怒II DOGOSOKEN
【いかりつー どごうそうけん】
ジャンル
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トップビューアクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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ケイアミューズメントリース
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開発元
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マイクロニクス
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発売日
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1988年4月16日
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定価
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5,500円(税別)
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判定
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劣化ゲー
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ポイント
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前作の反省はされた……のか? ロース! 肉丼!
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怒シリーズ 怒 (FC) (MSX) / 怒号層圏 (FC) / 怒III (FC)
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概要と特徴
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アーケードで人気を博したSNKのトップビューアクション『怒』。本作はその続編となるアーケードゲーム『怒号層圏』をファミコンに移植したものである。
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前作『怒』のFC版は、劣化では済まないクソゲーと化した。そして、あまりのひどさに反省したのか本作はAC版『怒号層圏』から実に2年近くもの歳月を費やしようやく発売にこぎつけた。
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故に本作は「前作のFC移植で反省し発売まで時間をかけて開発されたから、前作とはうってかわって良作になるだろう」と期待されていたが……
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操作は前作のFC版を踏襲しており、十字キーで移動、Bでショット、Aで手榴弾。そして本作のみのアレンジ要素として、セレクトボタンでメニューを開いて武器の変更が可能。
問題点
本作を移植したのは前回と同じ、かの悪名高いマイクロニクス。故に、前作程ではないものAC版の魅力や楽しさをオミットしている上、蛇足なアレンジが多い。
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ゲームを開始した瞬間、なんと3秒ものロード時間が入る。
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光学ディスクが主流の現代のゲーム機なら納得できるが、本作はROMカートリッジである。ROMなのにロードが入るとは一体……
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本作最大の問題点「セリフ」。
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というのも、原作のAC版は当時は珍しかった合成音声で「よおし、いくぞーっ!」や「手強いぞ!」等、記憶に残る熱いセリフ達がちゃんとした音声で出てきた。
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そしてFC移植の本作でもそのセリフは出るのだが、
明らかに別な言葉に聞こえる空耳が目立つ。
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例えば「よおし、行くぞーっ!」は「ロース! 肉丼!」あるいは「フレッシュ! 一番!」と聞こえる。
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それだけならまだしも、「いらっしゃい!」は「ザーサイ!」に聞こえたり、「手強いぞ!」に至っては、早口+甲高い声+不明瞭という3本立てのせいで「スクライド」に聞こえる始末。
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ただし、この空耳は何の知識も無しにただ音声を聞いた状態でのみ起きる
ため、AC版のセリフを知るプレイヤーにはそう聞こえないのが唯一の救いではある。
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ちなみに、FC本体の製造ロットによってはセリフが雑音だらけで正しく発せられなかったり、逆に聞き取りやすかったりする。
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アレンジとしてゲームシステムが変更されている。
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敵や障害物を破壊するとお金を落とすのでショップで買い物をしたりする事ができるようになっている。また闘技場でお金を賭けてボスクラスの敵と戦う事もある。
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原作はアイテムを取ったらすぐに武器が変更された。しかし本作はアイテムを取っても武器は変更されず、セレクトで武器を切り替える。
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これだけ聞けばまだまともだと思えるかもしれないが、セレクトを押した瞬間にまた3秒ものロード時間。
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また本作のアイテム切り替えはセレクトボタンから移行する専用の画面から行う。それに加えて、AVファミコンに存在する2P側のセレクトとスタートは、いっさい反応しない。そのため二人プレイの際はややこしい。
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これは同じく二人で遊べるファミコン用アクションゲームの『ダブルドラゴン3 ロゼッタストーン』にも通じる問題がある。
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実機での対処法としては別途ジョイカードなどの連射装置をつなげて、連射装置のセレクトとスタートを2P専用ボタンにする事が挙げられる。
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もちろん武器を変更した後もロード時間が発生。『レリクス 暗黒要塞』並。何度もいうようだが本作はディスクシステムではなくROMカセットのゲームである。
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基本的な操作は、前作のファミコン版同様に十字キーで移動、Bでショット、Aで手榴弾なのだが、これも問題。
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本作は歩く速度が遅い上、BかAが押しっぱなしだとその向きにずっと攻撃するというややこしい操作体系。それだけならまだしも、本作はいろんな角度からいろんな敵が押し寄せてくるので、明らかにこの操作体系は向いていない。
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それに輪をかけて本作は、前作のFC版よりはマシになったが方向転換でぐるりと振り向く動作ラグがある。
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もっとも「『歩く方向と攻撃の方向を分けられる』AC版の操作性を精一杯再現した」という点では評価できなくもない。
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武器の性能が変わっている。
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たとえば、原作ではダイヤルを回して敵弾を跳ね返す事が出来た武器である剣が、本作ではBを押してくるくる回すだけになり敵弾を跳ね返せなくなった。
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また、原作ではどデカい爆風が凄まじかったバズーカも、本作ではただ火の粉が蛇行して進むだけで使いにくくなっている。
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アレンジとして残機制からライフ制になったが、攻撃を喰らった際の無敵時間がない。そのため、連続で攻撃を喰らい続けると一瞬で死ねる。
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ボスの動作アルゴリズムが2通りしかない。原作はボスごとに動作が違うのでその都度戦術を変えて上手く倒す点が面白かったのだが、本作は四角に動くのと、ただ主人公をゆっくりジグザグに追いかけるのいずれかしかない。
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アレンジ移植するにあたり、ラスボスが変更された。それに追随して、エンディングも胸糞悪いものに変更された。
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ネタバレ防止のため詳しくは記述しないが、一言で言うと「ハメられた」という内容。
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音楽は原作の勇ましい雰囲気がゼロ。同社によるFC版『エグゼドエグゼス』同様どれも甲高いものとなっており「せめて音楽だけは良いアレンジにしよう」という気概や意気込みも感じられない。
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特にラストステージではその問題が顕著で、原作のAC版ではFM音源で奏でられるクライマックスに相応しい血湧き肉躍る音楽だったのだが、本作ではどういうわけか哀しいバラード調と化し、せっかくの名曲も台無しである。
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特定の条件や操作をするとシステム画面やライフゲージ等のUIがバグって何が何だかわからなくなる。
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条件として判明しているのは武器切り替え時やショップやダンジョン等の画面移動時で5割近い確率でバグる。酷いと進行すら厳しい状況になる。
評価点
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前作FC版とは違い、グラフィックがしっかりしている事。
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これにより主人公や敵がどこにいるか一発で把握できるようになり、細かい避けが前作よりはしやすくなった。
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タイトル画面のまま放置すると、原作にはなかったオープニングが流れるようになった。
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2人プレイが出来る。しかし本作を2人で遊びたいという変わり者はいるのだろうか?
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原作では最弱だった武器ブーメランが、本作では最強の性能となった。
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細かい話ではあるが、BかAを押しっぱなしで攻撃しながらの場合だと、方向転換でぐるりと回ることが無くなった。
総評
斜め上の変な方向にアレンジ移植されたシロモノ。
グラフィックなど、前作の反省を活かして改善された部分は見受けられるものの、それ以上に蛇足なアレンジが目立つ微妙な劣化ゲーとなってしまった。
余談
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画箱における本作の扱い。
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先にも述べたが本作は空耳が酷い。そして、今はもう閉鎖された掲示板「画箱」では動画の投稿が可能であった。
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なので、画箱ではどういう訳か本作のセリフを使ったMAD動画なるものが多数作られ、ある種の定番ネタとなった。常識レベルの基礎知識とか定番ジョークとか、そういう扱いである。
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どれ位の定番ネタだったかというと、同じくマイクロニクス作品で分かりやすく例えるなら「雷電ファンにとっての雷電伝説」と言ったほうが分かりやすいかもしれない。
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もっとも、画箱は運営がアレだったので徐々に人が離れ、結果的に空耳MADは下火となったのだが。
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本作の出来が災いしたのか、以降のファミコンにおけるSNK作品は自社開発になる事に。続編の『怒III』もその一つとなった。詳細は該当記事を参照。
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生みの親であるSNK自らが開発に関わった事で全体的にクオリティが上昇し、この経験が後に対戦格闘ゲームで一世を風靡する家庭用機ネオジオの発売に結びつく事になるとは皮肉としか言いようが無い。
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アーケードからの劣化移植を乱発しCAPCOM、SNKと大物企業から次々と見限られてしまったマイクロニクスだったが、性懲りも無く今度はアイレム作品を手掛ける事になるのだが・・・
最終更新:2022年01月07日 00:02