ボクらの太陽
【ぼくらのたいよう】
ジャンル
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太陽アクションRPG
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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発売元
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コナミ
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開発元
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コナミコンピュータエンタテインメントジャパン
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発売日
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2003年7月17日
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定価
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5,229円(税込)
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プレイ人数
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1~4人
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判定
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良作
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ポイント
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唯一無二の太陽アクションRPG 意外にもダークファンタジー寄りの作風 全体的に非常に丁寧な出来
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ボクらの太陽シリーズ ボクらの太陽 / 続・ボクらの太陽 /新・ボクらの太陽 /ボクらの太陽DS
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概要
「メタルギア」シリーズで有名な小島秀夫監督が世に送り出したアクションRPG。通称「ボクタイ」。
現実の太陽光を利用するという唯一無二のオリジナリティを携えた作品であり、カートリッジからはみ出た部分に取り付けられた太陽センサーで感知した太陽光の強さがそのままゲーム内に反映される。屋外への持ち運びも容易である携帯機の強みを最大限に活かしたシステムと言える。
ストーリー
人々が太陽を忘れた暗黒の時代
闇の一族「イモータル」の出現により
太陽の街「サン・ミゲル」は死の街と化した
すべての生命種を「アンデッド」と化す闇の呪い
暗黒物質「ダークマター」による「吸血変異」
かつて最強のヴァンパイアハンターと呼ばれた男も倒れ
人々の希望は打ち砕かれた
だがその日
アンデッド彷徨うサン・ミゲルを後にする一人の少年がいた。
彼こそは太陽銃「ガン・デル・ソル」の継承者にして
ヴァンパイアハンターの血を引く最後の希望、太陽少年「ジャンゴ」
彼の向うは「イストラカン」
イモータルが引き起こした世紀末現象により
さまざまな時代と場所が混線した死の都
太陽の光を武器に、ジャンゴは父親の仇を取ることができるのか?
すべての生命を脅かす吸血変異を食い止めることができるのか?
そして「ボクらの太陽」を取り戻すことができるのであろうか?
(公式サイトより引用)
特徴
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見下ろし視点のアクションRPGであり、エナジーを消費して攻撃する太陽銃ガン・デル・ソルを武器にアンデッドの蔓延るダンジョンを攻略する。
アンデッドはジャンゴを発見すると攻撃を仕掛けてくるため、基本的に真っ向から挑むよりも視界に入らないよう回り込んだり、物音を立てて誘導し、背後から攻撃したりと敵に見つからないことを念頭に置いた立ち回りが求められている。
この辺りの要素は「メタルギア」シリーズを彷彿とさせるものがある。
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ゲームの流れとしては、アンデッドや各種ギミックが待ち受けるイモータルダンジョン(いわゆるボスダンジョン)を攻略し、最奥にて待ち構えるイモータル(ボス)と対決。
→勝利後、イモータルを封印した棺桶を引きずってダンジョンを脱出。
→現実の太陽光を使ってダンジョン入口に設置したパイルドライバーを起動、バトルドライブ戦を行ってイモータルを浄化する…という工程の繰り返しで進んでいく。
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太陽センサー
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シリーズ最大の特徴であり、太陽センサーでキャッチした太陽光の強さに応じてゲーム内の太陽ゲージが0~8まで変化する。
太陽センサーが太陽光をキャッチしている間、ゲーム内でも太陽光が差し込むこととなり、様々な要素に影響する。
特にMPに該当する太陽エナジーはこの太陽光の元でチャージを行うことが基本的な回復手段であり、またイモータルを倒した後のパイルドライバーの起動には太陽光が必須である。
ただし、ゲーム内の屋内に該当する場所には、天窓の光が届く部分を除いて太陽光が届かず、太陽チャージ等を行えない。
基本的には太陽ゲージは大きい方が有利に働くが、太陽光が強すぎると逆に作動しない、あるいは不利に働くようなギミックも存在するため、太陽センサーを手で隠すなどしてうまく光量を調節しながらプレイする必要がある。
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世界観・ストーリー
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舞台は作中で「世紀末世界」と呼ばれる、魔法等のファンタジー要素、アンデッド等のホラー要素、そして西部劇のようなウエスタン要素が絶妙に入り混じった非常に独創的な世界。
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ストーリーについては、シリーズを通して基本的に「決して勝ち目のない絶望的な戦いの中でも諦めずに抗い、戦い続ける人々の物語」であり、死に関する描写も多く、シナリオ全体の雰囲気は暗め。
しかしそれ故に「懸命に生きることの素晴らしさ」といった前向きなテーマに一層の説得力を持たせている。
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パズル要素
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本シリーズのもう一つの大きな特徴として、パズル・謎解き要素が非常に多いことが挙げられる。
ブロックを動かして足場を作るもの、推理力が求められるものなど種類は様々。
特にイモータルダンジョンにおいては全てのダンジョンにおいてブロックパズルや謎解きに挑む必要があり、各ダンジョンの印象を一層強いものとしている。
評価点
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全体的な完成度の高さ
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完全オリジナルタイトルでありながら、世界観、戦闘・ダンジョン攻略の基本的なシステム、太陽光を用いた要素の自然な落とし込みなどは本作の時点で完成されている。
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特に太陽、月光、暗黒といった本作独自の設定が緻密に作りこまれた世界観、重苦しくも前向きな教唆に満ちたストーリーについての評価は高い。
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戦闘については様々な個性を持ったアンデッドに対し、こちらも豊富な種類の太陽銃パーツや壁叩き等のギミックを使い分けて挑む楽しさがある。
イモータル戦についても一筋縄ではいかず、基本的にどのイモータルも太陽銃での通常の攻撃ではほとんどダメージを与えられないが、部屋のギミックを利用する等の一定の手順を踏めばまとまったダメージを与えられる。イモータルの挙動をよく観察すれば見抜けるものも多い。
最終ダンジョンでイモータル達と再戦する際には行動パターンが強化されており、初戦と同じ戦法は通じないことも。
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各ダンジョンのギミックも凝ったものが多いうえ、棺桶を引きずった状態の復路では往路と同じルートが使えない場合も多く、総じてかなりの頭脳プレーが要求される。
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パズルについてはかなり難易度が高いものも散見されるが、ゲーム開始時にパズルの難易度を選べるうえ、特に難しいものについては救済措置が用意されているものも多い。
最たる例として、最終ダンジョンの一角を構成する「水の塔」内に本作最難関クラスの氷ブロックのパズルが存在するが、ご丁寧にヒントとして完成形のブロックの形がパネルに表示されているうえ、その横にある「敗者のスイッチ」を押せばリザルト時の評価が大きく下がる代わりに自動的にパズルを解いてくれる。
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攻略の自由度の高さ
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本作には20以上のアンデッドダンジョン(いわゆる寄り道ダンジョン)が存在するが、そのほとんどが攻略必須ではない。
それらのダンジョンは無視してどんどんシナリオを進めるのもよいし、アンデッドダンジョンを積極的に攻略し、太陽銃パーツや最大ライフを増やす命の果実、その他のアイテムを集めるのも自由。
攻略必須のイモータルダンジョンも「火吹山」「永久凍土」の2つはどちらから攻略してもよいうえ、一方のクリア時に他方の攻略に役立つ属性のレンズが手に入るため、後回しにした方のダンジョンの攻略が楽になるなど配慮がなされている。
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本作は周回制が導入されているうえ、スタート時にアクション・パズルそれぞれの難易度を選択できるため、難易度を変えつつ様々な遊び方で挑戦できる。
各ダンジョン及びゲームクリア時にはクリア時間や被発見回数に応じたリザルトが表示されるため、全てのパーツを集めた後はタイムアタックに挑戦するのも一興。
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遊び心に満ちた要素
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ストーリーに直接関係ない部分でも妙に細かい遊び要素が充実しているのも特徴。
特に現実でいうところの闇金そのものである「暗黒ローン」は強烈なインパクトをプレイヤーに与え、その後もシリーズの定番となった。
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とりわけ曜日・時間帯に関する要素は多く、日曜日にゲームを起動すると特別なメッセージが見られたり、扉の向こうの話し声が聞こえてくるイベントにて通常では途切れ途切れにしか表示されないメッセージが、満月の日では全て聞こえたりする。
賛否両論点
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太陽センサー
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本シリーズにおける最大の特徴であると同時に、最も賛否が分かれる要素と言っても過言ではない。
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太陽センサーに関するシステムは、パイルドライバーのような攻略に必須となる非常に重要な要素から、「太陽光がないとエンディングのスタッフロールの表示が不完全になる」などの遊び心に満ちたものまで幅広い場面に深く関連している。
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現実世界の時間帯・天候の状況がそのままゲーム内に反映されるという要素は斬新で、プレイヤーがジャンゴと共に戦っているという実感を持つことが出来るため、面倒な点もあれど愛着を持っていたプレイヤーは多く、実際「ボクタイDS」にて太陽センサーが廃止された際には惜しむ声も多く見られた。
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一方でこの一点のためにどうしてもプレイヤー層を選んでしまったのも事実。特に日中プレイすることが難しい学生や社会人にとっては深刻な問題で、せっかくダンジョンをクリアしたのにバトルドライブが行えずにストーリー進行が止まってしまうなどの弊害も発生した。
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本作は基本的にエナジーを消費する太陽銃しか攻撃手段がなく、特に初心者のうちはすぐにエナジーが枯渇してしまう上に、第一作故か太陽ゲージに依存する仕掛けがやや多く、後発の作品と比べても太陽光の必要性はとりわけ高い。
一応、ゲーム内で強制的に太陽ゲージを作り出す方法もいくつか存在するのだが、いずれも入手手段の限られる消耗品であるため、おいそれとは頼れない。
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ちなみに太陽センサーの実体は「紫外線センサー」なので、ブラックライトやUVライトを用意すれば日中でなくとも差し障りなくプレイできる。今はそういったライトが100円ショップ等でも購入できる時代なので、これから遊ぼうと言う人には併せて用意することをお勧めしたい。
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ストーリーについて
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世界観やストーリーについての評価は高いのだが、少々複雑な設定が多いうえに何気ない会話の中で語られたり、積極的に他のキャラクターに話しかけないとわからない情報も多く、ストーリーの細部は漫然とプレイしているとわかりにくい。
ジャンゴが全く喋らないタイプの主人公であることや、味方側の登場人物が少なく、そもそもこうした背景が語られる機会が少ないことも原因か。
特に本編以前の時系列についてはゲーム内で触れられることが少なく、プレイヤーの想像に任せられている部分も多い。
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分かりづらい点の一例。ネタバレ注意。
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ゲーム終盤にてジャンゴ達が救出しようとしていた月下美人の正体がジャンゴの母親マーニであることが判明するのだが、「サン・ミゲルの吸血変異以前、ジャンゴは父と母と平穏に暮らしていた」という情報は直前に戦ったサバタのセリフ程度からしか読み取れず、それを見逃したプレイヤーにとってはジャンゴが母親と会ったことがあるのかどうかすら分からないため、どうにも感情移入しづらい。
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問題点
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第一作故か以下の通りインターフェースがこなれていない部分が散見され、不便に感じる場面が多い。
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太陽銃のカスタマイズが面倒
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相手の弱点属性を突けばダメージが増大する上に雑魚敵であれば気絶させられるため、敵の種類に合わせて頻繁に太陽銃のレンズやフレームを付け替える必要があるのだが、そのためにいちいちメニュー画面を開かなければならない。
メニュー画面展開中、フィールド画面は一時停止されているため戦闘に直接の影響はないのだが、戦闘のテンポが削がれてしまうのは褒められたものではない。
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広大なマップ
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本作はフィールドマップの各所にダンジョンが設置されており、広大な「イストラカン」を駆け回ることになるのだが、目的地に行くために用のないダンジョンを素通りしなければならないことも多い。
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ほぼ全てのダンジョンの入り口に出口までのワープ魔法陣が設置されているため、実際に移動に掛かる時間はわずかなのだが、ダンジョン突入時の演出を毎回見せられるなど、やはりテンポは悪い。
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フィールドマップ各地に存在するワープ魔法陣を使えばかなり行き来が楽になるのだが、この魔法陣は(ゲーム内で説明はないが)「太陽ゲージの強さによって行先が変わる」というシロモノであり、上手く活用するにはやはり現実の太陽光が必要となるうえに、行先に応じて光量を調整しなければならない。
幸いにも、最も通うことになるであろう太陽樹のすぐ近くのポイントには太陽ゲージ0で転移できる。
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太陽ダケ
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いわゆる回復スポットとして、ライフを回復する月光虫を生み出す「太陽ダケ」という物体が各地に置かれているが、そのためには太陽ダケを太陽銃で攻撃しなければならないため、わざわざエナジー消費のない「ルナ」のレンズを装着しない限りエナジーを消耗してしまううえ、一度の攻撃で生み出す月光虫の量が少なく、かなり効率が悪い。
さらに言えば本作唯一の安らぎの場所と言える太陽樹のもとには設置されていないため、ダンジョンクリア後の回復手段としても使いづらい。
本作は消費式回復アイテムがとても手に入りやすいうえに99個まで所持できるので、ライフはこちらで回復する方が手っ取り早い。
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蒼空の塔について
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本作最大のやりこみ要素として存在するダンジョンであり、初回は低階層がゴールとなるが、クリアする度にゴール階層が上がっていき、最終的に99Fまで上り詰めると裏ボスと戦えるというダンジョンなのだが、とにかく不便な要素が多い。
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フロア毎に階段の位置が変わるため登るのに時間がかかるうえ、99Fまで塔を育てるには29回も塔を制覇しなければならず、膨大なプレイ時間を要してしまい、とにかく飽きやすい。
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最大の難点が塔内部ではセーブが出来ないため、一度挑むとクリアまで一切の中断が不可能である点。最上階が高くなってくると一度登るのに最短でも数時間は必要であり、非常に辛い。
一応本作にはスリープモードが存在するが、どのみち本体の電源を落とせないためあまり気休めにはならない。
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そして極めつけは裏ボスと戦うには他のカートリッジとの通信、それも最低でも3つのセーブデータとの通信が必須という点である。
果たしてこの塔の完全制覇に成功したプレイヤーが何人存在するのであろうか。
総評
現実の太陽光を利用するという奇抜なシステムや、当時コロコロコミックでメディア展開されていたことから一見イロモノや子供向けゲームと見なされがちな作品であるが、その実シナリオ、システムの両面において非常に丁寧に作られた土台を基に、太陽センサーという独自の要素を上手く落とし込んだ良作。
第一作ゆえにゲームテンポを損ねる粗削りな点も散見されるが、多くは不便さを緩和しようと苦心した跡も見られ、致命的なものでない。
その独創的な世界観を今なお愛する根強いファンも少なくない。
攻略に太陽光が必要であることが気にならないならば是非手に取ってもらいたい一作である。
その後の展開
GBAで2本、DSで1本、年に一作のペースで制作された。
GBA2作についてはいずれも本作と同じく太陽センサーが採用されているが、DS作品についてはやはりカートリッジの形状の問題か、太陽センサーが廃止されている。
これ以降シリーズについての音沙汰はないが、こうしたハード面の影響も少なからずあるのだろう。
余談
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カートリッジそのものに太陽センサーが埋め込まれている以上、バーチャルコンソール等での配信が難しいとされるシリーズの一つである。
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プレイ手段が現物しかないためか、GBA3作は2025年時点でプレミアソフトとなっており入手困難。
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一部のTVCMがとってもシュール。いずれも、太陽光センサーをアピールした内容なのだが……
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あるCMは、二人の男がとっ散らかった部屋でテニスを行うというもの。ラリーを続ける内に更に部屋が散らかり、最後に大きなテロップが表示される。「外でやれ。」
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また別のCMでは、子供がおじいちゃんのハゲ頭を利用して太陽光を集める。
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前述のとおり当時はコロコロコミックとタイアップして特集を組まれており、「太陽少年ジャンゴ」の名前で漫画版の連載も行われた。
同誌によるゲームのコミカライズはゲーム内容からかけ離れたオリジナル展開に走ることが多いが、本作はとりわけその傾向が強く、一部のキャラクターがモチーフとされているものの設定やストーリーは全く異なるものとなった。
しかしプレイヤーから黒歴史扱いされている訳ではなく、原作のダークな部分はしっかり押さえており、人気の高いオリジナルキャラクターの存在など評価点も多く、作品としての出来は決して悪いものではないため、これはこれとして好意的に受け入れていたファンも多い。
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本作から約半年後にカプコンから発売されたGBA『ロックマン エグゼ4』では本作とのコラボが行われ、ジャンゴやおてんこさまが友情出演しており、以降も両シリーズにおいてコラボが通例となった。
発売元が異なるゲーム同士がコラボするのは当時としては異例の出来事であった。
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なお、本作ではボイス部分を除いて全く喋らなかったジャンゴだが、「エグゼ4」出演時には普通に喋っており、本編でも次回作以降では時折喋るようになった。
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本作のエンディングの一つに、サバタがサン・ミゲルに新たなるイモータルの動きを予見し、旅立つものがあり、そのまま次回作続・ボクらの太陽のストーリーに直結している。
最終更新:2025年04月22日 13:50