デジモンバトルクロニクル
【でじもんばとるくろにくる】
| ジャンル | アクション |  |  |  | 
| 対応機種 | プレイステーション2 Xbox
 ニンテンドーゲームキューブ
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| 発売元 | バンダイ | 
| 開発元 | ブラックシップ | 
| 発売日 | 2004年7月29日 | 
| 定価 | 7,140円 | 
| 判定 | クソゲー | 
| ポイント | 劣悪なバランス 理不尽なギミック&アイテム
 全体的に原作無視
 全体的に漂う洋ゲー臭
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| デジタルモンスターシリーズ | 
 
概要
『デジタルモンスター』シリーズの歴代アニメ作品を題材とした2D対戦格闘ゲーム。最大4人対戦が可能。
どちらかというとスマブラ系統のゲームで、ボタンと方向入れで技が出せたり、ギミック付きのステージがあるなど意識している部分は多い。
ただし、スマブラとは違い体力制を採用している。また、一部のギミックにより一撃死ということもある。
デジモンのゲームは『デジモンワールド』や『デジモンワールド デジタルカードアリーナ』など名作もあるのだが、それは初期の話。
似た構成の対戦アクションとしては、『デジモンテイマーズ バトルエボリューション』のように荒削りながら原作愛に溢れたものもあった。
しかし、人気低迷期に発売されたこのゲームはパチタルモンスターと言っていいほどの出来だった。
操作キャラクター
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『デジモンアドベンチャー(無印)』からは仲間達全員が参戦しているが、『02』からはブイモン、『テイマーズ』からはギルモン、『フロンティア』からはフレイモンのみと、『無印』以外の作品からは主人公以外ほぼ参戦していない。
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隠しキャラはオメガモン、ディアボロモン、ネーモン、ダスクモン、ベリアルヴァンデモン、ブラックアグモン、ブラックガブモン、ブラックギルモンがいる。
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デジモンの進化系譜は本来「幼年期→成長期→成熟期→完全体→究極体」で構成されているが、アニメで究極体が登場しなかったデジモンの救済のためか、本作では
「成長期→成熟期→究極体or完全体」の3段階
に統一されている。この仕様上、究極体と完全体で強さは変わらない。
 
問題点
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いろいろと設定を無視&謎仕様な内容の数々。
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ブイモンの系譜がブイモン→フレイドラモン→インペリアルドラモンとなっている。フレイドラモンはブイモンが「勇気のデジメンタル」で進化した姿で系統がやや異なっており、一方で成熟期のエクスブイモンも存在するため、ブイモン→エクスブイモン→インペリアルドラモンの方が系譜的には正しい。
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アグニモンは、劇中では僅かしか出てきていないフレイモンを成長期としている。ここはまだ許容範囲と言えるが、そこからの進化がフレイモン→アグニモン→ヴリトラモンとおかしな設定になっている。
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何が問題なのかというと、ヴリトラモンはアグニモンからスライドエボリューションする、いわばフォームチェンジ的な形態変化であるため、他の最終形態と比較すると戦力的に大きく見劣りしているのである。
 なお、本来であればアグニモン(及び変身者の神原拓也)の最終形態はスサノオモンであり、さらにその間にはアルダモンやカイゼルグレイモンといった中間形態にあたる存在もいる。これだけ選択肢がある中、何故ヴリトラモンをチョイスしたのか謎。
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これらの進化形態のチョイスに関しては、「アニメで出番の多かった形態を優先した」「系統的に違和感がないから」といった理由を捻り出すこともできるが、やはり設定面での違和感が目立つ。無理に3段階進化で統一せず、キャラ毎に進化システムを用意するなどの調整が欲しかったところである。
 
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技名の間違いが多い。アニメーションと比較すると、一部の技の名前が入れ違いになっているものもある。
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酷い間違いの例としては、デュークモンの大技「ファイナルエリシオン」が、本作では「シールドアタック」というなんとも言えない技名になっている。
 技名の入れ違いは上記のフレイドラモンが該当しており、進化ルートとしても首を傾げざるを得ない上に技名を間違えられるという救いようのない有様。
 
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技のエフェクトも全体的に非常にショボイ。ウォーグレイモンの「ガイアフォース」などは原作の面影がない、チンケなものとなっている。
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ディアボロモンはアニメでは喋らないはずが本作では喋る。担当声優は千葉繁氏と何気に大物を使用。
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後述のオメガモンと違い、後の作品で台詞を与えられた作品もなく、完全に本作独自のキャストとなっている。
 
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オメガモンの声優が、『無印』『02』での坂本千夏氏&山口真弓氏のコンビではなく田中秀幸氏になっている。
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ただし、田中氏は後に公開されたCGアニメ『DIGITAL MONSTER X-evolution』でもオメガモンの声を担当している。同作は当初劇場公開予定だった作品を後にTVスペシャルとして公開したもので、製作自体は早い段階で完了していたとされる。本作のキャスティングはこれに準拠したものと思われる。
 
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ネーモンは『フロンティア』において旅に着いてくる非戦闘員であったが、本作では下品な攻撃をするネタキャラとなっている。
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ネタキャラポジションはキャラゲーでは珍しくないが、原作再現をしているとは言い難い性能。第一に
ネタキャラが喜ばれるのは他の参戦キャラが十分に揃っていてこそ
である。ネーモンは別段人気キャラでもないため、非戦闘員でもあるコイツが枠を一つ食っていることは純粋に疑問。
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また、『テイマーズ』からは唯一敵役が一体も参戦していない。本作の後、設定を変えて再起用されるほどの屈指の人気デジモンであるベルゼブモンなどの参戦もなし。
 
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ダスクモンは『フロンティア』の敵役だが、『無印劇場版』の大ボスのディアボロモン、『02』のラスボスのベリアルヴァンデモンが参戦している中、物語中盤で退場した敵が参戦しているのは賛否両論。とはいえダスクモンは後に仲間入りする輝一が進化した姿であり、『テイマーズ』のベルゼブモンに近い立ち位置なので「ライバルキャラ」のチョイスとしてはそれほどおかしくはない。本来の形態である「レーベモン」もいるにはいるが、こちらは仲間入り後の姿である。
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ベリアルヴァンデモンは、本作では「ヴェリアルヴァンデモン」と微妙に表記が間違っている。さらにゲーム中のデジモン図鑑で「ベリアルヴァンデモンは七大魔王の一人である」と誤った解説がなされている。
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ブラックアグモンの最終形態ブラックウォーグレイモンの背中に勇気の紋章が描かれているが、本来は無地である。加えてブラックウォーグレイモンの声優は『02』での檜山修之氏ではなく、ブラックアグモンの坂本千夏氏のまま。モデリングの流用に加え、声優へのギャラを渋ったとしか思えない手抜き仕様である。
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「別個体だから」という解釈もできなくはないが、そもそも他の無進化キャラクターのようにブラックウォーグレイモン単体で参戦していればよかったとも指摘されている。
 
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ブラックガブモン、ブラックギルモンに至っては原作アニメに登場すらしていないという露骨なまでの水増し要員。ネーモンといいこの二体といい、他に出すべきキャラがいくらでもいたはずである。
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ブラックアグモン、ブラックガブモンはそれぞれ進化系ともども元から存在している(カードゲーム初出)派生種だが、ブラックギルモンは今作にしか登場していない。
 
 
ゲームシステム
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HPを0にすればライフが減り、攻撃を受けると放出される水晶を集めて溜まる「進化ゲージ」を利用して下記の行動をとることが出来るのだが、全体的に調整不足。
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進化ゲージは最大まで溜めきれば一段階進化できる他、ゲージを消費してHPを回復することが可能。最終形態時はゲージを0にして超必殺技を放つこともできる。
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本作ではライフが減ると進化が一つ下の段階となって復活する。そのため「相手を倒す→倒された側の進化が一段階減る→倒した側は水晶を回収しゲージ溜め」という一方的な展開が起こりやすい。
 
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普通のゲームならライフが減ると一定時間無敵になって復活するが、本作では無敵時間が皆無。
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グレイモンやグラウモンなどの炎を吐く攻撃は、相手の無敵時間が無いおかげで延々と当たり続けて動きも止められるため、これで水晶を集めるワンサイドゲームになりがち。
 
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隠しキャラで登場する無進化デジモンは進化の概念がないため、超必殺技を実質的に3分の1の労力で放てる上、低リスクでゲージを回復に回すことができる。このため無進化デジモンが非常に強く、この点でもゲームバランスが悪い。
 
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原作における人間のパートナーキャラは戦闘中一切出てこない。デジモンといえば「人間とデジモンの絆」が共通のテーマと言えるはずの作品なのだが…。
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上記した進化演出も、デジモンが自ら「進化」を宣言するだけと地味。パートナーが出てこないのはもちろん、ジョグレス進化やスライドエボリューションといった細かな違いも表現されていない。
 
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妙にテンションの高い英語実況のシステムボイス。とてもアニメの雰囲気にそぐっているとは言えないものである。
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それに対してBGMは全体的にテンションが高いとはいえず、対戦を盛り上げる要素にはなっていない。
 
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同キャラ対戦ができない。
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色替えという概念をそもそも設定していないためだろう。ある意味性能がほとんど変わらないアグモン・ガブモン・ギルモンとそのブラックの関係性は同キャラ対戦に値するのかもしれない。
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ただそいつらも一部性能が異なるため、万全ではない。
 
ステージ・アイテム
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本作独自の要素が強く、どれもこれもデジタルワールド感の薄いステージばかり。
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アニメのBGMがひとつも使われていない。ステージ(世界観)やBGMは独自のものとなっている。
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デンジャータウンのトロッコに
触れると大ダメージ&即死。
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悪夢のトイタウンでは無敵の巨大アヒルが炎をステージに吐く。
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この他のステージも理不尽ギミックがあり、そもそもギミック無しのステージが無い。
 
 
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アイテムを取得することで発生するイベントも、「おやすみ!」や「いなづま」など、ステージに同じくデジモンと無関係な内容が多い。
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唯一デジモンらしいイベントと呼べるのは「ファントモン」。ただしその内容は「
現れたファントモンに触れると即死
」と大味。
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中でも「ピニャタ・パーティー」というイベントが発動すると、HPが全回復すると共に
デジモンがサイケデリックな色のロバになる
。意味がわからない。
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ちなみに「ピニャタ(ピニャータ)」とは、メキシコや中南米のお祭りに使われる玩具やお菓子を詰めた人形。マイクロソフトから『あつまれ!ピニャータ』というゲームも出ている。
デジモンでこれをやる意味は全くないが。
 
 
評価点
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グラフィックに関しては頑張っている方。
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一部どこを向いているかわからないキャラ(ブイモンなど)がいるが、一部の設定無視を除けば比較的質感は悪くない。
 
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オメガモンをスペシャル版のものと踏まえるのであれば、インフェルモンとブラックウォーグレイモンを除き、キャストが全てアニメ準拠であること。
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特にジョグレス(合体)体であるインペリアルドラモンの声の再現のためだけに、ジョグレス相手であるスティングモン役の高橋直純氏をわざわざ呼び寄せたのは、謎な仕様が多い本作にしては細かい配慮である。
 
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現状、対戦アクション形式のデジモンゲームで『無印』のメインデジモンが全て参加しているのは本作だけである。
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逆に他のシリーズファンにとっては残念なラインナップと言えるのだが。
 
総評
全体的にとてもひどい出来。あまりの原作無視っぷりに「デジモンをあまり知らない人が作ったのではないか」という批判が多く、後述の開発環境を見る限り、実際にその通りなのでは…とまで言われるほど。
単体の対戦アクションとしても全体的に粗い作りで、さらに洋ゲー感の強いデザインとデジモンシリーズとの噛み合わせの悪さも否めない。
この後に『デジモンセイバーズ』や『デジモンクロスウォーズ』などの新作アニメも多数製作された現在において、国内で最後に発売されたデジモンシリーズの対戦アクションがこのような作品であるのは、何とも悲しい話である。
余談
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当時はデジモンのブームが過ぎており、本作もこのような出来故に猛スピードで値崩れが起きたようである。
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こんなわけのわからない出来になっているのは、本作が
海外の会社によって製作された洋ゲー
だからというのが要因であると考えられる。
 事実、同じく洋ゲーである『デジモンレーシング』は、本作以上に救いようのないクソゲーっぷりを発揮している。
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後の2014年に、海外のみだがデジモンの対戦ゲームとして『Digimon All-Star Rumble』 が発売されている。
 
最終更新:2024年08月17日 19:51