本稿では『ファイナルファンタジーIV』のうち、最初に発売されたスーパーファミコン版の通常版と、イージータイプの2作品を分けて解説しています。判定はともに「 良作 」です。



ファイナルファンタジーIV

【ふぁいなるふぁんたじーふぉー】

ジャンル RPG
高解像度で見る 裏を見る

対応機種 スーパーファミコン
メディア 8MbitROMカートリッジ
発売・開発元 スクウェア
発売日 1991年7月19日
定価 8,800円(税別)
プレイ人数 1人(バトル時1~2人)
セーブデータ 4個(バッテリーバックアップ)
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2009年8月4日/900Wiiポイント
【WiiU】2014年2月19日/900円
【New3DS】2017年8月23日/943円(税10%込)
判定 良作
ポイント 初のSFC進出作、演出やBGMが強化
リアルタイムな戦闘「ATB」初登場など、以降のシリーズの礎を作る
ビジュアル・ストーリー重視の方向性をより決定づけた
伝統的なRPGの体裁を引き継ぎつつ、先進的な試みも
ファイナルファンタジーシリーズ


クリスタルはただ、静かに、その光を湛えていた……



概要

スクウェア初のスーパーファミコンソフト。
『ファイナルファンタジー』シリーズの第4作にして、プラットフォームをスーパーファミコン(SFC)へと移した初の作品である。

大容量化によって強化されたグラフィックとSFCの持ち味である回転・拡大・縮小機能により、演出面が大幅に強化された。
シナリオはシリーズ過去作からドラマ性を大きく増した作風となり、シリーズ後作の作風の礎ともなった。
戦闘にリアルタイムの時間経過の概念を取り入れた「アクティブタイムバトル」の導入により、旧作と比較して戦略性が増している一方、過度な難易度上昇を抑えた幅広いプレイヤー層向けのゲームバランスとなっている。


ストーリー

世界唯一の飛空艇団「赤い翼」を擁する軍事国家、バロン王国。
部隊長として「赤い翼」を率いる暗黒騎士セシルは、バロン王の命により魔法国家ミシディアのクリスタルを強奪しバロン城に持ち帰る。
しかし罪のない者からの略奪を命じるようになったバロン王の変心に疑問を抱き、クリスタルを献上した後、
セシルは王の真意を問いただそうとするが王に不信を見抜かれて怒りを買い、「赤い翼」の隊長を解任されると共に辺境の地ミストの幻獣討伐を命じられる。
幼馴染の白魔導師ローザとの再会もそこそこに、親友の竜騎士カインと共に、セシルはバロン王国を後にした。

赤い翼によって最強の軍事国家となったバロンがなぜ、クリスタルを求めたのか?
そしてなぜ魔物たちが各地で活発に暴れ始めたのか?

クリスタルはただ静かにその光を湛えていた。全てを知っているかのように……。


特徴

システム面

戦闘システム

  • ターン制を排し、時間の概念を導入した「ATB(アクティブタイムバトル)」。
    • 味方と敵の全員に時間経過で貯まる内部ゲージが設定され、このゲージがいっぱいになったキャラから順に行動権が発生していく、というシステム。
      • 味方のコマンドの詳細項目を選択するウィンドウの表示中に時間経過が一旦止まる「ウェイト」と、ウィンドウの表示中も時間が経過し続ける「アクティブ」の2パターンがあり、プレイヤーが設定画面から好きな方を選べる。
      • 敵味方全体に共通する時間経過の速さ(バトルスピード)も、プレイヤーが設定可能。
      • 戦闘中はアクションゲームのようなスタートボタンによるポーズ機能が追加された。
      • ATBのシステムは特許も取られている。
  • 味方側には、魔法に「詠唱時間」の概念が初めて導入された。
    • 本作では魔法を選択してから発動するまで、魔法ごとに決められた詠唱時間がかかる。
    • 基本的には威力が弱い魔法ほど発動までの待ち時間が短く、強力なものほど待ち時間が長い傾向にあるが、詠唱時間の短さを強みとする魔法もある。
    • 例えば、全体攻撃魔法「バハムート」は詠唱に時間がかかるが、威力が劣る単体攻撃魔法「フレア」は詠唱待ちがない(選択したほぼ直後に発動される)、など。
  • ATBの導入に伴い時間経過で特性や行動が変化する敵が増えた。
    • 特定のパターンでダメージを与えると直ちにカウンターとして特定の行動をしてくるタイプの敵キャラが、ボス級を中心に大幅に増加した。
    • 特定の敵(大抵リーダー)を倒すと行動が変化する、最初から「リフレク」(魔法を跳ね返せるようになる魔法)がかかった状態となっておりこちらが出せる攻撃手段に制約を与える、一定時間ごとに強力な攻撃がくる、こちらの行動にあわせて反撃してくる(例えば、召喚魔法で攻撃するとカウンターで強力な攻撃を放ってくる)、等、多彩なパターンの敵がおり、強さを単純な能力の高さに依存せず、力押しだけでは勝ちにくいようになっている。
    • ひたすらモンスターを召喚し続ける敵や魔法を受けるとバーサク化する敵、あえて自ら弱点を教えてくる敵、こちらに一切ダメージを与えてこない敵などの従来作にはない「変化球」な敵も多数登場する。
  • 味方に強力な攻撃手段が少なく、敵から不意打ちやバックアタックを受ける確率も高めに設定されているなど、戦闘の難易度は低くない。
  • その一方で、ラスボスはステータス面で「純粋に強い」強敵として立ちはだかる。
    • 全体のHPの大半を奪ってくる技など猛烈な火力を誇り、十分にレベル上げしていなければ全員即死も十分にありえる。
  • バトルの戦略性は増した一方で、成長システムは経験値習得による極めてオーソドックスなレベルアップ制が採用され、どのプレイヤーが遊んでも各キャラの育成にはほぼ差が生じない*1
  • 戦闘におけるいわば「ドラクエ式」のメッセージ表示(誰々が何々を発動した、といった説明文)がほぼ完全に廃止された。
    • それに伴い、行動者のグラフィック変化と小ウインドウに表示されたコマンド名、エフェクトとダメージの数字や色だけで誰が誰に対し何を行ったか表現するという独特な戦闘演出のスタイルが確立され、以後長きにわたり受け継がれるシリーズの伝統となった。
    • ダメージ値などHP増減は『III』と同様に敵グラフィック上に数字のポップアップで示し、敵から受けた状態異常や魔法による特殊効果も全て視覚的に表現される。*2
      • 特殊な局面でのキャラの台詞やコマンド使用時の解説文などは、画面上部の横長のウィンドウに1行ずつ表示される。
      • 今作の攻撃には前作までと同じ「ヒット回数」の概念が実はあるが、今作ではダメージの合計のみが表示されるヒット回数(「12ヒット」など)は表示されず、キャラの武器を振るアニメーションや効果音もヒット回数に関わらず同じのため、見た目では原則認識できなくなっている*3
  • シリーズ最多の5人パーティとメンバー交代。
    • パーティメンバー枠は最大5人と歴代最高*4に多い。
    • 後述の通りシナリオに重きが置かれたこともあってか、進行に応じて主人公以外のメンバーが目まぐるしく入れ替わるという、過去作にない斬新な展開を見せる。
    • 各パーティキャラはそれぞれ固有のジョブやアビリティを持ち、名称は『III』のものと共通性があるが、ストーリー重視もあってジョブ及びアビリティははキャラ毎に固定となっており入れ替えは不可。
    • 今作ではキャラの前衛・後衛は個別設定ができず、予め用意された「前・後・前・後・前」「後・前・後・前・後」の2パターンのみで、そのパターンのどこにキャラを配置するかを考えさせるという仕様になっている。
  • インターフェースの進化
    • 複数の欄に散らばった同一アイテムを1か所にまとめる「せいとん」コマンドが追加。
    • アイテムの詳細情報もウィンドウに表示されるようになり、コマンドの選択実行がスムーズに行えるようになっている。
    • アイテムと魔法を任意の順に並べ替えられるようになっている。
    • 「にげる」行動が、メインコマンドとは独立した「L+R長押し」という操作に割り当てられた。
      • 押しっぱなしにすることでキャラクターが敵に背を向けてその場で走るアニメーションを取るようになり、成功と判定された時点で全キャラクターが一斉に画面外に脱出し戦闘が終了する。L+R同時押し中もコマンド選択は別途可能で、同時押し中に選択した行動は逃走判定が成立するまでの間に必ず実行される。
    • 「コンフィグ」コマンドの追加
      • 前述したATB関連の設定や、ウィンドウの色やボタン配置の変更、カーソル位置の記憶の有無といった、現在では当然ともいえるプレイヤーごとの詳細設定が実装された。
  • 細かな仕様の変更
    • プレイヤーへのチュートリアル機能が実装された。
      • バロンの町にゲームシステムを解説する「トレーニングルーム」があったり、セーブポイントについて説明してくれるキャラがいたりと、初プレイのユーザーに対する配慮がなされている。
    • 今作では戦闘後も続く状態異常は宿屋に泊まるだけで回復できるようになり、後作でも原則引き継がれた。
    • 今作から、HP0による戦闘離脱が「死亡(しぼう)」から「戦闘不能」に変更された。
      • バトル面での扱いは従来の「死亡」とほぼ同じだが、「戦闘不能」は回復が可能なものとして、イベント上での回復不能な「死」と明確に区別されている。
      • 従来作と同じ蘇生用のアイテムや魔法に加え、今作では宿屋への宿泊でも回復できるようになった。
    • ダンジョンにセーブポイントが設置され、長丁場でも中断が比較的容易になった。
    • 「MP」の概念が採用され、従来作のような魔法レベルによる回数制のシステムは撤廃された。
    • 本作から累計プレイ時間が記録されるようになった。
      • 自分がどれだけ遊んだのかが分かるのみならず、タイムアタックという新しいやり込みが生まれることとなった。

シナリオ・演出面

  • キャラクターに明確な背景設定や個性が与えられた。
    • 自らの持つ闇の力と生き様に思い悩む主人公セシルの葛藤、恋人や友人との三角関係からくる愛憎劇など、やや大人びた内容が多数盛り込まれている。
    • 過去作からキャラを回転させたり飛び跳ねさせたりといった動作の演出はあったが、本作では手を挙げる、頭を垂れうなだれるなど豊富なグラフィックが各主要キャラに作られている。
      • このグラフィックは場面ごとに使い分けられ、挨拶やビンタなど多彩な行動の表現に活用されている。
      • 後の『V』の表情、『FFUSA』の呆れジェスチャなどのバリエーション増加にも繋がる端緒となっている。
    • 複雑な人間描写が目立つこともあってか、本筋でのギャグ要素は後続のシリーズと比較すると控えめである。
  • 楽曲は前3作と同じく植松伸夫氏が担当。
    • ストリングスやブラスなどクラシックの音色を中心としつつも、ベースやエレキドラムなどロックテイストも持ちあわせる独特な作風となっている。
      • 切ないバラードである「愛のテーマ」、お馴染みの「FFメインテーマ」のアレンジで物語の始まりを壮大に彩る「プロローグ…」、中ボスよりも1ランク上に位置付けられる強敵「四天王」たちとの戦いを激しく描く「ゴルベーザ四天王とのバトル」など、進化したSFCのハード性能を発揮した名曲がそろっている。

評価点

  • 作品全体のボリュームの大きさ
  • 『I』と『III』に見られた「中世ファンタジー世界+SF要素」というFFらしい世界観がより全面に押し出されている。
    • 機械で動くロボット兵器、宇宙船、宇宙人などSFの要素がかなり強化されており、物語の舞台は地球から地底世界、更には宇宙にまで及び、スケールの大きな世界を構築している。
    • 広大な世界に見合ってダンジョンやボス敵、イベントなども非常に豊富で、過去作よりクリアまでの所要時間は長く、大ボリュームの作品に仕上がっている。
  • バトル面の充実
    • ATBと個性豊かな敵とにより、バトルの戦略性が従来作より大幅に高まっている。
      • 時間経過により行動や特性が変わる敵、魔法の詠唱時間の存在などにより、行動の選択において過去のRPGになかった時間的要素が重要となり、これまでになかった大きな戦略性が生じている。
    • また難易度は先述の通り低くはないものの、FC時代の初心者完全お断りともとれるような理不尽さはなく、一方でレベルを上げての力押しが最適といった大味なバランスでもなく、「最適な策を選びもう1回プレイすればクリアできそう」という手応えを感じさせる絶妙なゲームバランスに調整されている。
      • 先述の、特異な特徴や行動パターンを持つボスについても、初見では倒せなくとも相手の行動パターンを把握した上で的確な行動を取ればあっさり勝てることも多く、補助魔法やアイテムなどをいろいろ試してみると意外な攻略法を発見できる場合が多いなど、プレイヤーの思考意欲を高める仕上がりとなっている。
  • ユーザビリティの向上
    • 先述のチュートリアル機能の実装により、作中のみでもプレイに必要な最低限のシステムをスムーズに理解できるようになっている。
    • ユーザーの好みの設定を行う「コンフィグ」メニューの追加など、今では当たり前と言えるプレイヤーごとに快適な体験が得られる設定も当時としては斬新で、ユーザビリティが飛躍的に高まった。
  • 深みのあるシナリオと演出
    • 本作のシナリオの持ち味である愛憎渦巻く深みのある人間ドラマは、ともすればシステム面が全てで演出はオマケに近くなりがちだったそれまでのゲームとは一線を画したもので、当時としては非常に斬新な要素だった。
      • 「主人公=プレイヤー」という「ドラクエスタイル」を踏襲していた『I』や『III』と異なり、プレイヤーキャラクターに明確なキャラクター像と個性を与えシナリオのドラマ性を重視した『II』のような作風を発展させたものとなっている。
      • プレイヤーが第三者視点で物語を鑑賞していく いわば「劇場型」RPGのパイオニアともいえ、後発作品に大きな影響を与え、シナリオ主導というJRPGのアイデンティティを確立する先駆けとなった。
  • ハード性能の向上から演出面も大きく進歩し、プレイヤーの感情移入を誘った。
  • 高品質なサウンド
    • FC時代に比べて使える音色の種類やエフェクト(残響など)の質が飛躍的に高まったことも手伝い、高く評価されている。
    • また個別の楽曲についても、発売から長期間が経過した今なお高く評価されている。
      • 本作の劇中楽曲「愛のテーマ」は発売から約10年後に小6の音楽の教科書に掲載されており、ゲーム音楽の持つ高い演出性を世に知らしめた象徴的な存在となっている。
      • 戦闘のBGMでは、ボス戦*5の「バトル2」が名高く、高揚感と美しさを併せ持った特筆すべきバトルBGMとして今なおしばしば話題に挙がる。
    • 効果音も、SFCの性能を活かした個性豊かなものが多い。
      • 中でも『SaGa』シリーズで知られる作曲家・伊藤賢治氏が制作した、騎士剣での攻撃時の迫力ある斬撃音や魔法「バイオ」使用時の奇怪な音などは非常に印象深く、今なお語り草となっている。

賛否両論点

  • シナリオのテイスト
    • 複雑な人間模様を描いたシナリオで旧作と比べ深みは増しているが、テキストのテイスト自体はFC時代とあまり変わっておらず、キャラクターのバックボーンの掘り下げはあまり深くはない。
  • 自己犠牲を多用したシナリオ構成
    • 本作のシナリオは心揺さぶられるドラマチックな展開を立て続けに発生させることで成り立っているが、冷静に振り返ると話がやや単調だったり、ご都合主義的だったりする箇所があるとの指摘もある。
    • いわゆる泣き所は「スポット参戦キャラがセシル達の絶体絶命のピンチを自己犠牲で救う」「倒した敵の最期の悪あがきで不覚を取る」という展開の繰り返しが目立ち、展開がワンパターンだとする意見もある。
      • さらに、犠牲になったと思われたキャラが中盤から終盤で奇跡的に助かっているパターンが多いなど、ドラマチックと取るか、ご都合主義的と取るかでプレイヤーの印象が変わりやすい。
  • ATBの導入
    • ATBは当時のRPGとして非常に斬新なシステムで、刻一刻と経過する時間により緊張感が生まれ、戦闘がよりスリリングになり、FFシリーズを他RPGと差別化する大きな要素となった。
    • 一方、ATBでは、コマンドを選んでいる間も時間が進むため、従来のターン制バトルのようにじっくりと戦略を練ることができない。
      • 「ウェイト」を選べば時間が止まるが、対象となるのは「魔法やアイテムなどのリスト選択時」・「行動の対象選択時」のみであるため、じっくりと考えたければいちいちアイテムウィンドウを開く等しなくてはならない。
    • 現在でこそシリーズを代表するシステムとして知られているATBだが、当時RPGといえば「アクションが苦手な人でものんびりじっくりクリアできるゲーム」というイメージが強く、素早く正確な入力が求められるATBをRPGに持ち込むことへの批判もあった。

問題点

  • 一部シナリオの内容
    • 説明不足な点も少なからず存在する。
      • 黒幕の存在についての伏線が作中になく、過去作の黒幕に比べて存在が唐突であるとする意見は根強い。
        + 黒幕にまつわるネタバレ注意
      • 本作のストーリーの黒幕は、実はあくまで表向きの黒幕に過ぎず、真の黒幕に操られていたという設定で終盤に洗脳が解かれ、元は善良な人間であったことが明らかになる(更にとあるパーティキャラとの重大な関係が明らかにされる)。自分の悪事を自覚し操ってきた黒幕を打倒すべく主人公一行とは別に動くという流れになるが、それまでの作中での所業を踏まえると、そこまでの流れに納得できるかどうかはプレイヤーによって意見が分かれる。
      • 倒したと思ったら腕だけの状態で動き出すという現象が起きるため、正体は怪物ではないかと予想できる描写もされている。このため正体が人間であるということの意外性が高まっている。
      • ラスボスは黒幕が変異した存在でいわゆる「ポッと出のラスボス」であるが、黒幕自体は直前のイベントバトルで倒されてしまうため直接戦闘の機会が一切ないのもやや拍子抜けなところ。
      • ラストバトル発生地点へ到達すると、黒幕がラスボスの姿に変異するまでを描写した長めのオートイベント戦闘を経てラストバトルへ突入するが、そこまでのスパンが長いため、戦闘に敗北するとまたイベントを経由しなくてはならない。イベント自体は感動的な流れなのだが、リトライする場合はやや冗長。
      • 道中で主人公一行の乗った船が幻獣に襲撃されるシーンがあり、その幻獣自体は後に主人公たちの協力者となる存在なのだが襲った理由については一切説明されない。
    • 主人公が、祖国を滅ぼされ恋人と死別し自暴自棄に陥った初対面のキャラに対していきなり殴り付けて叱咤し、自分の恋人を助けるための協力を求めだすシーンがある。
      • 一刻を争う緊急事態のさ中ではあるものの、それを差し引いても主人公の言動はさすがに自己中心的すぎて不自然だという意見が少なからずある。
    • シナリオが充実している一方、悪く言えば「能動的にプレイする」より「やらされる」感が過去作と比べて強い。
      また、愛着の湧き始めたキャラが次々に強制的に外れるなど、過去作に比べ自分でシナリオを紡いでいる感が得にくい構造に対しては不評の声も存在する。
      • これらの点に関しては経営陣の方針による指示があり開発スタッフとの対立もあったと、元スタッフが明かしている。
  • キャラ育成や攻略面での自由度の低下。
    • パーティメンバーを強化する手段は「レベル上げ」「装備品の購入」「HP・MP強化アイテム」のみ。
      • この内、装備品はキャラクターごとの固有性・制約が厳しい為、順次手に入った物を使うだけになる事も多く、攻略に関して創意工夫を行える余地は少ない。
    • HPとMP以外にキャラの素のパラメータを強化するアイテムは存在せず、各キャラはどのプレイヤーが育てても全く同じように育つ。
      • 一応、LV70以上になるとレベルアップ時のステータスアップが8種類のパターンからランダムに選ばれるようになるが、運の要素が強く自由な育成とはほど遠い仕様であるうえ、そもそもそのLVまで到達する人は少ない。
    • この点、同じ「ドラマ重視」でありつつ「熟練度システム」によって成長面での自由度を追求した『II』とは対照的である。
  • シナリオ展開によって頻繁に発生するメンバーチェンジに関する問題。
    • 先述の頻繁なメンバーチェンジは初見ではタイミングを読むことができず、ほぼ確実に装備を失ってしまう。再加入するキャラはその時点での最強装備を新たに所持してはいるが、無くなった武器はアイテム欄に戻ることはなく、取り返しがつかない。
    • キャラの離脱と加入に伴いレベルが頻繁にリセットされるため、終盤にメンバーが固定されるまではキャラ育成のタイミングを計りづらい。 しかし本作ではシナリオ上、キャラが次から次へと離脱してレベルの低い新キャラと入れ替わる、実質的な「レベルのリセット」が何度も発生する。
      + ネタバレ
    • カインはストーリー上2度離脱する機会が存在しており、序盤での離脱後、中盤になってから戻ってくるが、しばらくしてからまた離脱してしまい、終盤になってから最終メンバーとして再加入することになる。
      1度目の再加入から2度目の離脱までのスパンが長いため、この期間中に、幻獣の洞窟で手に入る武器「ディフェンダー」を持たせておくと持ち逃げされてしまう。
      • この武器自体はセシルとカインの共用武器だが、カインが2度目の再加入時に所持している「グングニル」よりも性能が高めなのもあってカインに装備させるケースが多い上に、宝箱からしか手に入らない一品物なので取り返しがつかなくなってしまう。
  • 新システムのATBにはまだまだ粗削りな箇所が多い。
    • 時間の基本単位がかなり大雑把に設定されており*6、敵数・味方人数ともに多い本作では行動が渋滞してしまい「実は行動可能になっているが順番待ち」になっている事が多い(今作ではわかりにくいが、同じ仕様でATBゲージが実装されたリメイク版ではっきりと認識できる)。
    • コンフィグ設定でバトルスピードを早くすると、プレイヤーがコマンド操作中の状態での時間の流れが非常に速くなる。
      • あまりにバトルスピードを上げすぎると、複数いる味方はコマンド入力の渋滞状態となり、その間に敵が行動してはゲージを貯めることを繰り返し何度も行動できてしまうため、一方的に不利になりやすいなど、非常に大味な設定である。
    • 本作では待機時間ゲージが搭載されておらず時間推移が分かりにくい為、どのキャラクターに順番が回ってくるのか予見しづらく、最適な行動を瞬時に選ぶのは難しい。
  • 各キャラクターの固有コマンドの強弱の差が激しい。
    • スポットで参戦するキャラの固有コマンドは、実用性の乏しいものがかなり多い。
      • 失敗する可能性が高かったり、発動までに異様に時間が掛かったり、効果が雀の涙だったり…と存在意義の乏しいものが目立つ。
    • 逆に、パロムの「つよがる」だけは異常な強さで、数回使うだけで黒魔法の威力が著しく向上する。
  • 一部の魔法やアイテムの実用性がない
    • 前述の通り、本作では魔法ごと詠唱時間が異なっており、バトルに戦略性をもたらす大きな要因であるが、一部の魔法は詠唱時間が長すぎて実戦ではほぼ使い物にならない。
      • シナリオでも取り上げられる伝説の最強魔法「メテオ」は発動まで20コマもかかるが、それに見合うほどの効果はなく実用性は皆無。
    • 攻撃アイテムや武器のアイテム使用により魔法と同じ効果が得られるものもあるが、使用者のステータスと無関係に非常に低い効果しか得られず、こちらも実用性は乏しい。
  • 「にげる」成功時のペナルティ
    • 本作では戦闘から逃げるとペナルティとしてたまにお金を落としてしまう。
      • 落とす額は「その戦闘に勝った際に得られるはずだった金額の1/4」で、ゲーム進行と共に敵1体あたりの入手金額が増えてくるのに比例して落とす額も上昇していく。
      • 終盤にはペナルティなしで逃走可能なコマンドを使えるようになるが、序盤~中盤には回避のしようがなく、気軽に逃げづらくなってしまっている。
  • 召喚獣「タイタン」や黒魔法「クエイク」に関わる不親切な点。
    • これらはエフェクトからもわかる通り宙に浮いている敵には効かないのだが、本作に「地属性」「レビテト状態の敵」などは存在せず「飛び道具が弱点の敵には効果がない」というゲーム上では説明されない独特の仕様によるものである。
      • その為、見た目は明らかに浮いているのに「リルマーダー」や「制御システム」のように効く敵がいたり、飛び道具が弱点の「雷魚」や「アルケニー」は地面にいるように見えるにもかかわらず効かないなど、初見ではまず対応できない状況となっている。
  • アイテムや装備品に関するユーザビリティの低さ
    • 店での売買の画面で、何のアイテムをいくつ持っているのか、どの武器防具を誰が装備中なのかなどが表示されない。
      • 売買に入る前に何をいくつ所持しているか、誰が何を装備済みなのかを覚えておかなければ、不必要な重複購入に至ってしまう。
      • 装備画面でも、着脱前後のステータス推移が事前に表示されないためどの値がどれだけ上昇したのかが分かりにくいうえ、表示されるパラメータがアイコンだけで名称が表示されず直感的でない。
    • アイテムの所持枠の上限が厳しめ。
      • 48種類とそこまで少なくはないが、終盤に消費アイテムや装備品が溜まってくると結構カツカツになる。
      • 特に今作では敵の弱点を突く武器が多く、戦闘中に臨機応変に持ち替えることで有利に進められるため、それらを皆揃えると結構な量になってしまい、慣れたプレイヤーほどアイテム欄の整頓に苦慮しがち。
    • 『III』同様にアイテムの預かり所役のキャラ「でぶチョコボ」も存在するため、計画的にプレイ利用すればアイテム欄は対処可能だが、自由に呼び出すには最終盤に手に入るアイテムが必要で、それまででは特定の地点でしか利用できない。
      • ただ、でぶチョコボ分を合わせても持てる種類はラスボス段階で持てるアイテム種を大きく割っているため、いわゆるアイテムコンプリートはできない。
  • 敵が落とすレアアイテムのドロップ率が非常に低い。概算で1/1092ほど。
    • レアアイテムの性能や難易度的に必要になるような場面は無く、コレクター的な趣味の範疇ではあるのだが、あまりに確率が低過ぎて存在を知らないプレイヤーも多かった。

総評

SFCのハード性能や容量を活かした演出面のグレードアップにより新しいFFシリーズの幕開けを告げるのに十分な魅力を生み出し、音楽、シナリオ、演出面でのクオリティの高さで人気を呼んだ。

また、それまでの作品が難易度的な面でマニアックなとっつき難さがあったのに対し、本作では従来の作品に見られがちだった雑多なバランスを極力排除して万人向けのゲームバランスに調整されている。それによりシリーズの間口が大きく広がり、前作『III』で確立したスクウェアの主力RPGシリーズとしてのFFの立ち位置を更に大々的に固めたと言って過言ではない。

シナリオと劇中演出を重視した作風は後のシリーズ全般にも大きな影響を与えており、その意味でも、新たなハードに舞台を移したことも含めてシリーズの大きなターニングポイントとなった作品であると言えよう。


移植・リメイク

『FF』シリーズの中でも移植・リメイクが『I』『II』並に多い。ほとんどの移植・リメイクで戦闘、特にボス戦の難易度が上昇している。

イージータイプ

  • より遊びやすく、初心者向けにしたという触れ込みのマイナーチェンジ版。
  • 詳しくはこの頁内の後段で紹介する。

PS版

  • 1997年3月21日発売。CGムービーが新たに追加された。OPとEDに流れる(OPはエンディングムービーのBGMなしの短縮版)。
  • 他はダッシュが追加された以外はSFC版ほぼそのままの内容で、ロード時間が僅かに見受けられるが殆ど気にはならない良移植。
  • SFC版ベースであるため、イージータイプで修正されたバグはそのままになっている。
  • 当時のデジキューブと提携していたコンビニエンスストア専売商品だった。

PS版『ファイナルファンタジーコレクション

  • 1999年3月11日発売。『V』『VI』と3本セット。単品購入より少しお得。

WSC版

  • 2002年3月28日発売。移植度が非常に低く、SFC版とは違う形で致命的なバグが多々ある。また、ハードの関係でBGMが劣化している。
  • 後列攻撃武器が全て無効等、後のGBA版にそのまま受け継がれたバグも。
  • 画面サイズの関係上モンスターの絵を一回り小さくなる形で美麗に描き直す等、ビジュアル面には力が入っている。

GBA版『ファイナルファンタジーIVアドバンス

  • 2005年12月15日発売。WSC版をベースにし、隠しダンジョンと言った独自の追加要素があるが、やはりバグも多い。
  • 後期出荷ではバグ修正版が出されたがパッケージ上では見分けが付かず、メーカーは初期版の交換に一切応じなかった。
    • 海外では最初からバグ修正された物が出された為、日本版は「有料デバッグ」と揶揄されることも。

DS版

  • 2007年12月20日発売。初のフル3Dリメイク。アビリティ等を駆使しないとクリアが難しいバランスに変更された。
  • デカントアビリティシステム、新イベント、隠しボスが追加されたがGBA版の追加要素は不採用。また、月の民の設定が原作と一部異なる。

Wiiバーチャルコンソール版

  • 2009年8月4日発売。オリジナル(SFC版)を完全再現しており、ほぼ全く同じ。900円。

携帯アプリ(DoCoMo/au/SoftBank)版

  • 2009年から2010年に配信。基本的にGBA版の内容をベースとしつつ、DS版や続編『アフター』の設定にも準拠したリメイク。
    見た目は微妙に続編の『アフター』っぽくなっており、隠しダンジョンの内容もGBA版から変更されている。
    難易度は激増しており、一説にはDS版以上とも。価格は800FFポイント(税込840円相当)

PSP版『ファイナルファンタジーIV コンプリートコレクション

  • 2011年3月24日発売。続編の『THE AFTER YEARS 月の帰還』と、追加シナリオの「interlude」と一緒に3本セット発売。
  • GBA版の内容を元に進化させた良移植であり、数多い移植の中でも特に評価が高い決定版の一つ。

ゲームアーカイブス版

  • 2012年6月27日発売。PS版の再現。上のVC版より若干高く、1200円。

スマートフォン(iOS/Android)版

  • 2012年から2013年に配信。DS版がベースの3D仕様。解像度が向上したほか、難易度選択が追加された(ノーマルは敵が弱くなってやや簡単になっており、DS版準拠仕様がハード)。

Win(Steam)版

  • スマートフォン版準拠の移植。2014年のリリース当初は海外版限定だったが、6年後の2020年11月6日より日本語対応となり正式に日本でリリースされた。

WiiUバーチャルコンソール版

  • 2014年2月19日発売。SFC版を配信。

WiiUバーチャルコンソール版『ファイナルファンタジーIVアドバンス』

  • 2014年2月19日発売。GBA版を配信。バグ修正版での配信。

New3DSバーチャルコンソール版

  • 2017年8月23日発売。SFC版を配信。

ピクセルリマスター版

  • 2021年9月9日発売。Steam・各種スマートフォンにて配信。共通ゲームエンジンでFF4を作り直した作品。
    GBA版からの追加要素はないので注意。
    『III』同様、ピクセルリマスター版が配信された後も3Dリメイク版の配信は継続している。
  • 詳しくは個別項目を参照。

続編『ジ・アフター 月の帰還』

  • 派生作品として携帯アプリ向けの続編『ファイナルファンタジーIV THE AFTER YEARS -月の帰還-』も作られ、後にWiiウェアにも『FFIV THE AFTER YEARS』として移植された。章ごとにバラ売りされている(Wii版は全章購入すると3700円、携帯版にあった月額料金は当然無し)。
  • 前述の通り、前作とセットでPSPにリメイクされた。
  • 後にスマートフォンでも配信されるが、こちらはDS版に合わせて3Dへのリメイクがされている。

余談

  • パッケージのゲームタイトルのレタリングとデザインが一新。この字体は『XVI』までほぼ統一して使われる事となる。
    • タイトル文字には主人公のセシルではなくカインが描かれている。ネタバレ防止の為らしい。
    • ちなみにSFC版のパッケージにいるデフォルメキャラの内の「赤いナイトのような人物」は主人公セシルに該当するが、ゲーム中の容姿とはかなり異なっている*7
    • このデフォルメキャラは、『V』でゲーム中のキャラドット絵を手がけた渋谷員子氏の手によるもので、低年齢層に対する親しみやすさを前面に押し出す意図で採用されたもの。次作『V』でも同氏の手によるデフォルメイラストが使用されている。
      • ちなみに、主人公ではない人物が描かれている作品は意外と多い。特に『II(リメイク)』『IV(DS)』『VI』『XII』『XIII-2』では悪役が描かれている。
  • 元々本作は『V』として企画され、別口にFCソフトとしてコンセプトのみの状態だった『IV』の企画があったものの開発着手に至らないまま中止*8になった事で番号繰下げで『IV』に変更されたという経緯がある。
    • 1991年初頭の『ファミリーコンピュータMagazine』の前人気ランキングでは『ファイナルファンタジーV』としてランクインしていたのはこの名残と思われる。FCの『IV』は開発がスタートしていなかったため発売予定タイトルとして発表されていなかったのでランキングの対象になっていなかった。
      • 読者でそこまで知る者は少なかったのでこれを見て「単なる誤字」または我が日本の風習「ゲン担ぎ」の恒例「縁起の悪い数字である4・9飛ばし*9」と思った人も少なくない。
  • 植松伸夫氏ら本作の音楽スタッフは、先に発売されたSFCソフト『アクトレイザー』(エニックス)で古代祐三氏が手掛けたBGMの音色の質の高さに衝撃を受け、開発末期にもかかわらずサンプリングをやり直したが、それでも音については勝てなかったと述懐している*10
    • もちろん、本作の楽曲のクオリティは(音質も含めて)十二分に高い評価を受けている。
  • 講談社の月刊漫画誌「コミックボンボン」の新作ゲーム情報に初掲載された記事は誤字が多く、現在からすればツッコミどころ満載。
    • 「竜騎士カイン」が「竜騎士カノン」、「暗黒騎士セシル」が「暗黒戦士セシル」
      そして極めつけは「白魔導士ローザ」が「百魔導士ガーザ」になっていた。しかも、これが単に漢字の誤字という訳ではなく、ルビまで「ひゃくまどうし」になっていた。「百魔導士って賢者的なものか?」と誤解した人多数?
    • ドラゴンスレイヤー英雄伝説』では、本作の暗黒騎士としてのセシルとそっくりな「暗黒の戦士」という敵が存在する(ただ武器は剣ではなく鎖鉄球)。奇しくも上記の誤字のような名前であるので、もしかして担当者がそれと混同した?と疑いたくなる。
  • なんと、ゲームソフト発売前にBGMをラスボス戦やエンディングの曲まで全曲収録したCDがリリースされた。
    • 曲タイトルに若干のネタバレもあったが、楽曲のクオリティの高さにゲームの期待を更に高める効果が上がった。
      • 因みにリリースされる情報が上記の楽曲クオリティの見直し情報が出た後で若干の不安も出ていた頃で、CDを聴いて安堵した…なんて事も。
  • 本作を手がけた時田貴司が後年に製作した『ライブ・ア・ライブ』の中世編は、本作のセシル・カイン・ローザの関係を元に、「もしセシルとカインの立場が入れ替わったら」というコンセプトで作られている。
  • パロム・ポロムのやり取りは人気があったようで、本作を手がけた時田貴司が後年に製作した『半熟英雄 ~ああ、世界よ半熟なれ…!!~』でゲストとして登場し愉快な漫才を披露してくれる。他にもFFの外伝作品にゲスト出演していたり、この姉弟をモデルにしたキャラクターが登場する作品もある。
    • ちなみに『半熟英雄 ~ああ、世界よ半熟なれ…!!~』では、ゴルベーザ四天王のパロディキャラとして「完熟四季王」なるキャラも登場している。
  • 上記の通りカインは最終加入時に「グングニル」を装備しているが、これは神話ではオーディンの愛用武器である(「斬鉄剣」はゲームオリジナル設定)。
    • だがこの通り普通の武器枠の登場ということあって神話を知っている人からすればオーディンが使わないことにガッカリしたかも…*11
      • 「グングニルを持ったオーディン」次回作でついにFF本編初登場となる(ガッカリパターンでの登場*12なのは残念だが)。
  • 余談ではあるが、テレビCMが非常に印象的である。一度見たら忘れられないほどにインパクトのあるCMなので一度見てみるといいだろう。
+ テレビCM

  • ゲーム全体に関わるバグがいくつか存在することが知られる。
    • 炎耐性の防具は氷弱点を、氷耐性の防具は炎弱点を併せ持っている。これ自体は『III』から続く仕様であり、複数の防具で両耐性を身に付ければ上書き可能。
    • しかし、炎氷耐性と同時に『耐性&弱点を増幅する』性質を持つ「アダマンアーマー」に限り、装備してから外してもそのキャラの「増幅された弱点」のリセットが行われず炎氷の4倍弱点になってしまう。
      • ただしアダマンアーマーは異常な性能を持つ最強装備で入手が極めて難しいレアアイテムなので、通常プレイではそもそも入手することはない。
    • (SFC版のみ)「戦闘開始時(イベント戦闘含む)に戦闘不能・石化・離脱状態である」という条件を一度でも満たすと、それ以降そのキャラはそのバトルに限らず、それ以後の全バトルで永久にクリティカルが出なくなるというバグがある。
      • 戦闘不能と石化はゲームの進め方次第で回避は可能だが、問題は「イベントによる離脱状態」であり、これはゲーム進行上回避できない。
      • 本作はイベント戦闘が多いが、「パーティー外のキャラだけが戦闘するイベント」は「現在パーティーにいるキャラクターが全員離脱状態になる」という内部処理のため、このようなイベント時にいたメンバーは全てこのバグを被る。
      • ラストバトルイベント前の時点でクリティカルが出せるキャラは最大でも5人中2人。その2人もラスボス前のイベントで出せなくなる。
      • ただしヒット数の関係上元々ダメージのバラつきが多いゲームな上に、クリティカルでも劇的にダメージが増えるわけでもないので、出なくてもそこまで気になるレベルではない。
    • 弓矢やブーメラン等の後列からでも命中率の落ちない武器を一度でも装備したキャラは永久に後列攻撃可能になる。
      • こちらは前衛に立つリスクを度外視させる有利なバグだが、今作の隊列の仕様で最終的に最低2人は前列に立つことになるため、活用できる場面は少ない。
    • 召喚魔法の「シルフ」は、敵1体を攻撃しつつ味方全員のHPを回復する有用な召喚魔法だが、画面に数字で表示されるHP回復量が、実際に回復されている量の2分の1になっている。
    • ただし、発売当初は他の召喚の高い威力からあまり目立っておらず、所謂寄り道をしなければ手に入らない召喚だったことも関係しているのか、ほぼ気づかれていなかったが、「シルフ」の有用性をプレイヤーにやや過小に見せることとなっていた。
      • 正しい数値で表示されていれば、より積極的に使われるコマンドとなっていたかもしれない。
    • これらのバグは製品としての詰めが甘かった箇所ではあるが、ゲームバランスを崩壊させているようなものではない。認知度も低く、存在自体が知られ発生条件が解明されたのは発売後何年も経ってからのことである。
  • 中盤で、一時期全員男キャラかつ「セシル以外は全員髭面のオッサンあるいはジジイ」というパーティー編成となり、他のRPGではめったに見られない編成であることから一部で「伝説のパーティー」等と呼ばれている。
    当時はよく比較対象とされていたドラクエシリーズでもIVは最終的に仲間になる男性4名の内3名は髭のオッサンとジジイだったりするので、こちらでも組もうと思えば伝説のパーティーに近い編成にすることも可能だったりした。当時はあまりそういった外面を気にしていなかったという風潮だったとも言えるのだろうが。
    • 続編のVにおいては男女半々4名のパーティーだったところ、中盤過ぎに主要メンバーであった男の老戦士が孫娘に力を託して離脱するということになるため、本作「伝説のパーティー」とは逆に主人公以外が全員女性というFFシリーズ全体を見ても珍しい「公式ハーレムパーティー」を組んで最後まで戦い抜くことになるという展開が待っている。
  • 最終決戦直前で、ゴルベーザがラスボスと戦うイベントがあるのだが、その際に彼が言い放った「いいですとも!」という台詞は彼に似つかわしくない爽やかな台詞として『FF』シリーズ屈指の名言(迷言?)となり、派生作品等でも公式ネタとして使われている。
  • 旧エニックスの国民的RPGのナンバリング4作目である『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』が「FC最後の『ドラクエ』」であったのに対し、本作は「SFC初の『FF』」という真逆の立ち位置となっている。
    • 双方のシリーズは共に『IV』を除いて『VII』まで、同じハードで発売されており、そのせいで「『ドラクエ』と『FF』は7作目まで同じハード」と一部で勘違いされることがある。一応、双方の『IV』がDSでリメイクが発売されているという共通点はあるが。
  • 魔導師の村ミシディアの長老の名がミンウであることはリメイクでの後付けと言われているが、実はオリジナルのSFCの時点でそうなっていた。
    • 「500年前にミシディアの地に辿り着いた賢者ミンウ」と同じ名前であり、長老ミンウの方は裏設定に近かったのが後付けと間違われる一因だろう。
    • 実際当時の攻略誌や漫画誌などで取り上げられた折にしれっと出ていたこともあった。村の名前といい『II』のオマージュだろう。
    • これが後にリメイクの『II』で逆輸入され本作のカインが『II』のディストにいた少年の名前に宛がわれている。
  • 前作、前々作ともコンビで出てきたベヒーモスとキングベヒーモスは本作では初めてキングのみが欠場している*13
    • とはいえベヒーモスは終盤での登場で、そのタフサもパワーも凄まじく前作のキングを圧倒的に凌駕している。
    • 反対に次作ではノーマルのベヒーモスが欠場しキングベヒーモスのみが登場。本作を思えば少々弱くはなったがメテオをブチかましてくるなどその巨体に似合った強さになった。なお同型の下位は「クーザー」として登場しており、これが実質的ベヒーモスと言えなくもない。
  • 『III』発売後に坂口氏は、少年ジャンプ名物編集鳥嶋氏から「ファイナルファンタジーが何でダメなのか」を懇々とダメ出しされ、それから物語重視に舵を切ったと語っている。その時系列から物語重視として出来上がったのがこの『IV』だという。
    • 詳しい経緯は『ファイナルファンタジーIII』の余談欄へ。
    • なお、これを機会に坂口氏と鳥嶋氏は週に1回一緒に飲みに行く仲になったとのこと。
    • 当時のジャンプはというと、ゲームコーナー*14のライター達はFF3をファミコン最高傑作と推していた一方で、編集者たちは誌面で映える『ドラクエ』を高く評価して映えない『FF』をまだまだこき下ろしていた頃である。そのため本作の特集もジャンプで行われなかった。
      • 実際『ファイナルファンタジーV』をジャンプで特集した際はジャンプ読者に全然ウケなかったそうで、鳥嶋氏は「やっぱり、『ドラクエ』は鳥山さんの絵があるから、それだけでキャッチーだったんですよ。」とゲームプレイ外での魅力の差が大きかったことを挙げている。
    • 鳥嶋氏の意図はともかく、当時「ゲームは映画に勝てない」と断じていた坂口氏が変質してストーリー重視を突き進んで『IV』を作るに至る。
  • 発売当時、初期出荷数が少なくかなりの品薄を起こしていた。
    • 当時ファミ通でもFFシリーズの扱いが大きくなってきたところで、紙面に「FF新聞」というFF(及びスクウェア作品)の情報を掲載するページまで設けられたのだが、その第一回も、FF4発売直前のお店の入荷数の少なさ、入手困難が予想されることを報じていた。
    • また、あまり知られていないが初期出荷バージョンには一部モンスターの挙動がおかしくなるバグが存在する。

ファイナルファンタジーIV イージータイプ

【ふぁいなるふぁんたじーふぉー いーじーたいぷ】

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
発売・開発元 スクウェア
発売日 1991年10月29日
定価 9,000円(税別)
判定 良作

概要(イージータイプ)

システムや単語の簡略化、難易度を下げた初心者向けのバージョン。
説明書とは別に、ゲーム中盤までのダンジョンマップや攻略のポイントを記した「冒険ガイドブック」を同梱している。


主な変更点

  • 大半の敵のHPが下がるなどの数値バランスの調整。
    • 敵の特殊攻撃もなくなっている。
  • 全体的にシステムが簡略化されている。
    • 状態異常を回復するアイテムは全状態を治療する「ばんのうやく」1種に統合され、その他戦闘用アイテムがほぼ全て削除された。
    • 独自コマンドの大半が削除
      • ローザの「いのり」、ギルバートの「くすり」、ヤンの「がまん」「ためる」、テラの「おもいだす」、パロムの「つよがる」、ポロムの「うそなき」、フースーヤの「せいしんは」が削除された。
    • ネーミングに関しても、同系統の魔法は「ケアル・ケアルラ・ケアルダ・ケアルガ」が「ケアル1・ケアル2・ケアル3・ケアル4」といった数字表記になった。アイテムや敵も「フェニックスのお」が「ふっかつやく」に、「ハンドレッグ」が「おおむかで」に、「シーポッツ」が「きょだいばいきん」になる等、より分かりやすい(直球な)名前に変更されたり、英語が和訳されている。
  • システムに関する説明が増えた他、チュートリアル的な施設「トレーニングルーム」が大幅に拡張された。
    • トレーニングルームは、オリジナル版では最初の町にて「デビルロード」という建物の地下に存在する小さな部屋だったが、イージータイプでは専用の建物が用意され、2階建てで部屋も広くなり、説明用のキャラも大幅に増加。更に世界各地の町に同様のトレーニングルームが設けられた。
  • ダンジョンの構造の変化
    • 全体的に分かりやすくなるよう変更されており、くぐれる天井が削除されたり、一部の隠し通路は目に見えている。また、一部ショートカットが追加されている。
    • ラストダンジョンのラスボスの少し手前のフロアにセーブポイントが追加された。
  • アイテム増殖技などのバグもほとんど修正された。
  • オリジナル版のアイテムがいくつか削除された一方で、イージータイプで追加されたアイテムも一部存在する。
  • ラスボスのグラフィックがオリジナル版から大幅に変更された(ただし海外版はオリジナルの姿に戻された)。
    • 後にこのイージータイプのラスボスグラフィックがGBA・携帯・PSP版のリメイクに裏ボスとして再登場することとなる。
  • ゲームの開発者達が登場するお遊びコーナー「開発室」が削除された。

評価点(イージータイプ)

  • 売り文句の通りRPG初心者にも遊びやすくなった。
    • 元々難易度が高めのゲームだったが、数値バランスの調整で遊びやすくなった。
    • 名称の変更もシンプルになった事で、RPGに慣れていない人にも一目で効果が分かりやすい。
  • 同梱の初心者向け攻略本「冒険ガイドブック」
    • 操作方法から丁寧に解説されており、初心者向けとして丁度良い。
    • ただしシドのコマンド「しらべる」が「のぞく」になっている等、細かい誤植が多い。
    • これが好評だったのか、スクウェアはその後のSFCのRPGにおいて、通常の攻略本とは別に初心者向けの攻略本を「冒険ガイドブック」の名前で出している。

賛否両論点(イージータイプ)

  • 名称のシンプル化の賛否
    • アイテムや敵の名称など、簡略化したことで分かりやすくなった反面、味気なくなってしまった面もある。
    • 一部モンスターは却って分かりにくくなっていることも。特に「こおりのきし」(オリジナルでは「れいきし」)は全くの誤情報である。
      • 「冷」騎士ではなく「霊」騎士。種族も霊体であり、別に氷耐性は無いし氷属性の攻撃もしない。無論炎弱点でもない。勿論、これらの特性はイージータイプでも変更なし。
  • 攻撃アイテムや固有コマンドの大規模な削除
    • 大半が使い所の難しいアイテムや死にコマンドで活用し難いものであったため、煩雑さの解消には繋がっている。
    • 一方で数少ない有用な固有コマンドである「つよがる」まで削除されたことで、かえって通常版より難易度が上がっている面もある。
      • 総合的にみれば、各種戦闘用アイテムや「つよがる」などが必要ないほどヌルくなっているのだが、取れる戦術の幅は狭まっている。
  • 通常版にあったバグの多くが修正された。
    • 本来なら喜ばしいことであるのだが、これに伴いアイテム増殖技・クリスタル早取りなどの有用なバグ技もほぼ不可能になった。
    • ファミマガのウル技コーナーで「このコーナーで以前紹介されたIVのウル技はイージータイプで使えますか」という投書があり、回答は「大技は修正がされておりほぼ不可能(隠し召喚はできそうだが検証できなかった)」だった。
      • 実際には隠し召喚はイージータイプにもあるものの、何故かコカトリスだけ削除されている。
    • また、後述のシルフMP0バグのような新たに発生したものもある。

問題点(イージータイプ)

  • 「アラーム」の削除
    • 使用することで特定の敵と100%戦えるアイテム「アラーム」が削除されたため、低確率で出現するレアモンスター「プリンプリンセス」との遭遇が困難になった。
      • プリンプリンセスが低確率で落とすレアアイテムは最強防具の入手に必要なので、やり込みプレイヤーにとって重要な敵である。
      • ただしイージータイプでは通常エンカウントによるプリンプリンセスの出現確率が上がっており、レアアイテムを落とす確率も大幅に引き上げられているので、実際にはそこまでレアアイテムが入手困難になっているわけではない。

総評(イージータイプ)

簡略化が施されたことで原作よりも易しくなっており、原作が難易度的に難しいと感じられる人にはちょうど良い塩梅になっているが、その反面、簡略化によって少々味気なくなっている面も否めない。
当時は初心者向けとしての役割もあったが、今となっては様々なメディアで攻略法が周知されているのに加え、シリーズ作品自体が数を重ねていることや、続編や続編とのカップリング移植作品などが改めて発売されていることもあり、あえてこちらを手に取る意義はないだろう。


余談(イージータイプ)

  • 「インターナショナル版」の原点
    • 日本でのイージータイプの約1ヶ月後に発売された海外SNES版『FINAL FANTASY II』は、このイージー版をベースに作られている…というより、海外向けに製作していた物を日本でも先行して出した、と言った方が正しいかもしれない。
      • ナンバリングがズレて『II』となっている理由は、向こうでは当時FC版『I』発売後、ほぼ完成していたがSFC/SNES発売により時代遅れになったFC版『II』の海外版が発売中止になっていた経緯があり、その後SFC版『IV』のナンバリングを改めて『II』として発売することになった。同様に『VI』は向こうで『III』として発売された。
      • しかしこの時点ではアメリカであまりヒットはせず、「まだ難易度が高すぎたのか」と考えたスクウェアは、さらに難易度を抑えた『FFMQ』(日本では『USA』として逆輸入)を発売した。
      • なお、後に改めて海外PS向けに移植された『IV』は上記と違って通常版がベースであり、ナンバリングも日本と同じものに戻っている。
  • シルフの消費MP0バグ
    • 原作で圧倒的な強さだった「シルフ」に関してはこちらでも新たなバグが発生し、回復量の異常な多さはなんと表示の方を修正されてほぼ据え置きのまま、さらに実質消費MP0で使用可能(使用にはMPが25以上必要だが、使っても減らない)という事態に。このため本作では安易に連発可能になってさらに猛威を振るうことになってしまった。
    • ただしこちらも発売当初はあまり知られておらず、後年になって広まったものである。

最終更新:2025年03月22日 10:23

*1 プレイヤー間で唯一異なる育成が可能なのは、HPやMPの最大値を上げるアイテムの使用のみとなっている

*2 味方側の武器攻撃による状態異常の追加効果についてはまだエフェクト演出が存在せず、補足メッセージが表示される

*3 「弓矢」か「竪琴」で攻撃した際に限り、ヒットのアイコンと効果音がヒット回数分だけ発生する仕様となっている

*4 派生作を含めても『FF』シリーズで5人パーティーという形式を取っているのは今のところ、本作と『IVアフター』『レジェンズ』のみ。

*5 最終盤のみザコ戦でも流れる。

*6 行動速度が素早さの値そのものではなく、主人公セシルの素早さとの相対差によって設定される。基準となるセシルの待ち時間で5コマ分しかなく、1コマあたり敵味方問わず1キャラクターしか行動できない。

*7 携帯版『IV』の公式サイトで配布されている壁紙の一部には、全キャラクターの公式デザインに準拠したデフォルメ絵が用いられているものがあるため、恐らくはネタバレ防止のためだと思われる。

*8 開発自体もSFCの『V』(結果的に『IV』にあたる本作)が先行して開発が進んでいたため。

*9 「4」→「し」→「死」、「9」→「く」→「苦」と読み替えられるため。特にマンション・ホテルの部屋番号や駐車場の番号などで(例・「501」→「502」→「503」→「505」)使われることが多かった。平成中期以降は減少傾向になる。

*10 SFCはPCM音源の搭載により、録音した音を和音の一つに活用できるので、凝ればオーケストラさながらの合奏を実現させることが出来る。

*11 一足先に姉妹作『サガシリーズ』の2作目『Sa・Ga2 秘宝伝説』(1990年12月発売)で登場したオーディンは通常武器枠の「グングンニルのヤリ」を使ってきた。これはプレイヤーも入手して使用可能。

*12 斬鉄剣が失敗(発動できなかった)時のハズレ補填としてランダムで敵1体に投げつけてダメージを与える攻撃。威力はそれほど低いわけではないのだがハズレ扱い

*13 GBA版では追加モンスターとしてキングベヒーモスも登場した。

*14 当時のジャンプのゲームコーナー「ファミコン怪盗 芸魔団」。先代のゲームコーナー「ファミコン神拳」は1989年に終了済み。