ファミコングランプリII 3Dホットラリー
【ふぁみこんぐらんぷりつー すりーでぃーほっとらりー】
ジャンル
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レース
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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任天堂
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開発元
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任天堂 HAL研究所
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発売日 ()内は書換開始日
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1988年4月14日(1988年4月28日)
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プレイ人数
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1人
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定価
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3,500円
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判定
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良作
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ポイント
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ディスクファクスイベントの大トリ 飛んだり跳ねたりコミカルで躍動感あふれるレース
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マリオシリーズ・関連作品リンク
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ディスクファクスイベントシリーズ
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概要
1988年に任天堂が発売したレースゲーム。
『ファミコングランプリ』としては半年前に発売された『ファミコングランプリ F1レース』に続く2作目。『ディスクファックス』イベント用の青ディスクカードソフト第5弾であり最終作。
第4弾『アイドルホットライン 中山美穂のトキメキハイスクール』は一転マルチエンディングのアドベンチャーゲームとなったが、本作は再びタイムアタックというスコア方式に戻ったことになる。
「ファミコングランプリII」という名目だが前作とは実質まったく別物であり、また1984年に発売された『F1レース』とは開発にHAL研究所が関与している点でも共通し(前作は任天堂単独開発)本作の方が近いものになっている。
タイトルの通りファミコン3Dシステムに対応している。
本作でもマリオが登場しパッケージのイラストに描かれているように、マリオがドライバー、ルイージがナビゲーターということになっている。
内容
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サーキットレースだった『ファミコングランプリ F1レース』とは異なり、オフロードメインによる長距離ラリーカーレース。
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路面の特徴はハイウェイ、草原、雪道、ダート、砂漠とあり、上りや下りなど傾斜がある。下りはスピードが増し、上りでは登坂力がないマシンはスピードダウンする。
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タイトル通り「ファミコン3Dシステム」に対応している。
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レース中にセレクトボタンを押すと3Dのモードになり、上記システムを使うことで3D画面でプレーできる(もちろん目に悪いので程々に)。
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本作の3D関しては上記システムが必須で「とびだせメガネ」に代表される赤青メガネでは代替できない。
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プレイヤーは特徴の異なる3種類のマシンから1つ選び長距離ラリーに出走する。
マシン
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4速での最高速(平地)
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適正
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耐久度
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登坂力
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全体的な特徴
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ハイウェイ
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草原
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雪道
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ダート
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砂漠
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KATTOBI
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220km/h
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◎
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◎
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△
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△
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△
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弱
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弱
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平地でのスピードは速いが、悪路に弱く、上り坂ではそのスピードも鈍る。
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YONQUE
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206km/h
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○
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○
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◎
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○
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○
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弱
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強
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スピードではやや劣るが、上り坂でもビクともしないパワーがあり、 地形を問わず安定した性能で、特に雪道に強い。
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MONSTER
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198km/h
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△
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△
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○
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◎
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◎
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強
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強
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スピードは最遅ながら、YONQUEと同じくパワーがあり、 悪路や登坂に強く、ボディの耐久性が抜群。
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チェックポイント間のタイムが決められており、それに間に合わないと「タイムバンク」が1秒ごとに1ずつカウントダウンされ、0になるとエンジンが止まるように減速し加速できなくなり、止まった所でリタイアとなる。
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タイムバンクが0になって、強制減速されながらもチェックポイントを通過できれば(止まってしまわなければ)セーフで、再び加速してレース続行ができる。
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このあたりは1984年の『F1レース』によく似ている。
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既定のタイムより早く通過できれば、その分の秒数が「タイムバンク」に加算される。
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タイムバンクの初期値は20となっている。
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イベント用のコースは1のみで、それを完走すると、それぞれのマシン毎にベストタイムが記録され、ディスクファクスイベントに応募できた(1988年5月31日まで)。
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マシンはマニュアル5速だが、通常は4速までしか切り替えられない。
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一般的なレースゲーム同様スピードが上位ほど最高速が速いが、ある程度勢いがないと加速が鈍くなり、ステアリングが難しくスリップするようになる。
ハンドルを切りすぎるとスピンをはじめる。
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コースの随所に散乱している「ホットドット」を集め、8本分貯まると4速より速い「HOT(5速)」で一定時間走ることができるようになる。これを「ホットダッシュ」という。
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この「HOT」ギアは一度入れると、既定の一定時間経過するまで4速には戻せないが、加速力もグリップ性能も抜群で、カーブでもまったくスリップせずスムーズに走れるという『F1レース』(1984年)の「ハイパーターボ」によく似ている。
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「ホットドット」は8本以上取っていた場合、見た目では表示できないが記憶はされており「ホットダッシュ」使用後に差分が残るのでムダにはならない(10本でホットダッシュ発動→有効時間切れ後2本残る)。
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コースには3種類の障害物がある他、ライバルのマシンが走っており、それらにぶつかるとダメージメーターが減っていき0になるとリタイアとなる。
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スタートボタンでメニューを出し「REPAIR」を選ぶことで修理しダメージを回復できるがその間は止まらざるを得ず、ダメージが大きいほど時間がかかる。
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リペアは必ず完全修理まで強制ではなく途中で再度メニューを出してレース再開も可能。
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スタート前に「リペアポイント」を1ヶ所のみ設定することができる。ここを通過すると止まって修理するというタイムロスなくダメージが一気に全回復する。
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3つのマシンそれぞれタイムが記録されているがディスクファクスの応募はその中から1つのみ。
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本作のイベント賞品は任天堂のディスクキャラ型ケースに入った文具セット「プリティミニ」(上位2000人+「ラッキー賞」で合計10,000名)。
また前作同様上位100人にはトロフィーも贈呈された。
評価点
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ラリーの醍醐味がバッチリ味わえる。
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ただ単にコースを走破するドライビングテクニックだけでなく、いかにマシンに合った路面を選択していくかという点も、それまでのレースゲームにはないものである。
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更に、リペアポイントもいかに有効な地点に設置できるかという点も見逃せないポイントで、戦略性を高めている。
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自らの手でリペアするのも完全修理まで強制ではなく途中で止められるので「修理を一時的な応急措置程度に留める」を落とし込めている。
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それぞれ3種類の車種が個別に強みを持っている。
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「KATTOBI」は文句なしの速さだが、悪路に弱く上り坂でスピードが落ちたりもする。「YONQUE」は悪路に強くバランスが取れているタイプ。「MONSTER」は悪路に強く衝突に強い利点を生かしてカーブでもぶつかりながらスピードを落とさずゴリ押せたりなど、それぞれの強みを生かしたレースが要求される。
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更にそれぞれ得意とする路面にも違いがある。
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迫力ある視点。
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自分のマシンを後ろから見たフィールドビューは見慣れたものだが、本作ではマシンが傾斜で飛んだり跳ねたりするので、それまでのレースゲームでは味わえない躍動感がある。
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また、路面の上り下りに合わせて背景まで併せてスクロールするなど細かい部分まで描き込まれている。
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ホットドットやホットダッシュの技術介入性と、爽快なまでのスピード感。
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ちょっと違うが条件次第で出せるグリップ力抜群でカーブをものともしない超速は『F1レース』(1984年)のハイパーターボにも似た快感である。
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しかも本作の場合、それに路面の起伏という要素まであり、マシン自身が飛び跳ねたりするという+αがある。
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ホットドットにしても、単に取るだけでなくその配置が少々意地悪いものがあり、無理に取ろうとした結果ライバルマシンや障害物に衝突して結果的に遅くなることも往々にしてある。
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そのため、敢えて諦める判断ができることもタイムを縮めることに繋がる。
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また初心者に関してはホットダッシュでカーブを切るのが難しいので、敢えて直線まで使わず温存するというのも有効な手。特にゾーンの継ぎ目は必ずハイウェイな上にコースの分かれ目になってういる場合、緩いカーブがある程度なので直線狙いなら使いどころ。
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マシン毎にBGMが異なり、いずれも非常にノリが良くレースらしい雰囲気になっている。
問題点
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3種類それぞれの持ち味があるがそれらがトータル性能で互角なタイムのバランスにならない。
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実際にイベントのエントリーが車種ごとに区分が設けられ、それぞれの中でタイムを競う形になっていた。
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イベントでは安定感に優れる「YONQUE」でのエントリーが最も多かった。
とはいえ、前作のレベル1ほど極端に偏ったものにはならなかった。
総評
マシンに慣れれば慣れるほどタイムを縮めていけることがレースゲームの醍醐味だが、本作はそれにホットドットをいかに集めるか或いはいかに諦める判断ができるか、そしていかにホットダッシュを有効に使うかなど、非常にスキルが求められ、他のレースゲームとは違う味が加えられている。
それでいて1984年の『F1レース』に代表されるような「初心者でもすぐ慣れることができる操作性」はそのまま維持されているので、極端な難しさもなく完走程度なら少しの慣れでできるレベルなのでエントリーの間口も広さもまた両立している。
更にそれまでのレースゲームになかった起伏によるジャンプや加速に加え、マシンが躍動するアクションも、それまでのレースゲームでは味わえない真新しさもあり、また背景の描写も細かく3Dシステムとの相性も抜群なものになっている。
イベントは終了したが、それを抜きにしてもタイムアタックスタイルのレースゲームとしてはファミコン全体でもかなりのハイレベルな出来と言っても過言ではなく現在でも充分楽しめるものである。
その後の展開
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本作を最後にディスクファクスイベントは幕を閉じ、終了直後となる6月14日発売の『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者 後編』の広告の片隅に掲載する形で発表している。
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また、それまで主力ソフトをディスク供給に徹してきた任天堂もロムカセット主体の路線に戻していくことになる。
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イベント絡みのディスクソフトとして任天堂は同年11月に書換専用として発売した『帰ってきたマリオブラザーズ』で『スーパーマリオブラザーズ3』のカセットやトランプをスコアに応じてプレゼントするキャンペーンイベントを行っている。
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コナミが6月にディスクファクスイベントではないが青カード専用ソフトとして『リサの妖精伝説』という立花理佐とタイアップしたアドベンチャーゲームを発売。
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『中山美穂のトキメキハイスクール』同様にゲームとリンクしたメッセージをテレフォンサービスで聞いて進めるスタイルを取っている。
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マリオのカーレース作品では1992年8月『スーパーマリオカート』を発売。スーパーファミコン最大のソフト売上本数を記録したタイトルとなり、以後ハードが変わる毎に新作が発売されシリーズとなる。
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実に20年後となる2008年4月10日発売の同シリーズ『マリオカートWii』では本作の「MONSTER」をモデルとした「ホットラリー」が登場している。
余談
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元々はハル研究所自身が自社ブランドで1987年12月に『3Dラリー』として発売する予定でゲーム誌の新作情報などで開発中の画面写真も載せられていた。
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その時点では画面構成が異なりスコアの表示があったので、旧来通り『F1レース』のような走って走ってスコアを稼ぐゲーム性だったと思われる。
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5ヶ月も発売が伸びたのは、マリオのキャラ付けやディスクファクスイベント対応に合わせて再構築したためと思われる。
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車種の1つ「MONSTER」は色合いと言い形状といいワイルドミニ四駆シリーズの第1号『モンスタービートル』にかなり似ている。
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ミニ四駆は当時大人気だったので、これを踏襲したとも考えられる。
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本作の賞品「プリティミニ」は単なる文具セットで、それまでの『パンチアウト!!』のゲームカセットや『スーパーマリオブラザーズ』のゲームウォッチを思えば地味で当初は不評な一面があった。
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現在はプレミアが付いており中古市場ではかなりの高値になっている。
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タイトルに「マリオ」の名は冠していないものの、パッケージにはマリオとルイージが描かれている。ただしゲーム中で2人が姿を見せるのは完走時とリペア時、リタイア時のみとかなり少ない。
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パッケージのルイージの手をよく見ると
何と指が6本ある。
最終更新:2024年06月04日 06:35