西村京太郎ミステリー ブルートレイン殺人事件
【にしむらきょうたろうみすてりー ぶるーとれいんさつじんじけん】
| ジャンル | アドベンチャー |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| 発売元 | アイレム | 
| 開発元 | トーセ | 
| 発売日 | 1989年1月20日 | 
| 定価 | 6,500円 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | グラや雰囲気の再現は良好 不運すぎる犯人
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| 西村京太郎シリーズ | 
 
概要
『山村美紗サスペンスシリーズ』同様、推理作家の名を冠したゲームシリーズの第1作。
氏の代表作の一つ「十津川警部シリーズ」を題材にしており、定番の登場人物の登場するトラベルミステリーとなっている。
ストーリー
「ブルートレイン」の車内で起こった私立探偵の他殺事件を調べるうちに、3人の腕利き刑事たちは次々と新しい難事件にぶつかる。
足とカンを頼りに地道な聞き込みが続けられたが、現れた容疑者たちにはいずれも完璧なアリバイがあった…。
(チラシより)
特徴
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システムは標準的なコマンド選択式のADV
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画面内を調べる場面では、カーソルを移動させて場所を指定する。
 
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3人の刑事によるザッピングシステムになっている。
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最初の事件を調べる亀井刑事、次の事件を調べる西本刑事、事件が絡み合ってきた辺りで動き出す十津川警部の3人を操作する。
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コマンドの中に「ひとかえる」という物があり、これを選択する事で、操作する刑事を切り替える。
 
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人物の立ち絵は主に顔のアップで描かれ、ドラマの俳優を再現した顔グラフィックになっている。
評価点
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原作の雰囲気は良く出ている
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FCとしてはグラフィックのクオリティはそこそこ良い。三橋達也そっくりの十津川警部、愛川欽也そっくりのカメさん、森本レオそっくりの西本刑事等、テレビドラマシリーズで演じた俳優陣の顔グラの再現度は中々のもの。
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複数の大人の刑事たちが主人公の原作という事もあり、聞き込みの場面等、他のゲームにはない独特の雰囲気も出ている。
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色々な場所で容疑者の指紋を採取し、証拠物品と照らし合わせる等、警察の捜査らしさもよく出ている。
 
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一か所作者の西村京太郎本人が出る場面もあり、十津川警部にアドバイスをしていく。
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一部を除きサクサク進むので、シナリオに集中しやすいのも良い点。
 
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ザッピングも上手くシナリオに嵌っている。
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それぞれの事件を調べる内に共通点や双方に関係する人物が出てくるため、シナリオを追うのはなかなかに楽しい。
 
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BGMもまずまずの出来
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事件が急展開を迎えた時には緊迫感のあるBGMも流れる。
 
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ある程度動きのあるグラフィック
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口パクや、苦しむ人物の足の動き等、一部の場面ではきちんと動きのあるグラフィックが使われている。
 
問題点
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シナリオの一部にはツッコミ所もある
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犯人の一人を追い詰める為の物証が警察に都合の良すぎる出方をしている。
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「自宅にいた」という犯人の証言を覆す証言は、向かいの家の奥さんがその日たまたま深夜に旦那を迎える為に家の玄関を出ていたので、犯人が出かけるのに気づいた。
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犯人が問題の電車に乗った証拠は、該当の駅には毎日深夜に写真を撮りに来ている鉄道好きの少年がおり、撮っていた写真の中にたまたま犯人が乗り込む所が見事に写っていた。どちらの点も犯人が目立つミスをしたり、問題を回避できる事を運に頼ったわけではなく、不運によりたまたま目撃されてしまっている。それ以前に毎日深夜に来る子供は捕導しろ。
 
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また、原作からして時刻表と別の移動手段をうまく組み合わせたりとパズル的な要素が強くはあるが、やはり本作も時刻表トリックに少々無理がある。
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電車を乗り換える為に夜行列車の運転停車を利用するところまではともかく、そんな特殊な所で降りているのに誰にも見つかっておらず、その後長距離を車で移動してギリギリ間に合わせるという一か八かの策を披露している。万が一、渋滞に巻き込まれたり検問で引っかかるなどで時間を喰うような事があれば間に合わないのだが…。
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ただし、「都合よく証拠・証人が出る」「無理のある時刻表トリック」は西村京太郎氏の作品で多用される展開であり、ある意味では作風の再現、とも言える。
 
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ラストシーンで自宅で殺されかけるアイドルを救った後のシーンでは、解決後に事情を聞くために警察に来てもらう事になるのだが、乱れた服装にコートをかけてあげた状態でパトカーに乗せようとしている。襲われた女性の定番姿ではあるが、自宅にいるにもかかわらずその格好のまま出ていくのは不自然極まりない。
 
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捻りのない展開
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怪しそうな人物はそのまま怪しく、人の良い人物はそのまま良い人間。殺人事件が何件か起きはするが、事件が二転三転するといった事はなく、そういう意味では少々淡泊なシナリオ。
 
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安定しないグラフィック
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俳優の再現は良く出来ているが、一部の場面で使われるイベントCGの出来はあまり良いとは言えない。場面場面で別人のように見える時もあり、安定性という意味では微妙な出来。
 
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一部には少々詰まりやすい場面もある
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容疑者の指紋を集める為に、色々な場所で取っ手やライター等をタイミングよく調べる必要がある。
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あらかじめ「そうだ、今なら指紋を…」といったようなサポートは出ず、取って初めて「そうだ、これなら指紋が取れるはず」といったメッセージが表示される。その為、何故進められないのかに気づきにくく、とにかく画面中を調べてようやく進められたといった事も多い。
 
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ある程度のヒントは出るものの、時刻表トリックを解く場面では、「どこまで待って降りるのか」「何駅に向かうのか」「高速を使うか否か」の選択肢を正解するまで何回も最初からやり直すことになる。経費がかさむ。
 
総評
刑事たちのグラフィックや足を使った捜査シーン、時刻表トリック等、「十津川警部シリーズ」のFCゲーム化という意味ではそれなりによく出来ている。
しかしシナリオにツッコミどころが多く、捻りもない。また、一部の場面では詰まってしまいやすいのが残念な点。
決して悪いゲームではないのだが、色々な点であと一押し足りなかった残念な一作である。
余談
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今作を皮切りに西村氏の作品を題材としたゲームはシリーズ化を果たし、2009年までに6作品(リメイク除く)が発売されている。
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西村氏の鉄道ミステリーの第1作が『寝台特急殺人事件』(と書いてブルートレイン殺人事件、と読む)だが、『山村美紗サスペンスシリーズ』同様、内容はほぼ別物。
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同年1月7日に昭和天皇が崩御し「平成」という新しい時代となった。
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本作に先んじて1月14日にファミコンディスクソフトで『ハレーウォーズ』(タイトー)、PCエンジンソフト『ビジランテ』(アイレム)が発売されており、これが平成発売のゲームソフト第1号だがともにアーケード既存作の移植。
 そのため本作が同日発売の『里見八犬伝』(SNK)と並んで平成初の記念すべきゲームソフトという見方もできる。
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どちらの解釈でもアイレム発売の作品が「平成ゲームソフト第1号」という称号を勝ち取ったことになる。
 
 
最終更新:2025年04月12日 00:18