The Vanishing of Ethan Carter

【ざ ゔぁにしんぐ おぶ いーさん かーたー】

ジャンル FPV-AADV ASINが有効ではありません。
対応機種 Windows(64bit版のみ)
開発・発売元 The Astronauts
発売日 2014年9月26日
定価 1,980 円(Steam)
2,080 円(Epic Games Store)
$ 19.99(GOG)
プレイ人数 1人
周辺機器 フルコントローラーサポート
備考 Unreal Engine 3使用
判定 なし
ポイント 怪奇も怖いが人も怖い

概要

  • 一人称視点のオープンワールド的なAADV。
    • 2016年の英国アカデミー賞ゲーム部門にてBest Game Innovation賞を受賞している。
  • ゲーム冒頭で「本作はプレイヤーの手引きをしません(意訳)」と表示される。このため、本稿においても説明は極力避けている。
    • とはいえ「LTボタンで拡大表示できる」といった説明はある。
  • 後にUnreal Engine 4を用いたRedux版が発売されており、2015年7月にPS4版、2015年9月にWindows版、2018年1月にXbox One版、2019年8月にSwitch版が発売されている。
  • 2016年4月1日にVR対応のDLCが発売されている。

ストーリー

霊視能力を持つ超常現象調査専門家Paul Prosperoは、ウィスコンシン州の片田舎のRed Creek Valleyに住む12歳の少年Ethan Carterから手紙を受け取り、Red Creek Valleyに向かった。
しかし、その到着は既に遅く、様々な事件が起こった後であった。

  • 原題を直訳すれば「Ethan Carterの消失」となり、依頼者のEthan Carterが行方不明となっていることはタイトルからネタバレしている。
    • 本作はホラー物であり、ゾンビに襲われて死ぬこともある。
    • 殺害方法などの多少の謎解きはあるものの、それらはトリックと言うほどでもない。
      • 霊視能力のある私立探偵でFPVのAADVと聞いて『Post Mortem』を思い浮かべるかもしれないが、本作は『Post Mortem』ほどしっかりとした推理モノではない。
+ 重度のネタバレ
  • 本作の脚本を書いたAdrian Chmielarzは、本作はAmbrose Bierceの「アウル・クリーク鉄橋での出来事(An Occurrence at Owl Creek Bridge)」から着想を得たと語っている。
+ 別のアプローチからの軽度のネタバレ
  • Prosperoという名前はシェイクスピアの戯曲「The Tempest」の主人公の名前から採られているらしい。
+ 「The Tempest」のProsperoのセリフ: 重度のネタバレ
  • 「The Tempest」のProsperoは自身が劇中の登場人物であることを自覚しており、メタ発言を行う。
原文
"Yea, all which it inherit, shall dissolve, and, like this insubstantial pageant faded, leave not a rack behind. We are such stuff as dreams are made on; and our little life Is rounded with a sleep."
対訳
この大地にあるものはすべて、消え去るのだ。そして、今の実体のない見世物が消えたように、あとには雲ひとつ残らない。私たちは、夢を織り成す糸のようなものだ。そのささやかな人生は、眠りによって締めくくられる。

システム

  • 主人公Paul Prosperoの能力
    • 1) 重要なアイテムの位置がわかる
      • その場所にあったであろうアイテムが現在どこに移動しているのかが分かる。具体的には、もともとアイテムがあった場所を調べることで、そのアイテムの名前が画面上に複数飛び交う。そのアイテムが現在ある方角に視点を移動させると、アイテムの名前が1つに収束し、そのアイテムが現在ある場所のビジョンが得られる。
    • 2) 死体から、死者の死亡直前の記憶が読み取れる
      • ただし、凶器などのキーアイテムを死亡前の位置に戻す必要がある。
        また、死者の記憶は6個程度のシーンに分割されており、プレイヤーがそれらを正しいに順序に並べる必要がある。
    • 3) サイコメトリー
      • アイテムから残留思念を読み取る。自動で発動する場面が多いが、ものによっては数個集めないと発動しないものもある。

評価点

  • 風景が美しい
    • マップは無駄に広いが、隅々まで丁寧に雑草が植えられており、非常にリアルな植生を実現している。
      • こんな風光明媚な場所で惨劇が繰り広げられているというギャップが良い。
    • 開発元のThe Astronautsは、長年Epic Gamesの下請けを行っていたゲーム開発会社であるPeople Can FlyがEpic Gamesに買収された時に独立した人々で構成されており、Unreal Engineの扱いに長けている。
      • ただし、グラフィック設定によっては恐ろしくGPU使用率が上がり、貧弱なGPUでのゲームの異常終了も報告されている。
  • ストーリーも凝っている
    • 前述のストーリー項のネタバレ部分に記載したとおり、何度も映画化された米国サスペンス文学の最高峰とも言われる古典作品の骨格をなぞっており、そのことを知らずにプレイすれば楽しめる作品である。
      • そもそもThe Astronautsの人々は「自分たちの創ったストーリーのゲームを製作したかった」ことからEpic Gamesの下請けのPeople Can Flyから独立したと語っており、本作の成功に並々ならぬ自信があったと考えられる。
    • オープンワールド的なデザインにもかかわらず断片から徐々に全体層を描き出すようにイベントが配置されており、心憎い。
      • オープンワールドでありながら結局1本道のストーリーに収束する点を批判する声もある。
    • サブイベントも面白い
      • Ethan Carterは想像力の豊かな少年であり、彼の書き残した創作物はなかなかおもしろく、それらをイベントで体験できるところが良い。

問題点

  • イベントの密度が低い
    • マップの広さに反してイベント数は少なく、イベントが起こる場所を探して歩き回っている時間がほとんどとなる。
      • 駅を見つけたけれども何も仕掛けられていないなど、期待しすぎると肩透かしを食らうことになる。
    • にもかかわらず、システム的にマッピング機能は具備されておらず、プレイヤーが自分で覚えるかマッピングする必要がある。
      • なお、本作の予約特典には地形だけのマップと、ヒント付きのマップが付属していた。
      • とあるパズルを解くために、とある建物の内部構造を自力でマッピングする必要が出てくるかもしれない。
  • オートセーブのみである
    • 1つのイベントを解決するごとにオートセーブされる
    • オートセーブの仕様の問題
      • 本作のオートセーブは1つのイベントを解決したかどうかしかフラグ管理しておらず、ロードしてゲームを再開すると、移動させたはずの未解決のイベントで使用するアイテムが元の場所に戻っている。
        本作はGPUに高負荷が掛かる場面でカクつく事が多く、このため3D酔いしやすい。それによりたびたびプレイを中断する場面もあるだろうが、これでは手戻りが大きい。
      • Redux版ではこのオートセーブの仕様は多少改善されているらしい。

総評

風景の美しさには溜め息が出るほどである。それだけでも本作をプレイする価値はあるだろう。
「本作はプレイヤーの手引きをしません(意訳)」という投げっぱなしなゲームデザインは好き嫌いが分かれるポイントとなっている。
オープンワールドな作りもプレイヤーを突き放している感がある。しかし、イベントの配置は断片から徐々に全体像が見えてくるように考慮されている。
最終的に語られない部分もあり、その点もやはりプレイヤーを突き放している感がある。

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最終更新:2022年01月08日 17:18