ジーコ サッカー
【じーこ さっかー】
| ジャンル | サッカーゲーム |  
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| 対応機種 | スーパーファミコン | 
| メディア | 8MbitROMカートリッジ | 
| 発売元 | エレクトロニック・アーツ・ビクター | 
| 開発元 | エレクトロニック・アーツ | 
| 発売日 | 1994年3月4日 | 
| 価格 | 9,800円(税抜) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 周辺機器 | スーパーファミコンマウス対応 | 
| 判定 | クソゲー | 
| ポイント | 明らかに浮いてる鹿島アントラーズ 対戦プレイ無し
 扱いにくいカーソル・UI
 ルール破綻
 実は監修していなかった疑惑あり
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概要
94年、前年の日本プロサッカーリーグ「Jリーグ」発足に伴うサッカーブームに乗じて作られたサッカーゲームの1つ。
開発・発売を手掛けたのは、同年にメガドライブで『FIFA インターナショナルサッカー』も手掛けたエレクトロニック・アーツ。
今作は他のサッカーゲームとの差別化として、選手の直接的な操作ではなく「第三者によるシミュレーション的な指示操作」というユニークなシステムを採用しており、加えて当時鹿島アントラーズの選手だったジーコ氏の監修を謳っていた(ただし疑惑あり、詳細は後述)。キャンペーンとして、本作を購入した人やゲーム内のモードをクリアした人に抽選でジーコ氏の直筆サイン入りグッズをプレゼントする企画も行った。
なお、省かれることも多いが、ロゴや説明書にある通りタイトルは『ジーコ サッカー』とスペースが入るのが正式である。
特徴
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本作は選手を直接操作するのではなく、カーソルで選手に移動や行動を指示することで試合を進めていく。
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指示を与えない限り、自チームはボールを追いかけるだけで、ボールを取っても棒立ちになるため、プレイヤーの操作が不可欠。
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メイン選手以外にサポートを指定することで、攻める際に近くに来させたり、GKを操作することも可能。
 
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選手は移動やドリブル、シュートなどの行動を多く取ると疲労が溜まって動きが鈍くなる。時間経過で回復するが、ほんの少しずつなのである程度の疲労は目を瞑らなければいけない。
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モード
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EAカップ
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鹿島アントラーズを除く24ヶ国のサッカーチームを選択し、一次リーグで他の4チームと試合をして得点差を競う。
 上位2チームは決勝トーナメントへ進出し、更に勝ち続けると優勝となる。
 
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ジーコカップ
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鹿島アントラーズを含む25個のチームの中から1つ選び、他チームを相手に24連勝すると優勝。応募でグッズが貰えたのはこちらのモードである。
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前述のEAカップを含め試合時間が固定となっており、前後半含め1試合20分となっている。最低でも8時間はかかる計算。
 
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エキシビション
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CPUとの対戦モードで、唯一時間設定が適用される。1人専用なので対人戦は出来ない。
 
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トレーニング
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相手チームと1人対1人で自由に操作出来るモード。ゴールキックの練習も出来る。
 
 
問題点
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内容が薄い
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移動などを指示するという操作の都合なのか、対戦モードが存在しない。よって必然的に1人プレイ専用となる。
 ならばそれを補完するほどのボリュームがあるかといったらそうでもなく、どれもCPUと試合をする程度の内容でしかない。
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トレーニングを除いた場合選べるモードはEAカップ、ジーコカップ、エキシビションの3つ。
 これらをクリアしても特に隠し要素などは無く、1人でやるにも盛り上げる要素が無いので飽きやすい。
 
 
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操作性が悪い
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メニューを含む全ての操作でカーソルを動かす必要があるのだが、これが操作性が悪くイライラする要素の1つになっている。
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試合中の下のコート画面における選手を操作するのが主になるが、そうなるとそれぞれが当たり判定含め小さいので合わせるにもチョン押しなど繊細な操作が求められる。
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別売りのスーパーファミコンマウスを使うと若干操作しやすくはなるが、各選手の当たり判定が小さいことに変わりはない。
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操作のほとんどをプレイヤーに委ねられるため、操作中は非常にやることが多く複雑。直感的な操作ではないため覚えるまでに時間がかかりやすい。
 
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キーパーの守備範囲が不自然に広い
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キーパーの意表を突かない限り、ボールが吸い込まれるように取っていく。そのため守備範囲が広く得点が入りにくい。また味方側の方がややセーブ率が低い。
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効率的に入れる場合、ゴールポストを跳ね返らせ、その隙にゴールに入れたり端から無理矢理入れる必要がある。
 
 
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現実のルールとの乖離
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チーム1つにつき11人しかおらず、「ベンチメンバーと交替する」という概念が存在しない。どれだけ選手が疲労しようが引っ込めることは出来ない。
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一応フォーメーションは試合前に変えることが出来るが、ポジションを事前に変えることは出来ない。
 
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イエロー、レッドカードも存在せず、どれだけ反則しようがセットプレイになるのみ。
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オフサイド違反も存在しない。そもそもAI自体がボールより前に行くので、意図的なものであると思われる。
 
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スピード感の無さ
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選手やボールのスピードが共に遅く、スピード感に欠ける。オプションで試合のスピードをスローもしくはノーマルに設定できるが、ノーマルでもあまり変わらない。
 
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根本的にNPCの頭が悪い
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プレイヤー側にボールが渡ると基本的にスライディングを駆使して追いかけるのだが、自分側の陣地のセンターサークル近くでグルグル回っていると、敵側は最も近い選手1人のみが追いかけてきてボールを取ろうとする。
 他の選手は棒立ちで何もしないため、最後までこれで逃げ切ることも可能。
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位置によっては、ゴール手前で相手選手にスライディングさせ、ボールをわざと奪わせるとオウンゴールを誘発することが出来る。
 
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UIが不便
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メニューも含めてマウスカーソルを操作して選択するが、メニューの各項目が細長くまた見た目より判定が小さいので選びにくい。
 ボタンでの選択は一切出来ないため、選択するにもやや時間がかかる。
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また、メニューでモードなどを選ぶとジーコが「よし わかった!」といちいち表示されるのもテンポを損ねている。
 
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各モードを選ぶと戻ることが出来ない。つまりキャンセルが出来ないため、もしモードを間違えたらリセットした方が早い。
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試合中もポーズしてもゲームが止まるだけ。特に操作できることも無い、休憩のためのポーズとなっている。
 このため、試合やトレーニングを止めたい時でもリセットを押す必要があり面倒。
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EAカップ、ジーコカップを途中で中断する時はパスワード。コンフィグ設定はセーブするが、途中経過のセーブ機能は無い。
 パスワードは英文字+数字だが、15文字と長く先述のカーソルの問題から入力するにも時間がかかる。当然、事前に書き留めておかなければ最初から。
 
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鹿島アントラーズの扱いが雑
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当時ジーコ氏が所属していた鹿島アントラーズが協力しているためか、鹿島アントラーズのみ全て実名である。
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だが外見で特徴分けされていることは無く、試合中では下の全体画面での数字を見なければ、どれがどの選手なのか分からない。
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他チームは何故か国代表チームであり、ジーコカップではこの中で操作もしくは対戦するチームの1つになっている。何故Jリーグ内でやらないのか?
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鹿島アントラーズの扱いもちぐはぐで、EAカップでは使用不可。
 
 
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各選手の個性の薄さ
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先述の外見分けの無さは他チームでも同様であり、どれが誰かは一見して分からない。
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また鹿島アントラーズ以外は偽名で、名字のみである。
 
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各選手には能力値が設定されているが、これらは無いも同然で違いが分かるほど差は無い。
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何故か鹿島アントラーズは能力値が非公開となっている。
 
 
評価点
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鹿島アントラーズを操作できる。
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アルシンド・秋田豊・本田泰人など、現在では離れてしまった当時の選手を間接的に操作できる。
 
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「指示」を主幹にした斬新さ
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選手を直接的に操作するアクション要素の大きいサッカーゲームがほとんどだったことから、戦略を重きとしたシミュレーション的なゲーム性を目指した着眼点は悪くなかったと言える。
 肝心の出来が悪いため受け入れられなかったのが純粋に惜しい。
 
総評
当時の「SFC全盛期」「サッカー人気社会現象」に乗っかろうとしたものの、操作性・UI・爽快感など必要とされる要素が前年代のスポーツゲームにも劣っており、「粗製乱造ゲーム」の域を出ないまま終わった曰く付きの一品。
クソゲーとしてのネタも特筆する部分があるわけではなく、単純につまらないというどうしようもないもの。
当時のSFCソフトは価格が1万円前後のものが多かったとはいえ、この内容では9800円という値段に相当するとは到底言えないだろう。
余談
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生産量に対して全然売れなかったのか即ワゴン行きとなり、早期から値崩れして販売されていた。店によっては新品が10円で売られていたという話も。
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さらに本作のROMカセットを利用し、中身を挿げ替えて非ライセンスゲーム
『SM調教師瞳』
シリーズを製作していたメーカーが存在した。詳しくは「非公認ゲーム」を参照(18禁のアダルトゲーム且つグロテスクな描写の解説もあるため閲覧注意)。この非ライセンスゲームが一部で有名となり、「元となったジーコサッカーがクソゲーなのは知っているが内容までは知らない」という人も多い。
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本作が選ばれたのは「生ROM(データが何も入ってないROM)を入手するより投げ売り状態で大量入手できるジーコサッカーを書き換えたほうがコストが安く済むから」だったと言われており、本作のクソゲーぶり・大暴落ぶりを象徴する逸話でもあった。
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2020年6月に発売されたゲーム雑誌「ゲームラボ 2020春夏」にて、非公認ゲームの制作スタッフが打ち明けたところによると、差し替えに使ったジーコサッカー(約20万本)は全て新品だったらしい。
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問屋が大量に仕入れたが小売店が全く買ってくれず、発売日前に一本300円で業者に叩き売られたという。
 
 
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本作だけを集め、数百本を所持する人物及びサークルが存在する。詳しくは「ジーコ神社」で検索。
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あまりに買い占めたためか、Amazonでは販売価格が上昇している。
 
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翌年にはほぼ同じシステムを使いつついくつか改良点を加え版権要素を取っ払った『タクティカルサッカー』というSFCタイトルが同社から発売されている。
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売りの版権要素もなく上記の件もあり流石に問屋等に警戒されたのか流通数が控えめのため、そちらは中古ショップでもあまり見かけない。
 
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EAカップを優勝すると「FOOTBALL DREAMS FOREVER」というパスワードが出る。これを応募ハガキに書いて送ると抽選で直筆サイン入りグッズが当時貰えた様子。
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現在となっては選手だけでなく日本を含んだ代表監督を務めていた経験もある氏のサイン入りグッズの方が、本作の価値より遥かに高いのは間違いない。
 
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本作はタイトルに「ジーコ」が付くのはもちろん、パッケージには「ジーコ監修」「「世界のジーコ」がゲーム開発に参加」と堂々と書かれ、起動時に「SUPERVISED BY(ジーコ氏のサイン)」と表示されるなど、ジーコ氏による全面的な監修を押し出している。
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しかし、2013年にスマホゲーム『Zico: The Official Game』が発売された際の4Gamerによるインタビューでは(おそらく本作を引き合いに出して)以下のように述べており、本作での宣伝の正確性に疑問がつく内容となっている。
4Gamer:あの……,日本のゲームファンがとても気にしていることがあるので,教えてください。
 かつて,ジーコさんの名前を冠したサッカーゲームがあったと思うんですが,それと今回の作品との大きな違いはなんでしょうか。
 
ジーコ氏:いえ,今回が初めてですよ?
 
4Gamer:えっ?過去にあったと思うのですが……。
 
ジーコ氏:ああ。そういった作品はあくまでプロモーションなどに少し協力しているだけで,“私のゲーム”ではないんです。これは私にとって初めての,“私のゲーム”であり,私の人生,私の技術が凝縮されているものなんです。なので,根本的に大きな違いがありますね。
 
 
 
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今作のスタッフはほぼ日本人で固められており、比較的歴史の浅い日本支社「エレクトロニックアーツ・ビクター」主導で開発されたようである。
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先述の実質的続編『タクティカルサッカー』も同様。
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本家に当たる北米のEAは『EA Sports』ブランドで知られ、『FIFAシリーズ』や『マッデンNFLシリーズ』といった長年に渡る人気シリーズを送り出しているのだが、今作にはあまり関わっていない可能性が高い。
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後年EAより発売された都市開発シミュレーションゲーム『シムシティ3000』には、「electronic arts」をチートコードとして入力すると「もうスポーツゲームはこりごりだ」というメッセージが流れる、というお遊び要素があるが、これは単純にEA Sports作品の製作に飽き飽きした上でのコメントと見られ、『ジーコサッカー』の失敗は無関係と見られる。
 
 
最終更新:2024年12月31日 16:42