銀河英雄伝説IV
【ぎんがえいゆうでんせつふぉー】
| ジャンル | ウォー・シミュレーションゲーム |  
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| 対応機種 | PC-9801 VX/UX以降 | 
| 発売・開発元 | ボーステック | 
| 発売日 | 1994年12月9日 | 
| 定価 | 12,800円 | 
| 判定 | 良作 | 
| 銀河英雄伝説シリーズ FC / PC(1989) / II / SFC / III / IV / SS / V / PS / ちびキャラ / VI / VS / VII / PC(2008)
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概要
田中芳樹の人気SF小説『銀河英雄伝説』をシミュレーションゲーム化したシリーズの第4作目である。このシリーズはボーステックより全7作が発売されているが、このIVが一般的にもっとも高く評価されている。
プレイヤーは原作通り広大な宇宙を舞台に、銀河帝国軍、自由惑星同盟軍のどちらかの陣営を選び、最終的な勝利を目指して艦隊戦を指揮する事になる。
特徴
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システムは基本的にターン制の陣取り型戦略シミュレーションで、前作である『III』を踏襲しているが、最大の特徴としてプレイヤーは両陣営の指導者ではなく、一人一人の提督を選んでゲームを進める事になる。シナリオ開始時に少将以上の地位に付いている人間であれば、ほぼ全員選択可能になっている。
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軍の運営について最終的な決定権は各長官にあり、プレイヤーはその身分につかない限り、自分の権限外の事については提案する事しか出来ない。また原作での人間関係や派閥も再現されており、それによって提案の受け入れられやすさも異なってくる。
 
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ターンは戦略パートと戦術パートに分かれており1ターンで3日が経過する。戦略パートで帝国であれば統帥本部総長、同盟であれば統合作戦本部長が決定した侵攻・防衛作戦に基づいて、宇宙艦隊司令長官が目標の星系に派遣する艦隊を決め、敵と接触すると戦術パートに突入する事になる。
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艦隊は提督と数人の幕僚で構成され、艦隊の能力には各能力で最も高い能力を持つ士官の物が反映される。ただし幕僚がどれほど能力を発揮できるかは提督の「統率」に依存するため、「統率」の低い提督が指揮する艦隊には、どれだけ優秀な士官を幕僚として任命しても、効果は薄い。
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ゲームのクリア条件は敵首都星系の占領、あるいは敵最高司令官の戦死である。逆に相手がこの条件を満たすか、プレイヤーが操作する提督が戦死すると、ゲームオーバーになる。
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また、810年に達する、プレイヤーの指揮する艦隊が一定回数以上全滅する、クーデターで敗北後復帰を許されない、などのイベントにより、退役エンドを迎える事もある。
 
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あくまで最終的な目標が「所属する陣営の勝利」であるため、原作における自由惑星同盟滅亡後のシナリオは導入されていない。
評価点
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個々の提督を選べる事による、プレイの幅の広さ。
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前述の通り、プレイヤーはあくまで一人の提督としての権限しか持たないため、必ずしも勝利への最短の戦略を常に選ぶ事が出来るとは限らない。身分、戦況、人間関係などに応じて、時には味方のミスをフォローし、時には無能な友軍を蹴落として、様々な回り道をしながら自分の所属する勢力を勝利へと導かなくてはならない。そのため、ただの陣取りシミュレーションとは一線を画した、複雑なプレイが求められる。
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また、この要素は自分が選んだ提督への感情移入のしやすさにもつながっている。原作ファンであれば、帝国の中で着々と地位を固めていくラインハルトや、上層部の戦略的失策を戦術レベルの活躍で補うヤンなどになり切ってプレイする事が出来るだろう。もちろん、あえて原作では早くに戦死した提督や大敗北の原因となった無能な提督を選び、歴史の「if」を目指すプレイスタイルもある。
 
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各士官の個性の表現
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各士官にはそれぞれ統率、運営、機動など計11にも及ぶ能力値が設定されており、ただの強弱ではなく、例えば万能のラインハルトや、防御に長けたミュラー、事務作業の達人であるキャゼルヌ、エースパイロットであるポプラン、石器時代の勇者であるオフレッサーなど、原作イメージ通りの活躍をさせる事が出来る。
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さらに士官ごとに会話内容が違う・マスクデータによって受け入れられやすい提案が違うなど、非常に個性豊かなキャラ付けがされている。
 
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戦術性・戦略性の高さ。
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艦隊には視界や補給の概念があるため、これらを有効活用して上手く立ち回れば、時に圧倒的に優勢な敵を相手に大勝利を収める事も出来る。ただの物量だけでは決まらない原作の戦いを再現したゲーム性と言えるだろう。
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特に同盟軍での終盤シナリオでは、原作のヤン艦隊さながらのゲリラ的な立ち回りを否応なしに再現してラインハルトに立ち向かう事になる。
 
 
問題点
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グラフィックが今一つ。
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時代を考えれば多くを求めるのは酷だが、何故か前作である『III』より一部グラフィックが退化している。
 
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提督以外の身分でプレイできない。
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原作では陸戦隊の指揮官であったシェーンコップや、参謀であったオーベルシュタインなどを選んでも艦隊指揮官としてプレイする事になる。
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一応自分から提案する事で幕僚の身分になる事は出来るが、その状態では戦術パートに参加する事が出来ず、戦闘がスキップされてしまう。「ここまでやったのであれば、幕僚身分でのプレイもやりたかった」という声も。
 
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NPCの思考が拙い。
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ある意味では原作通りなのだが、敵も味方もNPCは平気で戦力の逐次投入・分散の愚を犯してくれるため、プレイヤーは常時、それをフォローするため奔走する事になる。正直、敵と戦うよりも味方のミスを抑える事に徹した方が、勝利への道は近い。
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内政面でも勝手に税率を高くして国力関係の数値を減少させ、自ら衰退させていくのでお話にならない。正直プレイヤーが税率などに干渉できる立場でないと「惑星を奪う」以外で国力を高める方法はまずないと言ってもよい。
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まあ、見方を変えればそれもまた銀河英雄伝説らしさと言えるが…。
 
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イゼルローン要塞の存在。
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これも原作通りなのだが、初期状態で同盟と帝国を分けるイゼルローン要塞が非常に強力で、まともな手段ではほぼ陥落させる事は出来ない。NPCはこの要塞にも平気で突っ込んで来るため、この要塞を奪取した側が圧倒的に有利な立場に付く事が出来る。そのため、どちらの勢力で始めても、全体的な戦略は単調になりやすい。
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特殊な占領方法「占拠」によって、ほぼノーリスクで奪取できるのだが、使用条件が厳しい上に使える士官が限られているため彼らが戦死してしまうと悲惨。帝国ならガイエスブルグ要塞移動によるイゼルローン攻略イベントはある。
 
 
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士官の戦死判定がランダム。
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所属する艦隊が壊滅したり、要塞砲によって大打撃を受けたりすると士官の戦死判定が行われるのだが、これが完全にランダムであるため、プレイヤーが関与する余地の無い場面で、両軍の士官がかなりの頻度で戦死する。
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序盤にラインハルトやヤンと言った重要人物が戦死したり、ゲーム終盤には敵軍の有名な提督がほぼ全滅していたりするのを見るのは、かなり寂しい。
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また、『敵の最高司令官が前線に中途半端な戦力で出てくる』ことが珍しくないため、「長い時間をかけて大戦力を整えたぞ!さあこれから反撃だ!」と思っていた矢先に敵の最高司令官を含めた艦隊を倒してしまいそのままゲームエンド、ということも結構ある。一応勝利ではあるものの、ちょっと拍子抜けしてしまう。
 
総評
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単に戦略シミュレーションゲームとして見た場合、及第点の出来に留まる作品であるが、原作ファン向けのキャラゲーとして見た場合、当時の基準で至高の域に達した作品であると言えるだろう。
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銀河英雄伝説は他にもFC、SFC、PS、SSなどでもゲーム化されているが、それらを含めた中でも最も高い評価を得ている作品である。
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個々の提督になり切ってプレイできると言う本作ならではの魅力は他の作品では得る事が出来ず、そのため本作のリメイク、あるいは本作のシステムを踏襲した新作の発表を望む声も多い。
拡張・移植
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本作のシナリオ・システムなどを拡張するキット・プログラムであるEXkitも発売された。
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これにより、両陣営内で討伐軍と叛乱軍が分かれる内戦や、クーデター後の亡命などをゲーム内で実現出来るようになり、さらにプレイの自由度が高まった。
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1994年にはこのEXkitを最初からセットにした『銀河英雄伝説 IV EXset』も発売された。
 
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1997年にはWindows移植版である『銀河英雄伝説 IV EX』が発売された。
その他
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ヘルプファイルに名将禄が付属しており、ゲーム中に登場するほぼ全ての登場人物の、原作での設定やエピソードを参照する事が出来る…が、誤字が多い。
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版権トラブルにより、現在、ボーステックの銀河英雄伝説ゲームシリーズは販売不可能になっていた。
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そのため特に人気の高い本作はAmazonなどでも価格が高騰している。
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しかし2026年にProjectEGGよりボーステックの銀河英雄伝説ゲームシリーズのI~Vまでを収録したパッケージソフト『銀河英雄伝説Ultimate Collection』が発売予定。人気の高い本作を遊びたいファンには朗報である。
 
最終更新:2025年07月21日 20:06