
フォレストはやはり既に死亡しており、旧作アレンジモード同様にゾンビ化するが、ケネスのように死亡までをフォローするファイルはない。さらに後述する爆弾ゾンビの素体という謎の扱いを受け、プレイヤーからは鬱陶しがられている。
-
エドワードはOPの変更で本作での存在が抹消されている(元々旧作OPでも名前は出てこないが)。同時開発中だったであろう『0』との兼ね合いもあるのだろうが…。
-
『0』で明確に登場するまで、エドワードの存在は攻略本でしか語られたことが無い裏設定に近いものだったため、そもそも旧作プレイヤーでも彼の存在を知らないプレイヤーは少なくなかったため「ブラヴォーチームの6人目はケビンっていうのか」と思われ、あまり問題視されてはいないが。
-
他方でリチャードは元からルート次第で生存した状態で遭遇でき、ブラヴォーチームメンバーでも印象に残る存在だったが、本作ではさらに展開次第で生き延びる時間が延び印象に残る活躍をしてくれるなど、旧作以上に優遇された立ち位置になっている。
ゲーム性について
-
本作は謎解きの増加に加えてオリジナル版に忠実すぎる事が裏目に出ており、オリジナル版の問題であった「探索の自由度の高さの反面、あちこちを行き来させられてお使い感が強まる」という点がより顕著になっている。
-
この点が特に分かりやすいのが、ヨーン戦前とキーアイテムの「楽譜」である。オリジナル版では1Fで仕掛けを解き、盾の鍵を入手すればよかったが、何故か本作ではこの「楽譜」が2つに分けられている。
-
このため東2Fヨーン前に楽譜の半分を入手 → 西1Fでもう1つの楽譜入手 → 盾の鍵を入手し2Fへ戻る…という二度手間になってしまった。
-
寄宿舎や中庭地下も同様で、エリアが狭く出現クリーチャーの数も少ないため、「謎解きに行ったり来たりさせられる」感が非常に強い。
-
先述の謎解きの代わり映えの無さ・キャラ間の格差・シナリオの問題点等は、全てオリジナル版に存在した問題点である。
-
本作は多少の追加・変更点はあれど、オリジナル版にかなり忠実な作りであるため、オリジナル版の問題点もほぼそのまま継承している。
-
オリジナル版はシリーズ初期作故に粗も多かったため、オリジナル版を意識しすぎた結果、その問題点が改善されなかったのは惜しまれる点である。
ボリューム増量の不足感
-
難易度ハード及びリアルサバイバルモード・インビジブルモードの追加と、一見するとボリュームが大幅に増えたように感じられる。
-
しかし、これらはいずれも仕様(と物資弾薬の配置)が若干異なるだけであり、ゲーム性自体は通常難易度・通常モードと全く変化がない。
-
加えて原作では探索手順や通信機の入手手段などでED以外にもストーリーに細かな分岐があるのだが、それらも多くがオミットされてしまっている。
-
このため1周あたりのボリュームは確かに増えたが、全体のボリュームで見ると初代よりも少し増えた程度に留まっている。
-
オリジナルのディレクターズカット版にはアレンジモードがあり、またSS版にはミニゲームとしてバトルモードが存在しており、さらに『2DC』はEXTREME BATTLE、『3』にはMERCENARIES、『CV』にはバトルゲームと、初代以降には様々なオマケ要素が用意されていた。
-
これらのオマケではタイムアタックや本編では操作できない&期間限定の操作キャラなどを使う楽しみがあり、本編とは違う楽しみも味わえた。
-
こういったリプレイ性の高いオマケ要素が本作にはなく、2つのモードもゲーム性自体は変わらないため、どうしても従来作より飽きやすい。
-
本作ではジル、クリス、レベッカ以外のキャラもボス戦で味方として援護してくれていたので、彼らも使ってみたかったという声も大きい。レベッカは期間限定のみの操作で戦える敵なども限られているので、尚更惜しまれる。
-
せめてアレンジモードだけでも用意されれば…。攻略ルートが変わるため、新鮮な感覚でプレイする事ができたはずである。固定カメラの位置変更も継承してたら言うこと無い。
爆弾ゾンビ
-
前述の条件でクリアすると現れる爆弾ゾンビだが、タイムアタックなどでは邪魔な存在でしかない。
GC版ではメモリーカードを分けることで出現を回避できた。それより後の本体に保存する据え置き機では、主人公ごとにセーブデータを分けてプレイすると出現を避けられる。
その他
-
中庭の噴水を調べると「水中を泳ぐ透明な生物がいる」と説明される(旧作にはなかった)が、一切襲ってくることも攻撃することもできず、ファイルでもこいつの存在について触れたものがないため何なのかは謎である。
-
GC版の初版のみ、アイテムボックスからグレネードランチャーの弾を直接補充すると弾が増殖するバグが存在する。
-
主人公のその場旋回動作が、シリーズ旧作に比べてぎこちない動きになっている。旧作経験者はプレイの際に違和感を感じるかもしれない。
-
一応、リアリティの面からすると本作のような旋回の方がより自然かもしれないが…。なおこの仕様は『0』にも受け継がれている。
総評
オリジナル版と同系統の恐怖演出をストイックに追求した姿勢は、古参ファンには嬉しいポイント。
それでいて謎解きや戦闘等にも大幅なボリュームアップが図られており、一個の作品と見てもその完成度は非常に高い。
古き良き『バイオハザード』の魅力を十二分に堪能することができるだろう。
余談
-
旧作ではよく分からなかったが、グラフィック向上でこのゲームの特徴である固定カメラ視点は「実はプレイヤーを監視しているカメラのもの」だと匂わせる描写がある。
-
新たに追加された大水槽の制御室付近が分かりやすく、梯子から降りた直後には右上に監視カメラの側面が見えるが、通路の方に行くとここからの視点に切り替わり、さらに進むと先ほどの視点で通路先に見えたカメラ位置から見ている構図になる。
-
さらに最終版の独房が決定的であり、監視モニターを通した視点になるという特殊な演出がされている。
-
旧作にはないクリア後の所要時間を読み上げる声が黒幕の人物のものなので「戦闘データ入手のため彼が撮影していた」という設定なのかもしれないが、真相は不明。
-
ディフェンスアイテムを手に入れると主人公の腰に装着される。
-
本作に登場したリサ・トレヴァーは設定上『2』『3』とも紐付けられており、背中の眼球状の腫瘍に「G」の面影が、背中の触手に「ネメシス」の面影がそれぞれ見てとれる。
-
セーブポイント及びアイテムボックスがありながらボスクラスの敵が出現する探索箇所が、シリーズで初めて登場している。
-
終盤のステージにてゲームキューブ本体風の外見をした装置が置かれているが、『HDリマスター』では装置のデザインが修正された。
-
非任天堂ハードなら当然だが、Switch版でも修正されたままである。
-
2021年5月にデザイナーのジュディ・A・ユラチェク氏が、本作のとあるシーンに出て来る建築内装のテクスチャと剥がれた壁の模様の一部が自身の著書にある写真を無断使用したものであるとして、カプコンに対し最大1,200万ドルの損害賠償に加え、使用した写真1枚につき2,500ドルから25,000ドルの支払いを求める訴えを起こした(参照)。
-
その後、2022年2月に訴訟取り下げの申請が受理されたことで和解が成立。詳しい話し合いの内容は明かされていない。
バイオハザード HDリマスター
【ばいおはざーど えいちでぃー りますたー】
ジャンル
|
サバイバルホラー
|



|
対応機種
|
プレイステーション3 Xbox 360 プレイステーション4 Xbox One Windows 7/8.1 Nintendo Switch
|
発売/開発元
|
カプコン
|
発売日
|
【PS3/360】2014年11月27日 【PS4/One/Win】2015年1月20日 【Switch】2019年5月23日
|
定価 |
パッケージ版 【PS3】 通常版:3,990円 コレクターズパッケージ:4,990円 LIMITED EDITION:11,111円 ダウンロード版 【PS3】3,694円 【PS4】4,290円 【One】3,700円 【Switch】3,362円(税込)
|
廉価版
|
【PS3】2015年9月17日 パッケージ版:2,990円 ダウンロード版:2,769円
|
レーティング
|
CERO:D(17才以上対象)
|
備考
|
PS3版以外はDL専売 |
判定
|
良作
|
概要(HD)
『バイオハザード』のHDリマスター版。初の任天堂ハード以外での発売となった。
PS3/360版以外はダウンロード専用で、PS4版の限定パッケージおよびSwitch版のオリジンズコレクションもダウンロードコードが封入され、ゲーム自体はダウンロードする形になっている。
特徴(HD)
-
グラフィックの高解像度化
-
元々出来が良かったため見た目の違いは少ないが、キャラクターや背景がGC版よりクッキリした映像になっている。
-
また、GC版の特徴であった動画背景はリアルタイムレンダリングによる3Dオブジェクトに変更された。元々性能的にリアルタイムレンダリングができなかったための苦肉の策だったので、本来予定していた形になったとも言える。
-
画面サイズをGC版同様の4:3と、現在のテレビに合わせた16:9から選択出来るようになった
-
16:9表示は旧作アニメのリマスターなどで見られる画面の上下を切った映像になり、移動に合わせて上下がスクロールする。
-
音声もリマスタリングされ、5.1chのサラウンドを採用。
-
移動操作が従来のラジコン操作と、スティックを倒した方向に移動するアレンジ操作から選べるようになった。
-
また、操作タイプを切り替えられるようになっており、基本は近年作と同じシューター操作だが、従来に近い操作への変更もできる。
-
新コスチュームの追加
-
2014年10月1日に行われた「ラクーンシティ感染拡大キャンペーン」が100%を達成したため、『5』のクリスとジルのB.S.A.A.コスチュームが追加された。このコスチュームはゲーム開始直後から選択可能。
-
ちなみにこの新コスチューム、厳密に言えばコスチュームチェンジではなく、『5』の3Dモデリングにそっくりそのまま置き換わっている。使用されたモデリングは『5』のDLC「LOST IN NIGHTMARES」のもの。
-
特典映像「ウェスカーズリポート I&II」を収録
-
GC版のセット商品「コレクターズボックス」に収録されていた冊子「ウェスカーズ・レポートファイル」を元にしている。
-
設定を反映してか彼の日本語ボイスを担当した中田譲治氏によるナレーションで進行する形になっており、氏の淡々としたナレーションでおぞましい内容を語られるため没入感は上々。
-
ちなみにこのレポートはネタバレが多数含まれており、ゲーム開始直後に見るのはお勧めしない。また、海外版では未収録となっている。
-
また、ゲーム中のムービーシーンを閲覧出来るギャラリーも用意されている。
-
RE.NETに対応し、プレイヤーごとのクリアタイムなどを競うネットランキング機能が追加されている。あまり有効に機能しているとは言えないが…。
-
PS3/360版は解像度が720pに対して、PS4/One版は1080pになっている。フレームレートはいずれも30FPSで固定。
Win版は環境に合わせて解像度を自由に変更可能。フレームレートは30FPSと60FPSから選べる。
評価点(HD)
-
より高精細になったグラフィック
-
GC版でも史上最高と言われていたが、高画質化によりさらに美麗になっており好評を博した。
-
ポストエフェクト処理が追加され、光源がより強調され、美しさが増している。キャラクターの服の影などもクッキリ描写されており、比べると鮮明さがだいぶ異なる。
-
ただし、一部背景は違和感を感じるところも。
-
洋館東の物置に置いてある木箱などが分かりやすい。横にあるアイテムボックスと比較すると雲泥の差。
-
アレンジ操作の追加
-
従来はラジコン操作のせいで人を選ぶ部分があったが、アレンジ操作の追加で見事に解消している。
-
ラジコン操作自体は画面切り替え時に操作の混乱が起きないようにという配慮で作られたものだが、今作のアレンジ操作ではスティックを倒し続けていれば画面切り替え後もまっすぐ走ってくれるようになっている。
-
日本語音声の追加
-
従来の英語も選択出来るので、字幕を読むのがわずわしい人等は選択するといいだろう。声優陣もおなじみとなったクリス役の東地宏樹氏とジル役の湯屋敦子氏をはじめ、上記したウェスカー役の中田譲治氏など、洋画の吹き替えで活躍するベテランばかりで安定した演技である。
-
ちなみに一部字幕と音声が異なっているため、ともすれば洋画の字幕上映と吹き替えのように感じられるかもしれない。
問題点(HD)
-
仕様的に仕方のない事だが、プリレンダムービーが低画質。ゲーム中のイベントムービーはリアルタイムなので問題はない。
-
プリレンダ背景も同様に低画質でのっぺりとした印象を受ける。特に中庭地下の遺跡にある、プリレンダ背景として組み込まれている女神像と動かすことのできる女神像を見比べてみるとわかりやすいだろう。
-
良くも悪くもGC/Wii版の忠実なリマスターなので、評価点は当然として問題点もほぼ据え置き。
-
特に、恐らく誰もが望んだであろう「ロード時間を誤魔化すための扉を開ける演出」は、残念ながらカットされなかった。
-
このため、どの機種でもロード時間はほぼ一定。たとえPS4 ProにSSDを積んだとしても、扉の演出に変わりはないしなくならない。
-
同じリマスターである『4』は、ロード時間・フレームレート共に大幅に改善されていたため、遊び比べると悪い意味で差が分かりやすい。
-
ゲーム開始やセーブが長くなった
-
RE.NETとのデータ連携を行う関係で地味に長く、ストレス要素になっている。
-
どうしても気になるのであれば設定からインターネット接続を切にしてしまえばよい。
-
トロフィーの中で条件がおかしいものがある
-
明らかに初代からあった縛りプレイ「ナイフクリア」を想定している「ナイフで十分」のトロフィー獲得で銃器を使うとアウトなのは当然で、ディフェンスアイテム(ダガー&ナイフ含む)もアウトなのはわからなくもない。
-
だが、「はいずりゾンビを振りほどく際の頭部踏みつぶし」や、「ゾンビの死体を灯油で焼却する」もアウトである。
ナイフクリアをやった人のうち、この2つを縛った人はほとんどいないと思うのだが…。
-
そのくせ絶対にナイフ以外はダメというほど厳格でもなく、スーパータイラント戦に関してはロケットランチャーなしだと詰むので特例としても「V-JOLTをプラント42に使用する」や「ネプチューン(大)を通電で感電死させる(必須ではなく避けて進める)」はOKとされるなどの判断基準が分からない。
-
難易度VERY EASYの存在もあり、トロフィー獲得だけであればそこまで難易度が高くないのは救いか。
-
ちなみにいろいろシステムは違うが、同シリーズの『バイオハザード アウトブレイク』でのノーウェポンクリア判定は「(ナイフを含む)武器を自分が攻撃に使用しない」(スプレー系は武器扱いなので回復スプレーの仲間に向けての噴射もNG)であり、釘打ち機(マシンガンのように使える)を本来の用途で通路塞ぎの板を止める行為に使用したり、体術(体当たりやキック)で攻撃する場合はOKであった。
-
最初のゾンビ遭遇時のBGMが変更になっている
-
オリジナル版はドラムによる非常に不安感を煽るBGMだったが、リマスター版は通常探索時と変わらず、臨場感が無くなっている。
総評(HD)
高精細化されたグラフィックや操作の追加などで好評を得た良質なリマスターである。
対応機種も幅広くなったので、手軽に遊べるようになったのも嬉しい点。この機会に名作リメイクを手に取ってみるといいだろう。
最終更新:2024年04月19日 09:02