このページでは『Sherlock Holmes: Crimes & Punishments』(判定は"良作")とその続編の『Sherlock Holmes: The Devil's Daughter』(判定は"なし")について記述しています。



Sherlock Holmes: Crimes & Punishments

【しゃーろっく ほーむず くらいむず あんど ぱにっしゅめんつ】

ジャンル 推理ADV
対応機種 Windows Vista sp2/7/8/10
発売元 Frogwares
開発元 Frogwares
発売日 2014年9月30日
定価 2,980円
プレイ人数 1人
セーブスロット 1
レーティング CERO: C(15才以上対象)
参考 Unreal Engine 3使用
判定 良作
ポイント 日本語あり
シャーロック・ホームズシリーズ

概要

2002年の『Sherlock Holmes: Mystery of the Mummy』を皮切りに『シャーロック・ホームズシリーズ』を手掛けていたFrogwaresによるメジャーシリーズ第7弾。
本作の発売当初はFocus Home Interactiveがパブリッシャーであった。
しかし、2019年9月29日に両社の契約が切れ、Steamで配信されていたWin版のみFrogwares社が急遽版権を買い戻す。
そして、自社パブリッシングに切り替えたことで販売中止は免れたものの、CS機版の方は2019年9月29日に販売中止となった。
なお、CS機版も2020年には自社パブリッシングでの販売を再開している。

今作ではシリーズ初のマルチエンディングを採用しており、タイトル通り「罪と罰」を強調したシナリオが特徴的。

ストーリー

クジラ漁の船長をした後に"木こりのリー"にて隠居生活をしていた通称"ブラック・ピーター"が殺害された。
レストレイド警部の捜査協力要請を受けたシャーロック・ホームズは"木こりのリー"へと向かった。

  • 上記の「ブラック・ピーターの運命(原題:The Adventure of Black Peter)」の他、「線路上の謎(原題: The Story of the Lost Special)」「血の浴室(新作?)」「アビー屋敷(原題: The Adventure of the Abbey Grange)」「キュー植物園(新作?)」「半月夜の散歩(新作?)」の計6話を収録している。
    • 原典名を付した一部シナリオは原作小説や外典からの引用。ただし、登場人物が増えていたりマルチエンドのため異なる結末が用意されている。
+ ネタバレ
  • 描き下ろしと思われる「血の浴室」は、トリックと犯行現場はシャーロック・ホームズシリースが書かれたのと同時代の「The Tea-Leaf(作:Edgar Jepson, Robert Eustace)」から流用されている。

システム

  • AADVである。ワンタッチで一人称視点と三人称視点を切替可能である。
    • 前作『The Testament of Sherlock Holmes』同様、一部ではワトソン、犬のトビー、マロー巡査を操作する場面もある。
    • 虫眼鏡のアイコンが出た場所のみ捜査可能となっている。
      • 捜査したものは自動で証拠に加えられる。
      • 新たな証拠や捜査に基づいて、推理空間にて推理を行う。
    • 今作では調査時に「観察力」と「想像力」を働かせることができるようになった。
      • 観察力使用中は画面がモノクロになり、普段では気付かない証拠が金色に光る。そのまま一定時間注視することで自動で推理を行い、正体が判明して証拠リストに加わる。
      • 想像力は観察力で「何かが置いてあった」といった状況を確認した時に発動できる。使用中はそこにあった物の形状をホームズの想像で視覚化する。
  • ミニゲーム
    • シリーズ伝統の要素。煙草の銘柄を当てるなどの場面で絵合わせのミニゲームがあったり、犯人確保時にQTEなどがある。
      • ただし、それらの推理と無関係なミニゲームは全てスキップ可能である。
  • 事件簿
    • 課題・地図・証拠・書類・人物リスト・実績が確認できる。
      • 課題……To Doリストとなっている。
      • 地図……地図上の地点を選んで移動可能。
  • 推理空間
    • ホームズの脳内を再現した推理パズルモード。捜査を進めることで集まったキーワードを組み合わせて推理を行う。
    • キーワードの組み合わせが正しい場合、神経回路様のマップにノードが出現し、そのノードで推理を確定することで、さらに別のノードと接続して新たなノードが発生する。これを組み合わせて結論を導く。
      • ノードの中には自動的に確定されるものと自分で選択する必要のあるものの2種類が存在する。選択結果によって最終的な展開が変化していく。
      • 結論のノードをクリックすることで犯人逮捕を行うかの最終決断となる。

評価点

  • ホームズなりきりゲームとしてさらに進化した。
    • 今作では会話中にQTEが発生し、ボタンを押すと選択肢が表示されるようになり、正解を選ぶと相手の経歴・嘘などを言い当てることが出来る。初対面の人の経歴を言い当てるのはまさにホームズらしさ満点。
      • もちろんその直前に相手の容姿をじっくり観察しておく必要がある。相手の身なりや所持品から人物像を導き出し、プレイヤー自身が推理することで正解に辿り着けた時はなかなかに楽しい。
  • マルチエンディングの採用
    • 推理空間の進め方次第で異なる結末へ辿り着ける。原作のあるシナリオでも新しい容疑者が設定されているので新鮮味があり、別の結末を見たくなる意欲が湧くつくりになっている。
    • また、最終的に断罪するか見逃すかを自分で選べるようになっており、ここでも分岐する。自分が選んだ量刑と同じものを選んだプレイヤーのパーセンテージも表示されるので、色々考えることが出来る。
      • 革命を経ているフランス人制作だからこその展開もある。
  • 操作性の改良
    • 前作まではポイント&クリック方式*1をベースにしていたため、キーボードやゲームパッドでの操作に違和感があったが、今作ではポイント&クリック式を廃止したため一般的なFPS/TPS形式の操作に統一され、操作性が向上した。

賛否両論点

  • 一部の推理が高難易度
    • 被害者が船乗りであることと、未亡人がロザリオをしているというヒントだけから「ご主人とはプリマスで出会ったのですか?」という選択肢を選ぶ必要がある。
      • なお、ゲーム内で「プリマス」という地名が出るのはそれが初めてである。
      • 間違ってもペナルティはないので、総当りすれば良いのだが。

問題点

  • 日本語訳が十分ではない
    • "インターフェース"を「界面」と、オプションを「選択肢」と訳していたりするなど、普通の日本人が見ればすぐ気づくであろうレベルの誤訳が散見される。
      • これに関してはシステムに関わる用語の誤訳なので、さすがにどうかしていると言わざるを得ない。
    • テクスチャーまでは差し替わっていないことと、そういったものには字幕が付かないため、「証拠室にあります」と言われた場合は、「EVIDENCE ROOM」を自力で探し出す必要がある。
    • 「きこりのリー」(地名)が「きこりのりー(ひらがな)」との表記ゆれがあるなど、他にも気になる点が多い。
    • 重要な部分で意訳ができていない
      • 冒頭のメッセージ「「ウクライナの天国の百」を記念して」も「…に捧げる」のほうが自然な日本語であろう。

総評

まっとうなシャーロック・ホームズもの推理ADV。BBCで放映されたシャーロック・ホームズのドラマを参考にしていると言うだけあって、雰囲気は十分である。
推理の難易度が不安定で、本物のシャーロック・ホームズじゃないと推理不可能だろうと思われる選択肢もある(本物なんていません!)。
必要性の感じられないミニゲームがたくさんあるが、スキップ可能で推理の評価自体には含まれないため、チャレンジするかスキップするかは自由となっている。

余談

  • Frogwaresは2000年にフランス人によってウクライナとアイルランドで設立された会社*2で、社名の"Frogwares"はアングロサクソン系の国ではフランス人を指すことに由来する。
    • 本作の冒頭に「「ウクライナの天国の百」を記念して。」と表示される。これは2014年ウクライナのマイダン革命にて犠牲となったおよそ100名の一般市民に対するものである。
    • Frogwaresのウクライナスタジオの大半の開発者がマイダン革命に関わっていたことから、メッセージが本作に取り入れられた。
    • このメッセージに対して、ロシアローカライズ版を販売する予定だった1C-SoftClub*3はこのメッセージの削除を求めたが、Frogwaresはこれを拒否した。
    • 結果、本作のロシア版パッケージは販売されなかったが、Steamでロシア語版のDL配信は行われているためロシア国内での販売禁止には至っていない。

Sherlock Holmes: The Devil's Daughter

【しゃーろっく ほーむず ざ でう゛ぃるず どぅーたー】

ジャンル 推理ADV
対応機種 Windows 7/8/10(全て64bit版のみ)
PlayStation 4
Xbox One
Nintendo Switch
発売元 Nacon*4
開発元 Frogwares
発売日 【Win】2016年6月10日
【PS4/One】2016年10月25日
【Switch】2022年4月7日
定価 【Win】2,050円
【PS4】4,620円
【Switch】3,650円
プレイ人数 1人
セーブスロット 1*5
レーティング CERO:C(15才以上対象)
参考 Unreal Engine 3使用
判定 なし
ポイント 日本語あり
スキップできない高難易度アクションパート有り

ストーリー(悪魔の娘)

シャーロック・ホームズの養女、ケイトリンが寄宿学校からベイカー街221Bに帰ってきた。
ケイトリンの突然の帰宅は、ホームズがひた隠しにする真実に気づいてしまったからなのか?
隣の部屋に越してきたミステリアスな女性、アリスの正体とは?
(Steam Store ページより)

  • ケイトリンは本シリーズの『The Testament of Sherlock Holmes』初出のオリジナルキャラ。
    + ネタバレ注意
    • その正体は、ホームズ最大の宿敵であるモリアーティ教授の娘であるという設定である。
  • 前作は、シャーロック・ホームズの近所にアリス(前作では名前までは明かされなかった)が引っ越してきた来たところで終わる。
    • ケイトリンが帰ってきたところから本作が始まるわけではなく、ケイトリンは1話目の途中で帰ってくる。
  • 本作は「餌食は語る」「緑の研究」「不名誉」「連鎖反応」「熱き夢よ」の5本のオリジナルストーリーからなる。
    + ネタバレ
    • 1話として独立していないがコナン・ドイル作の「花婿失踪事件(A Case Of Identity)」が「不名誉」に含まれている。
  • 「緑の研究(A Study in Green)」のタイトルは原作の「緋色の研究(A Study in Scarlet)」のオマージュか。
    • なお、「緑の研究」のはストーリー上は重要なキーワードではなく、プレイ後でも結局何を指すのか分かりにくいぐらい、オマージュ先行過ぎていて的確なタイトルとは言い難い。
+ 「緑の研究」ネタバレ
  • 「緋色の研究」は殺人の動機が海外(アフリカ)の探検時の出来事に起因しており、「緑の研究」も同様に海外(南米)での遺恨が原因という共通点はある。

概要(悪魔の娘)

  • 『Sherlock Holmes: Crimes & Punishments』の続編で、Frogwaresが手掛けるシリーズ8作目。
    • 前作と同様にシャーロック・ホームズらを直接操作するAADVであり、FPVとTPVがワンタッチで切替可能となっている。
      • ホームズの住まいや、スコットランドヤード内のオブジェクトは前作のままとなっている。

システム(悪魔の娘)

  • 難易度
    • 「名探偵モード(ノーマル)」「顧問探偵モード(ハード)」
      カッコ内の表記はこちらが付けたものでゲーム内では表記が無いため、名称だけからではどちらが難しいのか分かりにくい。
    • 難易度はゲーム中に設定画面から変更できる。
      • こちらは「ノーマル」「ハード」表記である。表現を統一して欲しい。
  • なお、和訳の精度は前作よりも上がっており、本作では気になる点は少ない。
  • その他のシステムは完成度の高かった前作のシステムをほぼ踏襲している。

評価点(悪魔の娘)

  • システムは良好である
    • 前作の「事件簿」や「推理空間」など、ほとんどのシステムはUI含めてそのままであり、改悪もなく受け継がれており、プレイ感は良好である。
    • 「想像力」のUIが向上し、事が起こった順序の予想を入力しやすくなっている。
  • ベイカー街を歩き回れるようになった
    • スコットランドヤードまで歩ける。従来通り、mapからジャンプもできる。
    • 「腕相撲」「射撃」「ダーツ」「平均台」というミニゲームが用意されている。
      • 腕相撲の相手は前作中で腕相撲をした登場人物。
    • 一方で、前作では暖炉の上に置かれていた新聞は、家の外の新聞売の少年に話しかけて入手する手間が掛かるようになった。
      • その代わり、前作では1話に1回しか新聞が届かなかったのだが、本作では外出できる日は毎日新しい新聞が入手可能となった。同じ章内なら後日まとめて取得も可能。
    • ベイカー街遊撃隊(少年探偵団)のウィギンスも前作通りホームズの家の下付近にいて、呼ぶ必要があるときは前作と同様に家から呼びかけると向こうからホームズの家に出向いてくるが、本作では通りまで降りて話しかけても良い。
    • ホームズの住まいの望遠鏡から覗けた豊満な女性も、ホームズの住まいには相変わらず望遠鏡が置かれているにもかかわらず、ベーカー街にある別の望遠鏡からしか覗けない。
      • なお、本作ではその女性の部屋には拘束具などがあり、ムチらしきものを振っている場合もある。

賛否両論点(悪魔の娘)

  • ボリュームが減っている
    • 前作は6話収録だったのが5話と減っている。
      • しかも、最終話「熱き夢よ」は推理モノではなくホラー・サスペンスである。
      • なお、それまでの話でプレーヤーが下した判断によって最終話の敵のセリフが変わるので、その点は前作よりは凝っている。
    • 歩き回れる範囲はおそらく増えている。ただし、前作のオブジェクトを使いまわしている部分もあるため、一概には比較はできないが。
      • ただし、街なかもしくはピラミッド内で無駄な探索をさせられてプレイ時間が水増しされているなどと感じる場面も有る。どちらかと言えばシナリオのほうに力を入れてもらいたい。
    • その分前作より安くなっている。
  • 前作の続編であるはずなのにキャラが変化している
    • ホームズは声優(英語音声)が前作から変更されている。これについてFrogwaresはホームズに前作とは異なる役割を与えるためと説明している。
    • ワトソンは紳士キャラから一転して軟派になっている。
    • 推理にしか興味のないプレイヤーにはそこまで気にならないだろう。
      • ただ、推理にしか興味がないからホームズの"異なる役割"がうざく感じられるというのはあるだろう。

問題点(悪魔の娘)

  • 一部のストーリーの質が低い
    • 1話目は、オープニングムービーで早くもネタバレしている。使い古された設定とは言え、それさえなければもう少し楽しめた可能性はある。
    • 最終話は「熱き夢よ」は推理モノではなくホラー・サスペンスである。ステージは色々用意されているもののストーリーの内容が薄く、最終ステージは作業感が強い。
    • とある話では、犯人ではない人物(厳密には犯人か?)の行動が煩わしく、有罪に仕立て上げたくなる。
    • 一方、「連鎖反応」はただの交通事故かと思わせておいての意外な展開があり、裏切りがあって良い。
    • 後味の悪い話がある
+ 完全なネタバレ

「連鎖反応」で、難病の娘を男手一つで育てている地下鉄会社社員を、ギャングの銀行強盗の上前をハネた犯人としつつも道義的判断で見逃した場合、その娘の入院する病院から後にホームズ宛に手紙が届く。
手紙の内容は、その娘さんは懸命の治療の甲斐もなく亡くなり、「遺族がいないため遺体の引き取り手がない」という。ということは、結局その父親はギャングにバレて消されたということだろうか。

  • 失敗が許されないシステム
    • 人物観察で失敗して「不正確な人物像」となった場合でも、間違いが分かっているのにやり直せずにストーリーは続いてゆく。
      • 前作ではすぐにリトライが可能だった。
  • 任意セーブができない
    • オートセーブは頻繁に行われるほうであり、数個前までのオートセーブが残されている。
      • とはいえ、最初のセーブポイントは1話目の依頼人の人物観察であり、それが「不正確な人物像」となった場合は再プレイするしかなく、何度もオープニングムービー(スキップ不可)を見るハメになる。
    • なお、基本情報欄の「スロット 1」というのは、各章を新たに始めるとそれまでのセーブデータが全て消されるという仕様を指しています。同一章内なら5個までセーブが残される。
      • ロードはメインメニューに戻る必要があり、プレイ中からは読み込めない。
  • 一部のミニゲームが飛ばせない
    • 前作と同様、推理と関係のないミニゲームが多くあり、本作もほとんどがスタートボタンでスキップ可能なのだが、今作は飛ばせないものもある。
    • 尾行アクションや逃走アクションなどは飛ばせない。
      • こちらは「人物観察」と違い、失敗すると直前からやり直しとなる。
      • 尾行中の煙突掃除や平均台などはスキップ可能。
    • 飛ばせないQTEもある
      • QTEはオブジェクトの選択がLスティック、選択肢の選択が十字ボタンで、どちらも左親指による操作となり、連続して操作を行う必要があることから煩雑で難易度が高い。選択肢はABXYボタンで選ばせて欲しい。
    • 設定からコントローラーの振動をoffに出来ないため、ミスするたびにコントローラーが振動して不快である。

総評(悪魔の娘)

前作の価格に比べて安くなっていることからも分かるように、前作から全体ボリュームは減っている。
前作と異なり一部のアクションパートはスキップできず、しかも難易度が高いためアクションが不得手な人にはクリア不可となっている。
スキップできるアクションミニゲームでもピラミッド内の仕掛けなども前作ではなかったたぐいの"死に覚え"に近いものがあり、前作に比べるとゲーム性が随分とアクション寄りになっている。
なお、本シリーズは本作で一区切りとなっている。


その後の展開

  • 2021年11月PS5/XSX/PS4/One/Switch/Win*6で21歳のシャーロック・ホームズが主人公の新シリーズ第1作『Sherlock Holmes Chapter One』が発売された。
    • 一本道だった本シリーズに対し、オープンワールドをうたっている。
最終更新:2024年01月10日 15:00

*1 クリックした場所に移動する形式。

*2 本社機構はウクライナに置き、それを補助する形でアイルランドに支社を置いている。

*3 ロシア国内におけるソフトウェアパブリッシング兼ディストリビューション最大手である1C Companyの子会社。

*4 発売時の社名はBigben Interactive。

*5 同一章内なら5個まで。章を跨ぐと全消し。

*6 Steam、GOG、Epic Games Storeでの配信。