まどひ白きの神隠し
【まどいしろきのかみかくし】
ジャンル
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ADV
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対応機種
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Windows 8.1/10
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メディア
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DVD-ROM 1枚
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発売・開発元
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Lump of Sugar
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発売日
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2021年5月28日
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定価
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9,800円(税別)
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ディスクレス起動
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可能
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レーティング
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アダルトゲーム
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判定
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なし
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ポイント
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日本神話を取り入れたシナリオ 個別ルートに難あり
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概要
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Lump of Sugarの21作目。公式略称は「まどきの」
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このブレンドではお馴染みの「萌木原ふみたけ」がメイン原画を務めている。
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パッケージと同日にダウンロード版も販売されている。
ストーリー
ある冬の日――
自宅の姿見、その鏡面の揺らぎが全ての始まりだった。
揺らぐ鏡から飛び出してきたのは、キツネの耳を持つ少女・ろか。
事情を訊くも要領を得ないままに、元来た鏡に向かって走り出す少女。
主人公・巧斗と、妹・椎凪は、彼女を追いかけ鏡へ身を投じた結果――“向こう側”へと迷い込んでしまう。
そこは人間の世界とよく似ているが、異なる世界。
神仏妖怪魑魅魍魎、ヒトならぬものたち――カミガミの住まう世界。
「ようこそ、神隠しの向こう側へ――」
どこか浮世離れした、ウサミミの少女・みこと。
茶屋を営む付喪神・千代。ろかと、その母である九尾の狐。一緒に神隠しされた椎凪。
彼女たちと共に、巧斗は元の世界に戻る方法を探していくが……
その交わりの中で、彼はカミガミの本質と兄妹の秘密を知ることになる。
ヒトとカミガミ。2つの世界。4人の少女たち。
雪降るカミの地で、境界に立つ彼が想うのは――
「あなたの居場所はどこですか――?」
(公式サイトから抜粋)
特徴
ゲームシステム
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テキストウィンドウに文章が表示されるノベルゲーム。
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ヒロインは4人。序盤の4択で個別ルートに突入する。これ以外にプレイヤーが関与する要素はない。
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ゲームエンジンはEthornell
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「Lump of Sugar」の過去作と同じである。
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珍しい設定として、1980×1080のような一般的なウィンドウサイズ以外に1600×1200などに設定可能。
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後者の場合は、一枚絵の下にテキストウィンドウ設けられるため、CGとテキストが重ならない。
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1ルートを終えると、おまけの項目が解禁。
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CG・シーン回想・BGM鑑賞・立ち絵鑑賞が可能。
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立ち絵鑑賞には本編で使われていない没絵も収録されている。
用語・ストーリーの簡易解説
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「御原(みはら)」…主人公ら人間の生活する世界。
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「両耶島(ふたやしま)」…鏡で繋がったもう一つの世界。カミガミ(神話・妖怪等の総称)が生活している。主人公の妹「椎凪」と主人公が迷い込み、以降はこちらの世界から御原へ戻る方法を模索することとなる。
評価点
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特色のあるキャラクター
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ブランド及び原画家でお馴染みの獣耳枠は二人。違和感のない獣耳と尻尾が可愛らしくこれまで通り好評。
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見た目は人間の千代は、付喪神ゆえに人に使われることに喜びを感じるという珍しいキャラ付けで、お姉さんキャラのようでいて妙に抜けた点が多く個性的。
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神隠しにあった椎凪は主人公と同じ立場ゆえに、唯一価値観や目的が共通している。実妹のため初めから距離が近く、お互いに理解者として言葉少なにも通じ合う仲の良さが感じられる。
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サブキャラクターのヤンキー天狗「鞍馬 憂架」・何故か犬のスサノオはややきつい言い回しがあるものの、見た目もあって腹立たしい感じはせず、日常パートの面白さに貢献している。
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主人公は没個性気味ではあるものの、思考や行動はごく普通であり、ヒロインへのキャラ萌えを阻害していない。
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温かみのある日常パート
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後述するように日常の比率が高く、主人公と椎凪を優しく受け入れてくれる両耶島のカミガミの優しさが胸に響きやすい。
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幼さから素直な感情表現を見せるろかとそれを可愛がる周囲や、マイペースでカミガミすらも手玉に取ってしまう椎凪などほほえましいイベントが多め。
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終盤以外の起伏が少ない分、ヒロインと共に仲良く過ごす時間が長く、少しずつ距離が縮まる恋愛描写に説得力を持たせている。
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時折挟まれる可愛らしいデフォルメ絵によるイベントも、日常の穏やかさの演出に一役買っている。
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濃いめのエッチシーン
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ヒロイン一人につき4~5回と並の回数ではあるが、初体験から二回戦・三回戦に突入するなど尺が長めに取られている。二回目以降はヒロイン側が攻めに回ったり、奉仕プレイになるなどして、初体験との差別化が図られている。
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対面すると緊張するという理由から、自室の壁に穴を空けてのラッキーホールといった本作でしか見られないような特殊プレイまで存在する。
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ヒロインを映すために、主人公は陰茎以外が半透明になるなどの処置がされやすいアダルトゲームではあるが、この構図はヒロインだけを描いても不自然さがないというささやかな利点もある。
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ウサギらしくエッチに積極的なみこと・体の小ささや未成熟さが表現されたろかといった具合にヒロインごとの書き分けも十分にできている。
賛否両論点
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緊張感の薄いシナリオ
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序盤からして、御原への帰還方法はすぐに見つかり、実行までに両耶島での生活を楽しむ日常パートの配分が長い。
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初めに思いついた帰還方法が実現できないというアクシデントはあるものの、ギャグのような流れで別の帰還手段はすぐに見つかる。
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「主人公の産みの親」「二つの世界が繋がった理由」といった疑問が提示され、それをヒロインたちと追究するのが主な目的となる。
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その気になればいつでも帰れる状態でシナリオが進行するため、差し迫った感じはまったくしない。両耶島の生活を楽しみながら情報収集を進めるため、全体的にのんびりとしている。
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個別ルート終盤ではさすがになんらかの山場が用意されているが、中盤までは日常の比率が高い。
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元々、キャラ萌えで評価されてきたブランドではあるが、体験版は「初めに思いついた帰還方法が実現できない」という場面で終わるために、シナリオ方面に期待すると肩透かしを食らう。
問題点
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両耶島の描写不足
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メインヒロインは四人・サブキャラは二人と一匹しか立ち絵が存在しない。
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モブはボイスのみで登場するが、茶屋を訪れるおばさん等のごく普通の人物ばかりである。
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金銭をやり取りし、スマートフォンが普通に使えるなど、人間の住む世界との違いがほとんど感じられない。
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総じて人間が普通に生活する御原との違いに乏しい。この描写不足が個別ルートにおいて悪く作用している。
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個別ルートに粗が多い
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ルートロックはないものの、あるヒロインのみが事実上のトゥルーエンドを担っており、他ルートではいくつかの謎が放置される。
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具体的には序盤から提示されていた「主人公の産みの親探し」の謎は不明なまま終わる。
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一部はヒロインサイドが抱える悩みも問題の先延ばしとしており、締りの悪さを感じる。
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みことルートでは自身のルートでのみ発生する現象があり、他ルートとの整合性が取れていない。複数ライターの悪い点が出ている。
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キャラクターの魅力を損なう千代ルートの結末は、特に非難されている。
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千代ルートネタバレ
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付喪神として周囲に頼られてきていた千代は主人公と親交を深め、周囲にも付き合いが知られる。するとモブ達から「私たちのプレイベートを千代が彼氏に漏らすと困る。別れてほしい」と話を持ち掛けられる。
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可能性の話ならこれまでにも情報漏洩する余地は存在しており、彼氏には話すかもしれないと危惧する理由が不明。しかし、千代が迂闊にボロボロと話してはいけない秘密を漏らすキャラだと言うのならともかく、彼女が情報を漏らしたことはないため話を持ち掛けられた段階では落ち度はない。
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これまでにまったく神らしき描写がないモブ達のため、そもそもあなたは何の神なのか・漏らされて困るプライベートとは何かなどの情報がすっぽり抜け落ちており、モブの主張にまるで説得力がない。
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まとめると今更すぎる話を突如持ち出して、因縁をつけてきているようにしか見えない。
せめてこのイベントの前に千代が主人公との生活に浮かれてうっかり秘密を漏らしてしまう、といった描写を一つでも挟んで欲しかったところ。
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相談の末に、付喪神としての能力を失いカミガミに納得してもらう結末となる。当人らは納得しているものの、因縁を付けられてアイデンティティを失う後味の悪さが残る。
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総評
日本神話を題材としているものの、メインキャラ以外の神要素が薄くシナリオは薄味。
獣耳や萌えエロといったブランドの特色はしっかりと継承されているため、そちらに魅力を感じられるなら購入を検討できるだろう。
余談
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ブランドの過去作『花色ヘプタグラム』のラビエルがエコバッグとして登場している。
最終更新:2021年12月02日 15:46