里見八犬伝
【さとみはっけんでん】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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エス・エヌ・ケイ
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開発元
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アルファ電子
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発売日
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1989年1月20日
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定価
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5,900円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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おろかものめ! しに、いそぐな!
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概要
滝沢馬琴の小説『南総里見八犬伝』をモチーフとした和風RPG。
仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の8つの球を集め、悪霊の玉梓を打倒するのが目的。
東映動画/マイクロニクスの『新・里見八犬伝 光と闇の戦い』と混同される事がしばしばあるが、関連性は無い。
ACTを中心にリリースしてきたSNKにとっては初のRPGでもある。
特徴
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プレイヤーは犬塚信乃(名前は4文字で変更可能)となり、他の八犬士達と出会いストーリーを進めていく。基本的にはドラクエタイプのRPGとなっている。肥後(熊本)から陸奥(青森)まで、日本全国を旅する(北海道を除く)。
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なお、パーティに加入するのは犬飼現八、犬川荘助、犬山道節の3人。他の4人はNPC扱い。
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ゲームの進行はほぼ一本道ではあるが、一応レアアイテム収集や特殊なアイテムを入手する等の寄り道要素等もある。
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特徴的なシステムとして「りょうしん(良心)」というパラメーターがあり、敵の妖怪を倒す事で増減する。
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敵妖怪には善玉と悪玉の2種類がおり、善妖怪を倒すと下がり、悪妖怪を倒すと上がる。悪い妖怪ほどもらえる良心が多い。
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善妖怪は戦闘中に「はなす」事で有益な情報や道具をくれる。
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主人公はこの良心値が0以上で善人、-1以下で悪人とみなされ、村人の会話やストーリー進行にも影響を及ぼす。
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また、良心値が高いと敵妖怪が道具を落とす確率が高くなる。
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レベルアップ時のパラメーター(HPとMPのみ)の上昇値はルーレットによって決まる。
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当然、低い値ばかり当ててしまうと難易度は上昇する。
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他のパラメーター「こうげき」「ぼうぎょ」「すばやさ」は任意にポイントを割り振れる。
評価点
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戦闘時の台詞が凝っている。
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攻撃時、味方側であれば「これでも、くらえ!」「おまえなんか、きらいだ!」、敵側は「おろかものめ!」「しに、いそぐな!」といったバリエーションのある台詞を発し、戦闘の雰囲気を盛り上げる。
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なお敵側はどのキャラクターに攻撃するかで台詞が変化する。
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回復アイテムが充実しており、入手も容易。
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HP全回復、MP全回復、HPMP全回復なども存在し、高値だが市販もしている。
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アイテムコレクションの楽しみ。
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本作は妖怪からしか入手できない武器防具が多く、中には入手するとゲームバランスが大きく変わる程に強力なものもあり、収集しがいがある。
問題点
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NPCである他の4犬士の扱いが悪い。
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親兵衛と角太郎は既に故人、毛野と小文吾は目の前で殺されるという悲惨さ。
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特に毛野の扱いが悪く、ある洞窟の奥で主人公一行を待っており、話しかけると「一緒に行きましょう」という趣旨の発言をして先行した挙句敵の攻撃を受け「私はもうダメです」と台詞を残しあっさりとこの世を去る。折角出会った八犬士が勝手に先走り勝手に死んでいくその様はもうどこから突っ込めばいいのかわからないものとなっている。
断末魔が「げぼ」でないのが唯一の救いである
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戦闘面のバランスがやや大味。
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全体的に敵妖怪の強さのインフレが激しい。新しい村で購入できる最高の武器防具を購入しても、レベルが2~3上がるまでは苦戦するという事も多々。
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敵妖怪に不意打ちを喰らう事があるのだが、この時に全体攻撃呪文を連発されると全滅する危険もある。
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また、善妖怪も不意打ちを食らわしてくる事がある。善妖怪は基本的に攻撃力が高く設定されているので、思わぬ被害を被る事も。
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逆に、こちらが妖怪に対して先手を取れる事があるが、この時に「にげる」コマンドを選んでも逃走に失敗する事がある。
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状態異常の一つ「呪い」が非常に厄介。
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呪い状態になると戦闘中「にげる」と「はなす」以外の行動が取れなくなる。つまり、全員が呪い状態になると妖怪を全滅させる事が不可能になる。
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加えて、呪いの追加効果を与えてくる妖怪が序盤から比較的多く登場してくる事や呪いを解除出来る呪文を覚えるのが中盤以降という事が重なってどうにもフラストレーションが溜まってしまう。
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更に状態異常「眠り」が重なると、どちらの状態異常も永続して何も出来なくなるというハメに陥る。
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呪文以外ではアイテムの「ごふ」を使用するか寺に寄付する事で解除が可能だが、前者は前述したゲームバランスの関係でHP回復アイテムの為のアイテム欄の容量を圧迫してしまい、後者は大体城や村と近いため、拠点から遠く離れた場所で解呪手段がなくなると途端に敵妖怪のリンチが始まってしまう。
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良心システムが少々練り込み不足。
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悪の場合だと人との会話内容が変わる、会話で成立させるタイプのフラグが立たなくなる、ラスボスと戦えなくなると言った事が起こるがそれだけである。
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一応、悪人であれば呪い状態でも攻撃できるというメリットはある。これについてはとある村の村人から「悪人になると呪われた武器も使える」というヒントを聞ける。
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ある方法を使う事で、「好きな村に自由に出入り出来る」というゲームバランスを崩壊させるバグ技が存在する。
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これに関しては使わなければ良いだけの話なのだが…。
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パラメーターの一つ「すばやさ」の存在意義が不明。
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上げても上げなくても敵妖怪からの逃亡率や攻撃の回避率・命中率等は殆ど変わらない。行動順も敵味方ランダムのため本当に謎。
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イベントアイテムが普通に売却処分出来てしまう。
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うっかり手放してしまうとゲームの進行に支障をきたす場合がある。
総評
独特なシステムが盛り込まれたRPGではあるが知名度は低く、「(悪い意味で)有名な『新・里見八犬伝』は知っていても、本作の存在を知らない」というプレイヤーが多い。
NPCの4犬士の扱い、ゲームバランス、進行のテンポなどがもっと良ければ良作となり得たかも知れないが…。
余談
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ある条件を満たすと「まくうは」と「りんくのくつ」という道具を入手出来る。が、どちらもこれと言った使い道はない為、換金アイテム扱いとなっている。
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後者は恐らく『ゼルダの伝説』が元ネタ。『ファイナルファンタジー』と言い『小公子セディ』と言い、当時は他社製作RPGの小ネタを捻じ込むのが流行っていたのだろうか?
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両方ともそこそこの金額で売れる。恐らく作りかけのイベントをそのまま放置して残ったものと思われる。
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また、没アイテムで「ろとのぼうし」なんてものも…
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同年1月7日に昭和天皇が崩御し「平成」という新しい時代となった。
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本作に先んじて1月14日にファミコンディスクソフトで『ハレーウォーズ』(タイトー)、PCエンジンソフト『ビジランテ』(アイレム)が発売されており、これが平成発売のゲームソフト第1号だがともにアーケード既存作の移植。
そのため本作が同日発売の『西村京太郎ミステリー ブルートレイン殺人事件』(アイレム)と並んで平成初の記念すべきゲームソフトという見方もできる。
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しかも本作はクレジットまで1989年となっている。
最終更新:2024年07月16日 21:52