タイムツイスト 歴史のかたすみで…

【たいむついすと れきしのかたすみで】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 ファミリーコンピュータ ディスクシステム
発売元 任天堂
開発元 パックスソフトニカ
任天堂情報開発部
発売日
()は書換開始日
1991年7月26日(1991年8月9日)
プレイ人数 1人
定価 パッケージ版:各2,600円
判定 良作
ポイント 任天堂の常識を覆したダークな史実アドベンチャー
最後のパッケージディスクソフト


概要

任天堂制作の前後編2枚ディスクアドベンチャーシリーズの最終作品。
同シリーズの一つである『ふぁみこんむかし話』シリーズの制作スタッフがてがけており、そちらのシリーズには含まれないものの、流れをくむ作品となっている。
今作では『世界史』をテーマとしつつ『SF』要素も絡めた作風となっており、様々な時代をタイムトラベルで巡りながら冒険する。

ふぁみこんむかし話 遊遊記』のようなアクション性のあるミニゲームはなくなっているが、歴史を題材にしたクイズやちょっとしたパズルなどの頭を使わせるイベントが多く、思考性が強まっている。

それまでの2枚組ディスクとは異なり、前後編とも同日に発売された。またパッケージ販売がされた最後のディスクソフトでもある。


ストーリー

時は1995年9月25日。食糧不足や環境破壊はますます深刻になり人々は「占い」に救いを求める時代。

テレビの占いコーナーで「郊外の博物館で異性との出会いのチャンスあり」という結果を見た主人公は、さっそく「悪魔博物館」へと足を運び、占いの通り博物館の中で同じくらいの年頃の女の子に出会う。
お互いによい雰囲気となり、自己紹介を始めようとしたところで突如地震が発生する。 思わず抱き合う2人だが地震は一向に収まらず、主人公は占いで知った「異性を射止める言葉」を厄払いのおまじないとして叫ぶ。

するとそこに1匹の悪魔が姿を現す。
実は博物館の展示品の1つである「魔封じの壺」は、その昔、悪魔が封じ込められたという曰く付きの壺であり、主人公が唱えたのは悪魔の封印を解く呪文だった。
復活を目論む悪魔がテレパシーを通じて主人公が呪文を唱えるように仕組んでいたのである。悪魔は主人公の肉体と自身の崩壊寸前の肉体を無理やり入れ替えて逃亡する。
後を追ってきた主人公は、博物館の近所に住む科学者サイモン博士の発明品である時空間移動装置「タイムベルト」を強奪してタイムワープを敢行した悪魔もろともはるか過去の時代へと飛ばされてしまうのだった

こうして、時間を超えた旅は始まった……。


特徴

  • 『新・鬼ヶ島』『遊遊記』と異なり、現実の歴史を横軸に、宗教を根底に据えたファンタジー要素が織り交ぜられている。
    • キリスト教、魔女狩り、第2次世界大戦、アメリカの奴隷制など、任天堂ADVにおける題材としてはかなりシビアでブラックな側面が強く、ダークな趣が漂っている。
      • シナリオは「『世の混乱を収めるべく選ばれた神の子(歴史上の偉人)と悪魔に選ばれし者(歴史上、悪行を成した人物)』の対立」を土台としつつ、そこに悪魔の陰謀に巻き込まれた主人公が介入していくという流れとなっており、史実上の人物のエピソードをゲーム向けにアレンジしたエピソードが展開される
  • 正式な『ふぁみこんむかし話シリーズ』ではないが、製作スタッフ陣が同じと言うこともあって、同シリーズを踏襲した要素が垣間見える。
    • 主人公は奪われた体を取り戻すまで「魂だけの状態」であり、歴史の行く先々で現地にいる誰かの肉体に乗り移り謎解きの手立てとしていく。
      体の状態によって役割が異なるという点は、上記シリーズの『ひとかえる』システムに似ている。
      • 魂状態のときはバックカラーが灰色、自分含む誰かしらの体に入って行動している時は青紫色になる。
    • アクションゲームのような要素はなくなったが、随所で歴史を題材にしたクイズや数学的な要素を持つパズル問題が挿入される。それ自体正解が必須なものであるため、歴史や数学に関する一定の基礎教養が必要となる。
    • 同シリーズでは存在したバッドエンド(ゲームオーバー)はなく、進行に詰まると解法を見つけるまで足止めされるか、もしくは少し前のシーンに戻される。
  • 自由に歩行する方式の移動(『あるく』コマンド)が取り入れられた。
    • グラフィックウィンドウ内で主人公を直接操作して歩かせることができるというもの。

評価点

  • 難しい点はほとんどミニゲーム的に集約されており、全体的にはプレイしやすい。
    • 歴史クイズやパズルなど一定の基礎教養が必要な局面もあるが、リトライが容易ではあるので繰り返しプレイも容易。
  • ミニゲームはアクション性こそないが、クイズやパズル要素を持つようなものが多くなり、コマンド選択型ADVに付き物の単調な作業感を払拭している。
  • 「あるく」コマンドによるアクション感覚で歩ける移動。
    • それまで恒例だった「移動」→「西」「東」のようなものと違って、その地形を感じやすい。
    • また、プレイヤーが画面上を見て目で確認し立ち止まって調べたりするのも、それまでになかったリアル感覚を生み出している。
  • 一時代で必ず1人出されるクイズ。
    • 現代を除くそれぞれのステージ(時代)に必ず1人「目がきょろきょろして落ち着きがない」人がおり、その時代にちなんだクイズを出してくる。
      • 解答は2択~6択で、間違えた場合でもすぐリトライできる。
      • 当時の小学生など低年齢層は世界史に触れる機会が少なく、これが知るきっかけになったという人も多いのでは。
  • 「体に入った状態」と「魂だけの状態」という状態がそれぞれ明確な役割を持っている。
    • 「魂だけの状態」は壁などもすり抜けて行動できる上に基本的に誰にも気づかれることはないので、状況を見て周辺を探るのに適してはいるが、人に話しかけることができない。
    • 「体に入った状態」では行動の制限を受ける部分が増えるものの、人に話しかけることができる。
      • これらを状況に応じて使い分けるポイントがゲーム開始直後から発生する。そのため、パッと見は複雑そうな本システムでも理解しやすい。
      • 『ふぁみこんむかし話シリーズ』の『ひとかえる』に似た特徴だが、この2つの状態の特徴は予備知識がなくても察しはつくので、ある意味『ひとかえる』よりも扱いやすくなっている。

賛否両論点

  • 主人公に名前をつけられない。
    • 自分で決めた名前が反映されないため、感情移入の面からはいまひとつなところがある。
    • 主人公はゲーム内では終始「おれ」と表記され、主人公の一人称的なストーリーになっており、逆に感情移入できるという意見もある。
    • 名前がないからこそ乗り移った人間になりきれるという考え方もある。
    • また他人の体に乗り移って行動するという仕様上、それぞれの体がそれぞれの名前を持っているため、プレイヤーキャラなのか本来の人物なのかがわかり難くならないようにするための配慮ともとれる。
  • 主人公は「自分の体を取り返すため悪魔を追っている」という位置付けながら、時代時代でその悪魔との直接的接点がラスト寸前までほとんどなく、「1つ1つの歴史の裏側で敵を後追いしつつ、その悪事を阻止する」という消極的な図式に終始している。
    • コンセプト的には「現実の歴史の裏側で起きた出来事」という筋立てであり、そもそも主人公は人間に憑依できるようになったことを除けば特殊能力を持たないごく普通の人間なので、そう簡単に悪魔に太刀打ちはできないという点を考えれば違和感はない。
  • 賛否分かれるエンディング(ネタバレ注意)
+ 詳細
  • 歴史を股にかけた追跡の果て、悪魔の目的がイエス・キリストの体を乗っ取ることだと気づいた主人公は、イエス誕生直後の時間軸にタイムワープし、赤子に乗り移った悪魔との問答の末、今までの旅の中で手に入れてきた魔よけの品々の力で悪魔を滅ぼし、イエス誕生を見届けて元居た時代に帰還する。
    • すべてが終わった後、主人公は全ての発端となった博物館の例の展示品の前で倒れており、あの時出会った女の子に介抱されていた。
      改めていいムードになりかけた時、突如として地震が発生。驚いて抱き着き合う二人だが、女の子は主人公の不安をなだめるように、かつて主人公が唱えさせられた「あの呪文」をなぜか唱え始めてしまう。そして再び悪魔が姿を現したところで物語は幕を閉じる……。
      性懲りもなく悪魔が再び姿を現し、今度は女の子を操って自分を復活させるという驚愕のオチであった。
      • このオチを見てから物語冒頭を思い返すと、女の子は呪文を唱える主人公の事を怖がっている様子とも見れるので、「このままではまた悪魔が出てきてしまう」という事に加え、今度は立場が逆の状況でまた同じことが起きる、つまり「無限ループに怯えている」とも取れる。タイトルのタイムツイスト(時間をより合わせる)にマッチしたオチであり、「タイムトラベルによる歴史改変」という題材にふさわしいEDと言われている。
      • 一方でどうやっても救われないのは後味が悪くてすっきりしないという声も当然あり、賛否両論のオチとなっている。

問題点

  • 文字がオールひらがな。
    • 2枚組とはいえロムカセットに比べて容量では完全に劣っていたので致し方ない面でもあるが、『ふぁみこんむかし話シリーズ』と違って本来カタカナで表記する人物が多いだけに、雰囲気にあわず、読みづらさにもつながっている。
  • 言われたことをそのまま読み取って記憶するミニゲームがあるが、速いメッセージが強制的に進められ言っている意味が分かりにくく、聞き直せる回数が限られているせいで詰み同然になるポイントがある。
    • ゲームオーバーがないとはいえ裏を返せばそれを利用したリトライができないため、前にセーブしていないとだいぶ前に戻ってやり直しとなってしまう。

総評

世界史という低年齢層からすれば馴染みのない題材も、ストーリーやミニゲームのクイズなどを通して分かりやすくゲームという形に落とし込まれている。
主人公に名前がなかったり、自分ではない体で行動したりするなど感情移入という点での薄さは感じるものの、ストーリー構成としては各章で独立して上手くまとまっている。
全体的に難易度も程よい程度で、物語自体はサクサク進められる点は『遊遊記』から受け継がれている。任天堂らしかぬ暗く重いシナリオも秀逸であり、非常に斬新な趣を持っている。

ソフト売上本数という点では非常に評価は低かったものの、『ふぁみこんむかし話シリーズ』や『ファミコン探偵倶楽部シリーズ』といった2枚組ディスクアドベンチャーは平成中期以降も固定ファンが多く、その影響から本作の知名度も決して低くはない。更にスーパーファミコン発売後という不遇な時代の中で発売されながら「隠れた名作」として地位を築いており、任天堂のファミコンADVのトリを飾る作品として名を残している。


余談

  • お笑いコンビ・爆笑問題の太田光は「あまり知られていない面白かったゲーム」として本作を挙げている。
  • タイムトラベルなど、現在でも不可能なことが実現されていながらも作中の舞台は1995年。発売当時からすればわずか4年後でしかない。
    • 近未来的な世界観を持つゲームやアニメは少なくないが、近くても現実と作中の差は10年程度はあるのが大半で、それがわずか4年の差というのは非常に珍しいことである。
  • 本作はパッケージ販売された最後のディスクソフトである。
    • ディスクシステム自体が本作の3年前である1988年あたりから下火となり、平成期に入ると純粋な新作は極端に減少するなど衰退著しかった。
      その上、スーパーファミコンの発売(1990年11月21日)もあり、ソフト面でも本作の直前に発売された『ファイナルファンタジーIV』を含めキラーソフトも出揃ってきた後ということもあって前人気でも終始ランク外と注目度が非常に低かったため、前述のとおり任天堂ソフトながら売り上げ本数自体は少なかった。
    • この頃にもなればディスクユーザーは圧倒的に書き換えが多かったことから、現存するパッケージ版自体が相当希少なものとなっているため当時の定価を大幅に超える中古価格が付いている。
  • 本作発売の直前、任天堂は以降の新作ソフトの書換料金をそれまでの500円から600円への引上げを発表した(それまでのソフトは従来通り500円*1のまま)。
    • この背景として500円では、メーカーの立場からすれば、利益の少なさから参入を嫌われた一面があり、それを少しでも改善すべく取った策だが、結果的に100円程度では焼け石に水。
      片やユーザー目線では、元々この時期ディスクを重宝した年齢層は高額なロムカセットの日常的購入が困難な小学生などの低年齢層が多かった。600円でも非常に安価には違いないが、そんな彼らにとっては100円と言えども死活問題級。
      結果、双方にとって改善どころか改悪となり間近に迫ったディスク終焉に歯止めをかけることはできなかった。
    • 元々この頃はディスクソフト自体が末期で、その対象となったのは本作前後編と『ぷよぷよ』『クルクルランド』『じゃんけんディスク城』の5本のみでしかないので、値上げされたこと自体知らなかったという人も多い。
      • 1993年3月、ディスクライターが全国の小売店から撤収されディスク書換えは以降任天堂サービスセンターで一括して行われるようになった。これに合わせてこれらも500円に統一された。
  • 遊遊記』と同様に移植・配信などが一切されていない。
    • ナチスドイツやKKK(クー・クラックス・クラン)、宗教を題材として扱っている点が移植・配信の障害になっていると思われる。
  • 『ふぁみこんむかし話シリーズ』には含まれていないが本作に使われているミニゲームを含む作風やシステムは同シリーズ最終作となる『平成 新・鬼ヶ島』に踏襲されている。

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最終更新:2024年03月24日 14:43

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