仮面の忍者 赤影
【かめんのにんじゃ あかかげ】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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東映動画
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開発元
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ショウエイシステム
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発売日
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1988年5月20日
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定価
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5,300円
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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ポイント
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低評価作品を数多く制作した開発元&発売元とは思えない良い出来 原作の再現度もそれなりに高め 仲間の2人がお荷物気味なバランス
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少年サンデーシリーズ
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概要
1988年5月に東映動画が発売したアクションゲーム。
原作は横山光輝氏による忍者漫画で1966年末から『飛騨の赤影』として週刊少年サンデーで連載開始。『仮面の忍者 赤影』としては1967年4月から1968年3月までフジテレビ系で実写ドラマされた折につけられたもので併せて原作漫画も同名に改題されている。
本作はその新シリーズとして1987年10月~1988年3月まで日本テレビ系で放送されていたアニメと、それに伴う形で同時期『週刊少年チャンピオン』で連載された漫画『新・仮面の忍者 赤影』をベースにしている。
ストーリー
時は戦国時代、日本支配を狙う悪の教団「金目教」が栄の町の富を手にしていた。
栄の町を守るべく信長の密命を受けた「影一族」の忍者が戦いを挑み、「金目像」を撃破した忍者赤影は巻物を発見する。
それによると金目教の教祖「幻妖斎」は未だ場所もわからない「幻魔城」にいるらしい。
幻魔城を捜し出し幻妖斎を倒すべく赤影、白影、青影の3人は新たな戦いに出るのであった。
内容
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横方向スクロールのアクションゲーム。
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基本的には主人公赤影を操作する。
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青影、白影も設定上では同行しており、交代ができるが見た目としてはまるで変身でもしているように見える。
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一部の建物の入り口や、ハートマークのある部分で上を押すと富蔵に会うことができ(赤影のみ)、アイテムや情報をもらうことができる。
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ゲーム自体は三部構成になっている。
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ストーリー1
栄の町→甲賀の森→岩谷村→大鷲の森→鬼念坊の森→鬼面山→金目像と進み金目像を破壊するのが目的。金目像を破壊できれば巻物の1つが手に入る。
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ストーリー2
前出の7ステージに武家屋敷の計8ステージが加わりステージを抜けると、ステージをつなぐ十字路やT字路があり道を選択する。ここでは巻物の残り2つを揃えて幻魔城への道を開くことが目的。
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ヒントを元に目的物である巻物を探す、謎解きアクション。
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ストーリー3
幻魔城内での決戦。
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前2ストーリーとは違う専用ステージ。根本的にはストーリー1と同じステージクリアのスタンダードな方式だが難易度は上がり、原作の強敵との連戦が待っている。
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武器
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忍者刀
振り下ろして斬る近接武器。使い勝手は良くない。ただ魔童子に唯一通用する武器である。ストーリー2で富蔵から正峰を貰うことで威力が高くなる。
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手裏剣
一直線に飛ぶ投擲武器。普段はこれを使うことが推奨される。ストーリー2で富蔵から「飛騨十字」を貰うことで2連射できるようになる。
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爆弾
富蔵からもらうことで使うことができる。山なりに近くに飛ばす武器で射程は短いが威力は最も高い。
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地雷火
投げると爆弾と同様に近くに落ちる。敵が触れると爆発する。赤影自身が触れる分には問題ない。
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ブーメラン手裏剣
投げると遠くまで半円を描いて戻ってくる。
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アイテム
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青のよびこ
青影を呼び出すことができる。有効時間内は青影がプレイヤーキャラとなり一定時間が経つと赤影に戻る。
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白のよびこ
白影を呼び出すことができる。有効時間内は白影がプレイヤーキャラとなり一定時間が経つと赤影に戻る。
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巻物
幻魔城に潜入するには、これを3つ集めなければならない。
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忍術
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みだれ髪
糸状の攻撃で、スピードは遅いが命中すると絡み付いて締め付けてダメージを与える。
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煙玉
赤影が一定時間点滅状態になり、敵の攻撃を無効化する。
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光玉
画面内の敵すべてにダメージを与えることができる。ボスにも有効。
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呪水の玉
呪いのかかった水の入った謎を秘めたガラス玉。
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空玉
赤影が三人に分身する。攻撃は三人分有効だが真ん中の赤影には当り判定があるので、無敵ではない。
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敵からのドロップで入手できる即効アイテム
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力の玉(白玉)
体力が1/4回復。
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うつし身の玉(赤玉)
取ると半透明になりダメージを軽減。一度攻撃を受けるまで持続。
評価点
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アニメで登場した敵はほぼ全部網羅されている。
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本作は容量が1メガと、発売当時の基準でも低容量であるにもかかわらず、アニメのエピソードをほぼ全て網羅できている。他の原作付きゲームはエピソードがカットされていたり、オリジナルエピソードだったりする中でこの出来は素晴らしい。
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ただ後述の通り、女性キャラに及んでいないのが残念ではあるが…
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アイテムが豊富で、それぞれちゃんと特徴があり、棲み分けはしっかりしている。
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忍者系アクションでは武器や忍術の多彩さが魅力の一つなので、その点本作は申し分がない。
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また、富蔵がアイテムやヒントをくれたりと、原作再現とゲーム内容を両立させている。
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キャラクターは高頭身で原作の雰囲気を壊さない上に、当時はまだ粗いドット絵ながら特徴はしっかり捉えている。
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姿形だけでなくそれぞれ固有の技に関してもアニメのイメージが可能な限り再現できており、アクションとして落とし込めている。
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操作性が非常に良く、キャラクターの動きも非常に滑らかで、アクションゲームとしての純粋なクオリティが高い。
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巨大なボスキャラだろうと処理落ちしない。細部まで描き込まれたグラフィックは必見。
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気になる点といえば、小さいサイズのボスキャラとタフさがあまり変わらない所か。
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難易度は高すぎず、それでいてやりごたえもあるバランスとなっている。
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敵の出現は多いものの、攻撃がそこまで激しくないので、連続して倒し爽快感を得るもよし、面倒なら避けて突破もよしと快適に遊べる。
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また、幻魔城を散策する前に、最初に一通りステージをプレイできるため、予め地形などを見ておくことができ、段階を踏ませてくれているのは良心的。
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BGMも良質。栄の町や森で流れるBGMは和風テイストでありながらヒロイックで本作の雰囲気にマッチしている。
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幻魔城後半部の曲もクライマックス感があって盛り上がる。
賛否両論点
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アイテム性能は個性があるものの、刀や手裏剣など基本形だけでもなんとかできるレベル。
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特定の武器や術を使うことで戦いやすくなるには違いないが使わなくても工夫次第で何とかなるのは存在意義を薄くしている一面もある。
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BGMは忍者らしい雰囲気こそ出ているが、アニメの再現性が薄い。
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キャラのグラフィックや技の動きなど、原作から上手く取り込めているだけに、この部分は勿体なく感じられる。
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原作抜きで考えれば良曲ではある。
問題点
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原作再現やバランスの両立という点では残念に感じるところもある。
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仲間の青影、白影がゲーム進行を阻害することがある。
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二人とも富蔵に会うことができない。アニメでは普通に会えていたのに…
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白影は、打たれ強いかわりに武器が近接攻撃のみで使いにくい。一応アニメではズッコケの役回りも担っていたので再現といえば再現だが。
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元々アニメでは、実質主役は青影で大部分を彼を中心にストーリーが進んでいる。赤影は戦いでの切り札のような役割を担っている。だが、上記の通りゲームでは赤影をメインプレイヤーキャラとし、相対的に青影、白影よりも上回る性能を持ったため二人を必要としなくてもクリアできる点は残念なポイント。
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本作も同様にメインプレイヤーキャラを青影にして、赤影はボス戦のみの登場、または条件を満たした場合の登場というシステムにした方が原作再現度をより高められていたであろう。
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ゲームとしての支障が出るわけではないが、やまぶき、繭姫といった女性キャラが出ていないのは残念な部分ではある。
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エンディングが味気ない。また赤影、青影、白影、といった主役勢、敵では霞丸、魔童子といった美男系キャラのアップの絵がない。
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エンディングはただ船に乗って海を渡る絵面の下でスタッフロール。
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富蔵のグラフィックなどは描き込まれているので、赤影たち本人のアップの一枚絵ぐらいはあってほしかったところ。ゲームとしての原作再現度が高いだけに勿体ない。
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幻魔城にある、溶岩などのギミックに触れるとダメージを喰らうが、SEが無いためダメージを喰らった実感が湧かない。
総評
忍者系のアクションゲームらしくアイテムや技が多彩で、それぞれの強みが被らないなど過去の忍者系ゲームで好評を博した要素はしっかり網羅されている。
更には背景や巨大なサイズの敵キャラも細部まで描き込まれ、更にその動きも非常にスムーズなものになっている。原作の再現度も多少の問題はありながら高水準なものになっている。
全体的な操作性も滑らかで際立った難点もなく、キャラクターの動きも非常にスピーディーでありアクションゲームとしての出来は全体的に良い。
発売・東映動画、開発・ショウエイシステムと聞くとクソゲーというイメージが先行してしまうが、本作に関してはゲーム自体は当時のアクションゲームの中でも良くできている。
余談
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名前が似ている為か、同じファミコンソフトである『仮面の忍者 花丸』としばしば間違われる事がある。
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赤影とほとんど同じ形の赤い仮面をしているせいもあるだろう。
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本作のシステムは、『長靴をはいた猫 世界一周80日大冒険』の続編にあたる、『Puss 'n Boots: Pero's Great Adventure』(国内未発売)に流用されている。
本作での一部のボスキャラが、グラフィックを差し替えた上で登場している。
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発売・東映動画、開発・ショウエイシステムのコンビ作品はこれまで、『スケバン刑事III』のように操作性が大いに難ありだったり、極端すぎる難易度バランスなどで屈指のクソゲー創造主の汚名をほしいままにしてきた。
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また『北斗の拳シリーズ』に関しては原作自身が漫画史に残る屈指の名作なのに「あべしを取ってパワーアップ」などのヘンな要素を盛り込むなど、「北斗現る所クソゲー在り」と言われるほどにユーザーの落胆が大きかった。
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本作はそんなコンビの作品にありながら高い完成度を誇っているため、いままでの失敗が決してムダではなかったと言えるかもしれない。しかし、当時は赤影のアニメ自体そこまで視聴率が高くなく、放送期間はわずか半年で終わってしまったこともあり、原作自体の人気がそれほどなかったことも災いしソフト売上と言う観点では非常に低かった。
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TVCMもゲーム画面が出てくることはなく、まるで購買意欲をそそらないものであった。
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発売のタイミングも悪く、アニメの放送終了から2ヶ月が経過してしまっている。
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実は「ゲームのCMなのにゲーム画面一切なし」という点ではゲームCMの名作として有名な『ファミコンウォーズ』よりも先口なのだが特に話題にもならなかった。
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同じ東映動画発売の『北斗の拳2 世紀末救世主伝説』『SWAT』『スケバン刑事III』もゲーム画面は全く出てこないがCM用に力の入ったオリジナルアニメが作られていた。その点本作のCMではそれですらなくただ名前を呼んで赤影の仮面をつけた子供が出てくるだけと手抜き感しか感じられず、特にカッコ良さやゲームの強みなどをアピールしているわけでもなく、印象的なフレーズもないゲームの魅力などまるで伝わらない三重苦なものだった。実際ゲームとしての出来に反してソフト売上本数は相当に伸び悩んだ。
つまり「ゲーム自体は良くてもクソCMが台無しにした」という、これまでとは真逆な結果になった。
最終更新:2024年09月22日 14:31