モフモフ戦線

【もふもふせんせん】

ジャンル 対戦格闘
対応機種 Nintendo Switch
メディア ダウンロード専売
発売・開発元 板装甲
発売日 2022年6月16日
定価 700円(税込)
プレイ人数 1人~2人
レーティング IARC:12+
判定 良作
ポイント ケモノ系対戦格闘ゲーム、通称『ケモ格
良い意味で700円とは思えないクオリティー
オンライン対戦には非対応


概要

2022年5月21日の『INDIE Live Expo』で突如発表されたインディーズゲームの1作。公式の略称は『モフ戦』。
その名の通り擬人化された獣人キャラクターが格闘で殴り合うと言うインパクトから話題を呼んだ。
開発元は個人事業でインディーゲームを開発・販売する「板装甲(BURNSOUCOU)」。
一部キャラクターデザインと一部エフェクトを除いたプログラミング・グラフィック・音楽・キャラクターボイスなど、ほぼ全てを板装甲を立ち上げた永嶋晃氏の一人が担当している。
本作はNintendo Switchで発売されているスマイルブームのプログラミングソフト『プチコン4 SmileBASIC』で開発され、製作期間2年半を経て発売した。


特徴

  • 基本操作
    • 攻撃は、弱攻撃・中攻撃・強攻撃・特殊攻撃・投げ攻撃の計5つ。
      • 弱攻撃・中攻撃・強攻撃は、しゃがみ状態と空中で出すことも可能。
    • 必殺技はキャラごとに計5つまで。
      • ただし、必殺技以外にもキャラクターごとに特殊な動作がそれぞれある。
  • システム
    • EXゲージ
      • 超必殺技を放つためのゲージ。なお、全てのキャラにおいてゲージは1本のみ。
    • SPゲージ
      • キャラごとの特殊な行動を使用するためのゲージ。ゲージのメモリは4本。
    • ガードクラッシュ
      • 攻撃をガードし続けると、相手の全攻撃がガード不能になって強制スタンさせられる。
    • オートアドバンシングガード(AAG)
      • 攻撃をガードすると、自動的に相手との距離が離される。
    • これらのシステムは、設定で一部ON/OFFすることが可能。
  • 1本先取の1ラウンド制と、2本先取の3ラウンド制から選択可能。
    • 2本先取のルールの場合、勝利した側のライフが次のラウンドに、ある程度引き継がれる。
+ プレイアブルキャラクター紹介
  • ZIG(ジグ)
    • メインビジュアル中心にも描かれている黄色の体毛をした本作を象徴する格闘家の獣人の少年。戦火の中で孤児達を安全な場所に送り届ける事を目的としている。マッポとは関係あるらしく、彼女に敗北すると『私のお下がりは気に入った?上半身が裸よりマシでしょう?』と言う専用会話が聞ける。コマンド技のシューティングスターは拳からキラキラ星を飛ばすと言うシュールな技である。
    • 個別のエンディングでは子供達を安全な場所へ送り届けた後、腕の細い謎の人物から落とした帽子被せられ、野原でグッスリ寝ている姿が描かれている。
  • MAPPO(マッポ)
    • 薄水色の体毛をした女警官のチンチラ獣人。7人の中ではジグと並ぶ小柄な体格だが、拳主体で攻めるジグとは異なり、彼女の場合は蹴り技主体となる。
    • 体に似合わず巨乳のハイレグ警官で、オマケモードで閲覧出来る画像によると戦場で数々の任務を完了させた凄腕の女警官である事が明かされる。 個別のエンディングでは蹴り技でメディに勝利した後鼻提灯を垂らしながら敬礼したまま寝る 姿が描かれる。
  • DAIHUKU(大福)
    • 刀を携えた兎獣人の東洋の女武士。本作唯一の刀使いであり、刀を使う他、兎耳を伸ばして攻撃する等の技がある。故郷の島国を旅立って体1つで海を越えて大陸に上陸したと言う猛者である事がオマケモードの画像で明かされている。
    • 勝利時に取るポーズで大胆にバンザイをする等、出身国の影響が強く、彼女の住んでいた島国は極寒の地で、現在は戦争により滅亡していると言う事。
    • 対戦時にメディに勝利すると『そんな長い髪短く切ったらどうだ?』と言う専用の会話が聞ける。個別のエンディングでは、イチゴ大福を食べながら花火を眺める、故郷の島国にいた時の彼女の姿が描かれている。
  • SIWON(シヲン)
    • ライフルを携えた羽耳の男性。2Pカラーを選択すると胸が大きくなり性別が女性になるというTS要素がある。
    • ライフルによる射撃を得意とする他、その銃で殴りつける近接戦闘も行う。公式サイトで2進法のメッセージが使われたり、透明化や遠くの一点に攻撃判定を出す技など、ストリートファイターIIIのトゥエルヴを思わせる要素がいくつかある。個別エンディングでは、幼少期の過去が明かされる。
  • VANKOV(ワンコフ)
    • 『MUSEUM』を防衛する消防士の犬獣人の男性。とにかくガタイが良く、勝利時に『己の肉体で勝負すべし』と主張するせいか腕っぷしが強い。プレイアブルキャラ7人の中では容姿・性格共にもっともケモノ要素を押し出され、対戦中に吠えたり語尾に『わん』と付けるのは彼だけである。性能面ではガード硬直をも投げるコマンド投げでのハメに特化し、何故かコマンド技の1つで口から吹雪を吐いたりするなど技もユニーク。
    • そのガタイの良さから、科学者であるメディからは一目置かれており、彼女に敗北すると『もの凄く鍛えられたお肉だこと』と言う専用の発言が聞ける。容姿に似合わず几帳面で、普段は『MUSEUM』に蔵書されている本の整理を行っている事がオマケモードの画像で明かされている。個別のエンディングではテロリストの放火から本を守るために消防士として出動する姿が描かれる。
  • MEDY(メディ)
    • 看護師の姿をした猫獣人の女性。看護師でありながらロストテクノロジーが使える謎多き科学者である。メインゲームのトリを勤める事から彼女が実質的なラスボスに該当する。勝利時のセリフによると戦闘を行うのは研究の為であるらしく、生かす事が目的だというが、Omakeテキストやステージ背景から察するに実験のためなら犠牲者が出るのも厭わないようだ。
    • その戦闘スタイルも独特で、投げ技時にビンタやハイヒールによる蹴り技等の格闘技を得意とし、注射器による殴打と背後に浮遊するモノリスを武器とする。また、プレイアブルキャラの中で彼女だけ回復技が使える。
    • 個別エンディングでは新しい種族の創造の為に第6感を持った獣人達を見つけ出し、研究に明け暮れる姿が描かれる。
  • DUNKER(ダンケル)
    • メインゲーム上での隠しキャラクター。赤茶色の体毛をした獣人の男性で、数々の戦場を渡り歩いてきた歴戦の兵士。二丁拳銃と蹴り技で戦う。
    • 隠しキャラクターであるせいか非常に冷酷で口数が少ないが、個別エンディングでは元は心優しい一介の兵士である事が明かされ、ツーマンセルで行動していた戦友を失ったせいで現在の人格が出来上がったと言う事。額のゴーグルはかつての戦友が身に付けていた物であり、ダンケルという名も戦友のものを襲名している。

評価点

格闘ゲームにあるまじき独創的な世界観

  • 端的に言うなら本作は『牧歌的で可愛らしい動物擬人化キャラクターが餓狼伝説の様な対戦格闘ゲームで殴り合う』と言う物。
    • 昨今のゲームにおいて動物擬人化のビジュアルを用いた獣人キャラクターと言う物は珍しくはないが、ここまで大胆に踏み込んだゲームは本作位しかなく、その奇抜なビジュアルは特筆すべきものがある。
    • 例として挙げるのならば、本作を代表するステージ『OPENSPACE』では、戦争で荒廃した都市が舞台にもかかわらず、 獣人達が元気良くステージの奥を走り回り、可愛らしい風船が飛び交う と言う物。他にも巨大な図書館が舞台となるステージ『MUSEUM』やレトロチックな飛行船の残骸の元で勝負が行われるステージ『FORESET』等、牧歌的な獣人の世界にマッチしたビジュアルデザインが行われている。また、ヒットエフェクトに『』と言う直球の描き文字(設定で切り替え可能)が使われている等シュールな一面が強い。
      • その影響あって格闘ゲームでよくある殺伐さは本作では抑えられており、果たし合いと言うよりはスポーツに近い雰囲気である。
      • ただし全体的な雰囲気は明るいが、とあるステージに映し出される『獣人の世界の成り立ち』だと思われる映像はグロテスクさを含み、バックボーンにある世界背景は重くダークな物を感じる
+ 実は良く見てみると・・・・・
  • メインゲームで表示される世界地図を良く見てみると、本作の世界が現実世界よりも遥か未来の、大陸の殆どが消失している世界である事が分かる。DAIHUKUの出身国はかつての日本だと思われ、一部の獣人達は科学技術を使い、月に移住しようと計画していた事が分かる。
  • 登場する獣人達も皆個性的で、『戦災孤児たちのリーダー』や『秘密警察』等、それぞれが被らない特徴的なキャラ付けが行われており、見ているだけで飽きさせない工夫が成されている。また、獣人があるが故にそれぞれが特徴的なシルエットで描かれており、可愛らしい容姿でラッシュを行う等アクロバティックなアクションが魅力的である。

定価700円という値段の安さ

  • Switchで配信された様々なインディーズの格ゲーと比較しても定価700円はかなり安い。
    • 参考までに同じくSwitchで配信されているアケアカNEOGEOシリーズの格ゲーですら800円台である。

ドット絵で描かれた良質なグラフィック

  • あくまでインディーズ作品という括りでの評価点となるが、グラフィックは上質な出来。
    • ドット絵と言っても、他のインディーゲームでよくあるレトロ風な小さ目のものではなく、それなりの大きさで細かく作り込まれており、良い意味で700円とは思えないクオリティー。

格ゲーとしての出来も上々

  • 700円という安価に対して、システムはしっかりと出来ている。
    • トレーニングモードにおける、当たり判定可視化・レコード・リプレイ機能も搭載されている。

その他の評価点

  • 地味なところだが、操作方法やボタン配置も、Joy-Conのおすそ分けプレイに対応するように配慮されている。
    • もっとも、Joy-Conのスティックの耐久性を考えると、割とガチな格ゲーである本作でおすそ分けプレイをするのは推奨できないが。
  • 対戦モードにおいて特定のキャラ同士の組み合わせで対戦する、特定の条件を満たして勝と勝利時のセリフが異なると言う仕様が存在。同じキャラ同士で対戦すると『自分に似た相手に対する勝利時のセリフ』が聞ける。勿論、どのキャラにも特殊セリフが用意されているので、色々試してみると意外な発見がある。

賛否両論点

  • あくまで価格相応のゲーム内容
    • 格闘ゲームとしては作り込まれているが、ゲームモードが大きく別けて『フリーバトル(対戦モード)』と『メインゲーム(アーケードモード)』しかない為、良く言えばシンプルに、悪く言えば非常に簡素な仕様となっている。
      • 本作のソロプレイに該当する『メインゲーム』も連戦を行い最後に各キャラクターごとのエンディングを鑑賞すると言うもので、クリアすると大胆に『GAMEOVER』と表示されるレトロゲー仕様の演出となっている。
      • 一応、本作の収集要素としてゲーム内での特定の行動を行う事で実績が解除され、特典の画像を閲覧出来るモードが存在する。しかし、画像自体が極小なせいで見辛く、拡大すら出来ない為に粗が目立つ。
      • 加えて各キャラの個別エンディングを鑑賞するモードが存在しない為に、何度も見たければスクリーンショットを保存しなければならない。

問題点

  • オンライン対戦には非対応
    • プチコン4の仕様上仕方ないことだが、オンライン対戦は非対応。2022年という時代も考えると少々寂しい。
  • スペルミス、誤字について。
    • DAIHUKUは試合時ではDAIFUKUと表記されており、SIWONはスコアランキングにおいてSIONEと表記されているといった表記ゆれがチラホラ。
    • 誤字と思わしきテキストも散見されており、DUNKER同キャラに勝利した時の『貴様はもう必ない』や、左側勝利時に『Lift Side Bonus』になっている等、ありとあらゆる場面で誤字を見つけられる。
  • メニュー等の選択肢が英語表記
    • 往年のクラシックなゲームらしさを醸し出している部分はあるが、昨今のゲームとして見るとやや不便。
    • なお、コマンドリストやキャラクターの台詞などは、ちゃんと日本語表記になっているので、そこは安心して欲しい。
  • 隠しキャラクター含めてプレイアブルキャラクターは7人のみ
    • 格闘ゲームとしては良質な本作だが、ゲーム中で使用できるキャラクターが合計で7人と格闘ゲーム黎明期並みに少ない為、プレイヤーにとっても物足りなく感じる事がある。
      • そのうち1人は隠しキャラで特定条件を満たさないとアーケードモードで使用できない。ただし対戦モードでは最初から使用できる。
    • 従ってゲーム中の進行は全てこの7人で進行する為に、非プレイアブルの敵キャラが登場する等の凝った仕様のモードは存在しない。
  • 発売後の無償アップデートは一切なし
    • 個人制作の弊害か発売後のバグを修正するアップデート等は一切行われておらず、公式ツイッターも発売を機に更新が途絶えたままである。やはり何かしらのアップデートは欲しいものだが、対応無しは不適切である。

総評

獣人キャラクターたちによる対戦格闘という他ではあまり見られない特徴が光る一作。
700円という安さに対して作り込まれたグラフィックやゲームシステムなど、格ゲーとしての基礎はしっかりとできているのも評価点。
全体的な雰囲気・システムがクラシック寄りだったり、オンライン対戦非対応など、昨今の格ゲーと比較してしまうと見劣りする部分もあるが、定価700円という安価を考えれば許容範囲内と言えるだろう。


余談

  • 概要にも書いた通り、本作は2022年5月21日に行われた「INDIE Live Expo 2022」で情報が初出しされた。
    • だが、その紹介映像は10秒程度の短い内容であり、発表から発売まで10日もない*1上に、発表当時は本作に関する情報がネット上に全くと言ってよいほど無かったため、あまりにも唐突な情報発表に、多くのゲーマー及びケモナーたちを困惑させた。
    • INDIE Live Expoのサイトに板装甲の公式サイトへのリンクがあったが、そこにも本作に関する情報が全く記載されてなかったどころか、設立したばかりだったせいなのかほぼ白紙状態のウェブサイトであったことも、ユーザーを困惑させた一因だろう(現在は情報が追記され、ビジュアルも改善されている)。
    • (参考:AUTOMATONより
  • 開発者の永嶋晃氏は経歴どころかインタビューすら一切受けたことの無い謎の人物で、公式ツイッターのヘッダーアイコンは兎の獣人の目と口が描かれたバケツを被った人物の画像が掲載されている。
    • またケモノで有名なサイバーコネクトツーとの関係性を示す発言をしているが、単なるリスペクトで匂わせているだけの模様。(Twitterでの参考ツイート

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最終更新:2023年10月02日 12:17

*1 発表当時は2022年5月配信予定だった。