ポケモンアートアカデミー

【ぽけもんあーとあかでみー】

ジャンル ペイントソフト
対応機種 ニンテンドー3DS
発売元 ポケモン
開発元 Headstrong Games(Kuju Entertainment)
発売日 2014年6月19日
定価 3,849円(税別)
判定 なし
ポケットモンスターシリーズ


概要・特徴

『わりと本格的絵心教室』『絵心教室DS』『新 絵心教室』の流れを組む、『ポケットモンスター』シリーズ初のペイントソフト。いろんなポケモンをモチーフにして絵の描き方を学べる。

システム

  • 基本的に上画面にお手本が表示され、下画面のタッチパネルで絵を描くという形式。
  • 「レッスン」モードは順を追ってポケモンの描き方を学べるメインモード。
    • 最初は子供にも描けるような簡単な顔だけの正面画から始まり、レッスンを進める毎に斜めから見た顔や全身、影の付け方や色の重ね方(厚塗り)を学んでいき、
      最終的には自分で一からアタリ線を取って、様々な画材と技法を活用し、本格的なイラストを完成させることが目的となる。
    • 描き方は講師の「アンディ先生」が順を追って一工程ずつ丁寧に説明してくれる。
    • その他、主人公の同期に「ジョン」「リリー」のどちらかが一緒に学んでくれる。
  • 「フリーペイント」では様々なポケモンのイラストをお手本に自由に描ける。レッスンモードと違って逐一描き方を指示されることはない。
    • ポケモン以外にも、SDカードの画像をお手本として表示することも可能。
  • 「おてがるレッスン」モードでは簡単なポケモンを気軽に描ける。
    • 画材は自動で選択され、工程も少ないので数分で仕上げることも可能。レッスンモードが難しいというプレイヤーでも楽しめる。
  • 本作の舞台である『ポケモンアートアカデミー』は、「ポケットモンスターカードのイラストレーター養成学校」という設定となっている。
    そのため、どのモードでも描いたイラストはTCG『ポケモンカードゲーム』のカードを模した形になって、SDカードに保存される。
    • 描いたイラストはJPEG方式で保存され、PC等に取り込むことも可能。その場合はイラスト右下に本作のロゴが強制的に挿入される。
    • また単に絵を描くのではなく「ポケモンカードのイラストを描く」上でのコツも合わせて教えてくれる。
      そのポケモンのまたレッスン前にはそのポケモンの個性や特徴等もきちんと紹介し、何を重点を置くか分かりやすく教えてくれる。

評価点

  • ペイントソフトとしてのハードルが下がった
    • なんといってもあのポケモンを題材にしているだけあり、万人向けで老若男女誰でも気楽に楽しめる。
      • 『絵心教室』は全体的に大人向けの渋い雰囲気だったが、本作ならポケモン好きな子供にもとっつきやすく楽しめるだろう。
    • レッスンモードの序盤は子供でも簡単に描ける程度の単純な絵から始まり、段階を踏んでレベルアップしていくので成長を感じやすく挫折しにくい。
    • 画材の種類も必要最低限の基本的なもの*1に絞られているので、初心者でも迷いにくい。
      • 『絵心教室』シリーズは多彩な画材が揃っている反面、すべての画材を使いこなして描けるのは一部の上級者だけで、難易度高めだった。
  • 待望のアンドゥ、レイヤー、スポイト機能の搭載
    • アンドゥとは「一歩前の状況に戻す」もので、デジタルペイントソフトの標準搭載機能だが、『絵心教室』シリーズではコンセプト上「やり直し」が効かないように意図的に未搭載だった。本作では標準装備されている。
    • レイヤーも計2枚のみだが搭載されている。ただし鉛筆の下書きに2つ目のペン入れ用レイヤーを使い、下書きレイヤーの上からクレヨン等で着色するといった前提で使うように設計されている。
    • スポイト機能もデジタルペイントのコンセプト上、実装されている。見本以外にも自分好みの色をカスタマイズして描いたりすることも出来る。
    • 着色の際は色の濃淡も調整出来るため、厚塗りや重ね塗り、影の陰影といったクオリティ向上に繋がる着色も出来る。
  • クラスメートのジョン/リリーの存在
    • 一緒にアカデミーに入学したジョンもしくはリリー*2もプレイヤーと一緒に習って描いたイラストをクリア後に見せてくれるのだが、その出来は 腹筋崩壊級の 極めて独創的なものばかり。
      • しかし、優しいアンディ先生は「絵は楽しんで描くのが一番大事」だということを教えてくれて、絵を描く事で大事な心構えをしっかり教えてくれる。
  • どのレッスンでも一から丁寧に、かつツールを使いやすく最適化して受講出来る。
    • 実際に描く際は、どの画材を用いるかを教えてくれた上で、必要最小限のツールやサイズを選んでくれる。
      着色もそのレッスンで用いる色を予め選りすぐってくれるため、お手本と全然違う線や色になってしまった…という事故を未然に防いでくれる。
  • 多種多様なポケモンのイラストやアドバイスが盛り沢山
    • 本作当時最新作『ポケットモンスター X・Y』時点のポケモンから100種類前後収録されている。当時の目玉要素「メガシンカ」形態のポケモンも一部収録されている。
      --収録されたポケモンの一部はアンディ先生がそのポケモンの生態、個性をしっかり教えてくれた上で、作画において重要な技術をアドバイスしてくれるため、ポケモンイラストに最適化された内容で受講出来る。
    • 発売後に無料DLCで追加ポケモンのお手本も収録された。『ORAS』から、おきがえピカチュウのお手本等が配信されていた。
  • 非常に優しく丁寧、かつ成長感を与えてくれるアンディ先生のご教授
  • 上記のアドバイスはもちろん、ステップアップする度に受講済みレッスンの応用を踏まえた課題を出してくれる。
    • しっかり基礎を固めた上で、応用することで難しそうなイラストも応用の繰り返しで仕上げることが出来るため、本作クリア時には成長を実感させられるイラストを生み出せる。

賛否両論点

  • レッスンで合格しないと、お手本で用意されたポケモンはフリーイラストに登場しない。
    • リザードンやルカリオといった人気の高いポケモンはレッスン終盤にならないと登場しないので最初から好きに描くことはできない。
      • しかし最初から大きさや装飾の多いポケモンを描くのは途中で飽きて投げてしまう可能性があるため、難易度調整としては適している。
  • SDカード内の画像は基本的にトレース出来ない
    • 撮影した画像は3DSの上画面固定で表示される。グリッド表示は可能だが、トレース機能は無い。
      別の方法として「背景を選択」→「SDカードの画像」で下画面に表示させることは可能。
    • しかしトレースは画力の成長・向上には芳しくないためトレースし辛いのは一概にも悪いとは言えない。
  • 3DSの仕様上、仕方のないことだが筆圧感知機能は存在しない。筆のサイズも予め決められた4つのサイズから選択して描く。

問題点

  • 採点や判定は無い
    • レッスン後には採点や判定のシステムは無いため、上手く描かなければ先に進めないといったゲーム性は皆無。まったく指示を無視して少しだけ描く→次に進むを繰り返せばアカデミーを卒業できてしまう。
    • あくまで本作はレッスン付きのペイントソフトであり、絵心や画力が身につくかはプレイヤーが真面目にレッスンに取り組むかどうか次第。
  • お手本となるポケモンのパターン数が少なめ
    • お手本として描けるポケモンは100種類以上いるが、全体の数からすればやや少なく感じる。またいずれもポーズは1種類につき1~2つ程度で、一番多いピカチュウでも4~5種類程度。
    • アンディ先生が他の構図を描くアドバイスは教えてくれるが、本作単体では他の構図の資料等はないため、他のポーズで描きたい場合は各自で資料を用意する必要がある。
      • お手本も、いずれも正面絵ばかりで後ろ向き姿のお手本は一切無い。
  • お手本イラストを拡大表示できない。New3DSLL・New2DSはまだしも3DS・2DS辺りは画面も小さく使いにくいプレイヤーもいた。
  • 保存形式はjpegのみとなり、png等の他の拡張子では保存出来ない。
  • 描いたイラストは必ず右下に本作のロゴが挿入され、いかなる手段を用いても削除出来ない。
  • フリーイラストモードで描く場合は、描き方が最初に短くイラストで示されるだけであり、説明不足気味。
  • 描けるサイズは全て基本的な長方形サイズのイラストのみであり、ポケモンカードの上位レアリティにあたるSAR、SR、ARといった券面全体に描かれたイラストは描けない。
  • 搭載されているだけマシだが、レイヤーが合計2枚と非常に少なく下書きも着色の関係上、上から塗り潰すこととなってしまう。

総評

「絵を学ぶ」というとどうしても堅苦しい印象になってしまうところを、老若男女に人気な『ポケモン』を用いることでぐっとハードルを下げた作品。ペイントソフトとしても初心者向けとしてシンプルかつ最低限の機能を備えている。
イラスト初心者や低年齢層に、ポケモンを通して絵を描く楽しさを教えてくれる入り口となるソフトと言えるだろう。 現在ではタブレットの普及にスペック向上、かつ無料ペイントソフトも充実しており、3DSの本作はペイントツールとしての需要は低下しているが
ポケモンイラストを専門とした本作は現在でも唯一無二の存在のため、ポケモンイラストを極めたい、学びたい人には現在でもおすすめ出来る一作。


余談

  • 本作の発売数ヶ月後にイラストコンテストが開催され、入賞者は東京・台東区の「上野の森美術館ギャラリー」にて展示されていた。
    同会場ではポケモンカードイラストレーターの有田満弘氏によるライブペインティング(お絵かき実演)も公開されていた。使用ソフトは本作と3DSを用いて行われた。
  • 2014年と、2019年からクリーチャーズ主催でポケモンカードのイラストコンテストが開催されている。
    • 第一回イラストコンテスト最優秀賞者のイラストは本物のポケモンカードとなってポケモンセンター、ポケモンストア等で商品購入の際に配布されていた。
      • 現在はアプリゲーム『Pokémon Trading Card Game Pocket』にてリメイクカードとなって配信されている。
  • 2019年以降に開催されたイラコンでは本作そのままでの応募出来ないが、規定のキャンパスサイズに合わせれば使用ソフトは問わないため(一応)応募は可能となっている。
  • しかし技術向上も相まってキャンパスやピクセル数が大型化した現在では本作のイラストは小さく仕上がるため、コンテスト応募には適していない。
  • 2016年に同コンセプトで『ディズニーアートアカデミー』が発売された。
    • 基本的には本作のモデルをディズニーキャラクターに差し替えたものだが、ディズニー特有のエフェクト(キラキラ)等をペン1つで使えるようになっている。
    • 他にレイヤーが4枚に増えたりUIが改良されていたりと本作のバージョンアップ版と言えるだけの改良がなされている。
    • こちらも当時の目玉作『アナと雪の女王』までのディズニーキャラクターや『トイ・ストーリー』等のPIXAR作品も収録されている。
      • 権利問題の関係か、現在では任天堂公式HPの紹介ページではディズニーキャラクターは一切表示されていない。(本作ポケモンは現在でも閲覧可能)
最終更新:2024年12月11日 19:30

*1 アウトラインペン・マーカー・鉛筆・スプレー・パステル・絵の具・サッピツ・消しゴム

*2 それぞれ少年と少女で、プレイヤーとは逆の性別のキャラが登場する。