デジモンテイマーズ バトルエボリューション
【でじもんていまーず ばとるえぼりゅーしょん】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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バンダイ
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開発元
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ハドソン シーエイプロダクション
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発売日
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2001年12月6日
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定価
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5,800円
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判定
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良作
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デジタルモンスターシリーズリンク
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概要
『デジタルモンスター』シリーズのアニメ作品『デジモンテイマーズ』をベースとした2D対戦格闘ゲーム。
とはいえタイトルこそテイマーズだが、アニメ『デジモンアドベンチャー(以下『無印』と表記)』『デジモンアドベンチャー02(以下『02』)』からも主要キャラ達が参戦している。
全体的な作りは、どちらかというと大乱闘スマッシュブラザーズ系統のゲームとなっており、ギミック付きのステージもあるなど意識している部分は多い。こちらは2人対戦まで。
対戦中の攻撃アクションはよくある通常攻撃に加えて、いつでも使える2種類の「必殺技」と、特定条件下で発動可能な「超必殺技」がある。
さらにデジモンらしく進化システムを採用しており、一部を除いたデジモンは「進化ゲージ」が貯まると進化を行い、一定時間進化形態へのパワーアップが可能になっている。
操作キャラクター
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初期キャラはギルモン、テリアモン、レナモン、アグモン、ガブモン、ブイモン、ワームモン、パタモン、テイルモンの全9体。
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隠しキャラはオメガモン、ゴクモン、インペリアルドラモン パラディンモード、インプモン、ベルゼブモン、ブラックウォーグレイモンと各初期キャラの進化形態の15体。
評価点
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アニメ版の再現度の高いゲーム内容。
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OP,EDは『テイマーズ』の楽曲を使用し、映像はCGを使ったゲームオリジナルのもので構成されている。
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BGMも上記3作の主題歌や進化ソングをアレンジして使っており、特に対戦においてはアニメさながらの臨場感を感じられる。
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参戦デジモンは『テイマーズ』のメインキャラを中心に、『無印』『02』からも主要キャラをチョイスしており、アニメ内の人気キャラは概ね押さえている。
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モデルを流用できるためか、ライバルキャラとして高い人気を持つブラックウォーグレイモンや、劇場版で活躍した
インペリアルドラモン パラディンモード
も参戦している。特にアクションゲームでパラディンモードを操作できるのは本作のみである。性能は通常ウォーグレイモン及びインペリアルドラモンファイターモードから流用された部分が多いが、超必殺技などに差別化点が設けられている。
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ブラックウォーグレイモンの外見は単なる色違いで終わらされず、「ブレイブシールドに勇気の紋章が刻まれていない」という
蔑ろにされがちな
設定が本作ではしっかり汲み取られている。
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必殺技の再現度も凄まじい。例えばウォーグレイモンのガイアフォースは頭上で巨大なエネルギー球を作って斜め下へと打ち下ろすといったように、アニメのモーションを忠実に再現している。
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対戦中ステージ内に登場するアイテムは、『デジタルモンスターカードゲーム』を模したデザインとなっている。『テイマーズ』の作品テーマにこれらのカードを読み込ませる「カードスラッシュ」という要素があったため、その強化再現ともいえる。
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アニメキャラクターのオリジナルキャスト起用。
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登場するデジモンとそのパートナーキャラは全てアニメと同じキャストが担当。一部の合体・ジョグレスデジモンも、複数の声優が同時に発声している点を忠実に再現している。
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原作で非戦闘キャラであったクルモンは、キャラ選択画面などでボイス付きでなおかつフルポリゴン登場し、こちらも雰囲気を盛り上げている。
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先に述べた必殺技はアニメと同じく、しっかり技名を叫びながら繰り出してくれる。
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一部の必殺技は、設定上存在していたが当時のアニメ内では未使用だったというものもあり、その点でも貴重な演出となっている。
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キャラクターセレクトの『無印』と『02』で重複するキャラクターは全て『02』準拠で製作されており、3年成長した姿での登場だが、隠しコマンド(L1+R1)を使うことで『無印』版を選ぶことができる。
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しかも、BGMまで変わるこだわり様。製作サイドのデジモンアニメ愛を感じさせる。
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また、ワームモンで隠しコマンドを使用すると、賢がデジモンカイザーになる。
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据置機作品でアニメデジモンを操作できる楽しさ。
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デジモンシリーズで数少ない据置機の対戦アクションであり、テレビで迫力のある対戦が楽しめる。初代PSの作品なので画質等は時代相応だが、当時基準では十分な水準である。
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ここまでに述べてきたようにアニメの再現度は抜群で、そのデジモンで迫力ある対戦が楽しめる感覚はファンからすれば堪らない。
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後発作品の『デジモンバトルクロニクル』が散々な出来だったため、据置機のデジモン対戦アクションゲームとしては2024年現在も最高の作品と言える。
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多様性のあるステージ。
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高低差の激しいステージや落下ギミック・ダメージギミックのあるステージなど、ステージごとに個性がある。距離感や立ち回りを意識し、ギミックを活用すれば有利に戦える。
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ギミックによるダメージや落下によるダメージはゲージ1割にも届かない軽度なダメージである。被害を受けてもデジモン同士の戦いに水を差される理不尽さまでは感じない程良い加減になっている。
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ラスボスステージは完全に平坦で落下ゾーンも無い。勿論、プレイヤー同士の対戦時にもこのステージは選択できるので、ステージギミック無しで対戦したいというニーズにも応える作りとなっている。
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ステージデザインはいずれも本作独自のものだが、アニメや過去のデジモンゲームの雰囲気をしっかり汲み入れ、デジタルワールドらしさを感じさせる事に成功している。
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操作がシンプルで遊びやすい。
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いわゆる『スマブラ』フォロワー作品のためか、本作もボタンを押すだけで簡単に技が繰り出せる。
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コマンドが覚えられない、コマンド入力が成功しないといった格闘ゲームによくある間口の狭さは解消されている。
賛否両論点
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大味なキャラクター性能。
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対戦バランスよりもアニメ再現に比重が置かれているため、性能格差は大きく表れている。特にキャラの機動力、遠距離必殺技の射程や弾速などはアニメのイメージが色濃く出ており、性能に直結している感が強い。
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成長期だと射程・連射力の高い射撃必殺技を持つテリアモンや、進化形態では同等の射程に高威力と着地キャンセルを併せ持つインペリアルドラモン(F/Pともに)などが目立つ。
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ゲームオリジナルデジモンの
ゴクモン
はラスボスキャラらしく露骨に強く設定されている。火柱を設置するジャエンレンゴクや、出し始めに無敵判定のある連続攻撃ドクロランブといった必殺技は、どちらもヒット数が多い上にハメられると抜け出すのも困難となるなど、対人戦でも凶悪な性能を有している。また超必殺技も引き寄せ効果のある強力な技となっている。
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救いとしては遠距離技を持っていないことであろうか。
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こういった格差の存在は純粋な対戦ゲームとして見た場合には難点として映る。一方でキャラゲーという側面から見ればアニメ再現を重要視したからこそ「アニメキャラクターを操作している」という体験が得られたと受け取れるため、是非の意見は分かれるところである。
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ゴクモンの露骨な性能も撃破時の達成感、自分で操作した時の無双感などに繋がる。この強さがあったからこそ、本作オリジナルデジモンとしての存在感を残す事に成功したと言っても過言ではない。
問題点
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ゲームモードの少なさ。
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1Pプレイモードのほかに、2P対戦モードとCPU対戦、ミニゲーム(後述)であそぶ(ひとり・ふたり)のみである。
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1Pプレイモードは2本先取の勝ち抜きバトルを行い、最終的にラスボスに挑むというもの。オーソドックスな格闘ゲームのアーケードモードに相当するが、会話パートなどは無いので人によってはその点が物足りなく感じる事も。
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この手の対戦ゲームとしてはトレーニングモードなどが無い点も少々残念と言えるか。
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必要性のわからないミニゲーム。
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1Pプレイモードの途中と、ミニゲームモードでプレイできるミニゲームが2種類あるがどちらもオマケとして入れたようなもの。
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ひとつは早く連打してゲージを貯めるというもの。貯めきることによって、進化させる内容なのだが純粋なスコアアタックには連打要素のみのこれを入れるのは余計でしかない。
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もうひとつは玉入れ。ボタンの押す長さによって飛ぶ距離の変わるボールを先に10回入れるというもの。玉カゴは途中から不規則に動くため、安定したスコアを出すのは難しい。
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どちらも対戦ゲームの1モードとして数えるには厳しい出来であり、ゲームモードの水増し感が否めない。
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粗い戦闘システム。
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このゲームの戦闘の醍醐味と言える進化システムは、進化したからといって完全上位互換になるというわけでもなく、当たり判定が大きくなったり、成長期デジモンに対しての射撃必殺技が高さの問題で当りにくかったりなど粗が多い。
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もちろん、必殺技も通常攻撃も基本的には強化されていて、進化ゲージを消費しての超必殺技が放てるなど戦況を覆すことは可能ではあるのだが、他のデジモン対戦格闘ゲームに比べていまいちバランスが取れていないという意見が多い。
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進化すると軽い演出が入るのだが、進化後の無敵フレームが一切ない。隙を突かれないように自らの操作でカバーする必要がある。
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ワームモンの進化先が唯一
成熟期
であるスティングモン。
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他のデジモンは全て究極体に進化するにもかかわらず、ワームモンだけ何故か
成熟期
のスティングモン。しかも本作の進化前デジモンの中には同じ成熟期のテイルモンもいるため、どうにか完全体以上の進化形態を充ててほしかったところ。
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アニメでは完全体以上の進化にブイモンとのジョグレス進化を行っていたが、本作ではそのブイモンでインペリアルドラモン(ファイターモード)を採用しているため、同じ進化先が使えなかったが故の処置と思われる。ここにきてジョグレス進化の弊害が出る結果となっている。
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ただし、インペリアルドラモンにはドラゴンモードという別形態があり、その前身として完全体のパイルドラモンも存在しているため、このどちらかを採用してもよかったのではないだろうか。
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開発元は異なるが、本作の2か月前に発売された『デジモンテイマーズ バトルスピリット』ではブイモンがパラディンモード、ワームモンがファイターモードと進化先が分けられているあたり、被らせるわけにはいかなかった事情が窺える。
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隠しコマンドを使用しないと同キャラ対決ができない。
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2P側がセレクトボタンを押しながら1P側と同じデジモンを選択する事で同キャラ対戦ができるが、隠しコマンドが必須なのが悔やまれるところ。
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進化演出が全キャラ共通で『テイマーズ』由来。
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作品や進化世代にかかわらず、「EVOLUTION_」の文字が浮かび、光の網に包まれるという『テイマーズ』の成長期→成熟期の進化シーンを由来とする演出で進化する。
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ある程度の汎用化が必要だった事は察しが付くが、『無印』『02』キャラが『テイマーズ』の演出で進化する事の違和感は大きい。アニメの再現度が高い作品なだけに、せめて『無印』『02』と『テイマーズ』で異なる進化演出を設けて欲しかったところ。
総評
デジモン原作として見れば出来は良く、グラフィックや音楽などもキャラゲーの水準以上にまとまった良作。しかし、対戦アクションとして見ると調整不足感は否めない。
とはいえ、「デジモンの対戦アクションゲーム」としては次世代機で出ている『デジモンバトルクロニクル』と比較するとキャラ数・グラフィック以外は勝っているので、興味のある方は一度プレイしてみてはどうだろうか。
余談
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今作のオリジナルデジモンであるゴクモンは長らくアニメに未登場であったが、2021年1月放送回『デジモンアドベンチャー:』31話にて初登場が叶った。
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本作のパタモン、テイルモンの進化先は、それぞれ『02 劇場版』にて進化した究極体のセラフィモン、ホーリードラモンが採用されている。
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どちらもアニメ版の再現であり『デジタルモンスター』の系譜としても合っているのだが、どうせなら前述のスティングモンのように完全体のホーリーエンジェモン、エンジェウーモンを進化形態に採用してほしかったという声もある。
当の劇場版で出番が一瞬しかなかったのも一因かもしれない
最終更新:2024年08月22日 20:12