アルティメット スパイダーマン

【あるてぃめっと すぱいだーまん】

ジャンル スパイダーアクションゲーム


対応機種 ニンテンドーDS
ニンテンドーゲームキューブ
プレイステーション2
発売元 タイトー
開発元 【DS】Vicarious Visions
【GC/PS2】Treyarch
発売日 【DS】2006年5月25日
【GC】2006年6月29日
【PS2】2006年8月24日
定価 【DS】4,800円(税抜)
【GC/PS2】6,800円(税抜)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 なし
ポイント コミック版準拠のスパイディゲー
ヴェノムを操作できる
スピード感のあるウェブ・スイング
内容は原作ファン向け
Marvel Comics関連作品シリーズ


概要

マーベルコミックのヒーロー、スパイダーマンを原作とするゲーム。
当時、映画『スパイダーマン』『スパイダーマン2』が公開されていたが、本作は映画版を原作としたゲームではなく、コミック版に準拠したゲームとなっており、イラストやストーリーなどにコミック版のスタッフが関わっている。
本作のパブリッシャーは全プラットフォームともアクティビジョンだが、日本ではタイトーからPS2/GC/DS版のみ発売された。更に海外ではGBA/Xbox/Windows版も発売されている*1


ストーリー

リチャード・パーカー博士とエディ・ブロック博士は、癌治療に役立てるためにヴェノムスーツを開発したのだが、彼らの会社がそれを兵器として使おうと企んだため、微量のサンプルだけを残し破棄してしまった。

ところが最近になって、彼らの息子のピーター・パーカーとエディ・ブロック・ジュニアが、最後に残されたヴェノムスーツのサンプルを発見し、ヴェノムの悪夢を蘇らせてしまった。

ある雨の日、ピーター・パーカーはヴェノムスーツに取り込まれたエディの暴走を止めようと、切れた電線でヴェノムにショックを与えると、エディとヴェノムスーツは消え去ってしまった。しかし、ピーターは”まだエディはどこかで生きている”と確信するのだった。

それから3ヶ月後、ピーターは高校生とスパイダーマンとの二重生活を続けていた。ヴェノムが再びニューヨークの街を恐怖に陥れていることなど、気づきもせずに・・・。

(取扱説明書の「THE STORY SO FAR ―これまでの物語―」より引用)


特徴

  • 箱庭型の3Dアクションゲーム。
    • 舞台はマンハッタンとクイーンズ地区。
    • 後述のスパイダーマンとヴェノムをストーリーの進行に合わせて切り替えながらプレイしていく。
  • ストーリーを進行させるにはシティ・ゴールの条件を満たす必要がある。
    • 一定区間をどれだけ早く通過できるか競うトリック・レース、街にいるギャングを倒すコンバット・ツアーなどをクリアする必要がある。

操作キャラ

  • スパイダーマン/ピーター・パーカー
    • ご存じ、親愛なる隣人。パンチやキックといった格闘で敵と戦う。
    • ウェブ・アタック
      • 敵を一時的に拘束できる。ウェブ・アタックでダメージは与えられない。また、雑魚敵を倒した後はウェブで拘束しないと、復活してしまう。
    • ウェブ・スイング
      • ビルなどの高い建物にウェブを引っかけて、高速で移動できる。
    • ダメージを受けた際は、ヒーローらしく建物から落ちそうになっている人や悪者に襲われている人など、困っている人を助けることで入手できるヘルス・トークンで体力回復が可能。
    • 本作のスパイダーマンはジャンプ力がかなり高く、ジャンプボタンを長押しすると、かなりの高さまでジャンプできる。二段ジャンプも可能。
  • ヴェノム/エディ・ブロック・ジュニア
    • 近接で高い攻撃力を放つクロー攻撃と、威力は下がるが遠距離まで複数の敵を攻撃できる触手攻撃を使用可能。
    • スパイダーマンと違いウェブ・スイングは不可能だが、それを補って高々度まで跳躍する「ヴェノムジャンプ」と建物に向けて一直線に伸ばした触手の着弾点まで瞬時に移動する「触手ジップ」の2つの有り余る機動力はスパイダーマンに負けず劣らず。
    • その怪力でフィールド上に停めてある車両やバイクなどを持ち上げて遠投する事による飛び道具攻撃も可能。あくまでオブジェに干渉するシステム故に乱発していると対象オブジェが尽きてしまう難点はあるが。
    • ヴェノムスーツはエディ・ブロックの生命を蝕むという設定で、 何もしなくても体力が自動減少していく。 そのため、市民や敵を吸収して、定期的に体力を回復する必要がある。

評価点

  • スピード感のあるウェブ・スイング
    • スパイダーマンの特徴であるウェブ・スイングの速度は中々に速く、爽快感がある。
    • ジョニー・ストーム(ヒューマントーチ)とのレース対決など、高速で移動することを求められる場面もあるため、ウェブ・スイングをいかに使いこなせるかが、勝負の鍵となる。
  • ヴェノムを操作することができる
    • ある意味、本作最大とも言える評価点。本作ではスパイダーマンの他にヴェノムを主人公として操作することができる。
    • そもそも、ヴィランを主人公として操作できるゲームが貴重。原作ではヒーローらしいこともすることもあったヴェノムだが、本作ではヴィランサイドとして描かれている。
      • ヴェノムを操作できるゲームは、過去にも複数存在しており、2022年の現在もそれなりに多いが、それらは格闘ゲームなどの対戦ゲームやヒーローサイドのキャラとして登場することが殆ど。
        本作の場合は、市民を襲ったり、マーベルヒーローと対峙したりと、ヴィランとして悪行三昧を行えることが他作品には無い決定的な特徴であり、評価点なのである。
    • ヴェノムはスパイダーマンとは全く違うアクションをしており、例えば壁を登る際はスパイダーマンと違い、壁に爪痕を残し、バリバリと破片を散らしながら登っていくという、豪快さ溢れるモーションとなっている。
    • 一般市民を吸収して体力を回復するなど、ヴィランらしさ全開のアクションも魅力。吸収のチュートリアルを受ける際に、スパイダーマンの風船を持った子供を吸収するという中々えげつないことをさせられる。当時のCEROはこれでA(全年齢対象)で通してよかったのだろうか?
      • 一応補足すると、吸収した市民は吸収した後吐き出されるため、市民を直接殺害するような描写はない。
    • ぶっちゃけ、スパイダーマンよりもヴェノムを操作している時の方が楽しい。いっその事、ヴェノムを操作して大暴れすることをメインとしたゲームにしても良かったのでは?と思うほど。
  • 日本語吹き替え対応
    • スパイダーマンを始めとした、登場人物たちの台詞は全て日本語で吹き替えがされている。
    • ちなみに、原作のスパイダーマンはジョークを連発するキャラクターなのだが、本作はコミック版準拠ということもあってか、少しだけメタっぽいジョークも言う。
      • 例えば、ジャンプのチュートリアルで二段ジャンプをする際に、「物理法則を無視するのは今に始まったことじゃない」と言うなど。

賛否両論点

  • コミック版準拠であり、マーベル作品に詳しい人向けのゲームであること
    • 本作はどちらかと言うと、「スパイダーマン・マーベル作品を熟知しているファンがプレイすることを前提としたゲーム」となっており、スパイダーマンの設定・用語やマーベル関連のキャラクターなどはゲーム内では殆ど説明されない。
      • 本作の舞台設定は主流となるアース616ではなく、タイトルにもなっているアルティメットユニバース(アース1610)である。ピーター、エディ共に高校生で、ピーターに蜘蛛由来の力を宿らせる事になる蜘蛛の設定が放射線による偶発的なものでなくオズコープの実験で意図的に生み出されたものだったり、ヴェノムの出自がシンビオートではなくガン治療のために開発されたスーツであったり、そもそもエディのフルネームが「ジュニア」という根本的な設定からして別物となっている。アルティメット版の翻訳コミックは新潮社より発行されていたが2004年5月30日発行の11巻で打ち切られており、展開としては尻切れとんぼ*2だが当ゲームを予習する上では少なくともピーターとエディの人となりを知る上では大きな参考資料となるだろう。
    • また、スパイダーマン以外にもマーベルコミックのキャラクターたちが何の説明もなく多数登場するため、その点でもマーベル作品を知らない人が本作を楽しむまでのハードルは高い。
      • 一例を挙げると、ゲーム序盤でヴェノムを操作するパートにおいて、ボスキャラとしてウルヴァリンと対決するのだが、知っていて当然と言わんばかりにウルヴァリンの紹介はされない。X-MENを知っていればちょっとしたサプライズになってはいるが……。
    • スパイダーマンのジョークも前述した通りなのだが、他のマーベルヒーローの名前も出したりするので、スパイダーマンしか知らないと、ネタがわからない。
      • 例えば、ジョニー・ストームとのレース対決では、スピードボールムーンナイトの名前を出して「そっちよりも遅い」という旨のジョークを言う。現在でもマイナー寄りなキャラクター*3なのに、当時ヒーローの名前と理解できた人はどれだけいるのやら……。
    • 特に、本作発売から数年前に発売された映画原作のゲーム『スパイダーマン2』と比較されることも多く、写実的だったそちらと違いアメコミ調のグラフィックは、映画でしかスパイダーマンを知らない人からは、否定的な意見も。
      • 一応、フォローしておくとグラフィックの質が悪いわけではない。コミックのようにコマ割りされたカットシーンが入るなど、コミック版を再現したと捉えれば雰囲気は上々。
    • ただし、上記の批評は本作の発売時期(2006年)と発売当時のスパイダーマン及びマーベル作品の日本での認知度・普及度も留意する必要がある。
      • 2006年当時の日本でのスパイダーマンと言えば、2002年と2004年に公開された映画、俗に「サム・ライミ版」と呼ばれるものが有名だった。更にヴェノムがヴィランとして登場する映画『スパイダーマン3』も、本作発売当時はまだ未公開。
      • 現在のMCUのように、別々のヒーロー同士との共演なども映画では殆ど無いような時代。はっきり言ってスパイダーマンの映画を見ただけのライトなファンが、本作をプレイすることはおすすめできない。
    • 裏を返せばマーベル作品を熟知している、ある程度のファンであれば、全く問題ではない。
      • そもそも原作でもスパイダーマンの名を冠したタイトルのコミックでも、他のヒーローとクロスオーバーすることなど当たり前なので、原作コミックを読んだことのあるファンならすんなり受け入れられるだろう。

問題点

  • シティ・ゴールの条件を満たさないと、ストーリーが進行しない。
    • レースやツアーがゲームの進行に必須であるため、ストーリーだけを手っ取り早く楽しみたい人からは、やや面倒な仕様。
  • 相対的な評価となるが、ヴェノムと比べてスパイダーマンの戦闘システムが地味
    • ウェブ・スイングやウェブ・ジップを使いこなせれば、かなりの移動力を誇るスパイダーマンだが、戦闘面においてはヴェノムと比べてしまうと地味に感じる。
    • これについてはどちらかと言うと、ヴィラン故にやりたい放題できるヴェノムの戦闘システムが派手と言った方が適切だろう。
      • 車を投げ飛ばして攻撃したり、掴んだ雑魚敵をへし折ったり、一般市民を吸収したりと、いずれもヒーローのスパイダーマンにはできないことである。
  • 原作を知っている人からしたら、首をかしげるような描写も
    • 最序盤のチュートリアルで、街中でウェブ・ジップやウェブ・スイングの方法を教わるのだが、この時全く素顔を隠していない状態のピーター・パーカーを操作して、操作方法を教わる。正体はバレないのだろうか?
    • ヴェノムのデザインに蜘蛛のマークがない。と言っても、前述したように本作はアルティメットユニバースを原作としており、アルティメットユニバースのヴェノムに蜘蛛のマークは無いので、これ自体は原作通りである。
  • 一度ゲームをクリアすると特にやる事がなくなってしまう。
    • 箱庭モノの洋ゲーにありがちな事だが、周回プレイの概念が無い&ストーリーが全て終了した状態でそのままプレイを続行する事になるために残ったチャレンジを黙々とこなしてギャラリー要素をアンロックする位しかやる事がなく、そうなるとただの作業しか残らない。
    • 本編クリア後はポーズメニューにキャラクターの切り替えの項目が追加される。ストーリーも無くヴェノムを操作してどれだけ長く生存出来るかに挑戦するサバイバルモードといった感覚で、こちらが事実上のエンドコンテンツとなる。
  • その他
    • 何故かゲームの音が小さめなので、テレビの音量を大きくしないと、音が聞こえづらい。
    • 日本語吹き替えは対応しているものの、字幕などは表示されないので、よく聞いておかないと台詞が聞き取りづらい。
      • 特にボス戦などのイベントではスパイダーマンが攻略のヒントを喋ったりするので、ちゃんと聞いておく必要がある。

総評

スパイダーマンのゲームとしてはそこそこな出来だが、アルティメットユニバースの舞台を日本語ローカライズで発売したものとしての希少価値に加えて、
何よりもヴェノムを操作して大暴れできる数少ないゲームでもあるので、スパイディファンはもとより、ヴェノムのファンには、たまらない一作。
グラフィックなどの雰囲気や世界観は、コミック版準拠であるため、映画版のスパイダーマンしか知らないようなライトなファンや、マーベル作品を知らない人に安易におすすめすることはできない。
だが、原作のスパイダーマンやマーベル作品を熟知しているファン向けのキャラゲーとして見るなら、購入する価値のある作品と言えるだろう。


余談

  • 本作の発売後には2007年5月4日に原作の実写映画シリーズの第3作『スパイダーマン3』が公開され、実写版ではヴェノムが初めて登場した。
    • しかし、原作のようなスパイダーマンのライバルと言う立ち位置では無く単なるヴィランの一人のような扱いとなっており、その事に対しては原作ファンからは不満の声が見られた。
      • このような扱いになったのは、監督自身が原作でのヴェノムというキャラクターの立ち位置をあまり理解しておらず、元々登場させる予定の無かったヴェノムをプロデューサーの提案により、実質的に無理矢理実写版の物語に捻じ込むような形で登場させてしまったからだという。
    • それから11年後となる2018年10月5日に先述した映画のシリーズとは切り離された世界観でリブートし直された『ヴェノム』が単独映画として公開され、公開当時はMCUとは世界観を共有しない独自のソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)の作品の一つとして扱われいた。
      • こちらでは上記の批判点を考慮した作りとなっており、好評を博したためか2021年10月1日には続編となる『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』が公開された。なお、タイトルにあるように原作でヴィランとして人気の高いカーネイジがメインヴィランとして登場する。
      • しかしSSUという名称なのに、そのユニバースではマーベル・スタジオとの利権問題の都合でスパイダーマン及びそれらに直接関与する設定は殆ど無かったことにされている為、本作と同様にヴェノムの背中にはクモのエンブレムがあしらわれていない。
      • 後に両社は2019年に利権問題を解消し、MCUとSSUとの間でスパイダーマンのキャラクターを共有することになった。
        (参考リンク)
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最終更新:2022年07月20日 20:36

*1 ちなみにWindows版は同じActivision傘下のBeenox、Xbox版はGC/PS2版を手掛けたTreyarch、GBA版はDS版を手掛けたVicarious Visionsがそれぞれ開発を担当している。

*2 もう一人のスパイダーマンとして2011年に登場したマイルズ・モラレスはこちらのアルティメットユニバースの出身であり(616版マイルズも存在するが)、新潮社の翻訳版アルティメットスパイダーマン打ち切り後の空白期間を経てマイルズ版スパイダーマンとして新たに「スパイダーメン」などのタイトルが翻訳刊行される間にアルティメットユニバースでのピーターはグリーンゴブリンに殺され(後に復活)、売り上げの低迷から「アルティメット」を冠する同ユニバースの他タイトル全てが終了。またアルティメットユニバースそのものが2015年の「シークレットウォーズ」で消滅…といった流れとなり、激動の終止符を打つ事になった。

*3 スピードボールは「シビルウォー」勃発を招くきっかけとなった事件を引き起こしたヴィラングループを追っていたチームの生き残りとして「悪名」が拡散されて悲惨な立場としてそれなりに名が知られる事となり、ムーンナイトは翻訳コミックやMCUフェイズ4にて登場したことにより日本でも認知度が上がった。