鉄人28号
【てつじんにじゅうはちごう】
ジャンル
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巨大ロボット操縦アクション
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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バンダイ
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開発元
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サンドロット
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発売日
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2004年7月1日
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定価
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7,140円(税5%込)
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判定
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バカゲー
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ポイント
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敵を倒せ鉄人! 何を使ってもいい! 博士も署長も邪魔? 掴んで放り投げてしまえ! 世代を越えた夢を叶えるゲーム 鉄人28号のキャラゲーとしては優秀 2004年アニメ版キャラゲーとしての価値は薄い
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概要
2004年4月~9月に放送された、横山光輝の漫画を原作とするTVアニメ『鉄人28号』(アニメ化4作目)のタイアップゲーム。
リリース時期はアニメ版放送期間のちょうど中間にあたる。
ただし、重苦しい内容であるTVアニメ版とは異なり、本作は独自のストーリー展開が行われており、至って普通のロボット活劇に仕上がっている。
よって本作は声優などは2004年アニメ版であるが、鉄人28号そのもののゲーム化と考えるとしっくりくる。
本作のコンセプトは、なんといっても「リモコンで鉄人を動かしたい」という子供の頃の夢を現代において再現したことである。
ゲーム内容は、鉄人28号の背後視点から進むロボットアクション…かと思いきや、正太郎を移動させて視界を確保し、身の安全に気を使いながら鉄人を戦わせる操縦アクションである。
鉄人28号の耐久値を気にするのは勿論のこと、本作は操縦者である正太郎の立ち位置も重要になってくるのである。
開発は『リモートコントロールダンディ』で有名なヒューマンのスタッフがヒューマン倒産後に立ち上げた会社、サンドロット。
本作にも『リモートコントロールダンディ』やその後開発された『ギガンティックドライブ』で培われたノウハウが活かされており、この技術は後に地球防衛軍シリーズの二足歩行メカへと結実することとなる。
特徴
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独特の操縦機システム
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ゲーム中は、操縦者を動かすモードと、操縦機を操るモードの二つが存在する。プレイヤーはまず操縦者を動かして位置取りを行い、操縦機モードでロボットを動かすことになる。
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操縦者モードでは移動の他にパンチが可能。時折歩兵となる生身の人間が襲い掛かってくるが、それによって自分の身を守ることが出来る。
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操縦機モードではロボットの移動、攻撃、空中飛行(一部のみ)、オブジェクトなどを掴む等の行動を指示することが出来る。
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オブジェクトは小さいものなら片手で掴み、大きい物なら両手で持ち上げることが出来る。周囲のものならどんなものでも使用可能。
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敵の歩兵を掴んで投げたり、協力者である敷島博士や大塚署長を掴んで放り投げてしまうことも出来てしまう。操縦者を手に乗せて運ぶことも出来るがこちらはソフトに運んでくれる。
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ロボットの行動
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ロボットの基本攻撃は、右腕と左腕で分けられており、ボタンで使い分けていく。基本的に右と左では使える技が異なる。
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攻撃はチャージ段階によって攻撃方法が変わっていく。例えば鉄人であれば最大溜めで右腕ならストレート、左腕ならアッパーを繰り出す。
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簡単かつゲームが苦手な人でもやりやすいコンボとして、左のアッパーで打ち上げた後、ストレート攻撃を放って叩き落とすというものがあるのだが、これが強烈かつ爽快。
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また、飛行や必殺技などの特殊行動も1ボタンで命令することが出来る。ロボットによってできることはある程度異なる。
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格ゲー的な意味での「投げ技」はないが、相手のロボットがダウンするとオブジェクトと同様につかめるようになり、四肢をつかんだあと投げ飛ばせるほか、つかみ中にパンチ系の技を出したりすると相手が自動で脱出するまで振り回して追撃可能。
評価点
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操縦機を使ってロボットを動かす発想を見事に昇華している
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鉄人の手に乗って移動ということも可能で、鉄人に乗って空を飛ぶと言う夢のような光景も本作では叶う。
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操縦者の位置取りを考えるのはなかなか楽しい。遠すぎると鉄人が見えず、近すぎると戦闘に巻き込まれて死亡ということもままある。
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自由度が高い
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公式サイトでも「昭和30年代を意識した街並みを破壊し尽くすことも可能だ(要約)」と言われているように、鉄人と正太郎は相手ロボットさえ倒せれば何をしても一切咎められない。
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建物なら基本どんなものでも投げ飛ばすことが可能。手当たり次第ロボや敵の歩兵に投げつけて蹴散らす爽快感はかなりのもの。
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ビルや百貨店、しまいには何の変哲もない民家、どころか国会議事堂までも投擲可能。ロボット戦ではかなり有効な戦闘手段であり、なくなるとむしろ困るくらいだったりする。
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というか、最初のステージでX団アジトを投げ飛ばすように指示される。「×ボタンを押せば、アジトを持ち上げることができるぞ!(原文ママ)」もう何かおかしい。
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それどころか、敷島博士が「建造物を投げて戦わないと危険だ(意訳)」という台詞を吐くシーンすらある始末。しかもこの台詞、公式サイトに掲載された漫画(余談で後述)でもネタにされている。
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さらには、敷島博士が「これを見たまえ」と言った後、わざわざ街中で鉄人でビルを投げる操作を実演して見せるイベントもある。それを見た正太郎は
ツッコミを入れる事も無く「すごい!」と感心するだけ。
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ちなみに建造物倒壊の理由の多くは、「鉄人の通り道になった」「鉄人に投擲された」「鉄人や敵ロボットが吹き飛ばされその巻き添えを食った」「正太郎の視界の邪魔になるから破壊された」など、戦闘の二次被害が多くを占める。ウルトラマンも真っ青。
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それだけやりたい放題やっても、クリア後に出てくる新聞記事では「鉄人 街守る」という見出しで鉄人の活躍が讃えられる。
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正太郎自身も前述通りパンチで攻撃可能だが、協力者を殴ることも可能。
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本作でネタにされる協力者への暴力行為は、基本的にペナルティが存在しない。別にクリア後に後述のポイントが減らされるなどということは無いため、安心して好き勝手に遊べる。
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何度も殴っていると断末魔の悲鳴を上げ動かなくなる。が、上記の通り特に影響はない。
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敵ロボット操縦者を直接殴る事も可能だが、操縦者がダウンしていようが関係なくロボットは動くためあまり意味が無いのが残念。
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ここまで見て分かる人は分かると思うが、このフリーダムぶりは『ギガンティックドライブ』のノリほとんどそのままである。寧ろ、建物を投げるという要素が加わっている分、更にカオスなことに。
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ストーリーモードにおいて、鉄人はクリアポイントを使って強化することが可能で、これがやりこみ要素の1つとなっている。
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豪華声優陣を使った賑やかさ
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これは元となった2004年版の鉄人28号にキャストが準じているからなのだが、本作オリジナルのX団首領の辻親八などは、本編に出ても不思議ではないほどマッチしたキャスティング。
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公式サイトでAIトークと命名されているこれは、戦闘中にとにかくキャラが喋りまくることを意味している。特にストーリーモードの対戦相手(主にX団首領)はよく喋る。
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なお、周囲の歩兵もよく喋る。蹴散らされたり掴まれたりすると抵抗して「覚えてろー!」「負けた―!」「チクショー!」などとギャーギャー賑やかに喚くので、Sっ気の強い人はこれだけで満足出来る。
EDFの前身とも。
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正太郎は鉄人が劣勢になったりしないと逆にあまり喋らない。しかしそれがゲームのシュールさに拍車をかけているとも。
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うまく取り入れた対戦モード
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あまり体験した人はいないだろうが、本作は最大4人の対戦が可能。ロボットを操縦しあって乱闘するのは楽しい。
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2人対戦は画面分割もあるが、4人対戦では上から見下ろしで1つの画面で戦い合い、賑やかな画面になる。
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ちなみに、純粋な対戦ゲームとしてのバランスはそこまで良くない。もっとも、基本的には対戦よりも攻略を楽しむゲームなのでそこは仕方ないとも言える。
問題点
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ボリューム不足
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ストーリーモードは全25エピソードしかなく、あとはチャレンジモードや5段階の難易度変更でしかゲームの変化を楽しめない。『ギガンティックドライブ』は50エピソード以上あったので半分以下である。
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展開も「新ロボットとの顔見せ対決→新ロボットとの本格対決→量産された新ロボット3体との軍団戦」のパターンが隠しステージ1つを含む25話中3セット(9話)もある。
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ただし、鉄人の操縦が完全に思い通りに出来るようになると、ミッション自体は少なくてもゲームとして繰り返すことに飽きが来にくいので、やりこみ派にはむしろ手頃にやり込めて良いボリュームと言えるかもしれない。
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シナリオ内容も、重厚で考えさせられるストーリーであるTVアニメ版とは異なり、昔のアニメによくあった勢い重視で荒唐無稽なシナリオで、薄い。が、その昭和的な勢いの良さはある意味バカゲー的な魅力と考える事も出来る。
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TVアニメ版は名作ではあるものの、原作に比べて陰鬱すぎたりロボットの戦闘シーンが少ない事から賛否両論な面もあり、本作のように単純明快なロボット活劇物を求める声もあった。ある意味ゲームとアニメで互いの短所を補いあっているとも言える。
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さりげなくではあるが、TVアニメ版や原作漫画、更に80年代のアニメ版である『太陽の使者 鉄人28号』から引用した台詞も散りばめられており、『鉄人28号』らしい要素は各所に取り入れられたシナリオではある。
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登場ロボットの選別の謎
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鉄人27号と28号、ブラックオックス、バッカス、ギルバート、モンスター、サターン、ファイア2世と3世あたりは妥当なのだが
「ロビーのロボット(大)」「ロビーのロボット(小)」と名前すらないロボットたちが参戦している。
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確かに彼らも原作漫画から登場しているロボットだが、その割にちゃんと名前があるVL2号やギャロンが未登場(両方2004年アニメ版には登場)。
ギャロンは非人間体形なのでキャラ製作が困難だったとしても、ギルバートとシルエットが酷似するVL2号が出れなかった理由は不明。
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また、対戦格ゲー的に見ると明らかに各ロボットの強弱も激しい。
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空中制御にややコツがいる
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鉄人はロケット噴射モーションの後に空を飛ぶが、その間の操縦には慣れが必要。スピードが速いので地上での操作感では制御が追いつかない。
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特に操縦者を乗せている状態の移動はかなり危険、上下左右の感覚を掴むまでに時間がかかる。
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慣れないうちは鉄人を見失い、そのあげく操縦者の元に戻ってきて、間違えて押し潰してしまって操縦者が大ダメージ、あるいは死亡ということもしばしば。
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逆に動かすことに慣れれば、OPで見せているようなアクロバティックな空中戦も実際に行えるのがこのゲームの面白いところでもある。
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(表の)最終面だけ異様に難しい
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日本全土を焼きつくすミサイル基地から発射されようとしている「発射される前に全てのミサイルを破壊&敵に奪われたブラックオックスを倒せ」というミッションなのだが、制限時間がかなり厳しく難しい。
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しかも正太郎をそれぞれのミサイル基地の近くに連れて歩かないと、遠すぎて遠近感が掴めず鉄人をうまく誘導出来ないため、かなり効率的なプレイが求められる。
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ちなみにミサイルにミサイルを投げつければ一気に2つ破壊できる。上手くいけば1投で3つ連続で破壊することも。
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ロボットのモーションはとても良いが、人間グラフィックは低質
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例えるなら本作の舞台である昭和30年代に見られたブリキの玩具のような動きと体型で、しかもぎこちない。
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実質的な前作『ギガンティックドライブ』から殆ど変わっておらず、以降の地球防衛軍シリーズでもあまり改善が見られないため、もう拘っていないものと思われる。
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2004年版鉄人28号のゲーム化と考えるといろいろ難点が多い
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設定上、本作は同作と内容をある程度共有しているのだが、キャラ設定などを除いて本編はほとんど本作独自の内容を突き進み過ぎている。
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本作の村雨も和解後正太郎のことを「正太郎君」と呼んだり、当時のアニメ版での関係性を見るとかなり違和感がある。
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ただしソフト開発期間と発売時期を考えると、アニメ版制作と本作制作はほぼ同時進行であり、本作がアニメの内容を参考にすることは困難だったと考えられる。
総評
なんでもありのロボット操縦アクションという大胆な作品性で、ロボットファンや鉄人のファンから話題になった作品。
重量感溢れるロボットを自分の手で操縦しているという感覚を味わえる点は非常に評価が高く、操縦が上達すればするほど楽しくなるゲーム性は今でも語りぐさとなっている。
何より建物を壊そうが協力者を倒そうがお構いなしのすごい自由度が、本作の「バカゲー」としての評価を揺るぎないものにしている。
プレイヤーの戦い方次第で正義の味方にも悪魔の手先にもなりうる鉄人の姿は、まさに「いいも悪いもリモコン次第」という、OP主題歌の歌詞を完璧に体現していると言えるだろう。
ゲームとしても十分面白い反面、野暮ったさやボリューム不足は目立つところもあり、「せっかくここまでこだわっているのに」と煮え切らない点は多い。
また、根強いファンが多い2004年版アニメ鉄人のファンからすると、そのストーリーの薄さは信じられないものであり、ギャップは到底埋められるものでなかったことも気にかかる。
ただし一つのゲームとして、鉄人ファン、もといロボットファンに薦められる素晴らしい出来である事は間違いなく、そういう意味での完成度の高さは間違いなく十分に評価出来る。
余談
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本作の公式サイトには『X団は見た!』という、スクリーンショットにX団員および団長の会話が掲載されたコーナーがある(アーカイブ)。
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その内容も、戦車を抱えている鉄人を見て「鉄人が武装した」という報告や他のロボットと共に「だるまさんがころんだ」をしているなど、全体的にギャグテイストが漂う。
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『ギガンティックドライブ』ではかつて似たようなスクリーンショットでの遊び・ネタが雑誌に投稿されていたことがあったが、公式でやると想像できた人がいるだろうか。
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当時、漫画『鉄人28号 皇帝の紋章』を連載しており『ギガドラ』のファンでもあった漫画家・長谷川裕一によるレビュー漫画も公式サイトに掲載されていた(アーカイブ)。
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本作のディレクターである本間毅寛は元々『鉄人28号』を含むロボットマニアだったようで、2014年6月にテレビ番組『開運!なんでも鑑定団』に出演し、鉄人28号のミニチュア玩具を鑑定してもらっている。
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本間Dは『リモダン』や『ギガドラ』の企画者であり、そもそも『リモダン』自体が『鉄人28号』のオマージュのような作品だった。以降もシナリオを書き続けている地球防衛軍シリーズにも多数のロボットが登場する事からも筋金入りぶりがうかがえる。
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ゲームそのものではないが、今作の公式ガイドブックで各ロボットの「移動速度」のデータが本編と合っていない。
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公式ガイドブックでの記述は速い順に「S:ギルバート・バッカス」、「A:ブラックオックス・ロビーロボ(小)」、「B:サターン」、「C:鉄人28号・ファイア三世」、「D:モンスター」、「E:鉄人27号・ファイア二世・ロビーロボ(大)」となっている。
しかし、実際に並べて歩かせてみると「S:ギルバート・バッカス・
モンスター
」「A:ブラックオックス・
ファイア二世
」、「B:
鉄人28号
」、「C:サターン・・ロビーロボ(大)」、「D:
鉄人27号
」、「E:
ファイア三世・ロビーロボ(小)
」といったような順番になる。
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アニメ版は予算などのリソース不足に対応すべく当初構想のロボットアクション路線を断念、人間ドラマ主体の路線を取らざるを得なかったという。
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この路線変更が無ければ、アニメ版と本作はもっと近しいものとなっていたのかもしれない。
最終更新:2023年07月15日 12:38