本項目ではファミコンディスクソフト『とびだせ大作戦』と、続編のファミコンロムカセットソフト『JJ ~ とびだせ大作戦パート2』を併記します。
とびだせ大作戦
【とびだせだいさくせん】
ジャンル
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アクションシューティング
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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DOG
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開発元
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スクウェア
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発売日 ()は書換開始日
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1987年3月12日(1987年5月26日)
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定価
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3,400円
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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ポイント
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抜群のスピードで疾走し軽やかに高く跳ぶ爽快感 スペースハリアーのパクリとは言わせない! 3Dは迫力あるが目に悪い シリーズになるはずがなれなかった?
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DOGシリーズ
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概要
1987年3月にDOGから発売されたアクションシューティングゲーム。
疑似的な3D空間になっており、画面奥に向かっていき、シューティング感覚で弾を撃って敵を倒していくセガの『スペースハリアー』にそっくりなアクションシューティング。
ただし、スペースハリアーのように飛行するのではなく、主人公ジャックは足で走ったりジャンプしたりする。
プログラムは後にスクウェア代表作『ファイナルファンタジー』を手掛け、天才と言わしめたナーシャ・ジベリ氏によるものである。
ストーリー
街から街へ、星から星へと渡り歩く流れ者ジャックはキラキラ星という星を旅していたある日、一晩の宿を求めて小さな村を訪れた。
眠りに就こうとしているジャックのもとに村長の娘シンディが訪ねてきて、近頃この星で暴れまわっているドラゴンを退治してほしいと、泣いて縋ってきた。
ドラゴンが8兄弟というのは計算外であったが、美人に弱いジャックは、それを引き受け戦いに向かうことになった。
内容
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主人公ジャックは走ることとジャンプしかできないが、後述のアイテムを取ることで攻撃ができるようになる。
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走る方向は常に前のみで、後戻りはできない。十字ボタンの上(前)で速く走り、下(後)でゆっくり走る。
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ステージ内には敵の他に障害物の「タワー」が頻出する。これはぶつかってもダメージにはならずアイテムが出現する他、うまくすれば上に乗ることができる。
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ただし炎でできた「ファイヤータワー」はぶつかるとダメージ。
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後半には飛び越えられない巨大な穴の中に一定間隔にタワーが設置され、タワーを乗り継ぐことでのみ突破できるエリアが登場する。
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全8ステージで4エリア(ステージ1・3・6・8)または3エリア(ステージ2・4・5・7)構成になっている。
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各エリアには制限時間があり、エリアを走り切って次のエリアに入ると同時に再び満タンになる他、アイテムを取って満タンに戻すこともできる。
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最終エリアの最後はボスのドラゴンとの対決。ドラゴンはステージ毎に姿が違っておりステージが進むごとに出現数が増えていく。
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ボス戦のみアイテムを取っていなくても弾を撃てるようになり、また空中を自在に飛べるようになる。蛇のように長い体をくねらせて襲ってくるドラゴンの姿といい、この部分は特に『スペースハリアー』そのまま。
タワーから出るアイテム
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ミサイル
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これを取ることで弾が打てるようになる。ジャンプ中には発射できない。
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ドラゴン戦では、これがなくても弾が打てる。
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クラッシャー(薬ビン)
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ジャンプからの着地で敵を踏みつぶせるようになる。
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敵の攻撃に1発は耐えられるようになるが、その場合この効果がなくなり同時に上記「ミサイル」を持っていた場合も失って新しく取るまで攻撃できなくなる。
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ムテキ(輪が2つついた星のようなもの)
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一定時間無敵になる。これを取った高さが高いほど有効時間が長くなる。
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1UP(ハート)
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タイマー(時計)
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毒キノコ
特定の場所に置かれたアイテム
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ボーナス星
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取るごとにストックされステージクリア時ボーナス点が入る。
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風船
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取るとボーナスステージへワープできる。
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ボーナスステージでは「ボーナス星」が沢山あり、その中のタワーからは1UPが取れる。
評価点
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スピード感、そして疾走感あふれるゲーム展開。
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シューティング要素の方が強い『スペースハリアー』と違ってジャンプアクションがメインであり、独自の個性を持っている。ボス戦は似てしまっているが…。
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アイテムを取らなければ攻撃できなかったり、またそのジャンプを攻撃に使えたり、更にタワーに体当りする、タワーの上を渡るなど上記作品ではどれも見られないものばかりである。
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奥に向かって走っていくスタイルは3Dとの相性も良好。
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コントローラーはアクションに反応が良く、操作性も抜群。更に空中制御も滑らか。
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植松伸夫氏の手がけるBGMはポップな曲調で、上記の疾走感によくあっている。また効果音も歯切れがよい。
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そのため、プレイヤーのテンションも上げる役目を担っている。
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グラフィックの出来も良く、ファミコンでは難しい奥行きの表現もバッチリで、距離感などもしっかり感じ取れ、3D機能を存分に活かせている。
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また地面のグラフィックもチェッカーにすることで、その疾走感をより引き出せている。
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ボスのドラゴンにしても、単調な動きながらこちらに向かってくる迫力などもしっかり表現できている。
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セレクトボタンを押すことで通常画面と赤青の3D画面を切り替えることができ、「赤青メガネ(余談の項を参照)」をかけることで画面が飛び出す演出を楽しめる。
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ファミコンソフトで実現できることとしては当時画期的だった。
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メガネはなくとも遊ぶことはできる。
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画面の切り替えはポーズ中でもできる。
賛否両論点
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アイテムがなければ攻撃できない不便さ。
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典型的な例が1-2で、ここでやられてしまうとエリア内ではミサイルが出ないので攻撃ができないまま進むもどかしさを味わうことになる。
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しかし、ジャンプしたり走ったりで敵を避けることは難しくはなく、ミサイルは次のエリアですぐ確保できるのでちゃんと打開策は取れる。またクラッシャーならば1-2内でも入手可能。
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これにより『スペースハリアー』との差別化にもなっている。
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ボーナス星の重要度が低い。
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得点を稼いでも1UP等はなく、またミスすると容赦なくゼロにされるので、取ったらそのままノーミスでボスのドラゴンを倒さない限り全く意味はなくなる。スピード感のあるゲームなので初見突破はかなり難しい。
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ただし、この時期のゲームは意味があるかは別としてスコアがあるのが当たり前だったので、あまり深く考えない方が良いかもしれない。
また進行ルートのガイドとして機能している場面(後述のハンド等)もあるので、全く無意味ではない。
問題点
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敵のハンドがウザったい。
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ぶつかってもダメージを受けず押し戻されるだけなのだが、こちらの動きへの追尾性能が高い。また同じ外見で横にのみ移動するタイプと、ジャンプにも反応するタイプがいて、初見では回避困難。しかも不死身で倒すことができない。谷間にも出てきて容赦なく叩き落としてくるため始末が悪い。
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ハンドが邪魔してくるエリアにはタイマーも出現するので、直接攻撃ではない時間切れ狙いの敵というデザインなのだが、これが疾走感あるゲーム性を大きく損なってしまっている。
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一応ジャンプに反応するタイプは序盤には出現せず、タワーやボーナス星の配置から追尾範囲を予測できる等、理不尽な構成にはなっていない。
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仕方ない話だが3Dは少々目に悪い。
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この頃の3Dは大体がそうだが、見ているだけでも目への負担が大きい。
総評
疾走するスピード感と軽快なアクションで、ゲームの基本形とも言えるアクションやシューティングゲームに必要な爽快感という点では文句なしの出来。
俗に「スペースハリアーのパクリ」とも揶揄されるが、上記のようなアクションは飛行するスペースハリアーとは別物であり、本作だからこそ味わえるものであり決して同じものではない。
また操作性も文句なしで、上記のスピード感や爽快感を存分に楽しめる作りになっている。更に3Dとの相性も良い。
その後の展開
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同年の12月7日続編『JJ ~ とびだせ大作戦パート2』が発売(後述)。
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ロムカセットでの発売のためDOGではなくスクウェア自身の名義で発売された。本作同様ナーシャ・ジベリ氏によるものである。
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主人公のジャックは、後に『チョコボレーシング ~幻界へのロード~』のゲストキャラクターとして登場している。
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既に同作の時点では本作はレトロゲームとなっており、それを抜きにしてもお世辞にも知名度が高いとは言えない本作からの登場はかなり目を引く。そのピーキーな性能もあって、完全にネタキャラとなっている。
余談
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本作と同時に売り出された「とびだせメガネ」(980円)は文字通り3Dに見える当時としては恒例の「赤青メガネ」。
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同じようなものは様々な雑誌の付録などでも付いてきたので、それらでも普通に代用可能で安価ではあるが、それらは手で持たなければならないなど、顔に固定できないのでゲーム向きではない。
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説明書には「"とびだせシリーズ"共通で使えるぞ」と書かれていたが、シリーズ作品と言えるのは同年末に発売された本作の続編『JJ ~ とびだせ大作戦パート2』のみであり、しかもあろう事か「とびだせメガネ」非対応になっており、3Dでプレイするには、6,000円と高価な任天堂の「ファミコン3Dシステム」が必須になっている。
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恐らく「大作戦」とは別口にDOGブランドとして「とびだせ○○」なるものを予定していたが、その前にディスク人気衰退により同ブランドも急速に冷え込んでお蔵入りとなったと考えられる。
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実際、本作の説明書には近日発売予定としてとびだせシリーズ第2弾「とびだせレーシング」の告知が掲載されていた。これは後述の『ハイウェイスター』に変更されたとみられる。
また、『ハイウェイスター』も「ファミコン3Dシステム」対応だが裏技を使うことで「とびだせメガネ」も使用可能となっている。
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赤青メガネを使う3D表現技法は「アナグリフ方式」と呼ばれるもので、1853年(江戸時代)に発明され、1922年(大正時代)には既にそれを用いた映画が製作されるなど大変古くから存在する由緒ある技法である。赤青メガネ以外の特別な機材を必要とせず赤青メガネさえあれば普通のテレビや雑誌でも問題なく3D表現が可能であることから安価かつ媒体を選ばないという長所がある一方で赤青メガネを通して見る必要があることから色彩表現に大きな制限が生じてしまうという短所もある。(参考)
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スクウェアの坂口博信は「作品名は英単語の頭文字を合わせると座りがいい」と考えてタイトルを決めており『キングスナイト(KING'S KNIGHT)』「ファイナルファンタジー』『ディープダンジョン』などの命名をしていた。
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本作も元々は『Jumpin Jack』にしたかったが子供に通じやすい現タイトルに改められ、後述の続編タイトルに要素を入れることになる。
JJ ~ とびだせ大作戦パート2
【じぇいじぇい とびだせだいさくせんぱーとつー】
ジャンル
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アクションシューティング
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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スクウェア
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発売日
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1987年12月7日
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定価
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4,500円
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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ポイント
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更に増したスピード感!反面減速もできなくなった… 一層洗練されたグラフィック 3Dを体感するには高額な3Dシステム必須
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概要(『JJ』)
同年3月にディスクソフトとして発売された『とびだせ大作戦』(上記)の続編。
前作はディスクソフトであるためスクウェアが幹事を務めるディスク販売の連合ブランド「DOG」名義での発売だったが、本作はロムカセットとしての発売となったためスクウェアそのままの名義での発売。
前作に続きプログラムは同月に発売され、後にシリーズとしてスクウェア代表作となる『ファイナルファンタジー』を手掛けた、天才ナーシャ・ジベリ氏によるものである。
根本的なシステムは前作からそのまま引き継がれているため変更点についてのみにとどめるものとする。
ストーリー(『JJ』)
銀河系の彼方、厳重な警備で犯罪者たちに恐れられている辺境の刑務所惑星「トキダレア」。
その警備たるや20万タームという長い距離で8層にわたり各層をサイバネス・ドラゴンによって守られており、脱獄者を一人も許さなかった。
しかし、今その歴史はたった一人の男「J・J」によって終焉を迎えようとしていた。
変更点(『JJ』)
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ストーリーは前作とまったく異なるが、システムは根本的に前作に準ずる。
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アイテムは名称や見た目こそ変更されているものの前作に合ったものに対応している。
タワーから出るアイテム
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サイコバスター
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前作の「ミサイル」に相当。弾が打てるようになる。
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ドラゴン戦では、これがなくても弾が打てる。
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クラッシュブーツ
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前作の「クラッシャー」に相当。ジャンプからの着地で敵を踏みつぶせるようになる。
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同時に一度だけ敵に触れてもミスにならないが、このアイテムを失いサイコバスターを持っていた場合も同時に無効化。
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バリアスーツ(白い人間のような形)
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前作の「ムテキ」に相当。一定時間無敵になる。これを取った高さが高いほど有効時間が長いのも前作と同じ。
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クローンパーツ(色のついた人間のような形)
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前作の「1UP(ハート)」と同じ。J・Jの残り人数が1人増える。
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ライフセーバー(時計)
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前作の「タイマー(時計)」と同じ。ワールドクリアまでの残り時間目盛りが満タンに戻る。
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デビ(目玉)
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前作の「毒キノコ」と同じ。無敵以外で取るとやられてしまう。
特定の場所に置かれたアイテム
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タンク
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前作の「ボーナス星」に相当。取るごとにストックされステージクリア時ボーナス点が入る。
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アウトランダー(上記「タンク」を大きくしたようなもの)
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前作の「風船」に相当。取るとボーナスステージへワープできる。
その他
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スピードの調整ができなくなった。
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つまり常に一定の速度で走り、これが前作で前(上)を押していた状態よりも速い。その関係で「タワーの上に乗る」アクションが削除されている(前作ではタワーにぶつかってから減速しつつジャンプすれば丁度上に乗れたが、高速状態では非常に難しい)。
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前作のぶつかるとやられる(ダメージを受ける)タワー「ファイヤータワー」は「デビルタワー」に変更。
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同時にその本数も飛躍的に増え、アイテムの出るタワーとの混在するポイントも増えている。
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ステージ構成が変更された。
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ステージ1・3・4・6は4エリア、ステージ2・5・7は3エリア、最終ステージの8は2エリア構成になった。
評価点(『JJ』)
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基本的な長所はそのままに精度が増したグラフィックと、更なるスピード感。
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特にグラフィックの進化は目覚ましく、遠くに見える背景に関しては一目でそのクオリティの上昇度合いがはっきり見て取れる。
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マイキャラ「J・J」も、頭身が若干高くなりより疾走感が出ている。
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BGMも世界観に合わせてか、アップテンポでノリのいい点は変わらないが若干シリアスなものが入った曲調になっている。
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難易度は上がったものの、それに付随して1UP「クローンパーツ」を取れる数がグッとアップした。
賛否両論点(『JJ』)
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3Dを体感するには6,000円と高額な任天堂の「ファミコン3Dシステム」が必須になってしまった。
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前作は980円と安価な「とびだせメガネ」で楽しめたことを思うと財布に優しくなくなった。
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とはいえ、前作よりはるかにグレードアップした3D世界の美しさは見モノである。
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なお「ファミコン3Dシステム」で用いられている3D表現技法は「アクティブ・ステレオ方式」もしくは「フレーム・シーケンシャル方式」と呼ばれるもので、テレビ画面で左右独立した映像が交互に高速で切り替えながら表示され、画面と連動して左右の液晶シャッターが開閉する眼鏡の形状をしたスコープを通じて見ることによって視差を利用した立体視ができる、という仕組み。1980年代に電子式シャッター眼鏡が実用化されたことによって普及した。(参考)
問題点(『JJ』)
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加速や減速ができなくなった。
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前作と同じようでゲーム性は意外と異なっており、前作は加減速によるとっさの回避やペース配分がある程度できたのに対し、今作ではできないのでステージの配置を覚える必要性が上がっている。
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前作プレイ経験の有無に関わらずスピード感に慣れるまではかなり難しい。
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エンディングが前作と同様のコミカルなもので違和感がある。
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前作は牧歌的な世界だった上に主人公ジャックとドラゴンたちとの間にこれといった因縁はなかったのでデフォルメ表現や親し気な会話にも違和感は無かったのだが、本作はシリアスになっているにもかかわらず同じようなエンディングであり、世界観が統一されていない。
また主人公「J・J」はトキダレア脱出用のスペースボートを用意していて、それで脱出するはずなのだが、その描写が一切ない。
総評(『JJ』)
スピードが調節できなくなったことや難易度の上昇などもあり、前作をクリアした者や上級者向きになった一面はあるが、全体的なスピード感抜群の疾走による爽快感はグレードアップしている。
元々良質だった特徴は受け継がれ、グラフィックやBGMの一新でクオリティは上昇し、また違った感覚でのスピード感抜群のアクションを堪能できるのは、前作とはまた別の魅力を持っていると言えるだろう。
余談(『JJ』)
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パッケージ裏では「制作 ナーシ・ジベリ」と誤字がある。
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スクウェアは同年8月にも『ファミコン3Dシステム』対応のレースゲーム『ハイウェイスター』を発売している。
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本作単独での攻略書籍は存在せず、ファミマガや徳間書店の大技林などの攻略書籍では『JJ』のみの表記で、フルに表記した書籍は限りなくゼロに近い。
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そのため当時本作をプレイした、または意識して見た世代でなければ、タイトルを見ただけでは『とびだせ大作戦』の続編とわからない人が多い。
「某ファッション雑誌とタイアップしたゲーム?」というナゾなイメージを抱くかも…
最終更新:2024年06月29日 14:41