Silence

【さいれんす】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 Nintendo Switch
メディア ダウンロード
発売元 Daedalic Entertainment
開発元 Stage Clear Studio
発売日 2021年4月8日
定価(税込) 2,390円
プレイ人数 1人
セーブデータ 3個
レーティング IARC 12+
判定 良作
ポイント 美しい背景画で描きこまれた異世界
難易度は低めだがストーリーが急ぎ足

概要

ドイツの企業であるDaedalic Entertainmentが発売したゲーム作品。2016年にSteamで初リリースされたのち、PS4版・Switch版が発売されている。

ゲームシステムとしては、登場人物を3人称視点で動かす余地のあるポイントクリック式ADVといったところ。戦災に巻き込まれていた兄ノアは妹レニーに「サイレンス」のおとぎ話をきかせて慰めてやっていたのだが、敵の空爆で倒壊した防空壕が本当にその「サイレンス」とつながっていたところから物語が始まる。

登場人物

  • ノア
    • 16歳の戦災孤児。妹を励ますためにサイレンスというおとぎ話の話をしてあげていた。
    • サイレンスそっくりの世界に迷い込むも、そこを現実に存在しない世界(生と死のはざまの世界)だと判断し、妹とともに脱出しようと画策する。
  • レニー
    • ノアの妹。非力ではあるが、どういうわけか敵性生物「シーカー」に存在を認知されずに行動できる。
  • スポット
    • サイレンスのおとぎ話に登場する心強い味方。空想の存在であったが、サイレンスの世界では具現化して孵化した。
    • 普段は芋虫のような外観をしているが、体を変形させることができる。
    • 力持ちだがよじのぼるのは下手。様々な液体を体に取り込んで持ち運んだり、取り込んだ物体にちなんだ特殊能力を発現する。
    • また火をつけられても平気で、火をまとって何かを燃やすことで道を切り開くことがある。
  • 敵勢力
    • ホッケーマスクのようなものを身に着けゴリラのように歩行する得体の知れない生き物「シーカー」が本作の敵として登場する。
    • ノアや反乱軍の面々が1対1で対処できないほどには強い。選択肢を間違えると登場人物がやられてゲームオーバーとなることも。
    • 偽りの女王という存在の命令にしたがい、生きている人間を狩ろうとすると同時に、とあるアイテムを探しているような挙動を見せる。
  • 反乱軍の面々
    • シーカーの魔の手に堕ちずに生き残っている「サイレンス」の住民たち。
    • カイラという女性と、サミュエルというガタイのいい男性、ジャナスという高齢男性が登場する。
    • ゲーム中は話しかけたりは出来る場合があるが、彼らを操作することは出来ない。
    • カイラとノアはいまいち馬が合わない。

システム

  • 3人称視点でノア、レニー、あるいはスポットを操作し、おとぎ話のような世界を探索する。
  • 概要の通り、登場人物を怪しい場所に近づけて何かしら調査・作業することで、ストーリーが進捗していく。
  • 左スティックで移動。近くにある物体をAボタンで調査できる。近くに物体が複数あるい場合は、右スティックでどの物体を調査するか選択できる。
  • カメラアングルは固定されている。
  • 左スティックを押し込むことでヒントを閲覧できる。ヒントでは、登場人物が「先に進むために必要と考えていること」と調査できるすべての物体が一挙に表示される。
  • ヒントで出される指示がなかなか具体的なため、難易度自体は低い部類に入るかと思われる。
  • Xボタンで操作キャラ交代
    • ゲーム中の場合にもよるが、ノア、レニー、スポットの3名が同じところに居る場合は誰を操作するか切り替えることが可能。
    • スポットを操作している場合は、変形もさせられる。ZL長押しで平板状に、ZR長押しで球体状になる。ほどほどに押し込むと中間の芋虫状になる。
  • 選択肢
    • 2択の選択肢が出てくる場合があるが、どちらを選んでもその後の展開が変わらないことは多い。
    • 選択肢を間違うと一発でゲームオーバーとなる場合がまれにある。
    • 時折、左スティックを左右に動かしてバランスをとったり、照準を合わせてAボタンを押すといった、QTEのようなものも出てくるが難易度は低め。
  • 先のエリアにすすむごとに自動セーブされていく。
  • 音声はフルボイスだが全編英語。日本語字幕には対応している。
  • こういったジャンルのゲームが得意かどうかにもよるが、プレイ時間は5時間程度と思われる。

評価点

  • グラフィック・モーション
    • 全編通して絵画のような背景画が美しい。サイレンスの造詣自体が、現実世界から離れた幻想的なものもあるが、木々や水面といった自然物の描きこみもしっかりとしている。
    • 特に背景の枚数は、数時間でクリアできる短いゲームながら数十枚は用意されており、手抜きに思える背景も存在しない。
    • 登場人物はいわゆる2.5Dで表現されており、背景の雰囲気に溶け込みつつも自然に動き回る。
    • 妹のレニーの歩き方がかわいい。またスポットが平版や球体に変形するモーションもしっかり作りこまれている。スポットが溶岩を取り込んだ時に岩石のようなテクスチャに変化するなどグラフィックも凝っている。
  • ゲーム中の誘導が丁寧
    • 主人公たちが調べられる対象の表示方法が良好。表示のON/OFFもコンフィグから設定可能なので、プレイヤーが好きな難易度に変えることができる。
    • 見て調べられるだけの物体に対しては「目のアイコン」が出て、足で蹴る物体に対しては「足のアイコン」が出たりなどする。登場人物が(ひいては製作者側が)何を意図しているのかわかりやすい。
    • スティック押し込むことで、調べられる物体をすべてアイコンで表示する機能がついているほかヒントも表示される機能もある。
  • 直感的にできる操作
    • 大抵はAボタンで適切なものを適切なタイミングで調べれば、先に進め、アクションが苦手な人でも安心して手に取ることができる。
    • 何か重いものは、Aを長押ししつつ左スティックを特定の方向に倒すことでゆっくりと動かすことができ、直感的にゲーム中の物体に干渉ができる。
    • スポット操作時は、球体のとき・平板のときに物を調べると結果が変化することがあるので、いろいろ試してみる機会がある。
+ 終盤のネタバレ
  • 終盤の分岐
    • 最後の最後で、とある鏡をどうするかで2択が発生する。
    • レニーがこのとき現実世界でおかれているとある悲劇的な状況を敵の親玉に知らされたうえで、サイレンスの世界にとどまるか、現実世界に帰るかどうかの2択となり、切ないシーンとなっている。

問題点

  • 台詞関連
    • 字幕が登場人物の発話に対して細かく設定されすぎている。
    • 複数人がしゃべると台詞が一挙に表示されて見にくい。さらには字幕も一瞬しか出ないことがある。
    • なおスポットは、言葉にならないような唸り声で感情表現するのだが、それにもいちいち字幕を当てたりするので違和感はある。
  • 中盤までのシナリオまわりが急ぎ足
    • 兄ノア、妹レニー含め、異世界である「サイレンス」のあれこれを知っている前提で話が進む。
    • 一方で、プレイヤーは当然サイレンスのおとぎ話について知らないし、作中で丁寧に説明されるわけでもないので、登場人物の行動理念がわからず置いてけぼりを食らいがち。
    • 選択肢のどちらを選んでも、その後のリアクションがちょっと変わる程度でシナリオの流れは大きくは変わらない。
      + ネタバレ注意
    • 兄妹の会話から「ピエロのサッドウィッグ」がサイレンスのキーパーソンらしいことはわかるのだが、本人が登場しないまま会話での言及ばかりされるキャラとなっている。
    • あくまで子供が作る「おとぎ話」がベースになっているからかもしれないが、脈絡無く発生する超展開はわりかし多く、あまり理屈で考察できるシナリオではない。ぼんやりとした世界観が好きな人にはよいかもしれないが。
    • 反乱軍の設定やシナリオまわりも安定しない。
      • 特にカイラは、最序盤にヒロインのような印象を抱かせたかと思ったら、妙にノアと意見が衝突するほか、石化してみたり、急に老化してみたりと扱いがひどい。
  • 読み込み時間・待ち時間関連
    • キャラクターの移動が原則として歩行のため、全体的にゲームテンポがもっさりとしている。
      • マップの一区画を端から端まで移動するのに10秒近くかかるイメージ。またゲームをロードしたときの読み込みが20秒ほどと長め。エリアチェンジにも5秒ほど暗転あり。
    • 物体を2回目に調べてもさっきと全く同じ会話が発生することがあり、またそれらをスキップできない。

総評

全編にわたって美しく表現された「サイレンス」の世界観が大きな特徴といえるゲーム。シナリオ自体わからない点がないわけでもないが、探索型のADVとしての破綻は特に無く、プレイヤー側が色々試す余地のあるゲームバランスとなっている。

最終更新:2022年08月29日 18:24