Duke Nukem Forever
【でゅーく にゅーけむ ふぉーえばー】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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プレイステーション3 Xbox 360 Windows
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発売元
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2K Games
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開発元
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Gearbox Software Triptych Games Piranha Games(マルチプレイ及びPS3/360移植)
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発売日
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(海外版)2011年6月10日 (日本語版)2012年3月29日
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定価
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1,980 円(Steam)
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レーティング
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CERO:Z(18才以上のみ対象)
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配信
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Steamにてオンライン販売中
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判定
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クソゲー
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ポイント
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2012年クソゲーオブザイヤー据え置き機部門次点
延期年数14年の「Do Not Finish」 相次ぐ延期の末開発が停止 Gearboxが引き継ぐも、出た頃には色々時代遅れ
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クソゲーオブザイヤー関連作品一覧
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Duke Nukemシリーズ
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ストーリー
『Duke Nukem 3D』での死闘から12年後。
Duke(デューク)は世界的な英雄として名声を獲得し、自分が主人公のビデオゲームが開発されるまでの英雄となっていた。
自分のゲームをプレイしていたDukeだったが、テレビを切り替えるとニュース速報が放映される。その内容は、彼がかつて倒したはずのエイリアンが再び侵攻を開始したというものであった。
地球を守るため、再び英雄「Duke Nukem」が立ち上がる。
概要
強烈なゲーム内容から北米を中心にカルト的評価を得た3D realmsのFPS『Duke Nukem 3D』の続編として、1997年4月のE3で発表されたタイトル。当時の最新鋭タイトルである『QUAKE II』などをライバルに想定し、巨大列車の運行や家屋の倒壊などダイナミックな地形オブジェクト挙動を特長とする3DFPSとして開発が進められていた。
最終的に発表から14年と44日が経過した2011年6月10日に販売が開始されたのだが、その実態は…。
基本システム
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スポーツ系FPSのような見た目だが、同時所持可能な武器は2つまで。パイプ爆弾とレーザー爆弾のみ個別にカウントされ、一定数持ち運べる。
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HPはヘルスパックやメディキットを取得することでも回復が可能。「エゴ(=自動シールド)」というパラメータが存在し、攻撃を受けるとまずエゴから減っていく。エゴが無くなるとHPが減少していくが、一定時間攻撃を食らわない状態で待機することでエゴの回復が可能。
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特定の手段でボスを倒すことで、エゴの最大値を増加させることができる。増加することでよりDukeが敵の集中砲火にも耐えられるようになり、難易度が低下する仕組み。
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アイテムは強化のステロイド、ダメージ軽減のビール、ステルスのホロデュークが登場。これらを任意のタイミングで使用し、ゲームを進めていく。
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ゲーム展開は一本道だが、マップはかなり広い部類。自動車を用いたドライブなどもあり、移動距離はかなり長い。セーブはチェックポイントでのみ行われ、旧作のような任意セーブ・ロードは不可能。
評価点
やたら充実した本編以外のお楽しみ要素
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序盤はお楽しみ要素がかなり作りこまれており、「小便を済ませる」「冷水機で水を飲む」「目玉でサッカー」「自販機で買ったジュースを飲んでポイ捨て」「ピンボールやビリヤードに興じる」「ホワイトボードに絵を描く」「自社ビルに来たファンの子供のためにマウスでサインを描いて渡す」「ボスの金○潰し」などのプレイヤーが行動可能な小ネタが多い。「素手でネズミを掴み、電子レンジに放り込んでチン」などのなんで実装したのかよくわからない要素もあり、『3D』に存在した「干渉可能なオブジェクト増加によるマップ密度の濃さ」という良さは一部受け継がれている。
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前述の「エゴ」もこうした一部手段で上昇するシステムとなっており、小ネタにニヤリとしつつ主人公の強化という恩恵も得られるようになっている。
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しかしエイリアンとの戦闘が激化する中後半戦ではあまりそういった要素は見られなくなってくる。これは前作においても共通している。
よく喋る主人公Duke
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『3D』同様にJon st. John氏を起用しており、非常に良く喋る。声のトーンもキャラクター像と合致しており、雰囲気を盛り上げる名役者としてファンからは評価されている。
問題点
「ジョーク」を逸脱したジョーク
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『Duke Nukem 3D』の時点でストリップバーやポルノ映画館など卑猥な要素は多かった。1996年という時代もあり当時はそれは許されていたが、本作では時代が変わったにもかかわらずそれらのノリが更にエスカレート。2011年ともなるとこうしたゲームは問題視されるようになっており、下品な要素や女性蔑視な内容が批判・規制の対象となった。
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特に問題視されたのが「ベイブ(美女)」関連の要素。ベイブ自体は『Duke Nukem 3D』の頃から存在していた要素で、救うべきヒロインとして登場する反面エイリアンに寄生され殺してくれと懇願する隠し要素があるなど当時から扱いは酷かった。
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本作は1996年当時は許容されていたそのノリを悪い意味で継承、結果「女性たちの泣く声が木霊する洞窟に入り、エイリアンに強制的に妊娠させられた女性たちを皆殺しにする」「シリコン状の乳房のような塊がブドウのように通路に垂れ下がり、叩くと白い液体を出す」といった何かを履き違えた演出を通常マップに堂々と盛り込んだ。当然のごとくこれらは問題視され、嫌悪感を抱くとして人権団体のみならず多くのゲーマーやレビュアーから批判された。
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これ以外にもモラルの欠如したブラックジョークが多く見られる。そうでないジョークであっても延期続きの結果2000年代初頭のアメリカでしか通じないネタが多分に含まれることとなり、本作の古臭さを加速させてしまうこととなった。
時代遅れのグラフィック
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初期に製作された部分と後期に製作された部分が混在しているためグラフィックにはかなりの上下差があり、2011年の水準に達しているものもあれば後期PS2レベルの部分もあるなどやや安定していない。
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作中平均で見ても古臭いレベルであり、フルプライスの商業FPSとして同時期の『Call of Duty: Modern Warfare 3』などと比較され酷評された。
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ちなみに、ゲームエンジンも最初はQuakeIIエンジンだったのだが、「アウトドアの描写に強い」との理由からUnreal Engineに変更されている。
単調・劣悪なレベルデザイン
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狭い一本道通路に爆発武器を抱えた敵を配置した結果ダメージを食らう前提となったり、ワープする敵を序盤から登場させた結果初見殺しの箇所が増えたり、そもそも登場する敵が少なすぎて爽快感が得られない箇所が多かったりとFPSとしての出来に粗が見られる。
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パズル要素などで補ってはいるものの、前作の評価点であった大雑把かつ爽快感のある撃ち合いの要素は本作では削られてしまっている。また、プレイヤーの誘導に関しても不親切さが目立ち、正しい道がわからず迷子になることもしばしば。
蛇足感のある乗り物要素
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道中でモンスタートラックなどの乗り物が登場しこれに乗って進むことができるのだが、このせいで一部マップが無駄に広いと不評。Build engine作品にも乗り物は登場していたが、扱いは部分的なギミックとしてのものが多く移動手段としては用いられていなかった。
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乗り物に乗れるからといって『FARCRY』のようにルート選択の自由度や銃撃の際の戦略性が向上するわけでもなく、結局のところやることは変わらない。
ロードが長い
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無駄に広大なマップやパフォーマンス調整不足などが祟り、当時としては異例のロード時間となっていた。一部レビュアーもこれに不快感を示し、本作の問題点の一つとなってしまった。
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CS機版の方は「最低30秒、長いと50秒」と非常にストレスがたまるレベル。ただし、PC版はそこそこ速く、パッチでも一応改善はされている。
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また、ローディング画面には「困ったらWEBのFAQを見ろ」とメッセージが出てくるが、公式サイトを見てもそんなものは存在しない。
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実は一応旧3D realms時代の北米公式サイトには公式FAQページが存在していたのだが、上述の通りそもそもこの3D realmsバージョンは世に出ていないため、Gearbox版を遊んでいるプレイヤーにとっては何の意味もない。
このFAQが掲示されたのは1999年だが、当時からすでに「ゲームはいつリリースされますか?」というFAQが用意されていた。それに対する回答は「開発が終了次第発売する」だったのだが、そのうち何人のプレイヤーがあと12年も待たされると予想できたであろうか。
敵の種類やバランス
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エイリアン軍団との戦闘がゲームのメインなのだが、雑魚敵は数も種類も少ない上AIも練られておらず単調な行動しか取れない。『3D』の時点でそういう仕様ではあったのだが、2011年の平均的な敵AI水準を考えると粗末なレベル。
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ボス戦も上述のシステムのせいでわざわざフィニッシュムーブを決めなければいけなくなり、ただHPを削れば爆発四散してクリアだった爽快感のある『3D』と比較するとテンポが悪い。
総評
『1997年のPV内容のまま2000年初頭までに発売できれば高評価を得られた』というほかない作品。同時期の作品となったはずの『QUAKE II(1997)』『Half-Life(1998)』などと1997年のPVを比較しても遜色なく、延期せずに発売できていればここまでこき下ろされるどころか高い評価を得られていたであろう内容である。
後述のベーパーウェア賞皆勤などでゲーマーがネタにした結果「長期間延期が続いた作品」という情報だけが独り歩きし、Gearbox softwareによるライセンス獲得・開発・販売時は『あの話題作がついに販売されるのか』と北米のDuke Nukemシリーズ愛好家のみならず一般FPSプレイヤー間でも非常に注目度が高かった。
しかし蓋を開けてみれば、出てきたのはややチープさの否めないグラフィック、時代遅れで通じなさ過ぎるパロディ、下品かつ不快なジョーク、単調でつまらないストーリー、出来の悪い武器システムやレベルデザイン、安定しないパフォーマンスやプレイヤーを突き飛ばすような広大かつ不親切なマップなどシリーズ最新作としても、当時の一般的フルプライスFPSとしても「出来が悪い」と評価せざるを得ない内容であった。
現在では開発の長期化、及び復活後の急ピッチ過ぎる製作が作品を完全に出来損ないかつ時代遅れにした、他に類を見ない期間の開発失敗例としてFPSゲーマーの間に記憶されている。
日本語移植版
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Duke役に立木文彦氏を起用した家庭用バージョンが2011年8月に発売される予定だったのだが、PC版の発売後に突如2012年3月に延期。そして販売価格も7,140円から5,980円に変更されたものの、後述するがこの時既にPC版の価格は300円ほどになる大暴落を起こしていた。
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誤訳、頻発する処理落ち、長いロード時間、でかすぎる必要HDD容量、理不尽なオートセーブなどが批判の対象となった。
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極めつけは公式のサポート放棄。当時既にPC版に当てられていたパッチすら当てずに発売し、その後もDLCはおろか修正パッチすらも配信されなかった。このためPC版で修正されたロード時間短縮や武器所持数の増加といった改善は一切なし。
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ただでさえ過疎だったオンラインサーバーも海外サーバーとの隔離を発売日に発表、日本人同士でしか対戦できず、発売一ヶ月のスコアランキング上位者のうち1時間以上オンライン対戦をプレイしたのはたったの20人。30分オンライン対戦できればランキング上位に登れるほどの過疎地帯と化していた。
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これらの要素がクソゲー認定に足ると判断され、2011年度KOTY決定直後のKOTYに投下。見事(?)KOTY2012の次点を勝ち取った。KOTYの記事はこちら。
余談
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発売の経緯について
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前述の1997年の発表以降、ニンテンドウ64などではスピンオフ作品は発売されたものの肝心の『DNF』については1999年 → 2001年 → 2003 → 2009年と延期と開発中止・再開を繰り返し、次第にゲーマーの間で「永遠に発売されないゲーム」として扱われだす。
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ファンの間でも、略称の「DNF」を捩った「Do Not Finish」や「Duke Nukem Never」の愛称(?)で呼ばれ、発売されないゲームを表彰するベーパーウェア賞を皆勤受賞するといった扱いを受けてしまう。
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2009年5月6日には「Duke Nukem」シリーズの3D Realms社が業績悪化により大半の従業員を解雇。社内の全てのゲーム開発が停止してしまい、一旦「DNF」の開発は暗礁に乗り上げる。
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しかし、翌年の2010年9月には元3D Realmsで『Duke Nukem 3D』の開発メンバーでもあったランディ・ピッチフォード氏がCEOを務めるGearbox Softwareが過去作を含む全ての版権を獲得したことを発表。
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開発を密かに続けていた元3D Realmsの開発メンバーもTriptych Gamesを設立して、Gearboxに再度雇われる形で急ピッチで開発が進められ2011年にようやく発売にこぎつけたが、上記の内容もありファンやゲーマーからの批判が相次ぎ駄作扱いとなる。
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当時はフルプライスだったものの売り上げは予想の半分と伸びず、発売半年以内に9割引き、ゲームレビュー集積のmetascoreで100点中54点、1UPに至っては史上初となる100点満点中0点を叩き出し、GameTrailersからは「恥知らずの忌々しい後継者」と酷評され、米amazonでは低価格で叩き売られるなどの扱いを受け、シリーズの展開に終止符を打つ形となってしまった。
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本作に否定的なレビューを寄せた多くのレビュアーに対し、ゲームの宣伝を担当するPR会社The Redner GroupはTwitterで声明を発表、「ゲームを批判したレビュアーは将来の新作レビューへのアクセスを取り消す」という脅迫じみた内容が物儀を醸し、当該ツイートは削除された後に謝罪が行われた。
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あまりの出来の酷さに怒ったファンが発表当初の本作をDuke Nukem 3Dで再現するMODを手掛けるに至った。
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2001年にE3トレイラーで公開されたバージョンのビルド版が2022年5月9日に何者かの手によりリークされ、SNS上では当時の開発元のスタッフ同士で責任のなすりつけ合いに発展した。
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が、「真のDNF」を求めるファン層はこれを歓迎。改造を施して独自の新作を再構築するプロジェクト「Duke Nukem Forever: Restoration Project」が発足するなど、コミュニティが一時的に活性化した。
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3D Realmsは本作の開発停止直後に最小の人員だけ残し、会社組織を再編成している。
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再編成後は小規模な開発プロジェクトへの協力とパブリッシングのみに業務転換した。同時に3D Realmsが保有していた旧作の権利もいくつか売却している。
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その後、2014年にデンマークの持株会社であるSDN Investに買収され、同時に拠点をデンマークに移している。
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2021年にはスウェーデンのゲーム持株会社であるEmbracer Groupの買収を受け、グループ企業であるSaber Interactiveの傘下に加わっている。
最終更新:2025年04月16日 16:26