F-ZERO ファルコン伝説
【えふぜろ ふぁるこんでんせつ】
ジャンル
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レース
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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発売元
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任天堂
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開発元
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朱雀
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発売日
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2003年11月28日
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定価
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4,800円(税5%込)
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プレイ人数
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【GBA】1~4人 【WiiU】1人
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レーティング
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CERO:全年齢対象
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周辺機器
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GBA専用通信ケーブル、カードeリーダー+対応
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配信
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バーチャルコンソール 【WiiU】2014年10月1日/650円(税別)
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備考
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GBA版は対応カードe+対応 WiiUVC版はカードe+のデータ未収録
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判定
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良作
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ポイント
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アニメ版のタイアップ作 8人の視点から描かれるストーリー やり込み甲斐のあるゼロテスト 痒い所に手の届かないカードe+関連機能
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F-ZEROシリーズ
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概要
『F-ZERO FOR GAMEBOY ADVANCE』(以下『GBA』)に引き続き登場したゲームボーイアドバンス向け『F-ZEROシリーズ』の2作目であり、2003年~2004年まで放送した同タイトルのアニメ版開始記念作。
そのタイトルとパッケージ画像が示す通り、アニメ版と同じ世界観を舞台とした内容になっている。
特徴
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ゲームシステムとしては、全体的に『GBA』のそれをさらに改良したものとなっている。
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マシンは30台(カードe+を含めて34台)、コースは4カップ20コース+α(カードe+を含めて40コース)とボリュームアップしている。
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しかし、チャンピオンシップとカードe+は残念ながらタイムアタック限定。
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GBA版に引き続きロケットスタートを採用。更にNintendo64の『F-ZERO X』(以下『X』)からサイドアタックを追加。ブーストも初代『F-ZERO』や『GBA』のような回数制ではなく、『X』のようなエネルギー残量制へと変更された。
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世界観はアニメ版をベースとしている。その一方でコースは初代と『X』のコースを足したような内容となっており、初代経験者ならば懐かしさと新鮮さを感じられるだろう。
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ストーリーモードが追加された。
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キャラクター同士の人間関係が、主人公として選んだキャラクターの視点から明かされる。
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8人のキャラクター
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リュウ・スザク
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アニメ版の主人公で、コールドスリープから蘇った150年前の人間。ゾーダとは150年前から続く因縁を持っており、決着をつけるべく追跡する。
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キャプテン・ファルコン
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ご存知ゲーム版の主人公。仕事中にブラック・シャドー率いるダークミリオンに誘拐されたドクター・クラッシュを救出する。
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ジョディ・サマー
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銀河連邦高機動小隊の隊長。行方不明の兄アンディ・サマーがブラッド・ファルコンに殺されたという情報をマイケル・チェーンから得た彼女は、真偽を確かめるべくブラッド・ファルコンを捜索する。
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ジャック・レビン
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元人気アイドルグループのメンバー。アニメでは高機動小隊のエース。リュウに負け続け鬱屈した気分を晴らすべく修行に出る。
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サムライ・ゴロー
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ご存知宇宙盗賊団のボス。3日前のレース中に毒に侵されてしまい、解毒剤の持ち主を5日以内に探し出さなければならなくなってしまう。
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リサ・ブリリアント
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アニメのオリジナルキャラクター。なんとゴローの妻にあたる女性。レース中何者かの工作によって記憶を奪われてしまい、犯人を捜索する。
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ブラック・シャドー
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悪の帝王。世界征服の前に彼に歯向かうレーサーを殺戮すべく動き出す。
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ゾーダ
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リュウのライバルで、アニメ版ではこちらも150年前からやってきた凶悪犯罪者。追跡してくるリュウから逃げ切るべく逃亡生活を送る。
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ストーリーとグランプリのコースを選り抜きしたモード、ゼロテスト。
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上記コースから一部を切り出した短めのコースで、タイムアタックを行うもの。
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全部で48種類。最速を発揮するコツを楽しみながら習得できる。
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クリアすると称号が手に入るが、この称号には獲得が難しい順に金・銀・銅の3種類がある。
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カードe+は「マシンカード」「コースカード」「チャレンジカード」の3種類。
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「マシンカード」は、本編では解放できないスペシャルマシンを入手する為のもの。
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「コースカード」は、逆走ダッシュプレート等の一風変わったギミックが存在する特別なコースを入手できる。
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「チャレンジカード」は高テクニックを持ったスタッフゴーストとタイムアタックで対決できるというもの。当然公式記録が色々おかしい事に定評のある任天堂なだけあって、このスタッフゴーストに勝利するのは困難を極める。
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余談だが、その他にもカードe+非対応の「キャラクターカード」が存在する。こちらはカードダス限定。
評価点
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進化したグランプリやタイムアタック
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元々初代→『GBA』でほぼ完成されていた2DのF-ZEROではあるが、『X』のシステムを改良し導入した事でレースゲームとして更なる進化を遂げる事に成功した。
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難易度エキスパート専用にやや難易度の上がったコースが用意されている。難易度の上げ方もきつめのカーブを増やしたり、トラップが追加されたり等様々。別コース扱いされるため、タイムアタックでは個別に走ることができる。
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因みに初代のコースも、プラチナカップとしてこっそり収録されており、さらに一部の惑星には専用の背景やアレンジ曲が設けられている。初代で1秒を削る事に心血を注いだゲーマー諸氏ならば燃えること請け合い。
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前作にも増した圧倒的スピード感
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前作では最大600km/h程度だった表示速度が本作では1200km/h以上まで到達可能。時速4桁のインパクトは凄まじい。
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実際の速度は流石に2倍にまではなっていないが、それでもスピード感の向上ぶりは極めて顕著。まさにF-ZEROのイメージ通りの超音速レースを体感できる。
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ゼロテストの面白さ
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チュートリアルとしての質は高く、また最終目標の金称号を目指すまでのやり込み要素としても充実した内容になっている。
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アニメ版を(ほぼ)再現したストーリー
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同時系列のストーリーを異なる8人の視点から追うという内容になっており、全員プレイする事でストーリーの全容が明らかになる、というもの。
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内容もあまりキャラクターの個性を損なう事無くしっかり纏められており、プレイ時の中だるみもしにくい。
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ステージの内容も、特定の敵に追い付かれないよう逃げ続ける、自分以外のキャラがその他のキャラに勝つよう誘導する、ライバルマシンを全て破壊するなど様々。
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一部の会話用背景は『F-ZERO GX』(以下GX)の画像を流用したものではなく、新撮に描かれたものになっている。何気に貴重。
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但し、問題が無い訳ではない。これについては後述する。
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ハードロック系のBGM
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GBA音源でありながら、迫力と疾走感のあるBGMを実現している。初代の曲や『X』での曲のアレンジ等、多種多様な曲を収録している。
問題点
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ストーリーの内容が未消化で終わってしまう
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これはアニメ版の1クールをベースにした為に起こってしまった、アニメ作品を原作としたゲームでは良くみられる問題である。アニメとは異なるオリジナル展開で決着をつける訳にも行かずこうなったのだろうが、それにしても尻切れトンボ感が拭えない。
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ストーリーに関わらない筈のバイオ・レックスが何かと身代わりになるなど、何かと不遇な扱いを受ける。
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悪役のブラッド・ファルコンはジョディとの勝負に勝ったらアンディ・サマーを殺した真相を語ると約束するも、いざ勝つと「俺様は帰ってくるぜ!」とだけ言って勝手に退場してしまう。
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ブラック・シャドーのシナリオは基本的にブラック・シャドー本人の視点で進むが、他キャラの視点でブラック・シャドーに勝った場合、実は影武者だったというパターンが繰り返されてしまう。
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一部にアニメ版の感覚で見ると違和感のある描写が存在する。
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サムライ・ゴローは全編通して『GX』のような軽率な性格として描かれている。
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キャプテン・ファルコンがブラッド・ファルコンにマシンを故障させられてしまい、仕方なく通りすがりの盗賊(記憶喪失中)に金を払って修理してもらうという、アニメ版の彼からは想像もできないようなシーンもある。
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リュウとファルコンのみ、それぞれ所持金が少ない、多い状態で特定の面まで進むと隠しシナリオが追加されるのだが、その条件を満たせずに特定の面まで進んだ場合、隠しシナリオが追加されなくなってしまう。
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キャラ選定の問題
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主人公に選ばれたキャラの内、リサだけは何故主人公に選ばれたのかという評が見られる。
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アニメ未視聴者に向けてサムライ・ゴローとの関係性を説明する必要が有ったからだろうか?
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アニメ初期からメインで登場するオリジナルF-ZEROパイロットは4人なのだが、今作ではうち2人しか登場せず残りの2人はカードe+限定キャラになってしまっている。
それでいて登場マシン数は『X』『GX』同様に30台なので、従来のパイロットも2人削られてカードe+限定になるという、アニメ・ゲームどちらのファンにもやや半端な人選。
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カードe+限定マシンは対戦で使用不可なので、カードそのものの入手の手間も含めると無視できない格差が生まれている。
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カードe+での問題点
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通常プレイでは解放不可能なマシンを使えるようにする「マシンカード」の一部に、ゲームバランスを容易に崩壊させうる性能のものが存在している。
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「コースカード」でのコースで登場するギミックの内、前述した逆走ダッシュプレート等は足を引っ張りやすく爽快感を削ぐとして不評。
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「チャレンジカード」で出現させたスタッフゴーストのセーブはカートリッジに1種類しか保存できない。
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「マシンカード」にアニメ本編の重要設定のネタバレが書かれている。
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ネタバレ注意
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敵の女幹部ミス・キラーは150年前のリュウの恋人ミサキ・ハルカと瓜二つの容姿であり、実はハルカ本人が洗脳されて敵対していた…というのが終盤に明かされる
今作のミス・キラーとそのマシンはカードe+限定キャラなのだが、ミス・キラーの格好なのに「ミサキ・ハルカ」の名前で出てしまっている。
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ただし、アニメ放映初期はそもそも設定がちゃんと固まっていなかったのか、当時の他のグッズ(自由帳)でもミサキ・ハルカと紹介されているので、カードe+だけの問題ではないのかもしれないが…。
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一部のマシンがアニメ版とデザインが違う
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元々アニメ版は原作とマシンのデザインがやや異なっており、ブルーファルコンなどはしっかり反映されているが、ファイアスティングレイをはじめとした一部のマシンは『GX』のものをほぼそのまま取り入れたためかアニメ版と異なるデザインとなってしまっている。
この点は次回作の『F-ZERO CLIMAX』でも改善されていない。
総評
アニメ版をベースにしたF-ZERO。その実態は『GBA』の良さを損なわずに『X』の要素を取り入れ昇華させた、意欲的な作品である。
新要素のゼロテストは初心者向けの練習要素と上級者向けのやり込み要素を両立させた、こちらも任天堂らしいアプローチといえるだろう。
アニメ版のDVDが入手困難となっている現在において、気軽にアニメ版の世界観に触れる為の手段ともなっている。興味のある方は是非。
余談
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原作であるTVアニメ版は23世紀を舞台にしており、F-ZEROレースの設定も「出場台数は24台」「周回は10周」といったゲーム版との差異が存在している。
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ストーリーはゲーム版同様にシリアスな内容だが、時折子供受けを狙ったのかギャグ展開が見られる事もある。
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その中でも多くの視聴者の腹筋をクラッシュさせたのは「バートのF-ZERO教室」というF-ZEROに関する説明コーナー。未視聴者にも分かりやすいように一言で表すと「F-ZERO版『ニャニャニャ!ネコマリオタイム』」。
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同コーナーで司会進行を勤めるアニメオリジナル(?)キャラクター「バート・レミング」は、本編ではカフェのマスターとしてレーサー達の人生相談も引き受けているという良識溢れるキャラなのだが、同コーナー中はキャプテン・ファルコンをやたらと褒めちぎったり、一方ブラック・シャドーに対しては容赦なかったりというネタキャラとしての一面も見せる。因みにCVは田中秀幸氏。
バート先生…その正体は一体何テン・誰コンなんだ…?
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最終回でスマブラのオリジナル技「ファルコンパンチ」を原作逆輸入し、この技でブラック・シャドーにトドメを刺したという話は有名だろう。
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2014年10月1日にWii Uのバーチャルコンソールで配信開始。
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ゲーム原作をアニメ化し、それをゲームに逆輸入した作品がバーチャルコンソールで配信されるのはこの作品が初となる。アニメ版の版権の問題もあって配信が絶望視されていたのだが、特に問題無く配信された。配信元の任天堂作品、というのも大きいのかもしれない。
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Wii U版の公式サイトでは、どういう訳か著作権に関する情報が非公開となっている。
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カードe+に関する機能は未収録。これについて余程のブーイングが飛んだのであろうか、1年後の『スーパーマリオアドバンス4』ではカードe+に関する機能をほぼ完璧に実装した形での配信となった。
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2004年10月には、シリーズ最新作にして同じくアニメ版をベースにした『F-ZERO CLIMAX』が発売されている。詳細は該当作品の頁にて。
最終更新:2024年11月01日 07:54