霊界導士 Chinese Exorcist
【れいかいどうし ちゃいにーずえくそしすと】
| ジャンル | 対戦格闘ゲーム | 
| 対応機種 | アーケード | 
| 発売・開発元 | ホームデータ | 
| 稼働開始日 | 1988年 | 
| 判定 | クソゲー | 
| 怪作 | 
| ゲームバランスが不安定 | 
| ポイント | 出るのが早すぎた格ゲー 人形劇
 手抜きな作り
 演出が不気味
 日本一
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概要
麻雀ゲームで定評のあったホームデータ(現:魔法)製作の対戦格闘ゲーム。
3ボタン使用の8方向レバー。レバーでプレイヤーの移動、ボタンはそれぞれパンチ・キック・ジャンプを担当する。
カプコン制作の初代『ストリートファイター』の翌年に発売された作品である。
特徴
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プレイヤーは主人公(名称不明)を操作し、全8ステージに待ち受ける対戦相手を倒すのが目的。
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対戦格闘ではあるが、珍しく残機制を採用している。
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残機は左下に表示される。制限時間内に相手の体力を0にすればこちらの勝ち。
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こちらは残機がある限り何度でも再挑戦出来るが、次のステージに進むには相手から一本取るだけでよい。
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時折画面の上方を鳥が横切り、お札のようなアイテムを落としていくことがある。
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赤いものは体力がいくらか回復するが、黒いもの(ドクロのマーク付き)は誤って取ると体力が激減して一気にピンチに陥る。
 
 
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グラフィックが全体的に実写取り込みを用いたような感じ、キャラクターおよびアニメグラフィックは人形をコマ撮りして取り込んだ画像で構成されている。
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本作に登場する敵はラスボスである「泰始皇帝」を除いて全員死人(キョンシー)という設定である。
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対戦前にその対戦相手の没日や必殺技が表示される。中には「人外魔境拳」という厨二心をくすぐるような名前の技を持った敵もいる。
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そしてラスボスである「泰始皇帝」が背中に付けている旗には「日本一」という文字が書かれている。仮にも中国を舞台をしている筈なのに何故に日本?
 
問題点
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作りが雑。まず目につくのがアニメーションパターンの少なさだろう。
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グラフィック自体も綺麗とは言い難い。実写取り込みである部分はともかく、体力バーやタイトル画面、文字フォントは原色ベタ塗りで精彩が感じられない。
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デモプレーもお互いに全く当てる気のない攻撃を繰り出したり、ぴょんぴょん飛び跳ねているだけで全く面白そうに見えない。
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しかもデモプレーのパターンはこの1つだけ。やる気が感じられない。
 
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キャラクターの挙動もおかしい。同じ攻撃を喰らっても吹っ飛び方が違ったり、直立不動の状態で空中浮遊したり、このゲームには物理法則というものが存在しないのだろうか?
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敵側のキャラが画面外に出た場合、なんと画面の逆方向から出てきて奇襲をかけてくる事がある。色々な意味で汚いゲームである。
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それでもプレイヤーが常に敵のいる方を向くのがせめてもの救いか。
 
 
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演出も一言で言ってしまうと「気持ち悪い」。
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タイトル画面ではゆらゆら動く「霊界導士」の文字と共に24個のキョンシーの顔がクルクル回ったりこちらを向いてベロを出したりする。奇怪なBGMや間抜けな掛け声(?)が相乗してまさにサイケの極みとも言うべき演出である。さらにタイトルロゴ周りもどぎつい配色で目に悪い。
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そして極め付けはクレジット音。「ハッハッハッハッハッ!」という老人の笑い声である。怖い。
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これらの気味の悪い演出で本作を敬遠する人もいるのではないだろうか?
 
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2面の対戦相手は8ドット単位のパーツが集まって構成されるという演出があるが、集まる際に微妙にパーツの配列がずれておりこれも非常に不気味である。
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一応キャラクターが喋るのだが、敵側はほぼ使いまわしの上、主人公の声に至ってはやる気の感じられない声であり、脱力感が半端でない。
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どちらか片方の体力が0になると、0になった側のキャラクターの首がポロンと取れる。妙にスプラッタである。
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コンティニューの画面は、主人公が死人となり不気味な音楽が流れる中で10本の蝋燭の火が右から1つずつ消えていくというカウントダウン方式であるが、これもプレイヤーの恐怖を誘う。
 
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ゲームバランスも大雑把。
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CPUの思考ルーチンに激しくムラがあり、ただパンチやキックを繰り出しているだけで相手を倒せる時もあれば、全くダメージを奪えず相手のパーフェクト勝ちになる事もある。
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コマンド入力による必殺技も存在するが、入力判定が厳しいのかはたまた後述するキーレスポンスの悪さのせいなのか全然出ない。
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通常のパンチとキックだけではほとんどダメージを奪えないので、後半面は時間切れになりやすい。
 
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一応、特定の部分を狙う事で一撃で敵を倒す方法もあるが、敵はこちらと違ってフリーダムに動き回る為に狙える機会がなかなかない。
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前述のとおり時折アイテムが出現するが、落下速度が速めの上に地面に残らずそのまま画面下へと消えてしまうので、落ちたのを確認してから拾うのが困難である。
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アイテムを落とす鳥を追いかけて落下地点で即座に回収できるようにするという手もあるが、それがマイナスアイテムだったりするとかなり痛い。
 
 
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操作性もほぼ最悪と言ってもよいほどに酷い。キーレスポンスが悪く思ったようにプレイヤーを動かせない。
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ジャンプの仕様が『魔界村』と同じような空中制御が利かないタイプなので、あまりジャンプはしない方がよい。
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パンチもキックも強弱が存在しない上に隙も大きい。キーレスポンスの悪さと相まって操作にはかなりの慣れが必要。
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その癖、敵側のキャラクターは自由に飛んだり画面外から不意打ちをかけてきたりとやりたい放題。この扱いの差は何か。
 
 
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BGMや効果音の出来も良いとは言えない。キンキン鳴る電子音が耳障りという評価が大半である。
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音が非常にショボく、攻撃が当たったのかどうかがはっきりしない。故に爽快感に欠ける。
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ただ、曲調自体はチャイニーズテイストであり本作の雰囲気に合っていると言える。
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だが、楊貴妃戦でのBGMはなぜか
1930年代のラテン音楽である「タブー」
。「どこがチャイニーズテイストやねん!」と突っ込んではいけない。
 
評価点
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レバーとボタン式の操作形態をデフォルトで搭載しているところ
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初代『ストリートファイター』はレバー+感圧式ボタンというデバイス構成であり、1レバー+6ボタン式でも稼働していたもののそれはあくまで故障した場合の代替え措置的なもの。1レバー+6ボタン式を正式実装するのは91年の『II』からである。
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コマンド入力による必殺技もこの当時の対戦アクションにおける試みとしては先進的。
 
 
総評
本作は格ゲーブームが来るよりも前に作られた作品である。この時期に、珍しい格ゲーを世に送り出したホームデータの挑戦意欲は評価してもいいだろう。
しかし、キーレスポンスが非常に悪い、爽快感が全然ない、曲も音もしょぼい、見た目が不気味と何から何までやっつけで最早完成品かと疑いたくなるレベルで酷いゲームである。
まだ時代が格ゲーブームで無かった事もあって、ゲーセンでのインカムも全くもって振るわなかった。
レスポンスの悪さや爽快感のなさは、格ゲーブーム前の作品でメーカーにノウハウがなかったゆえ仕方ないとも思えるところだが、せめてもっと絵面がまともならばまだユーザーの印象に残っていただろう。格ゲーブーム前の作品ということである意味、惜しい作品である。
余談
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(元)開発者のブログによると、元々はボクサーが空手やプロレスラー、はては熊と戦う異種格闘技戦を企画していたらしい。
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しかし社長の鶴の一声で没にされた挙句とっくにブームの過ぎていたキョンシーをテーマに作れと命令される羽目になり、モチベーションの低下は相当なものだったらしい。こうした裏事情が作品の酷さに影響していたであろうことは想像に難くない。
 
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インストカードには「さらわれた妹を助けに行く」といった目的が書かれているが、その妹はEDも含めてゲーム中には全く登場しない。
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当初の予定ではステージをクリアする度に妹の脱衣CGが表示される仕様だったそうである。製品版では削除されたのが残念ではあるが、先述の開発者のブログの内容を見る限りだと...採用されても微妙だったかも知れない。
 
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ホームデータはこの3年後、横スクロールアクションゲーム『バトルクライ』をサンプル出荷として非公式にリリースした。
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皮肉な事にこの作品、上記の元開発者が企画していたような異種格闘技戦を題材としたテーマだった…が、こちらも基本設計が非常に雑で、本作と同じく駄作のそしりを受ける事となった。
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「本作のような不気味さがない分『バトルクライ』の方がマシ」という評価の声もあるが…。
 
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さらに同社はこの後、『餓狼伝説 宿命の闘い』のX68000への移植を手掛けている。ちなみに同社が設立10周年を機に社名を「魔法株式会社」へ変更し、その直後に発売した最初のソフトでもある。
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こちらはタカラのSFC移植とは比べ物にならないほど移植度は良好。それまでの教訓は着実に生かされていると言える。かなり好評だったこともあり、『餓狼伝説2』、『餓狼伝説スペシャル』のX68000への移植も後に手がけている。
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惜しむらくは、これら初期『餓狼伝説シリーズ』を最後に格闘ゲームを一切作っていないことか。
 
最終更新:2023年04月03日 20:04