ビーストサーガ 最強激突コロシアム!
【びーすとさーが さいきょうげきとつころしあむ!】
ジャンル
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戦略格闘アクション
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対応機種
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ニンテンドー3DS
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発売元
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日本コロムビア
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開発元
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タボット株式会社(現・アプシィ株式会社)
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発売日
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パッケージ版:2013年7月25日 ダウンロード版:2014年1月9日(現在配信終了)
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定価
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5,184円 (税込)
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レーティング
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CERO:全年齢対象
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判定
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なし
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ポイント
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豊富なIFストーリー 参戦キャラクター35体(うちPC12体) やけに高い難易度 一部ミッションが理不尽
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概要
タカラトミーから販売された玩具を中心に展開されたメディアミックス作品『ビーストサーガ』のうち、2013年1月13日から2013年9月29日に放送されたアニメ版を題材にした「戦略格闘アクション」。
さまざまな動物から進化した獣人族「ビースト」が生息する「ビースト星」を舞台に、陸・海・空の三種族のビーストたちがチームを組み、3vs3の戦いを繰り広げる。
多数のビーストが活躍する群像劇である原作を反映してか、総勢35体ものビーストが登場する賑やかなゲームとなっている。しかし……
システム
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ルール
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長方形のステージ内を敵味方最大3体ずつのキャラクターが自由に動き回り、互いに攻撃し合って各キャラクター固有のHPを削り合う。HPがゼロになったキャラクターは撃破され消滅し、キャラクターごとに設定された数値分だけそのキャラクターが所属する陣営の「BP」というゲージが減少する。消滅したキャラクターは一定時間が経つとHPが全回復し、復活する。先にBPをゼロにされた陣営が敗北となる。なお、両陣営のBPの最大値は「12」で固定。
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BPがらみのシステムはガンダムVSシリーズにおける「コスト」に近い様式となっている。ただし、復活したキャラクターのBPが残りBPを上回っていても特にペナルティ(いわゆるコストオーバー)はない。
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ステージによってはキャラクター同様にBPを設定されたオブジェクト「きょてん」が存在する場合がある。きょてんは耐久力が高いが、破壊されても復活しない。ミッションモードの多くではきょてんのBPが「12」と設定されており、きょてんの破壊が即勝利/敗北に繋がる。
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操作キャラクターが撃破された場合、X・Y・A・Bボタンを連打してHPを回復させなければ復活できない。NPCは自動でHPが回復して復活するが、連打による復活より幾分時間がかかる。また、CPUの敵陣営に1体もキャラクターがいなくなった場合、一番先に撃破されたキャラクターが即座に復活する。
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操作方法
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スライドパッドでキャラクターを操作し、ステージ内を自在に走り回ることが可能。Yで通常攻撃(連打することで連続で繰り出せる攻撃)、Xで特殊攻撃(各キャラクター固有の強力な攻撃)、Aでサイコロット(エネルギー弾射出、3段階溜め可)、Bで回避(スライドパッドを入れた方向に回避行動をとる、回避中は無敵)、R長押しで必殺技(SPゲージMAX時。SPは攻撃やダメージ、時間経過で蓄積)。また、Lボタンでカメラタイプを自キャラ寄り/俯瞰に切替可能。
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サイコロットは溜める毎に威力が増し、2段階目では吹き飛ばし、3段階目では確定ダウンと性能も上がっていく。必殺技は一定時間のチャージが必要だが、各キャラクター固有の範囲に強力なエネルギー弾を射出し相手に大ダメージを与える。回避中など、無敵状態の相手以外には必ず命中する。サイコロットは障害物に遮られるが、必殺技は障害物をすり抜ける。
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レベル
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各キャラクターにはレベルが設定されており、初期は全員「1」の状態。ストーリー・ミッションの戦闘によって経験値が蓄積され、一定の値に達するとレベルがアップする。レベルアップすると1レベルにつき4ポイントの強化値を入手でき、6つのステータス(こうげき、たいりょく、タメそくど、サイコロット、ひっさつわざ、うたれづよさ)に振り分けることができる。
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アイテム
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ステージによっては回復や強化など様々な効果を持ったアイテムが出現する場合がある。フリーバトルでは任意で有無を選択できるほか、通常より多めに出現するように設定することも可能。
ゲームモード
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ストーリー
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ステージごとに固定のキャラクターを使用して戦うモード。戦闘の前後にはキャラクター同士のやりとりが挟まれ、ステージを進める毎に物語が進行していく。
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全12章、全63ステージ。各章のあらすじは以下の通り。
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トレーニング編:グロリア王国の若き王子・オーガがゼブラックスの指導を受け、戦いの基本を覚えていくシナリオ。チュートリアルを兼ねた簡単なステージが並ぶ。
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グロリア王国編(1~6):アニメ『ビーストサーガ』の1~31話を元に抜粋・改変したメインシナリオ。グロリア王国の王・ライオーガがかつての親友・ゴールダーの反乱や悪の海賊・デスハート団の侵略に立ち向かう。
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ベンガ国編:かつて栄華を誇った祖国・ベンガ国を復興させるため、ライオーガ打倒に挑むゴールダーの姿を描く。アニメや他のメディアミックス作品には存在しないオリジナルストーリー。
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成り上がり編:船乗り上がりのデスハート団員・ビルソードが相棒のマンタレイと共に成り上がりに邁進するオリジナルストーリー。
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デスハート団編:デスハート団の総督・キラーシャークがその力でグロリア王国、さらには空のソアラ聖国までも滅ぼしていくオリジナルストーリー。
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ソアラ聖国編:ソアラ聖国・空の戦士団団長のキャプテンイーグルが、力自慢が集まる武闘大会を勝ち抜いていくオリジナルストーリー。
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特訓編:オーガがグロリア王国の強者たちにビーストファイトを挑んでいくオリジナルストーリー。
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ミッション
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1~3体までのキャラクターでチームを組み、全100ステージのミッションをこなしていくモード。ステージによって勝利条件・敗北条件が通常と異なる場合がある。
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ローカル通信で最大3人まで協力して遊ぶことも可能。ただし、ゲーム機本体とソフトは人数分必要。
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フリーバトル
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敵味方3体までのキャラクターを自由に設定して戦うモード。ステージ背景、制限時間、アイテム有無、きょてんの有無、レベル反映有無を選択可能。
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ローカル通信で2人対戦が可能。もちろん、ゲーム機本体とソフトは人数分必要。
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ずかん
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登場させたキャラクターのプロフィール、レベルとステータス、必殺技、固有BPを確認可能。3Dモデルの観賞(左右回転のみ)やボイスの再生も行える。
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パスワード
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発売当時、ビーストサーガの記事や漫画を掲載していた雑誌『最強ジャンプ』などにて発表されたパスワードを入力するモード。入力に成功すると隠しミッションが出現し、クリアすると既存キャラクターの特別カラー版が使用可能になる場合がある。
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セーブ
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任意のタイミングでセーブを行うモード。本作ではステージプレイごとに(勝敗問わず)必ずセーブ画面が表示されるため、基本的にはあまり使用しない。
登場キャラクター
太字はPC、それ以外はすべてNPC。
+
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陸種族
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ライオーガ
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5
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陸の大国・グロリア王国の王。「鉄拳獰猛王」の異名を取り、いかなる戦場にも素手で殴り込む勇敢な王。
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ビッグセロウ
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4
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グロリア王国の参謀長。ライオーガとは軍学校時代の学友。
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レパーミント
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3
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グロリア王国のロイヤルガード。元ナース志望の女性戦士で、気配り上手のしっかり者。
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オーガ
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3
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ライオーガの息子。やんちゃでいたずら好きだが、強い正義感を持つ。
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エレドラム
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4
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グロリア王国・輸送施設軍隊長。パワー自慢の巨漢で、寡黙な古兵。
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ゼブラックス
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4
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グロリア王国・高速機動軍隊長。何事も白黒つけたがる頑固者で、オーガのお目付け役。
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ゴールダー
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5
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グロリア王国・東方軍司令官。かつてグロリア王国に合併されたベンガ国の末裔で、祖国再興を目指す野心家。
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ロングジラフ
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3
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グロリア王国・特務諜報軍隊長。普段は頼りないが、首を強打すると人が変わる。
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ライナス
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3
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グロリア王国・重装攻撃軍隊長。日々の鍛錬を怠らない屈強な戦士で、他部隊の隊長も一目置くまとめ役。
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バッファム
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3
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グロリア王国・輸送施設軍轟力戦闘兵。普段は穏やかだが、一度火が付くと止まらない性質。
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コアレム
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1
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グロリア王国・輸送施設軍迫撃戦闘兵。1日18時間の睡眠時間を軍団のチームワークでカバーする一般兵。
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ジーダム
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2
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グロリア王国・高速機動軍機動戦兵。尊敬に値しない相手には不遜な物言いをするメカオタクの少年。
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チタンバートン
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3
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グロリア王国・高速機動軍高速戦闘兵。何よりもスリルを求める荒っぽい性格。
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ジャンジャン
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3
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グロリア王国・東方軍副官。怠け者でいつもふざけた態度を取っているが、実は拳法の達人。
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シアンビ
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3
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グロリア王国・東方軍舞踏戦闘兵。独特の美的センスを持つナルシスト。
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パドレッサー
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2
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グロリア王国・東方軍メカニカル工作兵。恥ずかしがり屋だがメカに詳しい天才。
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バニキス
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2
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グロリア王国・特務諜報軍ハイテク偵察兵。フットワークが軽く頭の回転が速いが、秘密主義者の一面もある。
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デリシャスホッグ
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1
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グロリア王国・特務諜報軍宮中料理人。庶民の味にも通じる実力派。何故かカマ口調で話す。
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ギャリソンG
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3
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グロリア王国・重装攻撃軍強襲攻撃兵。血気盛んで失敗も多いが人望は厚い。特技はドラム演奏。
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ウルフェン
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6
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ロンリーガンマン。ライオーガと因縁を持つ傭兵。
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+
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海種族
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キラーシャーク
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6
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悪の海賊・デスハート団の総督。残酷で無慈悲なシャーク三兄弟の長男。圧倒的な力で敵を薙ぎ倒す。
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ビルソード
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3
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デスハート団・謀殺戦闘員。軽薄な元船乗りで、金目当てに海賊稼業に転職した。
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マンタレイ
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4
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デスハート団・高速戦闘員。ビルソードの相棒を務める寡黙な実力者。
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シザーシャーク
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4
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デスハート団・殺戮提督。シャーク三兄弟の次男で、世界征服を目指す頭脳派。
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パワーシャーク
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4
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デスハート団・轟力艦長。シャーク三兄弟の三男で、頭は弱いが力自慢。
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シーレンス
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3
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デスハート団・参画参謀。「失われた大陸」が沈んだとされるストレージ海の出身。
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ピラゾン
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1
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デスハート団・一般戦闘員。粗野で乱暴、数だけは多いザコ兵。
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アルダイル
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4
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鱗板宮殿・暴君城主。立派だった父親の遺産を食い潰す無能な城主。
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グエール
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1
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鱗板宮殿・両用使用人。怠け者だが、サボりのためなら努力を惜しまないため結果的によく働いているように見える。
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+
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空種族
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キャプテンイーグル
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5
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ソアラ聖国・風の戦士団団長。平和を望む理想主義者で、凛とした態度で戦士団を率いるリーダー。
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ブンドット
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2
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ソアラ聖国・和平戦士。心配性で、戦いを好まないハト派の軍団。
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バメット
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4
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ソアラ聖国・風の戦士団開戦派先鋒。生真面目な補佐役で、戦いにおいては切り込み隊長として活躍する。
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ダッカ―
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3
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ソアラ聖国・風の戦士団放浪戦士(情報屋)。元は冒険家で、キャプテンイーグルの命で各地の情報収集に努める。
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モリーク
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2
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ソアラ聖国・風の戦士団超音波戦士/グロリア王国・内務大臣補佐官。二つの立場を使い分ける多重人格者。
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オウルマイティ
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4
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ソアラ聖国・風の戦士団参謀博士。若くして空の神官団にその頭脳を認められた頭脳明晰な参謀。
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評価点
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多彩なIFストーリー
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ストーリーのうち「トレーニング編」「ベンガ国編」「成り上がり編」「デスハート団編」「ソアラ聖国編」「特訓編」はいずれも本作オリジナルのシナリオであり、そのうちチュートリアルの「トレーニング編」や番外編的な内容である「ソアラ聖国編」「特訓編」以外の3つはいずれもアニメとは異なる筋書きを辿る、いわゆる「IF(もしも)」展開が盛り込まれた内容となっている。
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「ベンガ国編」では、ゴールダーがライオーガを倒し、ベンガ国再興への希望を見出すまでを描いている。肝心のベンガ国再興はゴールダーが「王としての器を身につけてから行う」として棚上げとなるが、ゴールダーがグロリア王国の面々はもちろん、アルダイルやキャプテンイーグルといった他種族のビーストまで次々倒してライバルとの因縁に決着をつける様子は感慨深いものがある。
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「成り上がり編」では、悪役ながら憎めない性格でファンの多いビルソードとマンタレイが活躍。グロリア王国を侵略し、ライオーガをも軽く蹴散らして成り上がっていく。しかし、デスハート団の目的が大規模破壊をもたらす禁呪・メガテンペストの発動と知ると「戦って勝つ分にはいいが、戦うことすらできない弱いヤツらを犠牲にするのはいただけない」として反旗を翻し、アニメの通りシザーシャークと戦って倒すどころかなんとキラーシャークまで倒してデスハート団を壊滅させる。いち小悪党に過ぎないビルソードが勢いで悪の親玉まで倒してしまう、どこかコミカルながらも味のあるシナリオ。ラストにはマンタレイのファンなら必見のとあるシーンも。
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「デスハート団編」では、キラーシャークがデスハート団を率いてグロリア王国を攻撃。敗れたライオーガは処刑され、グロリア王国はデスハート団の前に陥落。続いてソアラ聖国もその毒牙にかかり、とうとうビースト星はデスハート団に征服されてしまう……という、なかなか衝撃的なシナリオ。
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なお、アニメ本編に比較的忠実な「グロリア王国編」のシナリオにも大小の改変が加えられている。具体的には「ゴールダーが死なない」「メガテンペストが阻止される」「ビルソードがマンタレイと共にメガテンペストを止めるためにデスハート団を裏切る」など。
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多数の参戦キャラクター
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参戦キャラクター数は総勢35体で、この手のキャラゲーにしては多い。流石にアニメに登場する全キャラクターをカバーできているわけではないが、かなり健闘している。
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ただし、参戦キャラクターの選出は偏っており、陸種族がやたら多い。陸種族、とりわけグロリア王国の面々はアニメでも主人公陣営として描かれていたため、扱いに偏りが出るのはやむなしとも思われるが、海種族や空種族にも魅力的なキャラクターは多くいるため、未参戦キャラクターが多いのは惜しまれる。
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アニメを踏襲した音楽・演出
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ゲームを起動すると、谷本貴義氏が歌うアニメのOP曲『ビーストサーガ』に合わせ、アニメのOP映像を元に新規カットを追加したOP映像が流れる。ゲーム中に流れる曲もほとんどアニメの劇伴であり、総じて音楽面はアニメに忠実。
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ストーリーやミッションを選択すると、アニメのサブタイトル表示時と同様の背景・フォント・ジングルが毎回流れる。些細なポイントではあるが、アニメさながらの雰囲気の醸成に一役買っている。
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キャラクターの言動や戦闘時の台詞も概ねアニメ他メディアミックスのものに沿っており、アニメ序盤におけるアルダイルの迷言「ワニは保護しなきゃいけないんだぞぉ~!?」など、名・迷シーンの再現も豊富。
問題点
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やけに高い難易度
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まず、ストーリーの敵キャラクターのレベルがやたら高い。いずれの章も1つ目のステージはレベルが低く攻略しやすいが、その次のステージで早速レベルが10上がるような事態がさも当然のように発生する。本作におけるレベルは1ステージで最大3上がるか上がらないかという程度の上昇ペースであるため、たかが1戦した程度では到底敵のレベルアップについていくことはできない。テクニック次第ではレベル差が大きく開いていても勝てないことはないが、最低限ミッションでのレベル上げ作業は必須である。
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極端な例として、グロリア王国編6の第6・7話が挙げられる。ライオーガがキラーシャークと最後の決戦を行うのだが、第6話では45だったキラーシャークのレベルが第7話でいきなり65まで上昇する。しかも、第6話では6だったキラーシャークのBPが第7話では4まで減少しているため、3回倒さなければ勝利できない。もちろんそのまま戦っても、よほどこのゲームに熟達していない限り勝ち目はない。
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次に、本作では通常攻撃を連続で行っても攻撃方向に補正等が一切かからないため、多段ヒットを狙うにはそれなりに繊細な方向修正が要求されるのだが、CPUが操るキャラはそんなの知ったことかとばかりに一撃目が入ったらほぼ確実に最後まで連続攻撃を当ててくる。先述の通り、本作ではどうしても相手のレベルの方がこちらのレベルを上回る局面がほとんどになりがちであるため、一度レベルの高い相手の攻撃を喰らってしまうとダメージレース上かなり不利になってしまう。本作には敵の攻撃のダメージを軽減したり、攻撃されている最中に緊急回避を行うような防御手段が一切存在しないこともあり、着実に相手の攻撃を見切ってかわし、ヒット&アウェイでジリジリと追い詰める必要がある。
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さらに、CPUは画面外からでも正確にこちらを範囲に捉えて特殊攻撃や必殺技を確実に当ててくる。本作のカメラの俯瞰視点がステージ全体を捉えられないのもあって、画面外からの敵の攻撃や必殺技はかなりの脅威となる。
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サイコロットの狙いもかなり正確だが、こちらは弾速がさほど早くないうえ、障害物で遮られたりあまりに相手が遠すぎると届かないため、そこまでの脅威ではない。
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そして何より、ストーリーでは数の暴力が最も恐ろしい。ステージによっては2vs3、あるいは1vs3のハンディキャップマッチを要求される場面があるのだが、先述の通りCPUの攻撃性能の高さが異常なため、下手に複数の敵を相手にしようとすると、敵1体を攻撃している間にそれ以外の敵から攻撃され大ダメージを受けてしまう。たとえ操作キャラクターがBP6のキラーシャークであっても、3体のビーストに寄ってたかってボコボコにされればひとたまりもないのである。
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こうも難易度が高いと、いわゆる「かんたん」モードのように難易度を低く調整して遊びたくなるものだが、残念ながら本作にはオプションが存在しない。そのため難易度の調整はもちろん、BGM・SE・ボイス音量の調整なども不可能である。
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本作は全年齢向けであり、原作アニメの対象年齢もそう高くはない。したがって、難易度調整のような若年層が遊ぶ際の配慮は必須と思われるのだが……
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PCとして操作可能なキャラクターの少なさ
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登場キャラクターの多さは評価点として挙げた通りだが、なんとそのうちプレイヤーが操作できるキャラクター(PC)はわずか12体と全体の半分以下である。
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PCの選出にも難があり、陸種族が7体操作可能なのに対し海種族は3体、空種族に至ってはなんと2体。挙句、そのうち1体は雑兵ポジのブンドット。いくらなんでもそれはないだろう。
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理不尽な一部ステージの勝敗条件
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ミッションの中には「特定のアイテムを取得する/される」が勝敗条件となっているものがあるが、この特定のアイテムがいつどこに出現するかは完全にランダムである。そのため、自キャラの頭上から急に目的のアイテムが出現して勝利となったり、敵を吹き飛ばした先に目的のアイテムが出現して即敗北となるなど理不尽な状況が度々起こる。真剣勝負のビーストファイトの勝敗が運任せとはこれ如何に。
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また、「やたら高い難易度」の項でも触れたが、ストーリーではステージによって敵味方キャラクターのBPが調整される場合がある。酷い時は「自分はBP12なので一度でも倒されたら敗北だが、相手はBP4なので3回倒さないと勝利できない」というかなりシビアな状況に追い込まれる場合も。先述の難易度の高さも相俟って、該当ステージの攻略にはキッズ向けゲームにあるまじき緊張感が漂う。
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一方、ミッションでは味方キャラクターのBPは本来のもののままだが、敵のBPはステージによって異なる。こちらは「やたらレベルが高い敵のBPが低く、やたらレベルが低い敵のBPが高い」「敵のBPはすべてゼロだが、BPに依らない特殊な勝利条件が設定されている」といったようにステージごとに異なるゲーム性を引き出すための要素として用いられており、ストーリーのBP調整のような理不尽さは感じにくい。
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キャラクター性能の格差
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基本的にキャラクターのステータス(レベルアップによって強化できる6要素)はBPの高低によって初期値が異なり、BPが高いキャラが強くなるように調整されている。しかし、実は本作では目に見えるステータス以上にキャラクターの攻撃モーションや特殊技の性能が重要であり、その点における強弱は必ずしもBPの高低には依存しない。そのため、「高BPなのに強さを感じづらい」「低BPの割に強い」キャラクターが混在している。
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例を挙げると、BP5であり強キャラの部類に入るはずのゴールダーは「初弾の出が遅いわりに当たり判定が貧弱な通常攻撃」「まさかの設置型でトリッキーな特殊攻撃」と使い勝手が悪く、使いこなすにはテクニックを要する。一方、BP3のオーガは「必殺技範囲が放射状に広がっており当てやすい」「出が早くリーチもそれなりの通常攻撃」などクセがなく使いやすい性能となっており、ステータス上の不利も立ち回り次第で覆すことができる。
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この傾向はNPCキャラクターも同様であり、たとえBPが低くともモーション次第で強く感じられるキャラクターは多い。
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ややボリューム不足、飽きの来やすいゲーム設計
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ストーリー全63ステージ、ミッション100ステージ+αと一見ハイボリュームのように思える本作だが、その実ミッションはいくつかの勝敗条件のパターンを敵のチーム編成とレベルのみ変更したものが延々と続くだけであり、100ステージという多さもあって途中で飽きてしまいがち。一方、ストーリーは簡素とはいえ物語要素を備えているため飽きは来づらいが、先述の通りレベリング必須のバランスであるため続きが気になるところでレベリングを要求されストレスを感じやすい。結局のところ、乏しいボリュームをミッションの水増しとレベリングの手間で誤魔化しているだけとも言える。
賛否両論点
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ゲームシステムと難易度
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本作の難易度の高さについては先述の通りだが、キャラクター性能の格差やレベルの不平等といった逆境も、テクニックによっては十分覆せる範疇のものである。先述の理不尽な勝敗条件に目をつぶりさえすれば、難易度の高さも「十分な歯応え」として評価できる。
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与えられるダメージの関係上、どうしても通常・特殊攻撃を重視してしまいがちだが、実は「どのキャラクターでも使用でき、なおかつ使用タイミングを選ばない」サイコロットの存在はかなり大きい。溜めずに放った場合でも相手を怯ませる程度のことはでき、溜めればキャラクターを貫通して複数の敵への攻撃が可能となる上、吹き飛ばしや確定ダウンの付加効果もある。ステータス育成次第で威力や溜め速度も上がるため、成長させればさせるほどより高いダメージが期待できる。
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また、「複数の相手に自分を追跡させ、一直線上に並んだ瞬間に溜めたサイコロットを発射して両者にダメージを与えつつ吹き飛ばす」「敵が通常攻撃を全段振り終わるタイミングを見極めて攻撃する」「フィールドを絶えず動き回り、なるべく1vs1の状況を保てるように立ち回る」など、戦い方に工夫を凝らすだけでも戦局は大きく変わる。加えて、キャラクターごとの通常攻撃や特殊攻撃の当て方・かわし方を研究していけば、高レベルのキャラクターを相手にノーダメージでクリアすることも夢ではない。
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もっとも、先述の防御手段の乏しさも相俟って、こうした戦法は最終的に「逃げ回って攻撃のタイミングをうかがう」ものになりがちであるため、原作のような「互いの誇りを懸けたガチンコ勝負」の再現には程遠いのだが……
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ストーリー改変
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IF要素を含むストーリーはもちろんのこと、アニメのストーリーに比較的忠実な「グロリア王国編」ですら少なくない改変がある。特に「ゴールダーが死亡しない」展開は原作に比べ救いがあるものともとれるが、親友同士が争い合う宿命の悲劇性を損なっているという見方もできる。
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キャラクターボイス
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本作のキャラクターはすべてボイス付きであり、戦闘中に様々な台詞を発するが、ほとんどのキャラクターの声が代役である。キャラクターのイメージを損なうようなミスキャストは特にないが、原作のキャラクターボイスに愛着があるファンからすれば残念な要素である。
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タイトルコールや戦闘開始・終了のシステムボイスとしても使用されるライオーガの声はアニメの通り楠大典氏だが、それ以外のキャストはほとんどアニメに準拠していない。エンドロールによると、参加している声優は楠氏のほか矢部雅史氏、坂巻学氏、小田柿悠太氏、大室佳奈氏、武田幸史氏、村田太志氏のわずか7名。小田柿氏以外はいずれもアニメに声優として参加しているため、各々のアニメにおける担当キャラクターについてはおそらくオリジナルキャストであると思われるが、逆を返せばそれらのキャラクター以外はすべて代役ということである。
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グラフィック
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グラフィックの質はそれなりで、目も当てられないような酷さではない。また、挙動にも特に不自然な点はない。ただし、何の都合か口は開くのに目は閉じないため、撃破されて目をひん剥いたまま地に伏せるビーストたちの姿は少々不気味。
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キャラクターの多さ故か、モーションの使い回しが散見される。特に勝利・敗北時モーションは種類が少なく、別陣営のビーストを並べているのに勝利・敗北時モーションは皆同じという状況が起こり得る。
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各々固有の特殊攻撃についても、NPCのものは複数キャラ間で被っているものがある。また、必殺技についても全員同じモーションで異なる形のエネルギー弾を(キャラによっては)異なる方向に打ち出すものであるため、イマイチ変わり映えしない。
総評
多数のキャラクターが軍団を組み、入り乱れて戦い合うアニメの雰囲気はよく再現できている。原作と異なるIFストーリーなど、ファンにはたまらない要素も押さえており、PCの少なさを除けばキャラゲーとしては評価できる一作。
一方、高めの難易度やストレスを感じやすいゲーム設計、ボリュームの水増しにより、アクションゲームとしてはいささか取っ付き難さが感じられる出来映えとなっている。テクニックの熟達によって次第に面白さを感じられるようになる、という点においてはスルメゲーと見ることもできなくはない……かもしれない。
余談
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本作では影の薄い空種族であるが、これは彼らが主に活躍する「ソアラ聖国編」のストーリーが原作アニメ全26話中の第20話~26話と後半であったことから、開発及び発売時期的にその内容がゲームに一切反映できなかったためと思われる。さらに、アニメのTV放送はソアラ聖国編に突入する前に終了しており、ソアラ聖国編を含む全話視聴のためには同作を配信している見放題配信サービスに加入する必要がある。
最終更新:2021年05月24日 20:49