Voice of Cards ドラゴンの島

【ぼいすおぶかーど どらごんのしま】

ジャンル RPG

対応機種 Windows(Steam)
Nintendo Switch
PlayStation 4
iOS
Android
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 スクウェア・エニックス
Alim
発売日 【Switch/PS4】2021年10月28日
【Steam】2021年10月29日
【Android】2023年3月22日
【iOS】2023年3月23日
定価(10%税込) 【通常版】3,520円
【DLCセット】4,356円
【限定特装版】10,670円
【iOS/Android】1,900円
プレイ人数 1~4人
レーティング CERO:C(15才以上対象)
備考 ダウンロード専売
判定 なし
ポイント 全てがカード(とCV安元洋貴)で表現されたRPG
ヨコオ作品史上最もライトなシナリオ
クズ過ぎる主人公
ゲームとして不親切な仕様も目に付く
Voice of Cardsシリーズ
ドラゴンの島 / できそこないの巫女 / 囚われの魔物



物語は、あなたの頭の中で動き出す。



概要

  • ヨコオタロウ氏、齊藤陽介氏、岡部啓一氏、藤坂公彦氏ら、ドラッグ オン ドラグーンシリーズのチームが手掛ける完全新規IPのRPG。
    発表以前からヨコオ氏や斎藤氏らが存在自体は仄めかしており、それがNintendo Direct 2021.9.24で正式に本作であることが明かされる形となった。
    また、本編の前日譚を描いた体験版も配信されている他、キャラの見た目や各種デザイン等を『NieR RepliCant』のコラボ仕様に変更できる有料DLC「ヨナのおもちゃ箱」、e-STORE限定販売の特装版も存在する。
  • フィールドや会話、バトルシーンや各種UI等の全てが「カード」で表現されており、ゲームマスター(CV安元洋貴)の司会進行によって進めていく「テーブルトークゲーム風RPG」となっている。

ストーリー

人々が平和に暮らしていたはるか遠い時代。
突如現れたドラゴンが、世界中の人々を恐怖に陥れた。

王国は総力を挙げドラゴンと戦い、かろうじて撃退に成功。
深手を負ったドラゴンはどこかへ飛び去り、その後姿を消した。

それから長い年月が経ち、人々は再び平和で明るい生活を取り戻していた。

だがある日、ドラゴン復活の報が王宮を騒がせる。

女王からの布令に応じ、ドラゴンを倒すべく冒険者達は王宮に集う……

(公式サイトより引用)

登場人物

  • 主人公(デフォルトネーム:ダスト)
    • 賞金欲しさにドラゴン討伐の女王の命に名乗りを上げた自称勇者。
      + 以下、クズと言われる理由。ネタバレ無しで楽しみたい人は未読推奨。 守銭奴な上にガラも悪く、相手が余韻に浸っている所を報酬の話でぶった切り、マトモそうな選択肢でも問題を起こすロクデナシ。 容姿が良いだけに余計腹が立つこと請け合い。
    • しかしそんな性格とは裏腹に、全体攻撃や強化攻撃に単体回復と、何でもこなす万能型。最後までなんだかんだ小回りが利く為重宝するというかせざるを得ない
  • メルブール
    • 主人公と共に旅をしてきた物静かな魔獣。主人公が人間らしい情を垣間見せる事がある唯一の相手でもある。
    • 習得スキルはタンクとダメージ稼ぎに特化した鈍足ファイター。
  • クロエ
    • ドラゴンへの復讐に燃える誇り高き魔女。 パーティメンバー唯一の常識人。
      「ドラゴンを殺せればそれでいい」というスタンスである事から、「賞金を山分けしなくて済む」と判断した主人公にスカウトされる。
    • 各種属性の魔法攻撃で的確に弱点属性を突ける他、ジェムを2個生成する「チャージスペル」も使用可能。
  • リディ
    • 迷いの森の中の村に住まうエルフの アホの子。 ある切実な理由から主人公一行に同行する。
    • 特性で状態異常の相手にダメージが増える上、習得スキルは自分専用攻撃強化、主人公以上の倍率を誇る強化攻撃、ダイスの出目次第で状態異常にできる属性攻撃が使える他、全体回復も可能。
  • ブルーノ
    • 海岸の街に住まう伝説の薬師の息子。薬学知識に秀でた 筋肉バカ。
    • しかし見た目に反して攻撃性能は控えめで、味方の補助やリディ以上の全体回復が可能な補助特化キャラ。
  • シラハ、ブラン、ハクジ
    • 体験版の主人公とお付きの三人組。作中世界で製薬事業を手掛ける「白の教団」に所属している。
      ドラゴン討伐の命を成し遂げるため、行く先々で主人公一行と鉢合わせることになる。

システム

  • プレイヤーはドラゴン討伐の命を成し遂げるため、フィールドを探索して物語を進行していく必要がある。
  • 未踏破のフィールドはカードが裏返っており、コマを置いた隣のマスまで表になり、地形が判明していく。
    • また、判明済みのマスにはRスティックでカーソルを移動させて一気にジャンプする事が可能。
  • 移動し続ければ戦闘やランダムイベントが発生し、それぞれ適切な行動を取る必要がある。
    • ランダムイベントの中には「お宝のありかを示した情報が手に入る」「経験値稼ぎに使えるモンスターと戦える」「通常のレベルアップでは覚えられず、ギャラリーにも載らない特別なスキルを習得できるかもしれない薬をパーティメンバーの誰かが飲む」といったものも。
  • 戦闘に参加できるのは3人。装備は勿論、習得した使用スキル4枠もカスタマイズ可能。なんと 通常攻撃も外せる。
  • 敵味方のユニット毎の体力・攻撃力・守備力は可視化されており、どのスキルで行動すれば良いか、いつ誰を回復すべきかといった戦略を立てながら戦う必要がある。
  • また、味方のユニット毎に特定の属性ダメージ軽減や状態異常耐性、特定タイミングでのHP回復などの効果がある「特性」があり、レベルアップで各キャラ3つずつ習得する。
    • 例えばクロエは低い耐久を多くの属性ダメージ耐性で補っていたり、ブルーノは攻撃行動時にHPが回復するなど。
  • 味方キャラの行動順が回って来る度に画面左側の「ジェム」が1個ずつ(戦闘開始時1個所持、最大10個までストック可能)溜まっていき、スキルを発動するために必要数のジェムを消費する。
    • 通常攻撃やクロエのチャージスペルはジェムを消費しない他、何も行動せずにそのキャラの行動を終了させることも可能。
  • 攻撃は属性耐性やクリティカルの有無、回避といった要素によってダメージが変化する他、スキルによっては6面ダイスや10面ダイスを使用し「与ダメージの上乗せ」や「指定された出目以上の目が出れば追加効果が発生する」という物も。
    • 尚、クリティカルは体力回復スキルでも発動する。
  • 出会ったキャラや敵モンスターはカードコレクションとして『NieR』シリーズのウェポンストーリーのような収集要素を楽しむことが可能。
    条件を満たせば裏面が閲覧可能になり、意外な真実や見方が変わる情報が明らかになる。
  • その他、町にある遊技場ではトランプ遊びのようなミニゲームも楽しめる。
    シナリオを進めると遊べるルールが増えていく他、ローカル通信での対戦プレイも可能。

評価点

  • 分かりやすく、それでいて完成度の高いシナリオ
    • ヨコオ氏の作品だけあって矛盾や破綻も無く、真エンドは完全なハッピーエンドである他、設定魔の氏が手掛けた作品としては珍しく、設定資料集の類を必要としない程分かりやすい*1
  • 相変わらずのヨコオ節
    • シナリオ展開こそ過去のヨコオ作品と比較するとマイルドな仕上がりになっているものの、「施設に案内するNPCを回し者かと訝しむ」「個性豊かだがロクなのが居ないパーティメンバー」「最初の町に最強装備が売られている」「様々な理由で無料になる宿泊代」「ファンタジー世界には似つかわしくないリアルすぎる設定」など、ヨコオ氏が得意とする「王道へのアンチテーゼ」は本作でも健在である。
  • ゲームマスターとして司会進行を行ってくれる安元氏のボイスの数々
    • 戦闘時には「頑張りましょう」等のボイスでプレイヤーを鼓舞してくれる他、ミステイクの謝罪ごとそのまま使用されていたり、新しい仲間の加入時につい本音を漏らしたりと様々。
  • BGMも相変わらず好評で、特に各章開始時のムービーで流れる『竜を追いかけて ~旅立ちの声~』は人気が高い。

賛否両論点

  • 主人公の言動
    • 前述の登場人物紹介で隠し部分に記載した通りのクズっぷりが終盤手前まで続く。物語開始時にゲームマスターから「このキャラがあなただ」と説明される事もあり、輪をかけて心象が悪くなってしまっている。
      • 戦闘終了時にHPが回復する特性も相まって「まるでGみたいな奴」「まさにデフォルトネーム(ダスト)の通りのゴミ野郎」と言われてしまっている。
      • 本編主人公がこの性格のため、 シラハが主人公を務めた体験版の方が楽しかったと感じたユーザーも少なからず存在する。
    • ただし、終盤になれば彼の出自が判明し、それまでの行動原理も明かされて同情できるようになる他、「立派な傭兵の鑑だ」と作中での設定を考慮して擁護する声もある。
  • 戦闘時の補助・妨害効果は一種類ずつしか付着しない
    • 複数種のバフの重ね掛けが出来ず、後から使ったもので上書きされてしまう仕様の為、HP継続回復を守備力アップで上書きしてしまったりといった現象が発生する。
      また、状態異常もハメ防止のためか一種類しか付着しない。
    • 反面、味方が被害を被る場合も同じ仕様なので、対応するアイテムさえあれば体勢を楽に立て直せるなど、バランス調整に一役買っている側面もあるので一概に否定することはできない。
  • ヨコオ作品にしてはかなりマイルドなシナリオ
    • 氏がこれまでに手掛けてきた作品の特徴と言えば「 えげつない設定と容赦のない鬱展開 」であり、それらを期待してプレイすると本作のシナリオに消化不良感を覚えることになる。
      • ただし、これはあくまで 氏の手掛けてきた作品群で訓練されてきたゲーマー達の意見 であり、ヨコオ作品に触れた事が無いユーザーならばその尖りっぷりに衝撃を受けることは間違いない。
    • また、これらの本作プレイ後の反響を受けてか、シリーズの後発作品である『できそこないの巫女』と『囚われの魔物』のニンダイでの紹介はかなりアッサリしたものになっている。

問題点

  • 見た目こそカードだが、システム上はカードである意義が薄い。
    • UIがカードというだけで、システムそのものは標準的なコンピュータRPGに近い内容である。見た目からカードゲームのような内容を想像していた場合は肩透かしを食らうだろう。
    • TRPGがモチーフということもあってか、ゲーム中のボイスの全てがゲームマスター(CV安元洋貴)の語り。語りそのものは雰囲気は出ているが、女性キャラクターのセリフであろうが共通したボイスであるため、一枚絵のカードイラスト等の印象も合わさり、人によってはチープに感じてしまうかもしれない。
  • キャラクターの掘り下げが弱い
    • 顕著なのがメルブールとクロエの2人。メルブールはそもそも人語を話せないためコミュニケーションに乏しい上に終盤にならないと掘り下げイベントが無く、クロエは作中での描写のほとんどに復讐者という設定が伴っていない。
  • 選択肢発生時の死にシステム
    • 本作は選択肢を選ぶ際に長押しで決定する仕様なのだが、決定が決まる前に「選択肢によって発生する先の展開をチラ見することが出来る内容が書かれている」という仕様がある。
      しかし、どの選択肢を選んでも物語の大筋には影響せず、マトモそうな選択肢を選んでも選ばなかった方の選択肢と大差ない展開になるだけだったり、全く同じ内容が書かれているだけで結果も変わらなかったりと、お遊び以上の要素が存在せず、システムがほぼ意味を成していない。
  • ゲームのテンポが悪い
    • 裏向きのカードをめくりながら進めていくフィールドマスの解放作業自体もそうだが、フィールドから町やダンジョンへの移動、バトルへの移行、メニューを開くといった各動作毎に「カードが一斉に片付けられて画面構成が切り替わる」という演出が挟まるため、ゲームのテンポが全体的に悪い。
    • 一応アップデートで高速化オプションが追加されたが、ロード時間や画面変更の速さなどは変わらず、一部の挙動や効果音がおかしくなることがある、ゲームを終了すると速度が通常に戻る等、根本的な解決には至っていない。
  • アイテム所持数の上限
    • 中盤以降プレイスタイル次第で顕著になる問題点。
      本作は戦闘バランスが易しめな事もあり、しっかり鍛えながら進めればアイテムを使う機会が少なくなる。それに加えてアイテムが1つの枠に纏まらない仕様の為、しっかりレベルを上げて進めるタイプのプレイヤーは中盤からアイテムを取捨選択しながら進める必要があり、上述のゲームテンポの悪さに拍車がかかってしまう。
  • メニュー画面のUI
    • L1R1が「メニューの項目タブ切り替え」に割り当てられているため、アイテム一覧をページ送りしようとして別項目に飛んでしまい、目的のアイテムを再度探し直す……といった事態も発生する。
      ページ送りはRスティックの左右入力で可能だが、操作説明が分かるような記載は存在しない。
    • また、オプション一覧を開く操作を表記したUIが項目やカーソル移動して一定時間操作をしない状態になるまでフェードアウトする仕様の為、咄嗟にオプションを弄りたくても必死にカーソルを動かすせいで操作が表示されず、タイトルまで戻ってしまう事態も少なくない。
      • 尚、オプションの「その他」内の「その他」のタブの選択肢が「タイトルに戻る」しかない。かなり奥まった場所にあるため分かりづらいと不評。
  • 大事な物の「不思議なカード」の用途が真EDの解放以外存在せず、作中での立ち位置も不明。
    • どこにあるのかというヒント無しにしらみつぶしに探す必要がある割に用途がそれしか無く、作中でこのカードがどういう扱いのアイテムなのかといった描写も存在しないため、ご都合主義のような真EDの内容にモヤモヤした感情に苛まれたユーザーも。
  • 戦闘の問題点
    • ボス戦や一部の戦闘では、ランダムな支援効果が得られる「ハプニングカード」という要素があるのだが、その発動した効果を確認するための方法*2がゲーム内で説明されない。
    • 敵の属性耐性や状態異常耐性の情報はどこにも記載が無く、記憶や見た目から判断して把握するしかない。
      この仕様の都合上仕方のないことではあるが、攻略サイトで耐性についての情報に抜け漏れがあることもしばしば。
    • 『ダイスロールによる効果成否やダメージ変動を伴うスキル』の使用時に、使用するダイスが何面ダイスなのか事前に判別できない。一応ダメージ系が6面、成否判定系が10面と棲み分けはされているが、ゲーム内での説明がないため不評。
    • ラスボス戦のバランスが大味。パーティ構成は主人公、クロエ、ブルーノの3人なら持久戦で勝つことが出来る反面、これ以外のキャラ構成だったりスキル構成・耐性装備を間違えたりすると一気に勝つのが難しくなる。
      • また、ラスボス戦の前哨戦に加勢してくれるNPCが全然使用しないスキルがある。「使えよ!」と思ったプレイヤーは数知れず。
  • 「遊技場」でトランプのミニゲームを遊べるのだが、自分の番が回ってこないとギブアップさせてもらえない上にテンポが兎に角悪い。コンポーネントをコンプリートしたいユーザーから不評。
  • その他細かな問題点
    • 山や壁等の侵入不可能なフィールドマスは「実際に足を踏み入れてから戻される」という仕様の為、ちょっとしたスティックの角度の違いで反復横跳びがしばしば発生してしまう。
    • DLC「ヨナのおもちゃ箱」のコラボ衣装にリディとブルーノの分が用意されておらず、中途半端だとして不評。
    • コマやカードデザイン、BGM等の各種コンポーネントはタイトル画面からしか変更できない。
      ゲーム開始時のロード時間が長い事もあって気軽に変更しづらく、Switch版は更に長くなるため尚更。
      • 逆に(ネタバレ防止の為か)各章開始時に流れるムービーのギャラリーはタイトル画面から飛ぶことはできず、データをロードする必要がある。

総評

「ヨコオタロウ氏が手掛ける完全新規IP」として大いなる期待を背負った本作だが、そのマイルドなシナリオに「鬱やえげつなさを求めていたヨコオ作品のファン」は肩透かしを食らってしまった。
しかし、裏を返せばヨコオ作品の中では一番初心者にお勧めしやすい、言わば「ジェネリック版ヨコオ作品」と言う事でもある。
主人公の素行の悪さ、UIの不親切さ、テンポの悪さこそ気になるものの、それらを容認できるのなら「過去にヨコオ作品を遊んだことがあったが鬱要素がキツすぎてプレイを辞めた事がある」「ヨコオ作品が気になってはいたが噂を聞いて腰が引けていた」というユーザーにはお勧めできる一作と言えるだろう。

その後の展開

  • 『Voice of Cards』シリーズとして、本作と同様のコンセプトの後続作品が発売されている。
    本作『ドラゴンの島』とのシナリオ上の繋がりは無く、ゲームマスターのCVも各作品で異なる等、あくまでUIやシステム等コンセプトのみを引き継いだ形となっている。
    • 2022年2月17日にシリーズ第2作『Voice of Cards できそこないの巫女』が発売。ゲームマスターのCVは速水奨氏が務める。
    • 2022年9月13日にシリーズ第3作『Voice of Cards 囚われの魔物』が発売。ゲームマスターのCVは石川由依氏が務める。
    • 2023年3月23日にはシリーズ3作品がセットになった『Voice of Cards Trilogy』が発売された他、iOSとAndroidでも発売。LINEスタンプも販売開始された。
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  • RPG
  • スクウェア・エニックス

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最終更新:2024年03月29日 10:52

*1 氏がこれまで手掛けてきた作品は、ゲーム本編の内容に加えて設定資料集を読み込む事を推奨されるものが多かった。

*2 バトル画面右下の「カード詳細」の項目で確認可能