Ricotte ~アルペンブルの歌姫~
【りこって あるぺんぶるのうたひめ】
ジャンル
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歌姫少女アドベンチャー
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対応機種
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Windows 98~XP(パッケージ版) Windows XP/7/8.1/10(DL版)
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メディア
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CD-ROM
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発売・開発元
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RUNE(ルーン)
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発売日
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2003年9月26日
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レーティング
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アダルトゲーム
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配信
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FANZA:2008年9月19日/3036円 DLsite:2008年7月11日/3036円
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判定
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良作
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ポイント
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主人公の性格で180度変わる2つのストーリー 丁寧な作りの良質なシナリオ メインキャラもサブキャラも魅力的
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概要
可愛らしい絵柄のロリ絵師:野々原幹氏を売りにするブランド“ルーン”が送り出す純愛ADV。
独特の世界観、魅力的なキャラクター達、
そして何より完成度の高いストーリーで今なお根強いファンを持つ隠れた名作。
あらすじ
かつて造船で栄えた町、クワルク。今では人も少なくなり、
稼動している工場も数えるほどになってしまっている。
そんな寂れた町の一角にあるパブでピアニストとして働く主人公はひょんな事から
“リコッテ”と名乗る少女と一緒に暮らすことになる。
無邪気でわがまま、そのうえ世間知らずのリコッテに散々悩まされる主人公だったが、
リコッテがとんでもなく歌が上手いことに気がつく。
パブをステージにして二人の演奏は好評を得ていく。
そして、リコッテの告白——。
「歌姫って知ってる?私はね、そう呼ばれてたの」
(公式サイトより引用)
特徴
攻略対象ヒロインが1人だけ
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タイトルにもなっているリコッテのみ。グッドEDも2つだけ。
主人公の性格変化
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冒頭の回想シーン中の選択肢で、主人公バノンの性格が2通りに分岐。
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バノンの性格により、Largo(ラルゴ)編/Allegro(アレグロ)編という、全く異なる2つのストーリーが展開される。
キャラクター
両シナリオで登場
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バノン・エメンタール
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主人公。クワルクの下町のパブで、ウェイター兼ピアニストとして細々と生計を立てている。
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ピアノを教えてくれた父を数年前に亡くしており、現在は安アパートで一人暮らし。
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基本は優しく誠実な好青年。
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ただし同僚の3人娘の影響もあり、貞操観念にはやや問題アリ。
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(Largo)かつて父と交わした約束や夢を忘れかけ、無気力に何となく日々を過ごしている。
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(Allegro)大都会でピアニストとして名を上げる野望を抱く。やや自信過剰に見える程の自信家。ピアノの技量も性欲もLargoより上。
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リコッテ
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偶然バノンと知り合った金髪ロリ。その日の食事にも困る状態で行くあても無かった為、バノンの家に転がり込む。
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さらに「バノンの妹」と偽り、バノンと同じパブでウェイトレスとして働き始める。
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実は大都会「アルペンブル」で活動していたトップ歌手。その為誰しもを虜にする歌声を持ち、音楽に対する感性も非常に鋭い。
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本当は音楽が大好きなのだが、何故か「歌うのが怖い」などと発言することがある。
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誰にでも分け隔てなく優しく、元気で一生懸命な女の子。他人が傷つくことを非常に嫌う。
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反面、何でも自分のせいにしてしまい、悩みを一人で抱え込んでしまうことも。
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家事全般が苦手で、特に料理の腕は壊滅的。また一般常識に乏しく、やや世間知らず。
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かなりのヤキモチ焼き。時に暴走してとんでもない実力行使に出ることも…。
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甘い物大好きで、特にドーナツに目がない。毎日3食ドーナツでも構わないらしい。
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作中で度々「子ども」「こんなちっちゃい子」等と称される上、Allegro編ではお赤飯前である事まで判明する。 ※このゲームの登場人物は全員18歳以上です。
多分。
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フィオーレ
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「パブ・シャンベルタン」で働く、バノンの同僚の3人娘その1。
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3人娘の中で一番しっかりしており従業員のリーダー格。料理も得意で、厨房仕事を任されている。
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一方、ちょっと抜けた発言があったり、好きな人への好意を隠しきれなかったりと、可愛らしい一面も。
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実は未亡人で、未だに夫を忘れられずにいる。
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フェタ
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3人娘その2。フランクな性格で、相手との距離を詰めるのが上手い。3人の中で唯一の彼氏持ち。
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ガサツな言動が多く、口より先に手や足が出るタイプ。
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一方で面倒見も非常に良く、リコッテを妹のように可愛がっている。
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クーロミエ
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3人娘その3。マイペースな性格で、面白そうな話にはすぐ食い付いてくるが、真面目な話の時は露骨に興味なさげな態度を取る。
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かなりのKY。話の流れを無視して下ネタ発言を連発するなど。
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実は3人娘全員、バノンと遊び半分で肉体関係を持っているが、中でも彼女は一番の色ボケ娘。
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かと思えば、突然本質を突いた鋭い発言が飛び出すこともある。掴み所の無い子。
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マダム
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パブ・シャンベルタンのオーナー。常に落ち着いていて物事の本質を見抜いており、かなりの威厳と貫禄を持つ。見た目は若いが年齢不詳。
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3人娘らの暴走で収拾がつかなくなりそうな事態を、ピシャリと一喝して場を収めるのは大体この人。
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シャウルス・ポン・レヴェック
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同じくパブの常連で、貴族のお坊っちゃま。何故かバノンを気に入り、一方的に親友呼ばわりしている。
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リコッテが働くようになってからは彼女にぞっこんになり、度々デートに誘うが成就した例は無い。
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クレシェンツァ・バラカ
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通称クレス。アルペンブルの音楽会社「ロックフォール社」にてリコッテのマネージャーを務める女性。
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一見すると冷淡な仕事人間だが、心中ではリコッテを誰よりも気にかけている。その為か、リコッテからも絶大な信頼を寄せられている。
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ロンバルド
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ロックフォール社でプロデュースを担当する大柄な男性。
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感情論を嫌い、契約や会社の利益を何よりも優先する現実主義者。
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ストラッキーノ
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ロックフォール社でスカウトを担当する男性。
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かなり口が上手いらしく、お偉いさんの説得などには欠かせない存在。
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ヴァランセ・モンドール
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ロックフォール社トップの実力を誇るピアニスト。しかし遅刻癖があるなど、人格的には問題もある。
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ロックフォール
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ロックフォール社の社長。未だ年長者のものである音楽の世界に異を唱え、「若者でも楽しめる、若者だからこそ作り出せる音楽」を生み出す為、会社を設立した。
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頑固な老人に見えて意外と気さくな性格で、バノンの才能や音楽への情熱を知り、笑顔で語り合う場面も。
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レスター
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リコッテの行方を捜索する私立探偵。やたら話が長く、なかなか本題に入らない。
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Largo編のみ登場
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エポワス
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クワルクにて画廊を営む初老の男性。非売品のオルゴールをリコッテが気に入ったことがきっかけで、親交が深まっていく。
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Allegro編のみ登場(Largoでも一部顔見せ有り)
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マスター
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アルペンブルでパブを営む男性。マダムの親戚。どことなくおネエ系の雰囲気を漂わせる。
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親切で懐が深く、バノンやリコッテのよき理解者となるが、フェタとはやや相性が悪い。
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トゥーシー
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アルペンブルで卵を売って暮らす盲目の女性。ハンデを全く感じさせない明るい性格で、意外とよく冗談も言う。
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「ラミ」という黒猫がパートナーで、仕事のサポートが出来るほど賢い。
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ルイ・タレッジオ
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かつてリコッテのパートナーを務めていたロックフォール社お抱えピアニスト。
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リコッテに対しては、仕事のパートナーを越えた感情を抱いている。
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フォンティナ・ボニファッツ
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リコッテと同じ「歌姫」として人気を博す女性。実力はトップクラス。リコッテとは友人であり良きライバルでもある。
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グラーナ
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フォンティナのマネージャーを務める、ややおっとりした印象の女性。再三のフォンティナからの無茶振りにも頑張って応えようとする等、彼女を大切に思う心は本物。
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評価点
よく練られた王道のシナリオ
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「主人公とヒロインが出会い、互いに影響を受けて大きく運命が変わっていく」というよくあるシナリオだが、起承転結の流れが非常に丁寧に描写されていて没入感が高い。
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2人が紆余曲折を経て信頼を深めていく過程、2人の音楽に対する姿勢が変わっていく過程が、日常描写や多彩なエピソードの中で緻密に描かれており感情移入できる。
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最初は決して相性が良いとは言えなかった2人が「音楽」という共通点によって通じ合い、1人の人間としても惹かれ合っていく流れは見応えがある。
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そしてLargo/Allegro編どちらも、終盤にはドラマチックな感動的展開が用意されている。
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特にLargo終盤は、それまでとうってかわって重苦しい展開になるが「仲間の力を借り、絶望的状況から大逆転」「愛する人のための戦い」といった王道的カタルシスをこれでもかと感じることが出来、評価がかなり高い。それまでの人間関係描写の積み重ねと合わさり号泣必至。
魅力溢れるキャラクター達
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攻略ヒロインがリコッテしかいない分、彼女の魅力は余すところなく描写される。
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子ども扱いされて膨れっつらになる所、ヤキモチ焼きまくって露骨に不機嫌になる所、昔を思い出して思い悩む所、バノンと結ばれた後の恋する乙女な所…等身大の少女として様々な顔を見せてくれる。
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くるくる変わる表情が非常に愛らしく、ロリ趣味のないプレイヤーでも「リコッテは気に入った」という人は多い。
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中の人の好演もリコッテの魅力を引き立てる。今にも泣きそうな声の演技、怒りで声が震えている演技など、非常に熱の入った名演。
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サブキャラも粒揃いで、皆キャラが立っていて存在感がある。
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ここぞという所で厳しく叱責し、若者達の背中を押すマダムは年長者らしい活躍を見せる。
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リコッテに片思いするシャウルスは単なる噛ませかと思いきや、終盤では意外にカッコいい所を見せてくれる。
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盲目のトゥーシーは、大人しそうな外見と裏腹に意外なノリの良さを見せ、ギャップ萌え効果か出番が少な目にもかかわらずかなりの人気を誇る。
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Largo編で印象の良くなかったキャラが、Allegro編では全く別の側面を見せるなど、2ルート制を活かした見せ方も秀逸。
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悪役ポジションに位置するキャラもいるが、彼らも皆何らかの事情を抱えてその行動を取っている為憎みきれない。非常に人間味がある。
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悪役も含め、キャラクター間の人間関係が刻々と変化していく様を楽しむのも、本作の醍醐味の一つ。
テンポ良く軽快に進むテキスト
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無駄な引き伸ばしとは無縁の過不足ない文章で、非常に読み易い。
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各キャラの個性を活かした会話のキャッチボールが面白く、話の続きが気になることも相まって、スイスイ読み進めていける。
独特の世界観
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明言はされないが、19~20世紀初頭のヨーロッパのような街並みが風情豊かに描かれている。このような世界観のADVは珍しい。
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クワルクとアルペンブルで街の雰囲気がガラッと変わるのも新鮮味がある。
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よく「世界名作劇場のような世界観」と評される。
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「温かい人達に囲まれた幸せな日常」と「シビアで厳しい現実」を同時に描く作風は、まさに世界名作劇場。
クオリティの高い劇中歌
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音楽をテーマにした作品だけあり、4曲ある歌はどれも力を入れて作られている。
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明るくポップな3拍子の「幸せのMelody」、ストーリーにも大きく関わる「ありがとうの歌」は特に人気が高い。
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佐藤ひろ美の清涼感のある歌声も、世界観に非常にマッチしている。
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リコッテのキャラクター性を意識し、従来の彼女とは異なる歌い方をするという気合いの入りよう。
問題点
単独ヒロインの弊害
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ヒロイン1人を集中して描写できる一方、最後までリコッテを好きになれなかった人には逃げ道のないゲームとなってしまう。
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比較的万人受けするキャラ付けであり、リコッテに好感を抱けるような工夫は随所にされている。それでもやはり、わがままな所やあまりにも子どもっぽい所が鼻についたという人もいる。
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EDが2つなこともあり、若干ボリュームは抑えめ。ゆっくり読んでもフルコンプまで30時間程度。
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話の密度は濃い為、体感ではそこまで「短い」とは感じないのが救い。
Largo/Allegroで大きく変わる作風
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じっくり関係を育んでいくLargo編に慣れていると、Allegro編の性急な展開、やや軽薄にも見えるバノンの性格、ギャグ/お色気描写の多さ等に違和感を覚えるかもしれない。
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逆にAllegroをやった後にLargoをやると、終盤の鬱々とした展開にウンザリする可能性もある。
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見方を変えれば「1本で2本分の作風が楽しめる」ということでもあるが。
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一般的には、Largoを先にやることを勧める意見がやや多め。
「歌姫リコッテ」の設定
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リコッテのような幼い外見の子が、トップクラスの人気を得ているという設定は気になる人には気になる。
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この点についての説明は特にない。
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劇中歌も「リコッテが実際に歌っている」という設定で、わざと幼く聞こえる歌い方をしている為、「これが大衆を魅了する歌声…?」と首をかしげる人もいる。
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佐藤ひろ美氏の従来の歌い方とかけ離れているので、彼女をよく知るプレイヤーからは特に劇中歌関連の批判が強い。
一部放置された伏線
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エポワスの過去、バノンの母親の詳細、トゥーシーの飼い猫とマダムの本名が同じ理由などは最後まで明かされない。
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本筋に関わるわけではないので、描写する必要がないと言われればそれまでだが。
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ネタバレのため折り畳み
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フルコンプの為に必須となるバッドEDがある。
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かなり胸糞な内容なので、鬱展開に慣れていないとショックを受ける可能性がある。
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台詞回しが印象的なので、鬱ゲー好きなら逆に気に入る可能性もあるが。
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総評
意外性はないものの、練り込まれたストーリーとリコッテの可愛らしいキャラクター性から「RUNE最高傑作」と評する声すらある。
致命的と言える欠点も無く、独自の世界観を活かしてよくまとまっており、今プレイしても充分に通用する。
同時期に話題作が複数発売されたこともあって知名度は最低クラスだが、実際プレイした人からの評判は高い。隠れた名作の名を冠するに相応しい逸品。
DL版であれば最新OSにも対応しているので、絵柄や世界観が気に入ったのであれば、是非手に取ってみてはいかがだろうか。
余談
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2008年6月に野々原氏は同じく原画家の赤丸氏と共にルーンを退職、新たなアダルトゲームブランド“たぬきそふと”を立ち上げた。
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その後2019年4月にルーンの公式サイトが消滅、恐らくは倒産した。
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これらにより『Fifth(フィフス)』シリーズの新作を絶望視しているファンも居る。
最終更新:2023年11月14日 22:25