Shadow Warrior
【しゃどう うぉりあー】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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MS-DOS(オリジナル版) Windows(Redux版)
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メディア
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CD-ROM
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発売元
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GT Interactive (オリジナル版) Devolver Digital (Redux版) P&Aシェアウェア (日本発売元)
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開発元
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3D Realms
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発売日
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1997年5月13日
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定価
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9.99 USD / 1,980円 (Steam)
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配信
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SteamにてDL販売中 (Classic Redux) オリジナル版は無料配信中(Classic)
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判定
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良作
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バカゲー
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ポイント
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Buildエンジン四天王の一角 カルト的評価を得たバカゲー 勘違いジャパン炸裂 やや爆発物過多なゲームバランス
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ストーリー
主人公ロー・ワン(Lo Wang)はボディーガードや暗殺などの隠密任務をこなすシャドウ・ウォリアー(影武者)。
彼は山奥にあるマスター・リープと呼ばれる男の道場で修行を積み、一流のニンジャ・マスターとなった後、富士山頂に居を構え日本の主要産業を牛耳る巨大財閥「ジラ・エンタープライズ」の社長マスター・ジラに雇われ彼の元で働いていた。
しかし社長のジラは闇の世界から呼び出した怪物で日本を支配する計画を実行に移そうとし、それに反発したロー・ワンはジラ・エンタープライズを退職。遠く離れたハラキリ・ステーション前に隠居し道場を開く。
社長のジラは彼の能力を危惧し、複数のイビル・ニンジャを派遣。師であるマスター・リープの殺害には成功するものの、道場を襲撃したニンジャたちは全員返り討ちに遭う。
マスター・リープを失ったロー・ワンはジラへの復讐を誓い、富士山頂を目指して迫り来る追っ手を蹴散らしていく。
果たして彼はジラの野望を阻止し、闇の怪物を滅ぼすことができるのか。
復讐に燃える男の孤独な戦いが始まる。
概要
1994年から開発が始められ、3年後の1997年に発売へと漕ぎ着けた、日本を舞台とする当時のアメリカ産ゲームとしては珍しい世界観の作品。元々は真面目な作品として作られていたのだが、
『Duke Nukem 3D』の成功を受けた3D Realmsの要望により娯楽路線に変更され、その結果としてネタ要素が豊富に追加。他に類を見ない、勘違い日本の炸裂した奇妙奇天烈なFPSとして発売されることとなる。
基本システム
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大まかなゲームの流れは始祖である『DOOM』と共通している。
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赤・シルバー・黄などの鍵がステージ上に点在しており、プレイヤーはマップをくまなく探索しながらそれらの鍵やドアを探し探索範囲を広げていく。ステージのラストには陰陽マークのパネルが存在し、パネルを押すとステージクリア。
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クリアの際にはリザルトが表示される。撃破率やクリア時間、シークレット数などが表示されるまでの流れは本家同様。Dukeのように台詞も放つ。
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当時最新のBuildエンジンを採用した恩恵として、「ルーム・オーバー・ルーム」と呼ばれる多重構造のマップの採用に成功している。DOOMエンジンに代表される当時の2DFPSは平面マップ情報から擬似的に壁を作り出していたため多重階層構造のマップが作れなかったが、それらと比べて進歩したと言える点。
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もっとも、これ自体は既に3DFPSである『QUAKE』が1996年に達成している概念でもある。また現在のFPSでは当たり前の機能であるため、現在の視点で見ればさほど衝撃的でもない。
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武器弾薬などのアイテムと、電気系統のレバー等の一部地形が3Dボクセル化。一部分だけではあるが三次元的な要素が増え、2DスプライトFPSにありがちな視覚的な違和感が減少した。
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部分的なパズルとしての使い道ではあるが、戦車やボートに乗れるように。今でこそ自動車に乗れるFPSは多いが、当時は珍しい要素だった。
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セーブ・ロードは常時可能。適宜セーブを繰り返しながら進んでいく方式となっている。
評価点
炸裂する勘違いジャパン
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主人公の名前は「ロー・ワン(Lo Wang)」。頭のハゲた上裸の男。
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敵勢力は富士山火口に本社を構える巨大財閥「ジラ・エンタープライズ」。ロゴマークは「神」であり、繋げて読むと「神zilla」。
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社長であるマスター・ジラは自前の巨大甲冑で戦いを挑んでくる。デザインも戦国武将の鎧そのもの。
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敵勢力の面子も全てがおかしい。UZIを連射してくる凶悪な面構えのイビルニンジャ(やはり忍者には見えない)、きつい訛りで喋る黒づくめの男、全身緑のマッチョ男、キョンシーに殺人コイに巨大スズメバチ、果ては強烈な体臭の巨大相撲取りまで。なんでもありな闇鍋と化している。
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味方である師匠マスター・リープの道場もどこかおかしい。偉大な忍者道場の主のはずなのだが道場のあちこちにアニメ画風美少女がいる。リープの死に立ち会った美少女に至っては全裸。他のキャラは全て3DCG感溢れる造形のためめちゃくちゃ浮いている。
頻発する珍訳
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変なのはストーリーやキャラクターには留まらない。1面の駅はハラキリ・ステーションであり、アニメ「スレイヤーズ」や「爆れつハンター」のポスターが貼られていたりパチンコ台が並んでいたり、池で鯉を飼育していたり、新幹線が運行していたりと、いかにもステレオタイプな日本造形。どう見ても日本の駅ではない。
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恐らく銭湯を意味しているであろう「芸者お湯」や直訳気味な「暗い森」に加え、Peasant Villageを訳したであろう「少し村」等といったように看板も変なものだらけ。マップは終始異様な雰囲気が漂っている。
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場所によっては綺麗な日本庭園を再現しているマップ等もあり、単に勘違い日本全振りというわけではない。そうかと思うと中心にミニ鎌倉大仏が鎮座していたりするが。
豊富なシークレット
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映画ネタからビデオゲームネタまで多彩なシークレットが仕込まれている。元ネタを知っていればより楽しめること請け合い。
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有名なのが前年に発売され大ヒットとなった3Dアドベンチャー『トゥームレイダー』のララ・クロフトのシークレット。それ以外にも『マッハGOGOGO』の車や『セーラームーン』等の際どいネタが豊富に仕込まれている。
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豊富なシークレットの中でも特に多いのが映画『モンティパイソン・アンド・ホーリーグレイル』の「殺人ウサギ」に関するネタ。シークレットの一つである聖杯の洞窟には元ネタ通り凶暴なウサギが徘徊している他、実際に交尾するウサギ繁殖エリアや大量のウサギのいるマスター・リープの庭園、旅客機の貨物室にいる密輸中の殺人ウサギなどウサギに関する要素が多い。
バリエーション豊かな武器装備
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手裏剣、刀、UZI、ショットガン、ミサイルランチャーといった一般的なFPSにも見られるものから吸着爆弾、グレネードランチャーといった当時は珍しかった武器種、どう見ても映画「イレイザー」なレールガン、超広範囲に熱線ダメージを与える核弾頭、敵の頭を切り落として使う炎を放つ生首など様々な武器を使える。
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武器によっては発射モードの切り替えもできる。刀だと素手に切り替えたり、UZIだと二丁拳銃、ショットガンだと連射(最大4発)、ミサイルランチャーだと熱追尾と核弾頭、生首は火の玉バリア、爆発する炎の玉と言った感じである。モードの切り替えは強制ではなく任意で切り替えることができる。
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全体的に主人公の火力は高く、爆発武器などを使用すると爽快感は高い。メインとなる銃器に一般的なFPSにおけるピストルのような「弱すぎて使えない」武器は存在しない。
よく喋る主人公
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『Duke Nukem 3D』同様、事ある毎に主人公が喋る。掛け声や驚き、ジョーク、映画ネタなどバリエーションは多彩であり、プレイヤーを飽きさせない。
密度が高く、起伏に富んだマップ構造
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『DOOM』のようなマップを二次元処理している2DFPSは大抵の場合マップが平面迷路構造になりがちだが、本作はBuildエンジンにより多重構造や高起伏な地形を実現している。階段を登って上階に上がったり、エレベータや屋上を経由してビル街を進んでいく2Dであることを感じさせないマップ構造は当時の2DFPSとしては驚異的なもの。
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『Duke Nukem 3D』で評価された、当時の3Dタイトルでは処理能力の関係で不可能であった「密度感のあるマップ」も健在。看板や観葉植物、PC、絵画、大仏、銅鑼などゲームプレイに関わらない部分もしっかりと作りこまれており、独特な世界観の構築に貢献している。
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プレス加工で鍵を作り出す、戦車に乗って壁を破壊する等、エンジンを活用したパズルも見所。3D RealmsのFPS作品としては二作目ながらマンネリ感は感じにくい。
問題点
アジア人差別レベルのキャラクター描写
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発売当時一番問題として取り上げられた部分。開発者の言によれば「B級カンフー映画の雰囲気を出したくて、わざとステレオタイプなキャラクターを登場させた」とのことだが、いささかやりすぎだとして非難の対象となった。
癖の強すぎる作風
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勘違い日本要素をバカゲーとして笑えるか日本差別として嫌悪感を抱くかによって、前述の作風は評価点にも問題点にもなる。
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本作は意図して勘違い日本を炸裂させたタイプの娯楽的なバカゲーである。日本にも本作のファンは少なからず存在する為に試みとしては成功したと言えるものの、上述のようにその描写に嫌悪感を抱く層も当然存在する。「アメリカ人の作ったステレオタイプなアメリカ」であった前作『Duke Nukem 3D』と異なり、ともすれば偏見と捉えかねない他国のステレオタイプ化であるが故の弊害と言える。
戦闘面のバランスの悪さ
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敵の一発一発のダメージは大きく、反射速度も速い。出会い頭に攻撃を食らって死ぬことも非常に多く、難易度は総じて高め。
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単純な撃ちあいとなるボスよりも超反射でマシンガンを叩き込んでくるザコ敵のほうが脅威となる場合すらある。戦闘バランスは前作よりも悪い。
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対する主人公はというと吸着爆弾、グレネードランチャー、ロケットランチャー、熱追尾ミサイル、核弾頭と全体的に爆発武器過多。爆発ダメージは自分にも返ってくるためよく自爆しがち。敵の動きもかなり激しいため慣れないうちは頻繁に爆発に巻き込まれる。
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開けた場所が少なく建物内部の近接戦闘が非常に多いことも爆発武器による自爆に拍車をかけている。個室にグレネードを放り込んでから突入する戦法が取れるなど戦略の幅は広がっているものの、いささか調整不足感が否めない。
総評
前年に完全3DFPSの『QUAKE』が発売され、莫大な賞金を賭けてプロゲーマーが争う競技用FPSとして白熱していた正に2DFPS末期と呼べる時期に登場した作品。
『Duke Nukem 3D』のテイストを受け継いだバカゲー全開のノリや作りこまれたマップは一部熱狂的なファンから支持された反面、戦闘バランスの悪さやステレオタイプなアジア人描写が批判されることとなった。
だが、後にリブート作が発売されるなど人気自体は根強く、3DFPSの波に飲まれかけていた中でここまでの知名度を得ているのは十分に健闘した証だと言えるだろう。
一風変わった世界観をバカゲーとして楽しめるかどうか等、かなり人を選ぶ作品である。しかし全体的な作品としての完成度は高く、現在ではBuildエンジンの名を確固たる者にした功労者の一つとして評価されている。
余談
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「ビルドエンジン四天王」の1つと称されるが、残りの2つは『BLOOD: One Unit Whole Blood』と『Duke Nukem 3D』で、最後の1つは人によって変わるが大抵の場合『Redneck Rampage』を指す。『Duke Nukem 3D』の成功に続けとばかりに全作が本作のノリを継承した結果、四天王全てがバカゲーテイストとなった。
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4作品全てにカルト的な人気があり、MODが製作されるなど根強く活動が行われている。
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現在では高解像度対応・全拡張パック導入版である『Shadow Warrior Classic Redux』がSteam/GOG.comで配信されている他、オリジナル版も『Shadow Warrior Classic』として無償公開されている。なお、Devolver Digitalが当時の版権保有者から版権を取得したことで、現在は同社が本作やリブート作のパブリッシャーとなっている。
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グラフィックや操作性に難がある為、今から遊ぶのであれば『Redux』の方が最適と言える。動作も非常に軽く、現在の一般的なノートパソコンであれば快適にプレイできるだろう。
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素手で壁を殴るとダメージを受け、そのまま素手で壁を殴り続けるとダメージを受けて死ぬ。バカゲー的な本作ならではの拘りであり、案の定どこのFPSにも取り入れられなかった。
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道中にある木人や藁人形を殴り続けると反対にライフが回復する。時間はかかるが、かなり役に立つ回復手段である。
続編・派生作品
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『Shadow Warrior』(Win 2013年9月27日発売 PS4/One 2014年10月21日発売)
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本作のリブート作。オリジナルである本作と区別する為に『Shadow Warrior(2013)』と表記される場合がある。開発は『Hard Reset』を手掛けたポーランドのFlying Wild Hogで、流血に部位欠損と言った凄まじいゴア描写が特徴。
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リブート作でありながら時系列はオリジナルより過去の話ということで、主人公も若い頃のロー・ワンとなっている。全部ではないがオリジナルにもあった(無難な)シークレットネタも登場している。
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『Shadow Warrior 2』(Win 2016年10月13日発売 PS4/One 2017年5月19日発売)
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ナンバリング第2作。リブート版の続編。舞台は前作から5年後で、人間と悪魔が共生するようになった世界。
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新たにハック&スラッシュ的アイテム収集やランダム要素が追加され、最大4人で遊べるオンラインCO-OPも搭載。前作同様に凄まじいゴア描写あり。
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『Shadow Warrior 3』(PS4/One/Win 2022年3月1日発売)
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2020年7月に発表されたナンバリング第3作。従来のアクションに加え、新兵器としてグラップリングフックが登場。シリーズ伝統のゴア描写もパワーアップしている。
最終更新:2023年05月28日 01:25