Voice of Cards できそこないの巫女
【ぼいすおぶかーど できそこないのみこ】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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Windows(Steam) Nintendo Switch PlayStation 4 iOS Android
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発売元
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スクウェア・エニックス
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開発元
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スクウェア・エニックス Alim
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発売日
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【Switch/PS4】2022年2月17日 【Steam】2022年2月18日 【Android】2023年3月22日 【iOS】2023年3月23日
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定価(10%税込)
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【通常版】3,520円 【DLCセット】4,356円 【iOS/Android】1,900円
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プレイ人数
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1~4人
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象)
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備考
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ダウンロード専売
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判定
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なし
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ポイント
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基礎は据え置きだがゲーム性が変化 前作の問題点も一部改善 高難度化したボス戦
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Voice of Cardsシリーズ ドラゴンの島 / できそこないの巫女 / 囚われの魔物
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概要
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ドラッグ オン ドラグーンシリーズのチームが手掛けるテーブルトークゲーム風RPG『Voice of Cards』シリーズの第2作。ゲームマスターのCVは速水奨氏が務める。
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本作でもキャラの見た目や各種デザイン等を『NieR:Automata』のコラボ仕様に変更できる有料DLC「第243次降下作戦支援セット」が存在するが、前作にあった前日譚を描いた体験版やe-STORE限定販売の特装版は本作以降無くなっている。
ストーリー
美しい海に囲まれた、精霊が住まう諸島。
「巫女」と呼ばれる女性と、巫女を守る「従者」が組んで、
代々、島を維持するために精霊を生き永らえさせてきた。
諸島のとある島は、巫女がおらず、滅びの日を待つ。
島を救おうと、少女を巫女にする為に尽力する青年。
巫女として生まれ、巫女になれなかった、できそこないの少女。
ぬいぐるみ姿の自称精霊に導かれ、
諸島の伝説を巡る彼らの航海が始まろうとしていた。
(公式サイトより引用)
登場人物
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主人公(デフォルトネーム:バラン)
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故郷の村に迫る終末を受け入れられない航海士の青年。島を救うべく、ラティ達と共に大海原へ旅立つ。
某同社のクソゲー
と同じ名前なのは気にしてはいけない。
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スキルは属性攻撃や強化攻撃、範囲攻撃などを習得。特性は攻撃・防御ダウン無効にクリティカル確率UPというバチバチの脳筋アタッカーに成長する。
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また、全キャラ中唯一武器の変更が可能で、3種類の武器種に応じてキャラ性能が大きく変化する。
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ラティ
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島の海岸で倒れていたところを主人公に保護された本作のヒロイン。声を失っているようだが……?
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スキルは単体回復を中心に、属性攻撃やチャージスペルも覚えるヒーラータイプ。
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装備は武器のみ変更不可だが、武器の性能はシナリオ進行に応じて強化されていく。
また主人公との連携スキルでは、全体回復や攻撃しつつバフを付与する技も使用可能になる。
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ラック
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ぬいぐるみのような姿をした、主人公達を導く自称精霊。
主人公達が巫女達と共闘開始するまでの所謂「断章」の期間のみ戦闘に加勢する。
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装備品を一切装備出来ないためステータスは控えめだが、特性で回避率が高く、攻撃ダウンや特定状態異常回復&単体回復等の小回りが利くスキルを覚える。
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フィーラ&ハイド
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南の島で暮らす青ノ巫女とその従者。恋人関係にあり、ハイドは奔放なフィーラの行動に振り回されている。
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フィーラは単体回復や全体攻撃が使用可能な万能タイプ。ハイドは状態異常が付与された相手に強くなる搦め手アタッカー。
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ルビア&グラジオ
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西の島に暮らす赤ノ巫女とその従者。しかし、強さこそが全てという風潮故に民達はグラジオばかりを慕っており、ルビアは軽んじられている。
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ルビアは特性でクリティカル確率が高い上、5割の確率で命中する超強化攻撃や炎の全体攻撃が可能なギャンブルアタッカー。グラジオは自身の防御強化や狙われ率上昇等でヘイトを稼ぐタンク担当となる。
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クイーナ&ブライト
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湿地化や魔物の脅威に悩む東の島に住まう黒ノ巫女とその従者。献身的だが不幸体質の巫女をいつも従者が助けている。しかしその努力も空しく巫女がすっ転ぶ事が殆ど。
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クイーナは闇単体攻撃特化のアタッカー。ブライトは風と雷も扱える属性アタッカー。
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ランカ&クリム
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北の島に住まう白ノ巫女とその従者。優秀故に見下した発言が目立つ巫女の矛先は、大抵不出来な従者へと向けられてしまう。
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ランカは光・雷属性の攻撃が出来、味方全体に継続回復効果を付与できるサブアタッカー。クリムは通常攻撃が出来ない代わりに、全体回復や確定で攻撃ダウンを付与できるサポート特化型。
システム
基本システムは前作の記事を参照。本稿では前作から変化した点に絞って記載する。
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海が移動可能になった
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前作は一本道のフィールドが連続して続くという形のマップだったが、本作では主人公が航海士ということもあり、世界の中央の島から大海原をそのまま探索するようになった。後半のシナリオでは攻略する島の順番を選ぶことも可能。
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パーティの最大人数が4人に増加
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ただし、「通常時は主人公・ラティ・ラックで旅をし、各島のシナリオが始まるとシナリオが終了するまでラックの代わりに巫女と従者が一時的に加入する」という形式。島の外に出てもシナリオが終了していなければ同行してくれる。
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尚、加入する巫女と従者は武器と防具とスキルが固定でレベルアップもしないため、装飾品とシナリオ進行以外でステータスが変化する事はない。
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多くの味方キャラの装備品変更が制限された代わりに主人公の武器カテゴリが3種類に増加
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性能バランスの良い「剣」、火力と引き換えに防御と素早さが上がる「小剣」、逆に防御と素早さを犠牲に高い攻撃力を得られる「槍」が用意されており、場面に合わせて適材適所で切り替えるのが肝となるようになった。
素早さが下がる防具もあるため、あえて遅くすることで「敵の行動が終わった後にアイテムで立て直す」という立ち回りをさせる選択肢も可能。
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戦闘時の行動選択から「何もしない」が削除され、ジェムを1つ生成する「チャージ」に変更された。スキル枠に何をセットしたかに関わらずいつでも誰でも使用可能。
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スキルのセット枠が1つ増加
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後述の連携スキルの存在も相まって、戦略性に幅を持たせられるようになった。
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巫女と従者の協力技「連携スキル」
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ジェム消費量が4~6と重く、巫女と従者のどちらかだけでも死亡すると使用できなくなる上にクリティカルが出ない代わりに強力な効果を発揮する「連携スキル」が登場した。
主人公とラティはレベルアップに応じて習得し、習得した技は2人のスキル枠に自由にセットすることが出来る。
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アイテムの重要性が高まったボス戦
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敵ボスの火力のインフレや味方側のPT人数増加によるジェム消費量の増加といった要因により、ボス戦にアイテムの使用を組み込む事が推奨されるゲームバランスに変化した。
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前作で真EDの到達に必須だった「不思議なカード」は削除され、隠しED無しのマルチエンディング方式に変更された。
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安売りしてくれる行商人や、ダイスの出目次第で普段よりも割増価格で買い取ってくれる買取専門業者等、ランダムイベントのバリエーションが増加している。
評価点
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前作とのゲーム性の変化
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前作は「役割が決まった仲間達を状況に合わせて切り替える楽しさ」に重点を置いた内容だったが、本作では性能が固定のキャラが一時同行という形式になった事と、主人公の行動順の変化に重点が置かれたゲーム性に変化した事で、前作とは異なるRPG体験を味わえるようになっている。
これはディレクターのヨコオタロウ氏が得意とする「同じ物を使って異なるゲーム体験をプレイヤーに与える」手法が活かされていると言える。
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落ち着いた速水奨氏のボイスを堪能できる
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キャラの台詞以外の全てのゲーム進行がゲームマスターのボイスで語られる作品のため、速水氏の声が好きなのであれば買って損はしないだろう。
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当然、ジェネリック版ヨコオ節も健在。マイルドになったとはいえ、風刺やプレイヤーに嫌な顔をさせる要素が散りばめられている。
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本シリーズではヨコオ氏と言えばのドギツい要素がかなりマイルドになっていることもあり、ヨコオ氏のゲームを避けていたユーザーにもオススメしやすい出来になっている。
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前作プレイヤーへのサプライズ
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ネタバレになるため内容は記載しないが、前作をプレイしたユーザーにとってサプライズとなるシナリオ展開が仕込まれている。
前作から改善された点
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主人公が我を出さないタイプになったことで感情移入しやすくなり、各キャラクターの掘り下げも十分に行われるようになった。
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この改善により、
前作主人公がアレ過ぎたというのもあるが、
前作よりもシナリオで感動したと評価するユーザーも少なくない。
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チュートリアルの充実化
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前作で説明不足だったハプニングカードの効果確認方法や、戦闘時の補助・妨害効果が1種類しか付着しないといった点に関して、きちんとチュートリアルで説明が入るようになった。
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死にシステムの改善
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選択肢のチラ見システムが前作ではどっちを選んでも結果が変化しないため意味をなしていなかったが、本作ではランダム発生イベントでの選択肢発生時にチラ見できる内容とその結果の組み合わせが固定されており、それによって同じイベントが発生した際にどんな結果が来るのか判別できるようになった。
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ボス戦のゲームバランス
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後述する問題こそあれど、前作はかなり易しめなバランスだったのが、敵ボスの火力上昇やユニット性能・各種スキルの調整等により「要所で適切なアイテムを使用すればパーティが壊滅する危険性を大幅に抑えられる」という「気を抜いたら負け」なゲームバランスに変化したことで改善された。
また、それに伴って「アイテムが所持枠から溢れがち」という問題も副次的に改善されている。
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特に、前作では操作できないNPC頼みだった攻撃・防御ダウンの状態異常をプレイヤーの任意で敵に付与できるようになった点は大きく、ボス戦で間違いなく活躍してくれる。
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また、本作ではシナリオ進行に伴って強制的にパーティ編成が変化するため、前作のような「終盤はベストメンバーで固定化されがち」といった状態にならなくなったのも要因として挙げられる。
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その他、戦闘時の共通コマンド「何もしない」がジェムを一個貯めるコマンドに変更される、スキルセット枠の増加など、地味に嬉しい変更点も。
賛否両論点
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ゲームマスターの「読み直しボイス」の頻度が大幅に増加
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前作は1回だけだったのが、本作では少し物語が進む度にちょくちょく挟まれるようになった。
確かに序盤は公式の遊び心として捉えられるのだが、その頻度が多すぎる上に速水奨氏の読み直しに対するスタンスが「余計な言葉を一切挟まずに1から読み直す」という淡々としたもの(=遊びを感じる要素が無い)ということもあり、「真面目にやってる声優に対して失礼」「流石に多すぎてイライラする」と感じたユーザーが少なくない。
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ただし、次作『囚われの魔物』のゲームマスター役を務めた石川由依氏もそこそこミステイクがあるものの、こちらは「もにょもにょ小さな声で言い直してから読み直す」といった可愛い遊び要素が感じられるものがあるため、これはおそらく「本作のボイス収録が成功失敗問わずに採用するスタンス」であることと、声優の読み直しへの対応の姿勢の組み合わせの相性が悪かったが故の現象と思われる。
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終章で再度パーティ加入が可能になる巫女と従者達の性能格差
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終章のラストダンジョン攻略時には同行する巫女と従者を自由に加入させられるようになるのだが、フィーラ&ハイドの素早さがたった7と6と、最終盤にしては目を疑うような数値に設定されており、逆にそれなりの素早さと全体回復技を持つランカ&クリムが他の追随を許さないレベルの選出率になってしまっている。
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ただ、問題点に後述するラストバトルではこの値であるが故にパーティの立て直しが楽になっている部分もある他、裏ボスはランカ&クリムが最適解な相手ではないため、それを実感すれば納得できるようになる。
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相変わらず控えめなヨコオ節
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ヨコオタロウ氏が手がけるゲームといえば「
えげつない設定と容赦のない鬱展開
」が最大の特徴であるが、前作に引き続き本作もそれを期待してプレイすると肩透かしを食らうことになる。
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ただ、前作がニンダイで大々的に取り上げられた結果ユーザー達に過度な期待を持たせてしまった事を反省しての措置なのか、本作のニンダイでの紹介はかなりアッサリしたものになっていた。
また、前作をプレイしたのであれば「ヴォイカシリーズはこういうもの」と割り切れるため、前作と比べてこの点を不満に思う声は少なくなっている。
問題点
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各島で加入する巫女と従者のステータスがほぼ固定
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性能面に関してプレイヤーが介入できる要素が装飾品以外無いため、ほぼ見たまんまの性能のまま活躍させなければならない点をストレスに感じるユーザーが少なからず存在する。
特に、後述するラストバトルではその装飾品すらも介入できなくなるため猶更。
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後半のボス戦のゲームバランス
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一般的なRPGで言う「防御」コマンドが存在せず、巫女と従者は武器と防具とスキルが変更不可なため、防御性能が貧弱なキャラは回復や防御力強化を怠っただけでボスの大技に一撃死させられてしまう事も珍しくない。
更にラストバトルに至っては「適切なアイテムを適量準備し、かつ適切なタイミングで使用しなければ勝つことが非常に難しい」というゲームバランスになってしまっている。
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ラストバトルの仕様
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セーブ&ロードと引き返しが出来なくなった上で、ラスボスと、ラスボスを強化している3体のボス(倒さなくてもよい)と戦うという仕様で、本作最大の問題点。
取り巻きとの戦闘には決まった4人の編成で挑み、戦闘の合間の装備変更と無料回復ポイント設置という救済措置もあるが、アイテムの補充は出来ず、ボス毎に対応した巫女と従者が
戦闘開始時に加入する
という仕様の関係上、巫女と従者がパーティから外れた際に自動的に装飾品が外れる仕様も相まって、巫女と従者を(ラスボス戦専用にステータスが強化されてるとは言え)素のままの性能で運用しなければならない。
その上
主人公とラティ抜きという異例のパーティ編成で攻略しなければならないボスが存在する
ため、
これまでのボス戦を遥かに凌駕するレベルでアイテムの重要性が高く、攻略サイトを見ても初見で攻略するのが難しい仕上がりになってしまっている。
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一応ラスボス本体のみを倒すことも可能だが、取り巻きのボスを倒せば弱体化するため、倒した方が楽ではある。しかし、弱体化させきってもアイテムの適切な使用が前提の難易度であるため、この仕様のせいで本作はマルチエンディング形式であるにもかかわらず、それを全て見たいという気力が沸きにくい作りになってしまっている。
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主人公が装備可能な武器「巫女の器」関連の問題点
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終章に入ると主人公の最強武器となる巫女の器の最終強化形態が入手可能になるのだが、その入手方法をゲーム内で知ることが出来ない。
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また、最終強化した巫女の器は「攻撃時HP回復」や「戦闘開始時ジェム1個追加」といった特殊効果があるのだが、その特殊効果の内容が具体的に記載されておらず、各武器の説明文から読み取って実際に使用するまで確証が持てない。
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ストーリー進行で巫女や従者が一時離脱する際、パーティの枠が余っているにもかかわらず何故かラックがパーティに復帰しない。
前作から未改善の問題点
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高速モード関連
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ゲームスピードの設定がゲームを終了するたびにリセットされる点や、効果音が音飛びする点もそのまま流用されている。
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DLC関連
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DLCのコラボ衣装が3人分しかなく中途半端な点や、各種コンポーネントの切り替えがタイトル画面からしか行えない点もそのまま。
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UI関連
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タブ切り替えと誤爆するメニュー画面の操作、スキルで使用するダイスについてのチュートリアル無し、敵の耐性に関する情報が記憶頼み、ゲームテンポが悪い、侵入不可フィールド侵入時の反復横跳び現象、システム上はカードである意味が薄い点がそのまま、遊技場のトランプゲームのテンポの悪さ等、UI面に関しては前作から未改善の点がかなり目立つ。
総評
最大の懸念だったシナリオ体験が改善され、その他の細かな改善により、間違いなく遊びやすくなったシリーズの第2作。
しかし、ボスのインフレや縛り付きの味方ユニットなどの要因によって変化したゲーム性は後半以降問題点が次第に浮上してくるのも事実であり、ゲームシステムの土台が前作の流用である事も相まって、好印象と悪印象の両方がごちゃまぜな評価になってしまっているのが現状である。
しかし、インフレしたとはいえ勝ち筋が無いわけではないため、適切な攻略法を探ることに楽しみを見出していく遊び方が出来るのなら、攻略サイト無しでプレイしてみるのも一興だろう。
その後の展開
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2022年9月13日にシリーズ第3作『Voice of Cards 囚われの魔物』が発売。
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2023年3月23日にはシリーズ3作品がセットになった『Voice of Cards Trilogy』が発売された他、iOSとAndroidでも発売。
最終更新:2023年11月14日 22:44