夕闇通り探検隊
【ゆうやみどおりたんけんたい】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション
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発売・開発元
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スパイク
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発売日
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1999年10月7日
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定価
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5,800円
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判定
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ゲームバランスが不安定
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スルメゲー
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概要
過去にヒューマンから発売された『トワイライトシンドローム』の後継作品。ただしスタッフは一部しか関わっていない。
ナオ・クルミ・サンゴの個性豊かな中学生3人が、陽見市に流れるウワサを検証していくゲームである。
直近の関連作『ムーンライトシンドローム』ではキャラがモーションキャプチャーのポリゴンだったが、本作は『トワイライトシンドローム』同様に実写取り込みのドット絵で描かれている。
ストーリー
高度成長期に伴い、ベッドタウンとして急速に発展した街「陽見(ひるみ)市」にある陽見中学校では、「人面ガラス」の噂が囁かれていた。
ナオは「人面ガラスの噂を確かめる」を口実に、想いを寄せる少女クルミを誘い、強引についてきたサンゴと3人で学校裏の森の中にある「鳥塚」に向かう。
鳥塚の手前から先へ進もうとしない愛犬メロスを水飲み場につなぎ、クルミとサンゴを残して1人で鳥塚に向かうナオ。そして辿り着いた彼の前に人の顔をしたカラスが現れた。
「あと100日で、誰か死ぬ」
人面ガラスの不吉な言葉を聞き、恐怖のあまり失神してしまうナオ。これを機に、陽見市で囁かれる数々の噂の検証が始まった。
メインキャラクター
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ナオ(村瀬直樹)
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本作のメイン主人公。13歳。中流家庭の一人っ子。やや気の弱い男の子だが、そんな自分自身を変えるためにクルミに告白することを考えている。
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霊感体質ではないが、霊的なものをぼんやり信じている。
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クルミ(椎名久留美)
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14歳という年齢に比してあまりにも天真爛漫な女の子。その言動から「宇宙人」とあだ名を付けられ、同級生の女子には馬鹿にされている。
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作中では彼女が知的障害もしくは自閉症を持っていることを示唆する描写があり、それに苦悩する両親の様子も描かれている。
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霊的なものは彼女にはごく当たり前に存在しているものであり、心霊系の噂話の検証には欠かせない。
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サンゴ(平内繭)
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ナオの幼馴染。13歳。さばさばした性格で辛辣な言動も多く、敵視している同級生も少なくない。純文学小説の同人作家でもある。
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恋愛依存症の姉に対する嫌悪感から「女らしさ」を封印すべく本名に抵抗し、「サンゴ」を自称している。ナオに想いを寄せるが、それを頑なに否定して表に出そうとしない。
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霊的なものは一切信じていない。その一方で都市伝説的な噂や心霊現象の原因と思われる事件の捜査には活躍する。
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メロス
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元は捨て犬だったがサンゴが拾い、ナオの家で育てられた雑種犬のオス。しつけはまずまず。
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3人組の共通の友であり、メロスの散歩をするというのが3人で出かける口実になった。
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霊的なものを感じ取れるのか、おびえて足を止めてしまうことがある。ある意味では心霊探知機の役割。
システム
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基本的な流れは「噂の入手」→「現場での検証や聞き込み捜査」→「解決」という形である。
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「学校シーン」「散歩シーン」「プライベートシーン」「霊障シーン」の4つに分かれる。
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「学校シーン」「散歩シーン」は3人の中でどのキャラを操作するか選択する。特定のキャラでないと入手・検証できない噂がある。
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学校シーンはリアルタイムで経過する休み時間の5分間の間に、同級生達から噂話を入手する。
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時には一定時間張り込んだり、一定期間話し込むことで親しくならないと得られない噂もある。
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散歩シーンは街中を探索し、噂の検証を行う。こちらも時間経過があり、夜遅くになると強制的に終了になる。
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検証に進展があったときなどには「相談」を行うことで次の目標が示されたり、シナリオ進行のフラグが立つ。
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プライベートシーンは、散歩シーンで選択したキャラの帰宅後から就寝までの様子を見ることになる。
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パノラマモード
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イベントで時折移行する、360度の風景を見渡せるモード。視界の外に隠れる対象に目を合わせて調べることで、次のイベントを起こすといったシステムもある。
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心霊現象に直面しているときにもこのモードに移行することがあり、「後ろに何かいるのではないか?」といった形のない恐怖を演出している。
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霊障値
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隠しパラメータで、3人にかかっている呪いの進行度とでも言うべき値。1日経過すると+1され、100になるとゲームオーバーになる。
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特定のイベントで少し低下させることができるが、罰当たりな行動や霊の領域に踏み込んだりすると増えたりもする。
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上で述べた「霊障シーン」は、この霊障値が10の倍数ごとに就寝時を中心として発生する。
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内容は霊がからんだ怪奇現象。クルミを除いて、呪いが進むごとに深刻なものになったり時には物語の核心を突く内容に変化していくので攻略の上でのヒントになる。
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またナオの場合は、誤った選択肢を選ぶとさらに霊障値が上がってしまう。
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マルチエンディング
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霊障によるゲームオーバーを除けば、噂の解決度合に応じてエンディングが3つ用意されている。
評価点
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リアルに作られた陽見市
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ゲームの舞台となる陽見市は実在する町をモチーフに2Dグラフィックで描かれている。
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商店街・団地・学園通り・線路沿い・歩道橋と言った何処かで見た様な風景は、非常にリアリティがある。
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時折なるパノラマモードでは、実際の写真をもとにしたグラフィックが用意されている。
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キャラクター
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主人公である3人をはじめ、学校の生徒たちは実在する中学生の様なリアリティがある。
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味のあるセリフが多くライターのセンスを窺える。
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猫背気味のナオ、足を元気よく振り上げて歩くクルミ、サンゴの尊大なポーズなど、キャラの個々のモーションにも個性が見え隠れしている。
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44のウワサ
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量的には充分なシナリオ数が用意されているので、前作の欠点であったボリュームの少なさは改善されている。
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下らないオチが付く話からオカルト満載な幽霊もの、人間の内面の恐怖を描いたシナリオなど、種類も豊富である。
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世界観
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なにげない日常の風景とその裏に潜む不思議、中学生たちの青春のひとコマ、街の開発と発展の裏でひっそりと消え行くもの…
単なるホラーだけではなく、切なさや懐かしさも兼ね備えた世界観に魅了されたプレイヤーは多い。
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エンディング
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トゥルーエンディングはハッピーエンドとは言えず切ない結末だが、本作の世界観に相応しいとして評価が高い。
問題点
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個々のウワサのボリューム
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数は増えたが、個別に評価するとなると少々物足りないものが多いといえる。
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44のウワサが合わさって1つの物語とも考えられる作りなので、一概に短所とは言えないかもしれない。
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ガチガチのフラグと高難易度
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人面ガラスの呪い管理や噂の収集から解決まで時間制限がある中、順番にフラグを立てる必要があるため、陽見市というオープンフィールドを用意したにも拘らず縛りの強いプレイが要求される。
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上記のフラグ立てもあって、いわゆるトゥルーエンドに到達するには攻略情報がほぼ必須となる。
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よくわからないナオのゲームオーバー
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明らかにバッドエンドとわかるクルミとサンゴのそれに比べると、結局何がどうなってしまったのかわかりにくい。
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ネタバレ注意
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「心中事件の噂」
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音の大きさだけを頼りに草むらから携帯電話を探すことになるのだが、見つけられる判定が異様に狭い。1歩ずつ、しらみつぶしにやっても時には上手く見つけられないぐらいの代物。
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「ネコニエの噂」
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事件の張本人から真相を聞き出すことと噂の解決が二者択一になっている。真相を聞き出してしまうと、噂は解決できずに迷宮入りになってしまう。
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「殺人ピエロの噂」
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シナリオ進行上のフラグ管理にバグがあり、特定のタイミングで相談コマンドを実行しないと、シナリオが進まなくなり解決不可能になる。
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人面ガラス関連の噂であるため、メインストーリーの理解に支障をきたすのも厄介なところ。
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「新王子線の呪いの噂」
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パノラマモードでガード下の天井の特定の箇所を調べることになるが、心中事件の噂同様に判定がシビア。目印になる染みがあるのだが、ガード下自体が暗いため分かりにくいという問題もある。
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総評
難易度の高さやクセのあるゲームシステムからいって万人向けとは言えないが、完成された世界観や雰囲気づくりに徹した姿勢から隠れた名作ともいえるだろう。
余談
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ゲームショップやオークションではプレミア化しており、定価より高い価格で売られている場合が多い。
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攻略本が必須でありながら、攻略本すらプレミア化してしまっている有様である。
最終更新:2024年07月20日 15:00