じゃんけんディスク城
【じゃんけんでぃすくじょう】
ジャンル
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パズル
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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徳間書店
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書換開始日
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1992年12月22日(書換専用)
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プレイ人数
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1人
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定価
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600円→500円
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判定
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なし
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ポイント
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最後のディスクソフト 最初で最後のディスくんのゲーム パズルが苦手な人でも救済措置あり やり方次第では作業化してしまう
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ファミマガディスクシリーズ
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概要
1992年末に発売されたパズルゲームで『ファミマガディスクシリーズ』第6弾にして最終作。
ディスクシステムのマスコットキャラクター『ディスくん』を主役に据えたパズルゲームである。
ディスクソフトの新規タイトルは同シリーズの前作『ぷよぷよ』以来1年2ヶ月ぶりで、ロムカセット既存作の移植を含めても4月26日発売の『クルクルランド』以来8ヶ月ぶりであった。
またディスクソフト全体でも最後のソフトとなった。
シリーズの『オール1』『クロックス』同様、『ファミリーコンピュータMagazine』主催の公募企画「ディスくんゲーム大賞」の大賞受賞作品をソフト化したものである。
当回では前2回とは異なり「ディスくんを主役にしたゲーム」という課題が与えられていた。
ストーリー
はるか昔、ディスクワールドは「大魔王ディスクカイザー」によって支配されていた。
そのディスクカイザーを倒すべく勇者「ディス」が立ち上がり、彼は魔剣を手に大魔王を封印した。そして数百年後…
火、水、氷3つの塔を持つ、かつての大魔王の居城「じゃんけんディスク城」に「じゃんけんモンスター」が棲みつき、大魔王を復活させようとしていた。
王様は兵士たちを差し向けるものの、攻めあぐねていた矢先、村の少年「ブラック」が突然姿を消す。
勇者「ディス」の子孫であり、「ブラック」の友達「イエロー」はそれを知り、戦う決心をするのであった。
内容
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主人公の名前は「イエロー」(任天堂の正規品ディスク)。
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他に後述の漫画に登場する黒ディスクの「ブラック」や本作オリジナルの長老や王様、御姫様の「ピンキー」などディスクカードを模したキャラが登場する。
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イエローは、ブロックにあたるキャラ「じゃんけんモンスター」の3種類(「グーやん」「チョッキー」「パーでんねん」)を基本押すのみ。
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押せるのは1つのみで2つ以上が並んでいると押してもビクともしない。
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この邪魔なブロックキャラをジャンケンの要領で消しながら、出口を目指して進んでいく。
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最上階ではボスとのバトルが行われ、このジャンケンパズルの要領でバトルを行う。
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「グーやん」「チョッキー」「パーでんねん」はそれぞれ「グー」「チョキ」「パー」に対応している。
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これが信号機色になっており赤(P3)、黄(P2)、緑(P1)。P(ポイント)は攻撃力とHPを兼ねたようなもの。
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これらが縦か横で隣り合った時、ジャンケンの規則に応じてダメージ処理が行われる(初期配置でハナからその状態だった場合もダメージ処理は行わない)。
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例
黄色(P2)のチョッキーを押して、緑(P1)と赤(P3)のパーでんねんの間に置いた → それぞれのパーでんねんにP2のダメージとなり、緑(P1)のパーでんねんは消えて、赤(P3)のパーでんねんは緑(P1)に変化。
黄色(P2)のチョッキーを押して、緑(P1)のグーやん2つと赤(P3)のパーでんねんの間に置いた → 赤(P3)のパーでんねんはP2のダメージとなり緑(P1)に変化、2つの緑のグーやんからP1ずつのダメージ(計P2)で、押したチョッキーが消える。
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これらを消した時、お金が手に入る。
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赤(3)、黄(2)、緑(1)だが、赤なら赤で、黄なら赤又は黄で一気に消さないと左記の額は手に入らない(例えば最初赤でも一度黄で2P与えて緑にして、その状態から消した場合は1しか入らない)。
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ボスはそれぞれの塔のマークの属性を持っている。
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ボスバトルも同様で「グーやん」「チョッキー」「パーでんねん」をボスの隣に配置してダメージを与える。
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当然、置きっぱなしではそれ以上ダメージを与えられないので、追加でダメージを与えるには一度それを消さなければならない。
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他にアイテムを使ってこれらブロックキャラを消すことができる。これらは宝箱から手に入れるか町で購入できる。()内は価格。
また、これらはイエローと隣り合っていなくても使える。ただしボス戦では使えない。
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グチョパの剣(10)
「グーやん」「チョッキー」「パーでんねん」どれに対してもオールマイティで1Pダメージ(緑なら消せる)。
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ジャンケンカード「グー」(20)
「チョッキー」に3Pダメージを与えて消せる。
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ジャンケンカード「チョキ」(20)
「パーでんねん」に3Pダメージを与えて消せる。
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ジャンケンカード「パー」(20)
「グーやん」に3Pダメージを与えて消せる。
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爆弾(40)
「グーやん」「チョッキー」「パーでんねん」どれに対してもオールマイティで3Pダメージの最強武器だが、これで消した場合お金が入らない。
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氷の魔法(非売品)
水の塔にある「水の壁」を消して、その先へ進める。
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炎の魔法(非売品)
氷の塔にある「氷の壁」を消して、その先へ進める。
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水の魔法(非売品)
炎の塔にある「ヘルファイヤー」を消して、その先へ進める。
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ガギ(非売品)
氷の塔にある扉を開けて、その先へ進める。
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また、そのフロアの最初からやり直したり、一旦塔を出ることもでき、出た場合、再度入りなおすと同じフロアから再スタートできる。
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ただしフロアの最初からやり直しは、その回で稼いだお金やアイテムはなかったことになり、所持金が-20されて再スタートする形になる。
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本作の舞台は3つのみ。
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村
イエローやブラック、長老が住んでいる村で、主に買い物したりセーブしたりする。
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キングキャッスル
最初に赴く場所であり、王様や姫のピンキーがいる。主にイベント進行時に訪れることになり、魔王の部屋に行くための魔剣も、この城にある。
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じゃんけんディスク城
戦いの舞台「水(グー)」「火(チョキ)」「氷(パー)」3つの塔と魔王の部屋がある。キングキャッスルから攻めてきている兵士たちも大勢いる。
評価点
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わかりやすくオリジナリティあふれるパズル。
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ジャンケンの「3すくみ」の関係を巧みに取り入れ、それをうまく動かして消して道を作ってゴールを目指すと言うスタイルは既存のどのゲームにも見られない。
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しかも、その関係もジャンケンという日常から親しんでいるものなので、飲み込みやすい。
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時としては負けるものでも、弱体化させてでもその場を通過させる必要があったり、敢えて負ける組み合わせでスペースを作る必要もあるなど「ただ勝てばいい」というものでもない。
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また、その配置も非常に巧みなバランスで構成されており、アイテムを使って簡略化するポイントも多数存在する点も奥深いものがある。
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バトルに関しても、その特性をうまく取り入れており「いかに強い状態で攻撃するか」だけでなく、攻撃した後のブロックを消す処理まで考える必要がある点はパズルだけでなくバトルの観点で見ても全く新しい面白みに繋がっている。
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パズルが苦手でも、ヘルプ的な要素があり使い方次第で難易度を下げることができる。
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実際には村にあるアイテムショップでは何も買わなくてもクリアはできる。時としてアイテムが必要な場面は出てくるが、道中で手に入る宝箱から入手できるものだけでなんとかなる。
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あくまでもアイテムショップで買うアイテムは、とことん困った人がひとまず進めるためのものという位置付け。
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それに頼らずクリアしようと思ったら『オール1』の全面クリアほどではないものの、かなり高難度になるのでとっつきやすさに繋がっている。
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ただしやりすぎると後述の問題点のようなことになる。
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キャラクターのデザインもコミカルに「グー」「チョキ」「パー」からデザインされている。
問題点
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フィールドパートでの移動がムダに長い。
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1992年ということもあってか、グラフィック面も多少凝ったものにしたためか、村や城の中は複雑でこそないもののマップチップを大量に使った広いマップになっている。
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メインは「じゃんけんディスク城」でのパズルながら「キングキャッスル」や「村」との行き来でフィールドパートを歩く必要がある場面が多い。
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その距離が長くて目的の場所に行くのに時間が掛かるのは少々煩わしいところがある。
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パズルなのに、インチキのようなことがまかり通ってしまう。
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塔のフロアによっては、手軽に大量に消しまくれるフロアがあり、それでお金が稼げてしまい、アイテムショップでアイテムをガッポリ買ってゴリ押すという荒業ができてしまう。
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『パニックスペース』や『オール1』のようなイベントがあるわけでもなく、これをやろうとするとロードを繰り返す必要があるという欠点があるにしても、こんな形で突破できてしまうのはパズルとしてのゲームを著しく壊してしまう。
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一応、ボスバトルはアイテム禁止なので、この技が通じないのですべてクリアする上ではパズル要素を無視できないのが幸いか。
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何もない場所でアイテムを使うことができ、その場合何もなくムダに消えてしまう。
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店売りされているアイテム5種類は、操作を間違えて何もない場所に使っても消費されてなくなってしまう。
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しかも爆弾以外の4つはノーアクションで消えるのでヘタすれば間違って使ったことにすら気づかないことも。
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手戻しが1手分のみ。
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同様の問題は『オール1』でもあったが、上記の通り基本的には高難度なので少々不足気味な点は否めない。
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フロアの最初からやり直すコマンドにあまり意味がない。
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上記の通り所持金-20のペナがある。そのため、やり直したかったら一旦塔から出て入りなおした方がペナなしで再開可能(一応こちらはロード時間が挟まれる小さなリスクがあるといえばあるが)。
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対ラスボスの初手がノーヒント。
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何もせず用意されたブロックをラスボスにくっつけても無条件で壊されてしまう。
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まずは攻撃ポイントの1つ前にそれぞれ「グーやん」「チョッキー」「パーでんねん」を並べてBで「スーパーぐちょぱ」というのは、さすがにそう簡単には思いつけない部分である。
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中ボスの攻撃にあまり意味がない。
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ラスボスの稲妻による攻撃は、「グーやん」「チョッキー」「パーでんねん」に当ると、それぞれP1ずつダメージになる(ただしP1の緑に当った場合は無効)のだが中ボスは単に足止めになるだけ。
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よくある対戦パズルの「お邪魔的な攻撃」だが、1人用のゲームなのでほとんど意味がない。
総評
パズル単体では「邪魔なブロックをじゃんけんの要領で消して道を開けて階段を目指す」という既存のいずれにも属さないオリジナリティがあり、それも基本的な規則はじゃんけんという日頃慣れ親しんだものでもあるので、とっつきやすさもある。
また救済用アイテムなどを導入したことで、このようなパズルゲームにありがちな「どうしても解けなくて投げ出して終わる」という悪印象を残しにくく、パズルを苦手とする層にもやさしいシステムになっている。
反面、パズルゲームなのに半ばズルを許容するに近いシステムや、またイベントの進行のための移動が長くかかったりするテンポの阻害など、手放しで褒めてばかりもいられない部分も見受けられる。
しかしパズル根幹の部分のシンプル且つオリジナリティの高さはディスク最終作として恥ずかしくないものである。
余談
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1993年3月に全国の小売店からディスクライターが撤収され、以後ディスクの書換えは任天堂サービスセンターで一括して行われるようになった。
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当初書換え料金は600円(対象は1991年7月以降発売のソフトで『タイムツイスト 歴史のかたすみで…(前後編)』『ぷよぷよ』『クルクルランド』と本作の5本のみ)だったが任天堂サービスセンターへ移行されると同時に、それ以前のソフト同様500円に値下げられた。
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発売日とディスクライターの店舗設置の事情から、本作が店舗購入できたのは最長でも3ヶ月少々とかなり限られた期間でしかなかった。
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また発売時期はファミコン所有者の大多数がスーパーファミコンを購入済で、そのソフトもアクションやRPGは勿論、スポーツやパズルなども軒並み揃って市場の主役は完全にバトンタッチしており、同時に前世代機となったファミコンはロムカセットの中古価格が1000円を切っていたのがザラで、またそれを扱う店舗の数自体も非常に増えており『ドンキーコング』等カセット既存作の書換え専用移植が始まった1988年頃を思えば「不要なカードがあれば500円(600円)という超安価で新しいゲームを入手できる」というディスク書換えの強みもほぼ失われ、数千円の新品ロムカセットが困難な小学生等の低年齢層でも中古品のロムカセットならばそこそこ手の届く金額レベルに下がってきておりディスク自体がノーマークな存在になっていた。またゲーム誌でもファミマガ以外ではまったく掲載されなかった。
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更に任天堂サービスセンターでの書換えも2003年9月一杯で終了した。この頃はまだレトロゲームブームが本格化するギリギリ前の時期であり、インターネットの普及も法人レベルでは充分ながら個人レベルでの情報発信の形が今ほど確立できておらず、この時期でもあまり注目されなかったこともあって長い間本作の存在すら知らなかったという人も珍しくない。
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そんなこんなで限定品でもないのに現存する正規ソフトは相当なレアモノになっており、特に説明書付きなら中古価格で1万数千円はくだらない。
「ディスくん」とは
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本作で取り入れられているディスクカードのマスコットキャラである「ディスくん」は『ファミリーコンピュータMagazine(通称「ファミマガ」)』で連載された嵩瀬ひろし氏の漫画(「ファミマガジャーナル マンガトピックス」等)のキャラであり、任天堂自身によるディスクカードのイメージキャラクター(黄色っぽいディスクカードに目と手足をつけたもの)とはデザインが異なる。また本作のチラシ等の公式イラストには嵩瀬氏は関わっていないので、ファミマガでの漫画とは見た目も少々異なっている。
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一見安直に即席でつけられたように思える名前だが、実はこの名前に至るまで非常に長い時を必要とした。キャラクターそのものは1987年15号(8月21日・9月4日合併号)から同誌に登場した漫画「ぐわぁんばれ○○○○」という形で初登場したが、この当時タイトルの脇に「まだ名前がないのダ!」と書かれていたように「名無しのディスクキャラ」だった。この時「ぼくに名前をつけてね」というキャンペーンが行われたが、結局応募された中に良い名前がなかったようで全てボツとなり、彼は名前を与えられないまま同年最終の22号で連載終了。
そして翌1988年7号(4月1日号)から連載された『スーパーマリオブラザーズ3』の漫画仕立ての新作記事「特報!スーパーマリオブラザーズ3」で彼は再登場することとなる。この時は「ディスクくん」という名前をしれっと呼ばれていた。この漫画は14号まで連載され、その後も同作の特集記事(17号からは別冊付録)の挿絵も嵩瀬氏によって描かれてきたが「ディスクくん」自体は15号以降はタイトルにマリオらに混じってチョロッと顔を出す程度だった。
そのまた翌年となる1989年5号(3月3日号)、「ファミマガJOURNAL」がリニューアルし漫画仕立ての記事「ファミマンガジャーナル」となり、この時初登場から苦節1年半にして「ディスくん」という正式な名前を手に入れた。ただこの時も名前が決まったことは特にフィーチャーされず、その名前の初お目見えは最初の1コマにしれっと「ディスくん」と書かれていただけであった。
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そんなこんなで長い年月をかけてようやく手に入れた名前だが、皮肉なことに彼が正式な名前を手に入れた1989年はディスクシステムの衰退が顕著に現れた一年であった。また「ディスクくん」時代はマリオ3の紹介に終始していたこともあって、それも含めて名前の付いた頃にはディスクソフトそのものにほとんど触れられなかった。
ディスク全盛期に登場しながら名前がなく、ようやく名前を手に入れた時はディスクソフトがいよいよ衰退が急速化する時期。そしてやっと自身のゲームが登場したものの、それが歴史の最後になるという、コミカルでかわいい見た目に反して実は波乱万丈で悲劇的なキャラと言えなくもない。
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1993年はディスクの歴史こそ幕を閉じたものの彼はファミマガでは「ディスくんのマンガトピックス」等で活躍できたことは不幸中の幸いと言えるかもしれない。
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その後本作の発売を経て、前述した元ネタの任天堂公式のディスクカードのイメージキャラクターの方も逆輸入のように「ディスくん」が正式名称となっており、『大乱闘スマッシュブラザーズDX』等でも「ディスくん」名義でフィギュア等として登場している。
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本作に登場するブラックディスクも「ぐわぁんばれ○○○○」の時から登場している。当時は敵のような存在だったが、その関係はあやふやになり「ファミマガジャーナル マンガトピックス」の頃は友達のような間柄になっている。
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ブラックディスクは上記漫画の初回で任天堂以外の非正規品ディスクをキャラ化したものなので友達になっちゃうのもどうかという疑問は残るが…
最終更新:2024年01月22日 04:36