本項目ではプレイステーション2ソフト『マナケミア ~学園の錬金術士たち~』(良作判定)と『同・PORTABLE+』(劣化ゲー判定)を紹介しています。
マナケミア ~学園の錬金術士たち~
【まなけみあがくえんのれんきんじゅつしたち】
ジャンル
|
錬金術RPG
|

|
対応機種
|
プレイステーション2
|
メディア
|
DVD-ROM 1枚
|
発売・開発元
|
ガスト
|
発売日
|
2007年6月21日
|
定価
|
7,140円(税込)
|
レーティング
|
CERO:A(全年齢対象)
|
廉価版
|
ガストベストプライス 2008年4月24日/3,990円
|
判定
|
良作
|
アトリエシリーズリンク
|
ストーリー
静かな森の奥の一軒家に、ひとりの少年と黒猫の形をしたマナが住んでいました。
少年に身よりはなく、黒猫のマナが唯一の友人であり、家族ともいえる存在でした。
二人はお互いに身を寄せ合い、静かな毎日を送っていました。
しかし、そんな静かな生活も、突然、森の外からの訪問者によって終わりを告げました。
「やれやれ、やっと見つけた…ちょっと、いいかな?」
少年の元を訪れた男は、アルレビス学院という錬金術を教える学園で教師をやっていると名乗りました。
それが少年とアルレビス学園の仲間たち、
そして
錬金術との出会いになるのでした。
(公式サイトより抜粋)
概要
タイトルにアトリエこそ冠していないが『アトリエ』シリーズ9作目である。
『イリス』シリーズと同じRPG路線であるが、学園を舞台としている。
特徴・評価点
-
戦闘システム
-
本作で最も評価されている部分であり、基本的な部分はイリスシリーズのシステムを受け継ぎつつも本作独自の要素を取り入れる事により、アトリエシリーズのみならずコマンドRPG全体の中でもかなり評価が高い。
-
基本的なシステムはイリスシリーズなどと同じで素早さの早いものからターンが回ってきて、ターンが回ってきたものが行動するというシステムである。
-
また、本作は前衛メンバー3名と控えメンバー3名の計6名のパーティで戦闘する事になる。
-
控えメンバーは敵の攻撃を受けない、時間毎にMPが回復するなどの利点があるが、行動する事が出来ない。
-
前衛メンバーと控えメンバーは戦闘中にいつでも自由に入れ替えることが出来るが、一度控えに回ったメンバーは一定時間が経過しないと前衛に戻ることが出来ない。
-
と、ここまでは今となっては良くあるシステムである。だがここに本作独自のシステム「サポート攻撃」と「サポート防御」を加える事により本作の戦闘を特徴付けると共に戦略性の高いものにしている。
-
簡単に説明すると、それらは敵あるいは味方の攻撃中に前衛メンバーと控えメンバーを瞬時に交代して追加攻撃又は防御をさせるシステムである。
-
サポート攻撃
-
前衛メンバーの攻撃中に○ボタンを押す事により、そのキャラクターと指定した控えメンバー1名を入れ替えて、そのキャラクターで追加攻撃をする事が出来る。またサポート攻撃中に更に○ボタンを押す事により、さらに続けてサポート攻撃を行う事も出来る。これを控えメンバー全員分まで続ければ一度に4回攻撃できる。
-
このシステムをうまく使う事により、ダメージを与える以外にもHPの少ないキャラを手早く控えに戻したり、MPを効率的に回復したり、使い道は多い。
-
サポート防御
-
敵の攻撃時に1秒程タイムラグがあり、その時に○ボタンを押す事により、攻撃を受けるキャラクターと控えメンバー1名を入れ替えて代わりに攻撃を受ける。またその場合攻撃のダメージが半減されHPが0になるダメージを受ける場合HPが1残る。
-
そう聞くとテンポが悪く感じるかもしれないが、タイムラグ中に×ボタンを押す事によりタイムラグをカットできるため、テンポを損なう事も無い。
-
この「サポート防御」こそ本作の戦闘で最もプレイヤーの力量を問われる部分である。自分の攻撃に対して実行する「サポート攻撃」と違って、相手の攻撃に対して実行する「サポート防御」は直感的な判断力を問われるためである。
-
終盤のボスの攻撃は激しいが、この「サポート防御」を使いこなす事により味方の被害を大幅に軽減させる事が出来るため、勝利した時の達成感も大きい。
-
なお、この「サポート攻撃」と「サポート防御」の関係上、本作では全体攻撃であっても攻撃対象を指定する事になる。
-
ゲームバランス
-
パーティメンバー8人全員が何らかの飛びぬけた長所を持っており、明らかに弱いキャラクターが存在しない。
-
相手のHPと弱点を解析する「アナライズ」や手数を増やす「シェイドシフト」「オーバーレルム」など使い勝手のいいスキルを多数持つヴェイン、タイムカード(時間差での追加攻撃)を消滅させるスキルを使えるロクシスはやや優遇されており、この2人はスタメンに固定がちであるものの、残り4枠は誰をパーティに入れても問題の無いバランスになっている。
-
チュートリアル
-
上記の戦闘についての説明を見ると複雑なシステムに感じるかもしれないが、チュートリアルが充実しているため、初心者でも遊び方を覚えやすい。
-
また、学園を舞台にしたシナリオ上、チュートリアルが上手くストーリーに溶け込んでいるため、ダレることなく遊び方を覚えることが出来る。
-
グロウブック
-
本作の成長システムであり、本作では戦闘に勝利すると経験値の代わりにAPが手に入り、そのAPを使ってグロウブックで能力値をアップさせたり、スキルを習得したりする事が出来る。
-
グロウブックでキャラクターを成長させるためにはアイテムを調合して調合済みのアイテムを増やす必要があり、そのためアイテムを調合する意欲がより駆り立てられる。
-
ストーリー
-
本作のストーリーは、早くに父親を亡くし、生まれながらに類まれなる錬金術の素質を持っているものの、錬金術の知識が普及していない地方に住んでいるため、まわりから疎まれて育った少年ヴェインが、噂を聞きつけた錬金術の学校アルレビス学園の教師ゼップルにスカウトされた所から始まる。
-
その生い立ちゆえに人付き合いが苦手なヴェインが、学園で出会った仲間達たちと接するうちに次第に打ち解けてゆく描写は好評である。
-
終盤に主人公ヴェインに関する、ある秘密が明かされてからストーリーは鬱な方向に向かっていく。しかし、その分ラスボス戦の展開は感動できるものとなっている。
-
ただし、とある条件を満たしていなかった場合はバッドエンドとなり、凄まじく鬱な気分にさせられるEDに突入してしまう。ただしこちらのエンディングも他アトリエシリーズでは見られないと好評。
-
また、本作には本筋のストーリー以外に、主人公以外の各パーティメンバーに焦点をあてた「キャラクタークエスト」を任意で進める事ができ、パーティキャラクターについて、より掘り下げられている。
-
キャラクター
-
キャラクターはメインサブ問わず濃いキャラクター付けとなっており、一部のキャラはある程度賛否は分かれるものの全体を見れば好評。
-
ヴェイン、グンナル、ロクシス、アンナといったキャラクターはアトリエシリーズの中でも非常に高い人気を持つ。
-
メインキャラクター達は終盤では(ムーペを例外として)非常に仲が良くなり、シナリオと相まってキャラクター間の絆の強さが分かる内容となっている。
-
サブキャラクターは基本的に全員人間臭い性格をしており、教頭先生やトニとレーネ、イゾルデなどは人気が高い。
-
学園を舞台とするストーリーというのも、キャラ同士の絆の強さを感じさせる要因の一つとなっている。
-
音楽
-
シリーズのお約束どおり、本作も良曲が多い。特に、終盤のある重要人物との戦闘曲である「Nefertiti」はシリーズでも屈指の戦闘曲と呼び声が高い。
-
グラフィック
-
描画には2DCGのドット絵に遠近法を取り入れて3DCGのように見せる手法が用いられている。
-
ドット絵は非常に作り込まれており、特に戦闘中のドットは非常に綺麗で、戦闘の演出を強化している。
問題点
-
評価の高い戦闘ではあるが、システムが少しずつ開放されるため、最初の内は出来る事が少ない。
-
特に、本作の最大の魅力であるサポート攻撃、サポート防御ができるようになるのはストーリー全体の四分の一程進んだ辺りである。
-
学園とその周囲を舞台にしたシナリオであるため、イリスシリーズと比べて世界観が狭く感じられる。
-
アイテムの調合をする場所と、装備品の調合をする場所が離れている。
-
一応、隣にあるのだが調合したアイテムを使って装備品を調合するなど何度も行ききする必要がある場合もあるため、さすがに面倒である。
-
本作ではダンジョンを歩いていると時間が経過するのだが、夜に出現する敵は昼の敵と比べてかなり強く且つ逃げにくいため、かなり危険である。
-
釣りは他のアイテム採取と違って一度の探索で何度でも採取出来るため、釣り場があるダンジョンでは、夜は夜釣りをして過ごすのが定石である。
-
パーティメンバーの1人ムーペがメインストーリーにほとんど絡まないため空気。
-
さらに、空気なだけでなくオープニングアニメに映っていないなど、冷遇ぶりが目立つ。
-
キャラクターとしても「かわいらしい外見で無害を装いながらも悪だくみをする腹黒キャラ」である為、人によっては嫌悪感を覚えるケースも。
-
フィロのスキル「おかしなマイバッグ」で相手を倒すとドロップアイテムのかわりにお菓子が手に入るのだが、これでレシピを持っているボスを倒すと、そこでしか手に入らないレシピが二度と手に入らなくなってしまうためアイテムのコンプリートが不可能になるバグがある。
-
エンディングで主人公が黒幕である人物に対して謝罪する。
-
確かに黒幕である人物が主人公を憎むに至った理由はあるのだが、その理由に関して主人公に非は無く、逆恨みに近い。主人公がその人物に対して怒りをぶつける事が無いのは主人公の性格上仕方が無いにしても、主人公が受けた仕打ちを考えれば謝罪する理由などあるはずも無いため、すっきりしない場面として良く挙がる場面になっている。
-
その人物も、さすがに主人公が謝罪するのは不可解であったらしく、驚いた顔をしていた。
総評
細かい粗は多いものの、シナリオ、音楽、何より「ガストが作ったと思えない」とまで評される戦闘システムなどが評価され、
RPG重視路線のアトリエシリーズの中では特に人気の高い作品である。
戦闘以外における難易度はシリーズでもかなり低い部類に入るため、シリーズ入門にもオススメ出来る。
全体的に非常に高い完成度を誇り、本作をアトリエシリーズの最高傑作とする声も多い為、
本作は現在の『アトリエ』シリーズにおいて何かと比較されやすい存在となっている。
まさに高い完成度故の功罪とも言えるだろう。
以前のシリーズのシステムを続投させないとされているガスト側も、
戦闘システムを本作に寄せて来ているなど、今なおアトリエシリーズに強い影響を残している。
マナケミア ~学園の錬金術士たち~ PORTABLE+
【まなけみあ がくえんのれんきんじゅつしたち ぽーたぶるぷらす】
ジャンル
|
RPG
|

|
対応機種
|
プレイステーション・ポータブル
|
発売元
|
ガスト
|
開発元
|
アイディアファクトリー
|
発売日
|
2008年9月25日
|
定価
|
5,040円
|
判定
|
劣化ゲー
|
ポイント
|
ロード&フリーズ地獄 文字小さすぎ キャラの絵がボケすぎ
|
概要(PORTABLE+)
上記ソフトのPSP移植版。
移植にあたり、開発元がクソゲーメーカーとして有名なアイディアファクトリーに変わっている。
追加された内容には、主人公のパートナー「サルファ」に声が当てられた他、一部アクセサリーの効果が変更されているなどの変更点がある。
問題点(PORTABLE+)
-
ローディング&フリーズが多発する。メディアインストールしてもロード時間はさほど変わらない。
-
PS2版もロードする箇所が多いゲームではあるが、その長さはだいたい2~3秒。本作はメディアインストールを行ったうえでロード時間が最低でも5~6秒となっている。またロードする箇所が戦闘やマップ移動と多いためPS2版と比べテンポが落ちてしまった。
-
さらにロードかと思ったらフリーズするような事態もある。
-
本作はUMD版しか発売されていない為、DL版でロード時間改善も望めない。
-
戦闘のキャラの動きがとにかくカクカクであらゆる面で動きが全体的に重たい。いわゆる処理落ちが発生する。
-
会話シーンは画面全体のバランスがおかしい。
-
テキストは、異様に文字が小さすぎて読みづらい。目を凝らさないと読めないレベルなので目に悪すぎる。
-
さらに、キャラの立ち絵も、無理矢理圧縮した感が否めず、ピンボケ写真の方がマシに写ってると評するプレイヤーもいる。
評価点(PORTABLE+)
-
前述どおり、主人公のパートナー「サルファ」に声が当てられたこと。
総評(PORTABLE+)
追加要素を楽しみたいという人はこちらをプレイするのもいいかもしれないが、快適にプレイしたいならPS2版を買うべきであろう。
ストーリー面、アトリエの仕様などの移植は完璧なのだが、如何せんロード周りなどのシステムが極悪すぎて総合的に大きなマイナス評価となってしまった。
余談
-
昔からガストの移植作(常に外注)は程度の差はあれ、伝統的に劣化がデフォと言われる。筆頭はウィルス混入事件で名高いDC版マリエリ。IFだからというだけの一元的な話ではなく、ガストの体質の問題であるという指摘もある。
-
比較的評判の良い移植であるPSP版『ヴィオラートのアトリエ』(移植担当はmutan)ですら、追加要素に関する致命的なバグ、オリジナルのバランスに影響を与える細かいバグや表示バグ追加が存在する。
-
続編として本作の十数年後を舞台とした『マナケミア2 ~おちた学園と錬金術士たち~』が発売された。
-
こちらはゲームアーカイブスでも配信されている一方で本作(『1』)の配信は無く、PSP版のDL版も存在しない。評価が高いにも拘わらず配信が一切行われていないので、プレイしたければ実機でするしか無いのが実情である。
最終更新:2024年12月05日 09:55