ソニックトゥーン 太古の秘宝
【そにっく とぅーん たいこのひほう】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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Wii U
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発売元
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セガ
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開発元
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Big Red Button Entertainment
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発売日
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2014年12月18日
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定価
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7,538円(税8%込)
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判定
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シリーズファンから不評
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ポイント
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久々のソニック以外のプレイアブル化もマッスルズ 壮大に見せかけて尻すぼみなストーリー 雑魚敵をエナービームで投げればOKな釣りゲー シャドウ&メタルソニックら既存ライバルの微妙な扱い 最後の大塚周夫エッグマン
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ソニックシリーズ
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概要
発売当時は海外のみで展開されていたTVシリーズ・『Sonic Boom(邦題:ソニックトゥーン)』と連動したソニックの新シリーズ。
任天堂ハードのみでの展開となり、3DSでも『ソニックトゥーン アイランドアドベンチャー』というタイトルで別タイプのゲームが同時発売されている。
ソニックのデザインにはそれぞれアレンジが加えられているが、これはTVシリーズにおける設定を反映しているためで、本シリーズ独自のもの。
開発はセガ内製ではなく、『クラッシュ・バンディクーシリーズ』で有名なノーティドッグ初期からの開発メンバーの1人であり、アートディレクターを務めていたボブ・ラフェイ氏らによって立ち上げられたBig Red Button Entertainmentが開発を担当した。
プロデューサーの飯塚隆曰く、本筋のソニックとは別にこちらのシリーズも展開していくとのことである。
TVシリーズでレギュラー登場しているオリジナルキャラ「スティックス・ザ・バジャー」も本作で登場するが、村の民の一人という扱いで本作では出番がほとんどない。
ストーリー
毎度のように何かを企んでいるドクター・エッグマンの陰謀を阻止するため、彼を追うソニック達。
しかし、メタルソニックとエッグマンが復活させた古代のメカ達の追撃により次第に追い詰められ、ついには不思議な古代寺院へと追い込まれてしまう。
ソニック達は寺院から脱出するため、中にあった仕掛けを作動させるが、運悪くそれは太古のマッドサイエンティスト「リリック」の封印を解く装置だった。
何故かソニックを仇と憎むリリックは、かつて彼が望んだ世界滅亡計画を再始動させる。
リリックを封印するため、各地に散らばっているクリスタルを探しだそうとするソニック。しかしそれはリリックの野望を達成するために必要なアイテムでもあった。
戦いの中、ソニックはリリックとの意外な因縁を知ることになり…。
特徴
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4人の操作キャラ
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近年はソニック以外使えないアクションゲームがほとんどだったが、本作はソニック、テイルス、ナックルズ、エミーの4人を操作可能である。
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プレイヤーが操作する以外のキャラクターはNPC操作となり、そちらはダメージこそ受けるが基本的にHPの概念がない。
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ソニック:スタンダードな格闘を得意とする。坂道を駆け上ったり、仕掛けを回転させるスピンダッシュが使用可能な他、一部の仕掛けに使うホーミングアタックが使える。
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テイルス:自分の発明した武器を駆使して戦う。ホバリングが可能な他、バディポッドと呼ばれる小型メカで仕掛けを作動させる能力を持つ。
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ナックルズ:ソニックと同様格闘攻撃で戦う。従来のような滑空は出来ないが、特定の壁や天井に捕まったり、一部の土を掘り返すといった能力を持つ。
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エミー:ハンマーを使って戦闘を行う。一部の細い足場を低リスクで移動出来る他、三段ジャンプが可能。
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アクションパートと疾走パート
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本作のメインとなるアクションパートは、従来のソニックのように走るのではなく、敵を倒しながら遺跡の仕掛けなどを解いていく謎解きアクションとなっている。
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アクションは先のような特徴を持ったキャラクターを駆使して戦いつつ、全員にテイルスからもたらされた新兵器「エナービーム」を利用することが可能。
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エナービームは一部の仕掛けの作動、レールへのぶら下がりが出来る他、戦闘では雑魚敵や一部の武器を掴んで投げられる。
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疾走パートは従来のソニックのような高速アクションパートで、障害物などをかわしながら駆け抜けていく。
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エナービームなどを使う以外は基本的にかわしていくことが主。ブーストなどはなく、敵もボスを除いて基本は出現しない。
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一部では水上を進むマシーンに乗って戦うパートも存在。強いて言うならここは一風変わったシューティングといった装いの内容である。
問題点
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ナックルズのデザイン
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本作で真っ先にネタにされるポイント。従来のキャラは皆デザインがアレンジされているが、ほとんどがコスチュームの変更程度なのに対し、ナックルズは体型がイジられた。
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彼だけはソニック達と同じ頭身だった従来とは違い、頭一つ抜けて長身になっているうえ、逆三角形なマッチョ体型に変貌した。ついたアダ名はマッスルズ。
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実はこれ、ゲーム版ではなくアニメ版の問題で、「ビジュアルでキャラがわかるように」という意図からデザインが変更された模様。
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件のアニメ版では「日常生活が本当に可能なのか?」と不安になるほど徹底的な脳筋キャラとして描かれている。本作はその点で言えばまだ性格だけは従来に近いと言える。
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本作ではパワーキャラだが、後述のように基本的に敵が硬いのであまりそれを実感出来る部分は少ない。
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ソニックでやる必要性を感じない単調なゲーム性
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このゲームの大半を占めるアクションパートが非常に単調。作中でも揶揄されるくらい似たような仕掛けを解きながら、敵を倒して先に進んでいく。
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ソニックやエミーが愚痴るほどまったく同じ仕掛けが何度も登場。中でもパネルを順番に踏んでいく仕掛けは特に多い。自覚があるならもっと仕掛けのパターンを増やして欲しいものである。
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ソニックシリーズと言えば基本は一部を除いて体力値の低い敵を次々倒しながら駆け抜けていくハイスピードアクションであるが、本作は普通のアクションゲーム基準のためか敵が硬い。
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…というか普通のアクションゲームとして見てもやや敵の体力が高い。倒すのに時間がかかるため、出てくるだけで億劫な気分になってしまう。
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一応、楽に攻略する抜け道はあるが、その方法がエナービームで敵を掴んで落とし穴(場外判定のある部分)に放り投げるというもの。すぐに雑魚戦が終わる反面、アクションパートの単調・作業化が顕著になる。逆に落とし穴が周囲にない場所ではどう頑張っても格闘戦で頑張るしかないので、雑魚処理が異常に大変である。
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リングが半分HPゲージと同義になっている
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本作ではリンク取得数の上限が従来より低めで、レベルアップさせないと増えない。従来は普通にプレイする分には気にならないほど上限が高かったのだが…。
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「リングが0の時にダメージを受けるとミス」という部分以外、本作のリングはほとんどHPと同じ扱いである。それだけ体力があってもギミックの意地悪さや敵の硬さからノーダメージ突破はよほど手慣れていないと難しい。
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また、ゲーム性とはやや異なるが、本作のSEはリング習得音を除いてほとんどが本作独自のものである。そういう意味でもソニックの雰囲気とは大きくかけ離れている。
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こだわったという割にイマイチなストーリー面
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本作はストーリーに力を入れているとのことだが、基本的に壮大に見せようとしているだけで中身はそこまで大きくはない。
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本作の謎の一つであるソニックとリリックの関係は、新ソニにおけるシャドウとメフィレスの関係に酷似している。シリーズファンには最初のやりとりでピンと来てしまう人も。
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それを除けば基本はひたすらクリスタルの奪い合いを行っているだけで、そこまで煮詰まった内容というわけでもない。
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本作で久々にストーリー出演を果たしたメタルソニックとシャドウの扱いはかなり微妙。
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メタルソニックはエッグマンの下で動き、本作ではそこそこ活躍するが、最終的にはリリックにあっさり洗脳されてソニック退治に赴かせられてしまう。
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シャドウは何故本作で出演させたのか謎。どういう経緯で本作に関わったのか行動理由も不明なら、いつの間にかリリックに洗脳されてソニック討伐に駆り出される。
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しかも本作では一度ソニックを襲った後、シャドウは最後まで出てこないうえ、出てきても全てが終わった後であり、「今回は譲ろう、後は任せる」と言って去るだけで、格好悪いまま終幕を迎えた。
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冒頭でソニックが倒されるシーンが挿入されるが、本編中にそのシーンに差し掛かっても、普通にソニックが無事なだけでオチは大してなく、何故そこまで引っ張ったのか疑問なレベル。
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ストーリーのラストシーンも、リリックに最後どういう始末をつけたのか描かれず、ソニック達はみんなで戦いの勝利を祝うだけ。
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次回作を匂わせるためか、リリックの洗脳装置を手に入れるエッグマンと、復活するメタルソニックのシーンが描かれて終わるが…そんな構想を行うくらいならこの作品の結末をしっかり描くべきだろう。
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ちぐはぐなやりとり
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ゲーム中、とにかくソニック達は喋りまくるが、会話が繋がっていなかったり、前に喋ったキャラの言ったことを繰り返すといった言動が非常に多い。
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「○○に気をつけないとな」「うおっ、○○だ、気をつけろ」と、まるで前に言ったキャラの台詞を聞いていないかのようなやりとりが多い。
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誰かとの会話中に別の愚痴が挿入されて会話が中断されることもしばしば。冒頭のエッグマンとの追いかけっこが顕著。
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スティックスの扱い
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海外のTV版において、スティックスは独自のレギュラーキャラである。しかし、プレイアブルとなっている『アイランドアドベンチャー』に対し、本作では村民の一人というぞんざいな役回りで、物語の本筋にはほとんど関わってこない。
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本作には他のゲームで言うところの「クエスト」を依頼するような立場として行く先々でその土地で暮らす村人などが登場するが、要はスティックスはその中の一人にすぎない扱いなのである。
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『アイランドアドベンチャー』でプレイアブル登場しないエミーは、代わりにリリックにさらわれるというストーリーに関わる立ち位置に置かれ、それと比べるとスティックスの扱いはかなり軽い。
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クリフやQ-N-C(クインシー)など、作中に関わるオリジナルキャラクターは多くおり、プレイアブルは無理にしても、何かしらもっと大きな役目を持たせられなかったのかと思わずにはいられない。
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バグや調整不足な点が多い
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ブーストエリアで疾走しているといきなりどこかへ飛んでいってしまったり、テクスチャーの読み込みが行われなかったりとバグが多い。
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特に有名なのがナックルズで無限にジャンプが出来るバグ。
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海外でこのゲームが発売された後すぐに発見され、バグをフル活用して50分でクリアしてしまう動画なども登場した。
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グラフィックが粗い
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開発にソニックチームが関わっていないせいか、同機種のマリオ&ソニックシリーズやロストワールドと比べテクスチャやポリゴンの粗が目立つ。
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ゲームエンジンにはCrysisなどに代表される美麗なグラフィックに定評のある
CryENGINE3
が使われているとの事だが…
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一部ではWiiで出たソニックシリーズよりも粗いという声もある。
評価点
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キャラ達の台詞がとにかく多い
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ゲーム中、ソニック達は些細なことでもよく喋る。その台詞量はシリーズ中でも随一と言って良いだろう。
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一部の掛け合いには面白いものもある。ちぐはぐな掛け合いの多い本作だが、イベントでキャラクターが2人きりになると時折笑いを誘うような掛け合いが繰り広げられることも。
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特に中盤におけるソニックとナックルズの掛け合いは、ソニックのファンなら笑えること請け合い。
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後述の通り本作は大塚周夫氏が演じた最後のエッグマンということになるが、幸いこちらも台詞がたくさん収録されている。
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ムービーシーンは本家に劣らないクオリティ
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メタルソニックは、周囲の風景がメタルボディに反射して微妙に映るなどかなり細かく美麗なものになっている。
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モーションなどはなかなか凝っており、格好良くポーズを決めているシーンも多い。
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ムービーのカメラワークはハリウッド映画を元に作られているらしく、実際映画的な雰囲気はよく出せている。
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ソニック以外が使用できる
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本作において一番評価出来る点といえる。いろいろと問題はあるが、ソニック以外のキャラクターが使用できるというのは『ワールドアドベンチャー』以降の作品としてはかなり珍しい。
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自由に切り替えも出来るので『ソニックヒーローズ』的なプレイ感覚で楽しめるのもプラス要素。
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4人のキャラクターは先の通り差別化がきっちり行われており、状況に応じて使い分けていく楽しさは一応ある。
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しかしその点も、エナービームで放り投げる戦法が確立してしまうと、キャラ差がほぼなくなり、興ざめなのだが…。
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エナービームでの場外投げを封印すれば良いのだが、それはそれで雑魚戦がかなり苦痛になってしまうことがほとんど。
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ほとんどの場所で2Pプレイが出来る
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TV画面とゲームパッド画面でそれぞれ別のキャラを操作して遊ぶことができる。
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2Pプレイが出来る前提でゲームが作ってあるのか、ソニック達は常に集団で行動していて別行動をする時も必ず2人ずつに分かれる。
総評
ソニックとして作らなければ普通程度の評価になり得たかもしれない作品。
ソニックシリーズは元々ハイスピードアクションを売りとした作品で、謎解きをメインとしたテンポの悪いゲーム性はあまりにもミスマッチだったと言わざるを得ない。
アクションゲームとしての爽快感もあればまだ良かったのだが、疾走パートならまだしも通常のアクションパートはストレスばかりが募る。
それを解消するためには単調プレイが要求されるため、どう足掻いても普通のアクションとしても出来が良いとは言えない。
クソゲーと言えるほど出来の悪い作品とも言えないが、ソニックシリーズとしてはこれまでと比較して大きく劣る出来栄えだった。
ただ輝く部分がまったくないとも言えず、今後に期待出来る余地はそれなりに存在する。もっとも、後述のこともあるので続編が出るかは怪しいが。
余談
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「ソニックアドベンチャー」から約18年間に渡って日本版のドクター・エッグマンを演じてきた大塚周夫氏が、本作が発売されたおよそ1か月後に亡くなった為、ソニックシリーズとしては本作が遺作となった。
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当時海外で放送中のTVアニメ版の日本輸入を望まれていた矢先のことで、尚の事惜しまれる。
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ファン達に大きなショックを与えたほか、同じくソニックアドベンチャー以来長年共演してきたソニック役の金丸淳一氏も、ソニックX当時の思い出を振り返り、無念さを明らかにしている。
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TVアニメ版の日本語吹き替えは本作からかなり遅れて2017年7月にシーズン1がNetflixで独占配信されたが、エッグマン役はゲームの本編シリーズと同じく中村浩太郎氏が引き継いでいる。
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日本よりも遥かに根強いファンを持つ海外では新ソニを上回る程の酷評を浴び、メタスコアも歴代シリーズ最低の
32点
と散々な結果になった。
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それ故に日本のプレイヤーも身構えてはいたが、国内では「クソゲー」と斬られる程までには至らず、「アクションとしてみれば及第点、ソニックシリーズとしては落第点」という評価に落ち着いた。
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TVアニメ版ではメタルソニックは登場していないが、代わりにエッグマンの側近としてすっかり定着したオーボットとキューボットが登場している。
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この二人は、デザインの変わったエッグマンと違い、メタルソニックと同じくデザインは一切アレンジされていない。
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シャドウは発売からかなり後にTV版でも登場している。
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WiiUの不振も関係しているのか、翌年に発売される続編ではWiiU版は完全に外されてしまい、3DS版一本で行くことになった。
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つまり本作は、自ら続編を匂わせておきながら続きに関しては絶望的となっているのである。
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ゲーム的にもPVで「エミーがプレイアブルになった」ことを前面に出しており、本作は本Wikiの判定のみならず、公式からも黒歴史のような扱いを受けつつある。
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今作の原作アニメ及び海外版のタイトルは『Sonic Boom』なのだが、同じくセガから発売された縦スクロールSTG『ソニックブーム』とは特に関係が無いと思われる。
最終更新:2024年12月19日 14:15