当ページでは『大航海時代II』と、それをベースにした『大航海時代外伝』を紹介しています。(判定は共に良作)



大航海時代II

【だいこうかいじだいつー】

ジャンル ロールプレイングゲーム
裏を見る
対応機種 PC-9801
発売・開発元 光栄
発売日 1993年2月10日
判定 良作
ポイント 目的別に主人公を選べる
冒険要素が増加
システムが大幅に改善
大航海時代シリーズ

概要(II)

『大航海時代』シリーズ2作目。
今作では主人公を6人の中から選ぶ形式になり、それぞれの主人公のシナリオが名声を上げることで話が進んでいく。

ストーリー・キャラクター(II)

+ 主人公6人
  • ジョアン・フェレロ
    • ポルトガル王国宰相レオン・フェレロと、元ポルトガル王女クリスの嫡子。18歳。ジョアンは勉学にいそしみつつも、リスボンから出ることを許されぬ日々を送っていた。しかしある日ジョアンは父レオンから、伝説のキリスト教国「プレステ・ジョアン」の探索を命じられる。しかも発見するまで我が家に帰ることすら認められない。父の片腕であった老航海士ロッコとジパングへの布教を望む修道士エンリコも仲間に加わり、ジョアンの冒険の旅が始まる。
    • もっとも主人公的な性格*1。ジョアンのストーリーは本作のシナリオの中核を成しており、登場するキャラも多め。
      • コーエー側としては初心者用シナリオとして設定した節があるが、実際は初期状況の悪さ*2と頻発するイベント戦*3等で最も難易度が高いシナリオである*4
    • レオン・フェレロとロッコ・アレムケル、マルコは前作に引き続いての登場である。
    • ちなみに彼が今作の年齢設定に合わせようとすると、前作を2年以内にクリアしないといけない*5。どれだけ凄腕だよ…パパ
  • カタリーナ・エランツォ
    • イスパニア海軍士官。18歳。ある日彼女に告げられた凶報、それは同じく海軍に所属する兄ミカエルと恋人エルナンが戦死したというものだった。噂ではその黒幕はポルトガルのフェレロ公爵家であるという。カタリーナは敵討ちを願い出るが、戦争勃発を危惧する上官はこれを却下。諦め切れないカタリーナはついに故国を裏切り軍艦を奪ってイスパニアを出奔、海賊となり自らの手で敵を追う。復讐に燃える彼女の行く手に待つものは。
    • ジョアンとは様々な場面で関わり、出番も多い。
    • その哀愁漂うキャラとシナリオから、今でも人気は高い。
  • オットー・スピノーラ
    • 大英帝国騎士団所属。25歳。新大陸の富を背景に欧州を席巻するイスパニアに対抗すべく、英国王ヘンリー8世は強力な海軍の編成を企図。来る日に備え、オットーに大海原に出て研鑽を積めとの命を与える。しかしオットーを妬む監督官ギルバートの妨害*6により、実際に与えられたのはわずかな金貨とボロ舟一隻。果たしてオットーは王の勅命を果たせるのか。
    • カタリーナと同じ海賊系だが、こちらはあくまで私掠船であり国籍も持っているため威風堂々とした雰囲気。
      • カタリーナと比べ必須イベントが少なく、難易度も低い。とはいえ、海戦メインのためゲームオーバーに直結しやすく、最初から爵位があって海賊に襲われやすいなど、初心者にはちょっと難しい。
    • オットーは25歳の設定だが、そのグラフィックは白髪に髭を蓄えたナイスミドルというミスマッチさであり、よくネタにされる。ちなみに腹心のマシューが27歳。
  • エルネスト・ロペス
    • オランダ出身の地理学者。23歳。アムステルダムの大学で地理学を教えるエルネスト。しかし内心では窮屈な日々に退屈し、波乱の冒険を望んでいた。そんなある時、親友の地理学者メルカトールから願い事を頼まれる。それは「資金は出すので、船の苦手な自分に代わって世界を航海して周り世界地図を作成して欲しい」と言うものだった。望外の頼みに大喜びのエルネストは、念願の航海に出る。世界地図完成という偉業を目指して……。
    • 冒険者系のキャラであり、海賊系のキャラとは打って変わってのびやかな雰囲気。ピエトロのシナリオで1回だけ登場するのを除いては他の主人公と唯一関わりがない。
    • ストーリーが進むとパウラという孤児の女の子が同乗。後半は彼女の故郷探しがメインになる。
      • 「ミステリアスな異民族の少女(14歳)とともに船旅をする」という、好きな人にはたまらない夢のようなシナリオが体験できる。登場時14歳なので、わざと登場を遅らせてパウラ14歳クリアを目指す人もいるとかいないとか。
      • ついでにエルネストやパウラのやり取りに突っ込みを入れるスタッテン(副官)もいい味を出している。エルネストのお人よしさにあきれている様に見えて実は彼もお人よしだったりする。
    • イベントは上記の内容が全て、必要な物は開始時に殆ど手に入っている上、自身の航海術・航海レベルが主人公中最も高い*7ため船足が出やすいのでプレイしやすく、総合的には最も初心者向けのシナリオ。
  • ピエトロ・コンティー
    • イタリア出身の冒険家。33歳。貿易商だった父が残した負債のため、ピエトロは借金の返済に追われる毎日を送っていた。しかし友人カミーロの伝手で、借金をフェレロ公爵夫人が肩代わりしてくれる運びになる。思いもかけぬ幸運にピエトロは意気揚々とジェノヴァを旅立つ。
    • エルネストと同じく冒険者系のキャラでありお気楽な雰囲気のキャラ。ただしこちらはジョアンのストーリーにある程度関わってくる。
    • エルネストに比べて初期状態が厳しく、資金が安定するまでが大変。それでも戦闘の必要がない分ジョアンよりは楽。宝探しイベントが2回あり、波乱に満ちた冒険を楽しめる。
    • また後述の「大航海時代外伝」ではキーパーソンも務める。なぜかピエトロにとって友人兼恩人であるはずのカミーロは登場すらしないが…
  • アル・ヴェザス
    • オスマン帝国出身。19歳。いつか億万長者になるという大望を抱いていたアル。ある日友人サリムの父が亡くなり、乗っていた船がイスタンブールに流れ着く。しかもサリムはアルの金をあてにして勝手に船を修理してしまう。造船所から高額な修理費をふっかけられてしまうが、逆にアルは船を使った交易で稼ぐことを思いつく。持ち前の弁舌で元手をかき集め、アルはいざ大海原へと乗り出す。目指すは億万長者。だがアルにはもうひとつ目的があった。それは幼い頃に生き別れた妹、サファの行方を探すことであった……。
    • 交易商人系。唯一交易名声で物語が進行するキャラ。
      • コーエー側は最も難易度の高いシナリオとして設定しているが、ジョアンのように戦闘は絡んでこない*8。交易のコツをつかめば意外と簡単にクリアできる。

特徴・評価点(II)

  • 主人公の数が増えるに伴い名声が「交易名声」「海賊名声」「冒険名声」*9の3つに分割され、各々が自分の職業に専念出来るようになった。もちろん、職業外の名声を上げてもよい。
  • 船の種類の追加
    • 帆走船と橈漕船(とうそうせん)の二種類に分類され特徴が際立つようになった。
      • 風の影響を受けるが嵐に強い帆走船、風の影響を受けずに安定した速度を出せて船員を多く乗せられるが嵐に弱く燃費も悪い橈漕船とそれぞれ特徴を持つ。
    • 前作では大型船が非常に有利で、小型船でのクリアはほぼ不可能だったが、今作では海戦が必ずしも必要ではない事と、各船舶ごとの特徴があるために小型船にも使用価値が増えた。
  • 世界地図の正確さが増し、港の数がさらに増えた。副次効果として世界の地形や都市名を学習できるという点も。
    • 港には「商業値」と「工業値」が設定されている。それぞれ交易所と造船所に投資することで、これらの数値を上昇させることが出来る。
    • 商業値を上昇させると、交易品が増えることがある。寂れた港が一気に優れた貿易港になることも。投資によって特産品を生み出すようになる港も多い。
    • 工業値を上昇させると造船所の品揃えがよくなり、より上質の船を建造できるようになる。一部の港にはこの方法でしか建造可能にならない隠しユニット的な船も存在する。
    • 港にはどの国に対して友好的かを示す支持率が設定されており、投資はこの数値を上昇させる意味合いも含んでいる。支持率が75%以上になった都市は同盟港になる。同盟港の利点は自国の強化・値引きに爵位が影響する。同盟港にすると交易税がかかるようになるため、中立港のままの方がいいという説があるが、これは真っ赤な嘘で、中立港でもキッチリ交易税は取られるので、デメリットはない。
      • 港の支持率を上げるために必要な投資額が商業値・工業値に比例するようになった*10。商業値・工業値が低い港は少ない金額で同盟港にできるが、得られる名声も低い。
  • 国家数も前作の3ヶ国から6ヶ国に増加。
    • 当時は統一国家でなかったイタリアが存在し、一方で大国フランス王国が存在しない。これはあくまで「大航海時代」という視点から見た国々のチョイスだからであろう。なおゲーム中のイタリアはジェノヴァに首都があり、ゲーム内の免税証でもジェノヴァ共和国を名乗っているが、当時のイタリアの諸勢力の全土を領有している。
    • とはいえ、イタリアは既に斜陽で国力も低い。アフリカ周りのインド航路の発見、および拡大するオスマン帝国に脅かされている当時の情勢を反映してのものである。
    • ゲーム中でも開始数ヶ月で同盟港をすべて失い、イタリア艦隊は首都港に引きこもることが多い。海賊プレイをする場合には、そこそこ強いわりに儲からないので見逃されることが多い。
      • あえてイタリア国籍を取得し、同盟港を増やしまくって母国を世界最大の海洋国家にしてみるのも一興。
    • 名声が上昇すると、自国の元首から直々に何らかの依頼をされるようになる。これを達成すると爵位が与えられる。物語には関わらないが、位人臣を極めてみるのも楽しみの一つ。なお最高位の公爵(オスマン帝国のみ大宰相)にまで上り詰めると各主人公ごとに固有の演出がある。
  • 多種多様な交易品
    • 本シリーズを象徴するのがこの「交易」要素。港で販売されている交易品を購入し、高く売れる他の港へ運んで売りさばく。金銭を増やすにはこの交易が基本である。
    • 交易品の種類は極めて多く、香辛料を筆頭に、嗜好品、食品、織物、宝石、貴金属、鉱石、奢侈品、その他…と大盤振る舞い。
  • 前作の大きな問題点であったシステム関連も向上した。
    • 航海に必須の水と食料の補給が全自動で行えるようになった。もちろん手動も可能で、金貨が少ない時にケチったり、食料を多めに積んで水は途中で補給して航海日数を伸ばすというテクニックがある。
    • 金貨を各港の銀行に預けられるようになった。海賊に襲われても預けてある金貨は無事。預けた場所とは違う銀行で引き出すことも可能。
      • 借金もできるようになり、資金不足で詰むことが少なくなった。
    • 首都の出港所に船を預ける事が可能になった。冒険用船舶と海戦用船舶を取り換えたり、交易品を積んだまま預けて隠し財産にしたりできる。
    • マップのエリア区切りが無くなり(正確には一箇所存在)、針路変更と寄港もクリック1つで可能になった。
    • 持てる資金の上限額も気にする必要が無くなり、同じ財宝を複数持てるようにもなった。ただしアイテムは20個までしか持てないので(「私掠許可証」「免税証」含む)、アイテムの空きを確保するのも重要。
    • 率いることの出来る船の数も最大5隻から10隻に増えた。
  • 港の他に「集落」が追加。冒険要素が一気に広がった。
    • 1つの集落にはそこの地理に絡んだ「発見物」が必ず1つ存在する。それぞれの発見物には当時の常識も反映した説明文もついている。
    • これらは全部で98ヶ所あるが、一度のプレイではランダムで最大50ヶ所しか出現しない。
  • 海戦に提督同士の一騎討ちが導入された。勝てばその場で決着がつくが、負ければ即ゲームオーバー。
  • 沈んでいない船は拿捕出来るようになった。実はこれが海戦最大の収入源。
  • 航海士の数も大幅に増えた。しかも既に艦隊を率いている航海士ですら、海戦で倒して無職にしてしまうことで仲間にすることが可能。
    • さすがにグラフィックこそ変わらないが、年月の経過に応じてキャラクターたちが加齢する。ただし「ジョアン・フェレロ(32歳)」といった表示を見て嬉しい人間がいるかどうかは謎。
    • なんと酒場娘たちもしっかり加齢する。しかし酒場娘に年齢を尋ねて「あなただけに教えてあげるわ33歳よ」という返答が帰ってきた時のやるせなさと言ったら…熟女好きにはたまらないかもしれないが。
  • BGMは「信長の野望シリーズ」なども手掛ける菅野よう子が担当。広大な大海原、手に汗握る海戦、エキゾチックな異国の都市といった情景が余すところなく表現されており、いずれも評価は高い。

問題点(II)

  • 主人公が無駄に多い。冒険者系のピエトロとエルネストおよび海賊系のカタリーナとオットーでは殆どやることが同じ。違うのは国籍や技能習得の有無くらいである。この4名はメインイベントも総じて少ない。しかもオットーは最終イベント以外は全て無視しても良かったりする。
    • ピエトロはジョアンやアル等の他主人公とのからみがあり重要な役どころと言えるが、エルネストはパウラ加入後からラストイベントまで内輪のみでちょっとした会話イベントがいくつかあるだけなので非常に薄い。
    • ジョアンはイベントは多く、事前情報が無いとセーブのタイミングによっては最初からやり直しになる可能性が高い。
      • おまけにお使いや各地を往復する事が多々発生する。ただのRPGなら特に問題とされる事は起こりにくいのだが移動自体も重要視されるこのゲームではこの行為そのものが苦痛である。
  • 航海士の能力は、航海Lvと戦闘Lv、最大値が100までの数値データである統率力・航海術・知識・直感・勇気・剣技・魅力・運の8種、および測量・地図作成・砲術・会計・交渉の5つの技能など、多岐にわたるが、これに無駄が多い。
    • まず、「魅力」は主人公以外にとっては完全に死にステである。
    • 知識と勇気も主人公の技能習得にしか影響しないため、主人公以外にとっては完全に死にステ、主人公も技能取得後は死にステとなる。
    • マスクデータの運も、重要なのはほぼ主人公のみで、主人公の運をMAXの100にしておけば、部下の運はほぼ死にステとなる。
    • その他の能力も、一部の役職を除くと死にステとなる場合が多く、平の船長だと重要なのは最大船速を決める「航海術」ぐらいに限定されてしまう。これも、主人公が必ず船長になる仕様のため、主人公よりも高くても意味がなく、低いと足を引っ張るという形。
    • 技能の方も「砲術」を除けばそれぞれ所持者が1人いればいいだけ。「地図作成」と「交渉」に至っては主人公以外の航海士が持っていても何の役にも立たない。
  • 港内の施設は増えたが、移動はアイコン移動からマウス操作がしづらい見下ろし型のRPG移動になった。通行人も増えたがほぼ同じ事しか話さず、通行の邪魔になることが多い。
    • 酒場で水夫を集める機会が一日一回に減った。大人数を集めるには宿屋に何泊もしなければならず面倒。
  • 水夫のコンディション管理が面倒。
    • 前作では水と食糧の消費で全船のコンディションが自動的に回復したのだが、今作では水と食料を消費した船しか回復しなくなった。全船100%にするには全船に水食糧を積むスペースを設けるか、一つの船を100%にした後で水食糧を積み替えるという作業が必要になった。
      • そもそも船団を組んでいるのに水食糧を一つの船に集めて出港というのは現実的ではないのだが、ゲーム的には非常に便利な仕様であったため、ここが改悪されたのは残念なところ。
  • 特殊な海賊「ハイレディン・レイス」と「アイディン・レイス」の追跡力が鬼畜。完璧にこちらの航路をトレースしてくる上、嵐などの影響を受けずにしつこく追ってくる。
    • 爵位を持っていない場合はこちらから手を出さない限り襲ってこない。爵位を持っているなら何らかの対策をする必要がある。
      • 手持ちの金貨が少ない時は、いつかカモになることを見越して金貨を恵んでくれるという一面もある。ただし積んでいる交易品は全部奪われる。
    • 彼らはモンタージュ提督ではないので倒しても死亡しない。しばらくすると復活するが、タイミングが合えば無職の彼らに会う事ができ、レベルが高ければ仲間にすることもできる。
  • 「乗組員割合」が不便すぎる。
    • この割合を変える作業がとにかく不便。実数ではなく割合でしか変更出来ない上に、前作同様なぜかここだけ疑似テンキーが使えない。延々と←→アイコンを長押しする羽目になる。
    • 乗組員の配置箇所は「運行」「視認」「甲板」の3つに分かれている。「運行」に船を動かす最低人数を配置しておかないと速度が落ちてしまい、また「視認」に最低限の人を配置しておかないと港や集落を発見できない。「甲板」は戦闘員のことでありここに大砲の砲門数以上の人数を配置しておかないと海戦で砲撃の威力が落ちてしまう。
      • 人員を普段は「運行」「視認」に重点配置し、戦闘時に一部を「甲板」へと配置換え…とするのが理想ではあるのだが、海戦をしようとする度にこの変更作業が必要になる。しかも戦闘中に変えることは出来ないので、これを忘れて海戦に突入すると攻撃力の低さに泣く。面倒くさければ最大乗員数を多めに取り、変更しなくても十分な戦闘力を保持するしかない。
  • 海戦の際、2番艦以降がAI担当になった。大まかな指示は出せるがぶっちゃけ馬鹿な上に、旗艦が危うくなる(最大耐久力か最大搭乗人数のどちらかが4割以下)と皆一斉に逃げ出す(敵も同じだが)。
  • 海戦の仕様
    • 砲撃は事前に大砲を装備し、弾薬を積まなければ行えない。前述の通り旗艦以外は思うように動いてくれず艦隊を率いたり砲撃戦に持ち込むのは効率が悪い。
    • 最も効率の良い戦い方は開始直後に旗艦同士を接触させて一騎打ちに持ち込む事である*11。但し負ければ即ゲームオーバーであるので事前セーブは必須だろう。
      • 砲撃で沈めた場合、沈めた船や積んである物が手に入らない為にますます砲撃戦の立場が無い。一騎打ちを挑めなくても船員を300人ほど甲板に配置して白兵戦を行えば大抵の敵は倒せる。
      • とはいえ戦闘レベルが上がってくればダメージ制限があるので砲撃のほうが早く敵を倒せる。
    • もっとも、当時の海戦は未だガレー船を使用した白兵戦が主体だった為に砲撃が弱いのは妥当と言えなくもない。
      • もっとも、大航海時代シリーズの戦闘システムは作品ごとのバランスが悪く、砲撃が発達していないはずの『I』*12や『III』*13での砲撃が異常に強かったり、今作のように一騎打ちが最も強かったりと安定しない*14
  • 海戦で拿捕した船舶を艦隊に組み込む際に、毎回手作業で命名しなければならない。海賊で収益を得るプレイスタイルの場合この作業がとても面倒。
    • 船名を空白のままにすることはできず、オート命名なんて気の利いた機能も無い。
      • ちなみに外伝ではオート命名機能がついた。
    • なお命名画面ではキー配列の関係でカタカナの「サ」の字が最も近い*15ため、海戦のたびに艦隊画面が大量の「サ号」で埋め尽くされるという光景がお約束となっている。
      • ただ「サ号」の方が売る時に紛らわしくないのは確か。
  • 詰みポイントの存在。
    • 3種の名声のうち交易名声と海賊名声は無限に高められるが、冒険名声は高める手段に限りがある。クリアに必須な名声値+10000程度の余剰しかなく、発見物報告の勅命に安易に応じたり地図工房との契約が遅かったりすると足りなくなる可能性が高い。中盤以降に名声が半減するイベントを起こすと、クリアに必要な名声が確実に足りなくなって詰む。
    • CS版では世界地図完成で冒険名声値に20000のボーナスがつくようになり余剰が大きく増えたおかげでめったに足りなくなることはなくなった。また、ギルドでの依頼で冒険名声が増える依頼が追加された事で理論上は無限に名声を稼げるように改善されている。
  • 交易のバランスが甘い。
    • 史実通りにインドからアフリカを回って香辛料をヨーロッパへ運ぶより、近場で交易したほうがずっと早く儲かる。
    • アテネで美術品を仕入れる→イスタンブールで売り、絨毯を仕入れる→アテネで売り、また美術品を仕入れる→以下エンドレス…のルートが特に有名。史実でも大航海時代以前はこのような地中海貿易が主流だったわけで、時代が思いっきり逆行している…。もはやタイトル詐欺である。
      • ただし、このゲームの舞台である16世紀前半は地中海貿易も普通に儲かっていた時代である。新航路発見が大きな可能性をもたらしたことは事実であるが、そもそも往復にかかる距離も時間も長い新航路はまだまだコストの高いハイリスクなルートで長期的には安定していなかった。それでもポルトガル等が新航路に投資したのは、旧来のルートはジェノヴァやヴェネツィアらの非常に強力なライバルに牛耳られていたためで、完全に立場が逆転するのはおおよそ17世紀に入ってからである。
    • 交易品も種類は確かに多いが、意図的に縛りプレイでもしない限り使わない物の方が多い。
  • 船の種類
    • 前作の6種から25種と大幅に増えたが、役立つ船は数種類しかないので水増し感が強い。
      • おまけにシナリオ上イベント発生まで発見できない港が存在するキャラクターもいる為に更に(いろいろな意味で)
      • 前作でも重ガレオンなる時代を先取りしたハイテク船が存在したが、今作でもこの時代に存在しない船舶が普通に造船所で売られている。扱いもおかしく、スループ(18~20世紀)やピンネース(17世紀前半)が一般船舶で、フリゲート(17世紀)や鉄甲船(16世紀)が隠し船舶扱いである。
    • 今作では戦闘・交易・冒険全てにおいて橈漕船が圧倒的に有利。嵐は運を上げたり船首像を装備すれば回避可能で万一発生してもすぐに上陸したりアイテムの「聖なる香油」で防ぐ事が可能。船舶の価格が全体的に安く、風の影響を受けないためどんな場所でも高速移動できる、ペイロードが実際よりも非常に低い*16、いざ戦闘になればガレアス等は船員を400人乗せられる為に海戦で圧倒的な強さを持つ等利点が多い。
      • 一方この時代の主力であるはずのガレオンは速度が遅く、小回りも効かず、乗せられる人数が少ない(200人)為海戦にも向かないと悲惨。唯一の利点は船舶価格が高いので拿捕時に高く売れる事のみ。
      • ただし水夫を500人乗せられ、大砲も150門積める最強の船「シップ」、安価かつ積載量が多く少ない水夫で運行可能な為交易にも探検にも使えるジーベックなどは帆走船なのでまったく立場がないわけではない。
  • 時代考証の甘さ
    • 今作の開始年数は1522年なのだが、上述の通り国の勢力図がおかしかったり、その時代では起こりえないイベントや船(上記参照)や砲、アイテム等が存在する。問題点としてあげる事ではないかもしれない、…がやはり気になる人にとっては気になることである。
      • 一例を挙げるとポルトガルのマヌエル一世。ゲーム開始前の1521年に逝去しているのだが、全盛期の王である事と知名度のためか今作ではいまだ健在である。
      • この点はコーエーも気にしていた様で、『III』は史実に忠実にしており、『IV』は年代を無くしてパラレルワールドにしている。
  • カタリーナの国籍問題
    • カタリーナが主人公ではない場合、イベントで海賊として登場するが、何故か国籍がイスパニアのままになっている。
      • ジョアンとアルはカタリーナと関わる機会があるが、このときにイスパニアと敵対した事になり、貢献度が下がってイスパニア同盟港に寄港しづらくなったり、戦艦隊に狙われるようになってしまう。特に戦闘能力の低いアルは悲惨。

総評(II)

前作の高い自由度は大体そのままにボリュームを増やした本作は、ナンバリングシリーズ中最も高い評価を受けている。
人によってどの要素が好きかは異なるだろうが、本作は主人公が6人もいて、目的も違うため様々な遊び方に対応している。
リコエイションゲームとしての大航海時代は、この作品で一旦完成したと言える。

この後の大航海時代シリーズは完全に別種のシステムになったが、ネットゲーム時代の『Online』『Origin』の基盤は『II』『III』の影響が色濃く、「大航海時代を表現するゲームシステム」として高評価を受けていたことが窺える。


余談(II)

  • ギルドの依頼「借金取立」で航海者から借金を回収した後、その借金分の金塊を使いこむかシャイロック銀行の支店に預けるかして、ヴェネチアのシャイロック銀行本店に行く。すると、「あなたを信用した私が馬鹿でした」と言われ各名声が下がるが、ゲーム開始直後の名声0の状況なら全く損害がないので借金をそのまま着服できる。
    • それを元手にして交易で資金を稼ぐなり、また借金取立持ち逃げをして資金を稼いでも良い。後述の『外伝』でもこの裏技は使用可能。また公式ハンドブック等でも紹介され、しかも推奨されている…シャイロックさん涙目。
      • もっとも、普通に依頼をこなす場合は期間の少なさ(身分が低いうちは相手は欧州内で、期間は一律1ヶ月)が問題となる。例えば、到底ヴェネチアから1ヶ月では往復できないストックホルムの航海士が指名されたりする。一応、依頼をこなせば報酬が半分になるだけで名声にペナルティは無いので回収した借金で交易をして元手を稼ぐと言う方法も使える。特に名声が稼ぎにくい(序盤のうちに「地図作成」を習得する費用を捻出しないと最悪詰む危険性があるので、船よりも地図作成を優先したい)冒険者ならばこちらの方が賢明であろう。

その後の展開

  • SFC・MDおよびPS・SSに移植された際にはグラフィックや演出、操作性が強化された。
  • Windows*17、Macintosh、携帯電話にも移植されている。
    • CS移植版は借金取立てで冒険名声が上がるため詰む事はなくなった。
    • PS以降のCS移植版では一部発見物が差し替えられている。先住民族系の記述は人権上の配慮から致し方ないとしても、発見物の1つ「リョコウバト」の解説文までなぜか改変。
      • 本来の文章は「これだけ繁栄している動物が絶滅することは決してないだろう」といった内容であり、つまりリョコウバトを絶滅に追いやった人類を痛烈に皮肉ったもの。誤解を招いたのかもしれないが、これに手を加えるとは実に無粋。
      • ちなみに、リョコウバトが削除されたという情報はガセである。
  • その後、一転してリアル指向となり冒険要素を主体とした『III』が発売された。史実に合わせた設定ではあるが本作や前作の登場人物も登場する。
  • 本作の登場人物の子孫が、『大航海時代IV』のPK版に登場している。また、『太閤立志伝IV』にも本作のキャラが登場している。

大航海時代外伝

【だいこうかいじだいがいでん】

ジャンル ロールプレイングゲーム
対応機種 プレイステーション
セガサターン
Windows
発売・開発元 光栄
発売日 (PS)1997年10月2日
(SS)1998年1月29日
(Win)1998年2月27日
定価 6,800円
判定 良作
ポイント 主人公は減ったがやりごたえは十分
更に改善されたシステム面
強すぎるラスボス

概要(外伝)

『II』のシステムをほぼそのままに、主人公を変えた外伝。
今回の主人公は2人。
『II』の主人公達も所々に登場する。


キャラクター(外伝)

+ 主人公2人
  • ミランダ・ヴェルテ
    • イタリアのジェノヴァの商人の娘。幼い頃に出会った事があるピエトロ・コンティーを探して旅に出る。
    • 基本的にイベントをこなしていけば話が進む。初心者向け。
  • サルヴァドル・レイス
    • 海賊ハイレディン・レイスの息子。父のような立派な海賊となるべく海に漕ぎ出す。
    • 強敵との一騎打ちが多い海賊主人公。上級者向け。

特徴・評価点(外伝)

  • 主人公が2人に減った分、1人当たりのイベントは濃密なものになっている。
    • ただし、お使い関連のイベントが多くなったりシナリオの関連上制約が多くなったのは賛否両論。特にミランダ編の「カレー作り」イベントはあらかじめ各香辛料を買いだめしておかないと何度もインド地方を訪れる事に。
    • サルヴァドル編はストーリーが大きく2つに分岐し、関わる人物までも違ってくる。序盤の名声競走での勝敗が分岐点。2周目プレイは別ルートに進んでみるのもいいだろう。
  • 出港所にゲームシステムを詳しく説明してくれる人物が追加。
    • ミランダ編ではそれに加えて副官のトニオが逐一説明してくれる。『II』を未プレイでも迷う事なく進められる。
  • 『II』との関連性
    • スポンサーや技能講師が一部変更。立地の悪さによりほぼ使われることがなかった施設に利用価値ができた。
    • 航海士の口調が性格によって変わるようになった。場合によっては海賊のくせに丁寧な口調だったりして笑える。
    • ファンサービスとして、『II』の主人公が全員登場する。NPCカタリーナの国籍がイスパニアではなくきちんと海賊に変更。
      • サブキャラのギルバート卿のフルネームや爵位、モーリス伯の秘密(没イベントの名残)などが判明したりする。
  • 不便だったシステム周りの改善。
    • 港での施設移動を楽にする「港内移動」が可能になった。
    • 四分儀・六分儀・経緯儀が六分儀に統一された。また所持しているだけで緯度・経度が常に表示されるようになった。
    • 入手した船の水夫配置がデフォルトで運航100%になり、必要人数を割り振るだけで全速力を出せるようになった。
    • 水夫コンディションが寄港で自動的に100%まで回復するようになった。
    • 拿捕船の自動命名機能が追加。
    • 冒険名声が稼ぎやすくなり、ラストイベント発生に必要な名声も減った。
    • セーブデータを複数作れるようになった。
  • 『II』では60日以上航海しないと発生しないためあまり見ることがなかった「壊血病」が、本作では最短30日で発生するようになり、壊血病対策アイテムの需要が増した。
  • 一騎打ち時に選ぶカードに「必殺」「完全」が追加。「必殺」は相手の防御行動に関係なく大ダメージを与え、「完全」は相手の攻撃を完璧にガードする。

問題点(外伝)

  • 公爵になったときの演出や、海上アクシデントが丸ごと削除された。
    • 他国に亡命もできなくなった。
    • サルヴァドルは職業柄、総督府とは縁がないため、勅命イベントはミランダ編でしか体験できない。
  • 資金稼ぎ以外で交易の必要性が薄い。
    • 交易メインの主人公がおらず、交易名声を稼いでもほぼ意味がない。メインストーリーを無視して商人プレイをしようにも、交易名声自体が非常に稼ぎにくくなっている。
  • ラスボスが異様に強い。ミランダ編はラスボスに負けてもエンディングになるのでまだ救いがあるが、サルヴァドル編は勝たなければエンディングにならない。
    • 『II』に慣れている人ほど主人公一人で戦って仲間航海士のレベル上げを怠り、最後の最後で詰むことになりがち。
  • ミランダ編にストーリー分岐がない。
    • せいぜいオマケの隠しイベントが一つあるだけで、そのイベントをやるかどうかで他のシナリオに影響を与えることもない。
    • ストーリーはいかにも乙女チックで、様々な男性と関わるのだが、好感度システムはない。プレイヤーがどういう進め方をしようと、エンディングは完全に固定である。
      • 気にしない人にとってはどうでもいいが、乙女ゲーを期待した人にはこれが最大の問題点となりえるかも…。

総評(外伝)

家庭用機向けにアレンジされた外伝。
主人公の人数は減ったものの、その分イベントは濃密なものになっている。
光栄の歴史ゲームとしては珍しく、家庭用機から後にPCへと移植されている。このことから評価の高さの一端が窺えるだろう。


余談(外伝)

  • 当初の企画では主人公は3人だったのだが、シナリオに無理があってか1人は途中で没となってしまった。
    • なお、3人目の主人公候補だったキャラはイベントNPCに格下げされている。初期設定でジパング(日本)に滞在中なのでゲームにならなかったのだろう(今作の日本周辺は暴風雨多発地域)。
      • 日本や中国に新たな仲間航海士が追加されている。おそらく没主人公用に用意されたのだろうが、欧州出身の主人公しか居なくなったため使いどころがない。
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最終更新:2023年07月11日 15:08

*1 性格は航海士ごとに設定されており、仲間に加える時に多少影響がある。

*2 所持金貨は全キャラ中最低レベル、貰えるアイテムも微妙、更に冒険名声を稼ぐのに必要な地図作成技能の費用、イベント戦を勝ち抜く為の戦闘艦隊の費用までかかる。

*3 イベント戦自体はオットーやカタリーナでも発生するのだが、そちらは戦闘前提のシナリオかつ難易度も低い。ジョアンに関しては戦闘が必要とされない冒険者でありながら、碌な事前情報が無いままに戦闘を強いられる事が大半である。

*4 ただしラスボス以外は逃亡が可能、ラスボスもロッコに倒してもらうことが可能という抜け道もある。

*5 遠洋航海が必要な勅命が出たらリセットして受け直すなどのテクニックを駆使すれば2年以内のクリアは可能。しかし本作のレオンはジパングに行ったことがあったり、マゼラン海峡で新種のペンギンを発見していたりもする。

*6 あくまで推測の範囲である。

*7 熱心なファンからは「初めて海に出たはずなのになんでだ」とよくツッコまれる。

*8 他国の港を奪うなどして恨みを買うと襲われることもある。またアルは爵位を得る必要があるため海賊からも狙われやすい。

*9 一応前作でも名声はそれぞれ分けられていたが表示に関しては合計名声のみ表記されておりマスクデータ扱いであった。

*10 商業値・工業値と同値の金貨投資で1%上昇

*11 戦闘能力や装備も必要だが勝てば無傷で戦利品が手に入る

*12 砲弾が必要なく拿捕もできない。白兵戦の消耗が激しいので砲撃が一番安全

*13 一騎打ちが発動しにくくなり、艦隊が衝突時にダメージを受けるようになった為接触させにくい

*14 後年、基軸をネットゲームに移した『Online』『Ⅴ』に至っても評価は概ね芳しくなく、良からぬ事に戦闘システム面の低評価は負の伝統と言える。

*15 SFC版の場合。PC版は「亜」

*16 例えば小型船の軽ガレーは十分な速度を出すのに最低限必要な人数が5人。他の帆船よりも少ない上、余裕で20ノットの速度を叩きだす。

*17 Window移植版はPC-9801からの復刻。以前は9x系対応版がCD-ROMで販売されていたが、2018年現在はSteamにて配信されている。