Duke Nukem 3D
【でゅーく にゅーけむ すりーでぃー】
| ジャンル | FPS |  
  
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| 対応機種 | MS-DOS(オリジナル版) Windows7/8.1/10(20th版)
 プレイステーション
 SEGA SATURN(海外のみ)
 Nintendo 64(海外のみ)
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| メディア | CD-ROM | 
| 発売元 | FormGen(オリジナル版) P&Aシェアウェア(日本発売版)
 Gearbox Publishing(20th版)
 【PS】キングレコード
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| 開発元 | 3D Realms | 
| 発売日 | 1996年1月29日 【PS】1999年1月28日
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| 定価 | 1,980 円(Steam) | 
| レーティング | CERO:Z(18才以上のみ対象) | 
| 配信 | Steamにてオンライン販売中(20th版) | 
| 判定 | 良作 | 
| バカゲー | 
| ポイント | Buildエンジン四天王筆頭 カルト的評価を得たバカゲー
 ただのバカではない2DFPS屈指の作り
 エログロ要素は人を選ぶ
 
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| Duke Nukemシリーズ | 
 
ストーリー
21世紀初頭のいつか。
主人公Duke Nukemは「Duke Nukem II」での戦いを終え、美女たちとの優雅なバカンスを目指して自前の宇宙船で地球へと向かっていた。
アメリカ ロサンゼルスへと到着したDukeだったが、彼の宇宙船は突如謎の勢力による攻撃を受け、制御不能に陥ってしまう。
救難信号を送ろうとしたDukeは、LAPD(ロサンゼルス警察)がエイリアンの手に落ち、半ば壊滅していることに気付く。ロサンゼルス市民は蹂躙され、町中の美女たちはエイリアンによって拉致されてしまっていた。
もはや彼の休暇計画は台無しになってしまった。
「奴らの侵略を止めてやる」そう誓った彼は船の緊急脱出装置を作動させ、ただ一人ロサンゼルスのビルへ降り立つ。
果たして彼はエイリアン共の侵略を止め、美女たちを解放できるのか。
概要
黎明期の競技用FPSとして一文化を築いた『QUAKE』と同年に発売された、『Wolfenstein 3D』や『DOOM』のような2DのFPSとしては末期に当たる作品。
『Duke Nukem』を製作した3D Realms(旧Apogee Software)によって開発され、同社の最新エンジン「Buildエンジン」による密度の高いマップを売りにしていた。徹底した娯楽アクション映画的なノリと、それまでの2DFPSにはあまり見られなかったリアルさを追求した作りこみが最大の特徴。
基本システム
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大まかなゲームの流れは「DOOM」と共通している。
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オリジナル版は3エピソード構成となっており、各エピソードはそれぞれ独立している。武器の持ち越しなどは不可能。
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「アトミックエディション」で1エピソードが、「20th アニバーサリー」でもう1エピソードが追加され、現在の最新バージョンは5エピソード構成となっている。ボリュームはそこそこ。
 
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主人公Duke Nukemを操作し、エイリアンやピッグコップといった敵対勢力を銃や爆発物で倒し先に進んでいく。ゴール地点に存在する核マークの描かれたガラス張りのスイッチを叩き割って作動させるとステージクリア。クリア画面では廃墟と化した街に立つDukeが映し出され、撃破率やシークレット数などのクリアリザルトが表示される。
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DOOM同様にマップのどこかに点在する赤・青・黄のキーカードを探し、それをカードリーダーに使用して扉を開くことで先に進んでいく。
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どのステージにも一筋縄ではいかないギミックや敵が待ち構えており、単なるキーカード迷路にならないよう配慮されている。
 
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メディキットやジェットパック、敵を霍乱するホログラム装置といった任意のタイミングで使用可能なアイテムが存在。空を飛んで強引にショートカットしてみたり、ピンチに陥った時に回復したりとプレイヤーの取れる行動が増えた。
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各エピソードのラストには強力なボスが存在。攻略方法は単純な撃ち合いだが、圧倒的な火力でプレイヤーを追い詰める。
評価点
全編通じて漂うバカゲー感
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そもそも主人公からして赤いタンクトップにグラサンを付けた、全身武器まみれの金髪マッチョの男。敵対勢力は地球侵略を企むエイリアンで、救出対象は誘拐された美女たち。とことんまで「お約束」を踏襲している。
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ステージ1はいきなりエイリアンに制圧されたポルノ映画館。エイリアンがレジ係を担当していたり、館内をジェットパックで飛び回っていたり、個室便所で用を足していたりとおおよそ侵略生物に見合わないユルさ。
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バーを制圧して皆でストリップショーを鑑賞する、日本料理店に自動攻撃タレットを仕込んで武装施設化するなど、全編に渡りエイリアン側の行動はどこかズレている。アメリカはわりと壊滅的な被害を被っているはずなのだが、危機感はまったく感じられない。
 
単なる「バカ」で終わらない作りこみ
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とにかくやれることが異様に豊富。トイレで用を足すこともできれば上映機のスイッチを押して映画の上映をすることもでき、ビリヤードをプレイしたり、ストリップショーでは踊り子にチップを渡すことすら可能。破壊可能オブジェクトも豊富であり、マップの密度は極めて高い。
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本作のマップの作りこみは後のBuildエンジン作品にも受け継がれ、一種の伝統芸となった。
 
多彩な武器
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近接攻撃マイティフット(キック)・ピストル・ショットガン・三連式マシンガン・ロケット砲といったお決まりの武装に加え、先制攻撃や地形破壊に便利な遠隔起爆式パイプ爆弾、変わった使い勝手の凍結光線銃と収縮光線銃、強力なミサイル連射装置デバステイターなどさまざまな武器が登場。プレイヤーの火力はかなり高く、強力な武器で敵を蹴散らす爽快感が味わえる。
豊富なシークレット
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意外なところに上れたり、意外なところに隠し要素(イースターエッグ)が存在していたりする。その数も豊富。
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特に豊富なのが有名キャラクターの死体。ルーク・スカイウォーカー、インディージョーンズ、『Rise of the Triad』のカルト教団員、スネークプリスケン、ドゥームガイ、破壊されたT-800、シリアス・サムなど至るところにゲームや映画のキャラクターたちの死体が隠されている。
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映画「エイリアン」のエッグチェンバー、海外SFドラマ「ドクター・フー」のターディス、映画「2001年宇宙の旅」のモノリスなど、攻略ルート上必ず遭遇する場面にも多量の映画ネタが仕込まれている。80~90年代のアメリカン・ポップカルチャーに関する知識があればあるほど楽しめる。
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中にはなぜか「O・J・シンプソン事件で繰り広げられたカーチェイスの映像」なんてものまである。
 
リアルなマップ
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2Dエンジンにしては驚異的な作りこみにより、現実的なマップを生み出すことに成功している。
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1面からしてとにかく汚い。ゴミが撒き散らかされネズミが徘徊し、薄暗く陰湿なストリートの雰囲気は90年代のロサンゼルスで撮影されたアクション映画の世界そのもの。
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単純で迷路的な地形がほとんど見られず、道理の通ったマップ構成を基本としている。迷路的だった同年の『QUAKE』のマップと比較すると一目瞭然。
 
とにかく喋る主人公
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敵を倒したり、オブジェクトを使用したり、アクションを起こしたりといったプレイヤーの行動に合わせ、主人公Dukeは様々な反応を返す。パターンは非常に豊富であり、声質もキャラクターに合った渋いもの。キャラクターのかっこよさが強調され、愛着を湧かせてくれる。
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セリフのほとんどは「キャプテン・スーパーマーケット」などのアクション映画からの引用。元ネタに気付くとさらに楽しめる。
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「とにかく喋る主人公」という要素は後のBuildエンジンタイトルにも受け継がれ、同様の不謹慎バカゲーとして作られた『Postal 2』などにも継承された。
 
問題点
強調されるエログロ要素
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敵造形はかなりグロテスクな部類。特にエイリアンエッグとそこから生まれるスライム状のエイリアンは倒しづらい上に張り付かれると画面全体を覆ってくるため、人によってはトラウマレベルのキモさ。
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エンディングなどで表示されるカットシーンも頭が吹っ飛んだりとかなり過激。一応申し訳程度にオプションで子供向け規制モードも実装されているが、全体的にゴア描写は過剰。
 
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ポルノ映画館・ストリップクラブ・卑猥なポスター、所々で遭遇する美女など性的描写もかなり多い。アメリカ人の想像する卑猥さで構成されているため、人によって好みが分かれる所だろう。
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SS版は海外で「Deep Water」という『米SEGAによる成人向けゲームレーベル』の一つに入り、本作が第二弾とされていた。その為起動時にDeep Waterのムービーが流れる。
アメリカ的な核描写
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主人公からして「Duke Nukem」なのもあり、核や原子力を扱った要素がそこかしこに見られる。
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バカゲー的作風のため扱いはかなり雑。日本人によっては、その描写に嫌悪感を抱く可能性もある。
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本作のヒットを受けた3D Realmsは同エンジンを利用して後に『Shadow Warrior』を製作したのだが、開発途中で本作のノリを受け継いだ仕様にした結果、UZIやショットガン、果ては核ミサイルを武器として使用するニンジャというとんでもないものを生み出している。良くも悪くも北米のスタジオらしい作風と言えるだろう。
 
敵の反応速度
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後のBuildエンジン作品にも共通する問題点として、敵の反応速度が非常に速いという点が挙げられる。特に雑魚敵ピッグコップの使用するショットガンはかなりの脅威であり、一発での至近距離のしゃがみ撃ちを食らえば大きな痛手となる。
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本編はバカゲー的テイストだが、その見た目に反して難易度はかなりシビアな部類。成熟期の2DFPSプレイヤー向けというのを考えると調整としては妥当だが、現在のFPSに慣れているといささか理不尽に感じるかもしれない。
 
凶器、スイングドア
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本来、グラフィックを平面から疑似的に三次元へと起こす2.5DのFPSではオブジェクトの軸回転表現が難しかった。このため『DOOM』や『Wolfenstein 3D』といった従来のFPSは大抵の場合縦か横にスライドするドアを採用していたのだが、高性能なBuild engineを採用した本作では軸回転式スイングドアの作成という新機能が搭載されている。この機能により、舞台となるロサンゼルスの建物を区切る多くのドアが現実に即した開閉を行うようになった。
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...が、この無理やり再現したスイングドアにはスキマに挟まると「オブジェクト同士に挟まれての圧死」判定となり即死するという欠陥が存在。両開きのドアに両側から挟まれて肉片と化すDukeが後を絶たず、一部ファンからはDuke最大の敵としてネットミーム化されている。
 
総評
2DFPS末期・3DFPS黎明期の1996年に作られた、2DFPS屈指の完成度を誇る作品。
当時の3DFPSには不可能であった、2Dだからこそ可能な異様な作り込み、そしてその作りこみの多くをバカゲー的要素に費やすという娯楽性の高い内容がウケ、末期の2DFPSとしては異例の人気を獲得した。
FPSの歴史上においてはさほど貢献したわけではないものの、後のBuildエンジン作品共々「バカゲーFPS」ジャンルを開拓、「Serious Sam」や「Postal 2」といった娯楽的FPS作品の草分け的存在としての地位を獲得した。
日本では「Duke Nukem Forever」で悪い意味で知名度のあるシリーズだが、本作の出来栄えは非常に良い。往年のアメリカン・ポップカルチャー知識に自信があれば、本作も十分に楽しめるだろう。
移植
    
    
        | + | CS機への移植版 | 
SS版
 
1997年にセガから発売。開発は『PowerSlave』(PC/SS/PS)を手掛けたLobotomy Software。『PowerSlave』のCS機版で使用されたゲームエンジンである「SlaveDriver」を利用した移植。北米で展開されたサターン用ネットワークアダプタである「Sega Net Link」を使ったオンライン対戦に対応。マルチコントローラー(マルコン)によるアナログ操作も可能。シークレットで「Death Tank Zwei」と言う対戦型ミニゲームが入っている。
 
PS版
 
『Duke Nukem:Total Meltdown』のタイトルでSS版と同年の9月にGT Interactiveから発売。一方、日本でも北米での発売から1年少々たった1999年1月にキングレコードから原題と同タイトルで発売されている。
PS版はPC版にあった3エピソード全ステージが収録されている他、PS版のみ4エピソード目が6つの新レベルとシークレットレベルで構成された「Plug 'n' Pray」となっている。アナログ操作にも対応しているが、プラットフォームの仕様上オンライン対戦ができない代わりにPlayStationリンクケーブルを使ったローカル通信対戦に対応している。
 
N64版
 
SS版/PS版と同年にGT Interactiveから発売。開発は数多くの外注開発実績をもつイギリスのEUROCOM。4画面分割による4人までのローカル対戦プレイが可能。ランブルパックによる振動機能にも対応。ドラッグやセックス、暴力表現を連想する多くのアイテム名が変更され、デュークのセリフもそう言った表現を避けるため一部は新録されている。一部のステージや武器が「Atomic Edition」からのものに変更されていたり、シングルプレイはエピソードを選択してプレイする方式から各レベルを1から順次プレイする方式に変更されている。
 
他にもタイガーエレクトロニクス製のゲーム機であるGame.com版、南米地域でのみ発売された『Wolfenstein 3D』ライクのGENESIS/MEGADRIVE版がある。なお、GENESIS/MEGADRIVE版は2015年に北米のPIKO Interactiveが版権を取得し、同年に一部地域を除く全世界でカートリッジ版が再販された。
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余談
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「ビルドエンジン四天王」の1つと称されるが、残りの2つは『BLOOD: One Unit Whole Blood』と『Shadow Warrior』で、最後の1つは人によって変わるが大抵の場合『Redneck Rampage』(Xatrix Entertainment)を指す。Duke Nukem 3Dの成功に続けとばかりに本作のノリを継承した結果、四天王全てがバカゲーテイストに。
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4作品全てにカルト的な人気があり、MODが製作されるなど根強く活動が行われている。特に本作の人気は一番高く、別のエンジンを利用した有志によるリメイクプロジェクトが非常に多い。
 
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長らく権利関係の問題で配信に恵まれなかったが、2010年9月に3D Realms自身が開発を放棄していた「Duke Nukem Forever」の開発を継続するためにGearboxが版権を取得。2013年にはDevolver Digitalをパブリッシャーとした『Duke Nukem 3D:Megaton Edition』がSteamにて配信開始された。
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その後、2015年1月にDevolver DigitalとGearboxとのライセンス契約終了により先述の「Megaton Edition」の配信は停止となったが、Gearboxから生誕20周年を記念し、新規エピソードも付いた『Duke Nukem 3D: 20th Anniversary World Tour』の発売が告知され、2016年10月にSteamにて配信開始された。こちらはメニューなどが全て日本語となっており、任意巻き戻し機能など便利な新機能が搭載されている。
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反面、元の単語に含まれるニュアンスを無視した翻訳もあり、箇所によっては若干の違和感もある。なお、オリジナルのデュークの声優であるジョン・セント・ジョンの音声は再録されたものが使われている。
 
最終更新:2022年05月12日 19:42