BLOOD: One Unit Whole Blood

【ぶらっど わんゆにっと ほーる ぶらっど】

ジャンル FPS
対応機種 MS-DOS(オリジナル版)
Windows(Fresh Supply版)
メディア CD-ROM
発売元 GT interactive(オリジナル版)
Nightdive Studios、Atari(Fresh Supply版)
開発元 Monolith Productions
Nightdive Studios(Fresh Supply版)
発売日 1997年5月21日(パッケージ版)
1998年7月15日(One Unit Whole Blood版)
定価 1,010 円(Steam)
配信 Steamにてオンライン販売中(Fresh Supply版)
判定 良作
ポイント Buildエンジン四天王の一角
カルト的評価を得たホラーFPS
作り込みによる不気味な世界観
ゴア増加・バカゲー要素は控えめに


ストーリー

西部開拓時代が終焉を告げた20世紀初頭、アメリカの片田舎。

邪神チェルノボグを崇拝するカルト教団「カバル」の幹部だった元ガンマンの男ケイレブは、愛人オフィーリアと共に邪神に謁見するに足る力を持つ「選ばれしもの」4人のうちの一人に任命される。

しかし、姿を現したチェルノボグは信者を裏切り、「選ばれしもの」を配下のデーモンによって殺害。愛人共々ケイレブは死亡し、教団の地下墓地に埋葬される。

数日後、墓から蘇ったケイレブは葬儀場を襲撃、カバル教団信者を皆殺しにし、墓地を脱出する。

チェルノボグが「選ばれしもの」の抹殺を図った真の理由を知るため、そして邪神を倒し恋人の仇を討つため、ケイレブはカバル教団との孤独な戦いに身を投じていく。


概要

既に3DFPSの時代に突入しつつあった1997年に発売された、2DのFPSとしては末期に当たる作品。

元々は「Duke Nukem 3D」の3D realmsが資金・技術提供していた小規模ゲーム開発スタジオ「Q studios」によって開発中のタイトルだったが、1997年1月に「Shadow Warrior」の開発に集中すべく3D realmsは「BLOOD」のIPと「Q studios」をMonolith Productionsに売却。5ヵ月の後に3D realmsの「Shadow Warrior」と同月に発売された。

最初は1エピソードだけプレイ可能なシェアウェア版としてリリースされ、その後、4つのオリジナルエピソードと追加要素が収録されたパッケージソフトとして発売された。 尚、本項の内容は更にアップデートが施されたBlood本編に拡張パックである『Cryptic Passage』と『Plasma Pak』が併せて収録された、『BLOOD:One Unit Whole Blood』を元にしている。


基本システム

  • 大まかなゲームの流れは「DOOM」と共通している。
    • 主人公ケイレブを操作し、カルト教団の信者やチェルノボグ配下のクリーチャーといった敵対勢力を銃や爆発物で倒し先に進んでいく。DOOM同様にマップのどこかに点在するキーを探し、それをドアに使用して扉を開くことで先に進んでいく。各所に存在する教団マークを調べるとステージクリア。
  • Shadow Warrior」と同様のBuildエンジンアップグレードにより、ボクセルによるオブジェクトやアイテムの3D表示と「ルーム・オーバー・ルーム」による多層構造マップを実現。2Dながら当時の3DFPSと遜色ないゲームプレイを実現している。
  • マルチプレイは当時の主流であるデスマッチプレイ方式だが、本作では「Bloodbath」という呼称がつけられている*1

評価点

統一されたホラーな世界観

  • 舞台は1920~30年代のアメリカ。描き込まれたテクスチャやオブジェクトにより薄暗く汚い世界観が構築されており、閉鎖的で不気味な雰囲気をよく表現できている。
    • 最初のステージであるカルト教団のアジト「モーニングサイド葬儀場」にしても、墓から蘇るゾンビや煩く喋る教団員、解体途中の遺体が転がる焼却場、薄暗い遺体安置所、不気味なガイコツに変化する聖母の絵画、臓物の詰まったドラム缶、隠し部屋の宙吊りにされた死体など、さまざまな要素が集まって不気味な世界観を構築している。
    • スイッチで電灯を付けたり、消火器を攻撃すると壁に穴が開いたりと干渉可能なオブジェクトも多い。マップの密度は非常に高く、当時の3DFPSと比較すると驚異的。作り込みの全てがホラー演出に一役買っており、出来栄えは非常に良い。

様々な兵器

  • 相手を燃やす火炎ピストル、高速2連射が可能なショットガン、連射できるトンプソンなどの一般的なものに加え、三種のダイナマイト、缶スプレーとライターの火炎放射器、パルスライフル、火の玉を発射するガイコツ敵を呪い殺すブードゥー人形など様々。プレイヤーは場面によってこれらを使い分け、カルト教団を殲滅していく。
    • 火力はかなり高く、血飛沫も飛び散り爽快感は抜群。殆どの武器は異なる挙動のセカンダリファイアが搭載されているなど、ホラーテイストでありながらもFPSとしての楽しさも維持されている。
    • アイテムを取得することで一定時間二挺持ちが可能となる「アキンボ」システムも搭載。ショットガンやトンプソンの二挺持ちなどが可能となり、一時的ながら敵を薙ぎ倒す爽快感がさらに増す。

豊富なロケーション

  • 墓地や森、町、駅、列車、洞窟、遊園地、北方などステージごとにさまざまなロケーションが登場。緻密に作り込まれておりプレイヤーを飽きさせない。
    • シークレットも豊富に存在しており、これらを探すのも楽しみの一つ。中にはスプラッター映画ネタも仕込まれており、知っている人間をニヤリとさせるものも。

喋るケイレブ

  • Duke NukemやLo Wangと比べれば少ないが、要所要所でケイレブが喋る。声は低く落ち着いたものであり、ダークヒーロー的な雰囲気に合っている。

問題点

一部武器の使い勝手が悪い

  • 投擲タイミングがかなり早いダイナマイトや燃えるまでが遅い火炎ピストル、狙いを外すと自分がダメージを負う呪いの人形、発射すると一気に撒き散らされるガイコツなど一部武器の使い勝手が悪い。
    • 武器のセカンダリ攻撃によって特性が大幅に変化する武器が多く、覚えて使いこなすまでが大変。ただし、ある程度慣れれば任意で先制攻撃を浴びせたりと自在な行動がとれるようになる。

ゴア描写は強烈

  • 作り込みの一環としてゴア描写も作り込まれており、当時類のないレベルの血飛沫が飛び交う。ゾンビの頭でサッカーボールが可能など後の「Postal 2」レベルの内容を実現している。
    • 地形オブジェクトもスプラッターやカニバリズムなど強烈な内容が多い。BLOODのタイトル通り、全編通じてゴア要素が続く。
    • 上述の通りホラーとしては評価点ではあるが、ホラー・スプラッター耐性が無いプレイヤーからすればかなりキツイ内容。結局これらの要素が影響し、本作が大衆受けすることはなかった。

一部ステージが暗い

  • ホラーFPS故に夜だったり暗かったりするステージがあり、一部ステージは視認性が悪い。
    • 雰囲気の演出には貢献しているため、一概に問題点と言えるポイントではないが。

高難易度

  • カルト教団員(ローブを着用した人間)の火力が高め。体力はないため簡単に片付けられるものの、下級団員でもフルオートでトンプソンを連射してくるため、慣れるまでは蜂の巣にされがち。
    • 移動速度が速く、通常手段で倒しても高確率で復活するゾンビ、背が小さくすばしこいネズミや蝙蝠、毒グモ、Eキーで振りほどかなければ首を絞めて窒息死させてくる歩く手など対処が難しい敵も多く、武器が心もとない序盤はかなり難しい。幸いセーブ&ロードはいつでも可能なため、敵配置さえ覚えれば先手を打って対処することは可能。

総評

後に『No One Lives Forever』や『F.E.A.R.』などで有名となったMonolith Productionsのデビュー作であり、その完成度から技術的な古さにもかかわらずカルト的評価を得た作品。スプラッター映画・ホラー映画のエッセンスを上手くFPSに落とし込むことに成功しており、冒涜的でおどろおどろしい世界観が絶賛された。

「ホラーFPS」としては最初期の作品であり、全編通じて漂う不気味な雰囲気は当時としてはかなり異質なものであった。その雰囲気が敬遠され大衆的な人気には繋がらなかったが、同時期の「Shadow Warrior」と共に現在ではBuildエンジンの名を確固たる者にした功労者の一つとして評価されている。


余談

  • 「ビルドエンジン四天王」の一つと称されるが、残りの2つは「Duke Nukem 3D」と「Shadow Warrior」、最後の一つは人によって変わるが、大抵の場合「Redneck Rampage」(Xatrix Entertainment)を指す。Duke Nukem 3Dの成功に続けとばかりに本作のノリを継承した結果、四天王全てがバカゲーテイストに。
    • 4作品全てにカルト的な人気があり、MODが製作されるなど根強く活動が行われている。本作も有志によるリメイクが多く存在し、特に「DOOM」を改造して本作再現を目指したシリーズは多くのバリエーションが存在する。
    • 「Duke」はgearbox、「SW」はDevolver、本作はNightdiveからそれぞれ現在のPCに合わせたモダンエンジンによるリマスター版が販売されている。唯一「Redneck Rampage」だけはオリジナル版しか販売されていない。
  • 前述の『Cryptic Passage』と『Plasma Pak』の2本の公式拡張パックがパッケージ版発売後にリリースされている。
    • 前者はSunstorm Interactiveによる外注開発で、新たな10のシングルプレイレベルとBloodbathの新ステージが4種追加されている。
    • 後者はMonolith Productions自身によるもので、"Post Mortem"と題された9つのシングルプレイヤーレベルの新エピソードと、同社のオフィスをモデルにしたBloodbathのステージが2つの計11ステージの他、新種の敵や武器の能力の追加、これまでにリリースされた多数のバグフィックスが適用されている。
  • 1998年11月には続編である『BLOOD II: The Chosen』が発売。カルト教団に支配されたディストピアSFが舞台の3DFPSとしてシリーズの継続が図られたが、本作の発売からわずか1年半というGT interactiveの無茶すぎる納期やMonolith社の新エンジンである「LithTechエンジン」*2が諸々の調整不足であったため、未完成タイトルとしての発売を余儀なくされる。その結果世界観の変更やゲームとしての出来栄えが酷評されクソゲー認定、以降BLOODシリーズが作られることはなかった。*3
  • 本作は現在、知的財産権を取得したNightdive Studiosがファンによって改良の進められていた「KEXエンジン」*4を更にブラッシュアップしたリマスター版、『BLOOD: Fresh Supply』として2019年5月10日からSteam/GoGでDL販売されている。本編は「One unit whole blood」版と同一内容ながらネイティブアプリケーション化、高画質化、4K解像度対応、操作の現代化、拡張パック導入済、実績追加など実質「BLOOD完全版」と言うべき改良が為されており、1010円という手頃な価格なのもありファンからの評価は高い。
最終更新:2022年05月01日 20:42

*1 仕様上は協力プレイも可能

*2 区分上「LithTech Engine 1.0」と言われている。

*3 一方、『BLOOD II』と同時期に発売され、かつ同じエンジンを使ったFPSである『昇剛』はゲームの評価自体は悪くはなかったものの、不運にも『Half-Life』の発売時期とバッティングしてしまったせいで売上は芳しくなかった。

*4 元々は『DOOM64』のファンメイドによる改良版である『DOOM64 EX』の開発のために作られたオープンソースのFPS向けゲームエンジン。Ver.3.0から商業使用もされるようになり、Nightdive StudiosがDL配信しているリマスター版でも何作か採用されている。