忘れないで、おとなになっても。
【わすれないで おとなになっても】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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iOS 11.0以降 Android 5.0以上
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メディア
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ダウンロード専売
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発売/開発元
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株式会社GAGEX
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配信開始日
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2020年2月26日
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定価
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無料(VIPモード:490円)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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10個(VIPモード時20個)
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レーティング
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10歳以上
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判定
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良作
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ポイント
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昭和後半から平成前半生まれ向けか 3日間のタイムスリップ
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概要
街や登場人物がボクセルアートで構成されたADV。
家族に病人を抱える小学生ミナトが、未来のミナトにタイムスリップを持ちかけられ、過去改変しようとするのが物語の発端。
あらすじ
ある夏休みの日、母とともに加賀美町へとやってきたミナトと妹であったが、別居している父の出自が気になり、町の人に聞き込んだところ父が既に故人であることがわかった。
父がいる墓に行ってみると、住職から父の形見として「七不思議ノート」を託される。ノートには「ノゾミという少女を探せ、そして七不思議を解け、そうすれば必ず夢が叶う」と書いてあった。
登場人物
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ミナト
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小学5年生。度々、未来に本当に起こる内容を予知した白昼夢を見る。
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妹のミライは重い病気をかかえており、母とミナトは骨髄ドナーとなったものの適合しなかった。
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タイムスリップで父が生き残る未来を作れれば、妹の病気が治せるかもしれないと考えている。
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ミナトの母
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家族について何かしら辛い思い出を抱えているのか、あまり家族のことは話してくれない。
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慰霊祭に向かうため「加賀美町」にミナトとミナトの妹も連れてくる。加賀美町で33年前に父と出会ったらしいが、父の消息については子供たちに明らかにしていなかった。
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本人も何かしらの病気を患っているようだが…。
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大人になったミナト
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七不思議ノートが指し示す、加賀美神社に待っていた謎の人物。
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ミナトの家族の現状と、33年前の加賀美町の悲劇を止めようとタイムスリップを試みたが失敗したらしい。少年のミナトにタイムスリップを持ちかける。
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ノゾミ
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七不思議ノートにて、キーパーソンとされている少女。
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加賀美町の外の町から来ており不思議な雰囲気を持つ。どうにも虐待されている様子。
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本当の名前があるようだが…。
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神社で会った子供たち
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33年前の加賀美町で会った。身寄りの無いミナトを体育館倉庫にかくまってくれ、七不思議ノートにも興味を持ち解決を手伝ってくれる。
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ワタルは穏やかな性格の子供。両親はともに他界している。
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アッコは神社の一人娘。厳格な父親に育てられている。男勝りで気が強いが臆病なところもある。
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コテツは銭湯の一人息子で熱血漢。父親の暴力と酒癖に悩まされている。
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3人とも夜の学校の体育倉庫を秘密基地として出入りしているが、特に犯罪を犯すわけでもなく人当たりも悪い人たちではない。
システム
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ゲームの流れ
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全16章。原則1本道チャートのADV。シナリオの進捗に応じて、ミナトを操作して街を歩き回らせイベントを起こしていく。
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目的を忘れたところで、地図とヒントでこれからの目的地を確認できる。
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時折選択肢が出ることがあるが、これはいままでの物語のおさらいとしての意味合いが強い。いままでのストーリーの理解度を問うようなおさらいの問題が出され、正解を選ぶまでやり直しさせられつづける。
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七不思議ノートはいつでも見ることが出来るが、そこに記されている七不思議はシナリオにしたがって段々と解決されていく仕組み。プレイヤー側が能動的に解決する順番を決めたりは出来ない。
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七不思議ノート
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父の形見として託された謎のノート。誰かが手書きで七不思議、ノゾミ、そして昔の加賀美町の地図について記してある。
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ゲーム中では「ナゾ」「地図」の2つをメニューの一環として閲覧可能。
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ナゾはミナトに課せられた「七不思議」にとどまらず、本ストーリーの中で生じた未回収のフラグも一覧化される。解決したナゾについては解決した旨も記載される。
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コレクションアイテム
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本作の寄り道要素。
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街の端っこにある怪しいところ等を調べると、昔なつかしのアイテム(ボクセルアート調)を収集していける。
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そのほか駄菓子屋、銭湯、たばこ屋の3箇所に設置してあるガチャガチャから入手できる。
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ガチャガチャとはいうが、ガチャガチャで手に入るアイテムは決まっておりまたダブることは一切無い。
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コレクションの内容は、昔懐かしき空気で動くカエルのおもちゃ、梅ジャム、月刊ムー等。
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物語が進むと、町の各所にいる易者に所在場所のヒントを占ってもらうことができるようになる。
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イベントで強制的に入手するものも中にはあり、「七不思議ノート」もそのひとつ。
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スクリーンショット
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フリーフォトモード
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攻略には特に関係の無い要素。
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ボクセルアートで表示される地形について、絵になるエリアは多いので、写真を取って楽しむことは可能。
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スマホ画面端にあるUIが映らなくなったり、画角を変えたりもできるので、スマホのスクショの下位互換とはなっていない。
その他
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広告要素
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エリアチェンジ時、イベントの暗転時に即スキップ可能な広告が発生。
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セーブ時に10秒、次の章に向かうときに30秒の広告が発生。30秒の広告は中断は可能だが、中断すると特典が得られない。
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通信状況が悪いと、広告が見れずゲームを先に進められないことはある。
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上述の易者や流しに何かしらのサービスをしてもらうときにも30秒の広告視聴必要。
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コイン
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課金や広告視聴の代わりに利用できるアイテム。コレクションアイテムと同じく各所を調べると2~3枚程度入手できる。
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ガチャガチャをまわすには3枚、次の章に行くには10枚消費する。コインを尽かしたところで、先に進めなくなるといったことは無い。
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VIPモード
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490円課金することで以下の特典がある。
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広告の視聴が一切不要になる。次の章に進むときやフリーフォトモードも広告を見る必要が無くなる。
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セーブスロットが20に増える。
評価点
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テーマ性
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主人公ミナトの家に起こっている不幸や、ミナトが抱く温かい家庭への憧れというものが、その他登場人物の考えとよく類似している。
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それぞれの登場人物がみな多かれ少なかれ家庭不和や虐待といった問題を抱えており、良い大人になれるかということ、暖かい家族をつくれるかということについて悩んでいる。タイトルのメッセージ「忘れないで、おとなになっても。」がきちんと回収される。
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今の不幸が、過去のどんな出来事に端を発しているのかをきちんと理由付けされつつ、きちんとその原因を解決したうえでハッピーエンドへと向かっていくので読了後に一種の爽快感は味わえる。
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その他、ある一定以上の年齢層のプレイヤーであれば、昭和の子供の頃抱いていた冒険心がプレイしていてよみがえるかもしれない。
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物語フラグ関連
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ノゾミの正体は何か?といったテーマが中盤まで繰り広げられるが、序盤からある程度類推するためのヒントがちりばめられている。
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中盤まではテンポがゆるやかで、11章ころに物語が一気に動き出すといった構造。中盤までの何気ない日常シーンが、実は終盤の出来事に関連していたりする。
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時間遡行というテーマがあるため、設定に強引な運びが無いわけでもないが、きちんと本作で提示されたフラグや設定を活用して説得力のある展開にすることはできている。
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街には特にストーリーに関係のないNPCもちょくちょくいるが、その人たちの発言も伏線に関連しているものだったりする。
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グラフィック
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キャラクターや地形は、ボクセルアートと呼ばれるドット絵を立体的にしたような独特なデザイン。
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昭和の町並みの雰囲気は再現されている。電車の床が木造だったり、校庭に焼却炉が置いてあったり、ビール瓶のケースが家の横に積まれていたり。
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カメラの近くをさえぎる物体はピンボケするように表示され、空は入道雲が流れていくさまも再現されている。電車に乗っているときは車窓から見える景色がきちんと流れていく。
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丁寧なガイド
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ちょくちょく選択肢形式で物語をおさらいする。読み逃した細かいフラグも再度確認することは多いので物語の本質を見失いにくい。
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易者が各所にいてくれるおかげでコレクションを集めやすい。またシナリオの都合上二度と行けなくなる(≒コレクションを回収しにいけなくなる)場合は、事前に警告してくれるなど手助けにはなる。
問題点
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対象となるプレイヤー層について
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大きな問題とはいえないが、本作のメッセージはある程度大人になった層でないと伝わらない内容である。
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また33年前の加賀美町の町並みやアイテムをなつかしいと思えるのは、せいぜい平成初期生まれまでかと思われる。
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ワープ・スキップ機能について
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一応バックログ機能は持っているが、その他にも既読のシナリオを早送りしたり、マップまでワープする機能はない。
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ストーリーを再度読み返したくなった場合のことも考え、チャプターセレクト機能があると尚のこと便利だったと思われる。
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地形は若干覚えづらい
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マップは決して広くは無いのだが、似ている地形が多い。
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学校、駅、神社と墓を行ったりきたりすることが多いので、これらの大まかな位置関係を覚えていくと攻略がスムーズになる。
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なお地図を見ることも出来るが地図のデザインが独特で若干見づらく、また視聴回数2回につき1回は広告が入る。
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やりこみの一環ではあるものの特に、コレクションアイテムを探すとなるとこまかい地形を覚える必要が出てくる。
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序盤のシナリオの方向性が少しわかりにくいかもしれない
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序盤のノゾミは、不思議ノートで言及されるだけの半分空想的な存在であり、本人にきちんと会って登場人物欄に登録させられるのがかなり後になる。
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序盤のミナトたちは、本人不在のままノゾミによく言及するので、プレイヤーはストーリーに若干ついていくのが大変。
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ミナトが予知夢を見る理由については、作中では特に明確な理由が語られていない。序盤は、とりあえず夢で起こる悪いことを流れに任せて阻止して、七不思議ノートの謎も勝手に解決されていくような雰囲気は多少出ている。
総評
ゲーム性よりも物語性に特化したアプリ。過去に起こった悲劇を回避するべくタイムスリップするというのがお話の本筋であるが、懐かしく切ない昭和の町と友達に触れ合うことで「大人になることを不安に思っていた自分」を体感できるかもしれない。
余談
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2021年12月2日にNintendo Switchでも1800円で発売開始。単なる買いきり移植ではなく、シナリオやコレクションを追加した完全版であるとのこと。
最終更新:2023年09月16日 16:35