Ridge Racer Unbounded
【りっじれーさーあんばうんでっど】
ジャンル
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レースゲーム
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対応機種
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プレイステーション3 Xbox 360 Windows
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発売元
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バンダイナムコゲームス
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開発元
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Bugbear Entertainment
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発売日
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北米版: 2012年3月27日 欧州版: 2012年3月20日
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定価
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【Steam】$9.99
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プレイ人数
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1~2人(オフライン)
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レーティング
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ESRB:T(13歳以上対象) PEGI:7(7歳以上対象)
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備考
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日本未発売 オンラインサービスは終了
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判定
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良作
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シリーズファンから不評
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ポイント
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破壊をテーマとしたシリーズの異色作 単体のゲームとしては充分出来が良い だが『リッジレーサー』とは言えない
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リッジレーサーシリーズ
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概要
『リッジレーサー』シリーズの家庭用12作目。ナンバリングは振られておらず外伝作扱いで、略称は『RRU』となっている。
従来の『リッジレーサー』開発チームによる作品ではなく、『FLATOUT』や『Wreckfest』で有名なフィンランドのメーカーBugbear Entertainmentによる外注作品。一応、以前の開発チームメンバーの名前はクレジットには載ってはいるものの、監修程度に留まっている。
特徴
『リッジレーサー』を名乗ってはいるが、そのシステムはシリーズ他作品と一線を画す。
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ドリフトの挙動はリアル路線に寄っており、難易度が高い。
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少し減速するだけで滑り出してくれた過去作品とは違い、サイドブレーキに相当するドリフトボタンを押してキッカケを作らなければドリフトに入ってくれない。
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滑りだした後もかなり動きが重く、ある程度コースに沿ってくれた過去作と比べて、より「自分で制御すること」が求められる。
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進入速度が速すぎると勢い余って壁に激突するし、上手くカウンターを当てなければそのまま減速し続けてスピンしてしまう。
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当て方が急だったり早すぎると逆向きにドリフトが始まったり、グリップを取り戻して事故る。恒例の逆ドリフトもシステム上不可能。
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『レーサーズ』から続くニトロは本作でも続投。なのだが…。
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従来通りドリフトをすることで溜めるのが基本だが、今作では道路上の障害物を壊す、後述する「FRAG」を決める、相手の後ろを追いかける、レース中に一定の実績を満たすことでも溜めることができる。
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ニトロゲージは全車共通で1本。満タンにならなければ発動できない。
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ニトロボタンを押すことで発動し、一度の発動でゲージを全て消費する。ニトロ中は後述の「FRAG」を決められるようになる。
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新システム「FRAG」
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特定の建物、敵車を破壊すると「FRAG」が成立する。
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ニトロ状態で破壊可能な建物にぶつかった場合、通常は破壊不可能な壁を貫通し、反対側から飛び出すという専用のカットインが入る。こうして出来た道はショートカットになる。
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すべての車には耐久値が存在し、ニトロ状態でぶつかると一気に削ることができる。敵車の耐久値を0にすると「FRAG」の成立となり、木っ端微塵に破壊され、炎上しながらコースを転がるカットインが入る。
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「FRAG」の対象にはプレイヤー自身も含まれており、耐久値が減った状態で敵に突撃されると自車も破壊される。また、壁や破壊不可能な障害物に衝突してもクラッシュとなり、モノクロ画面で自車が炎上するカットインが入ってからリスポーンするため、大幅なタイムロスとなる。
今作はこうした要素を活用し、破壊を中心とした駆け引きを楽しむレースゲームとなっている。
賛否両論点
以上の特徴から見てわかる通り、本作は今までのリッジレーサーと全く毛色が違う。
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重苦しいドリフトの挙動は手軽さに欠けるという意見が多く、最初はクラッシュに悩まされる。
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反面、挙動は「リッジレーサーとして見れば」独特であるが、「理不尽」な領域ではないため、テイストは違えど、慣れさえすれば今までとはまた違った爽快なドリフトを楽しめる。
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また、『7』以降顕著だった「とりあえずドリフトしまくってニトロを溜めれば強い」という傾向にストップがかかっている。
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FRAGの存在により、敵車や建物を破壊する前提のゲームデザインとなっているため、「リッジレーサー」というブランドが築いてきた「ドリフトは派手、他は堅実」というイメージと乖離している。
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自分がいつクラッシュするか気を付ける必要があるため、この点をストレスに感じる人も。
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一方、街中のあらゆるものを破壊するカタルシスは本物であり、すぐ近くの敵を破壊する・される駆け引きという要素のため、従来のリッジに比べて逆転性の高いレースとなっている。
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『リッジレーサー』をあまり知らない人や、同様のコンセプトを持つ『Burnout』シリーズのファンなどからは好評。
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その他要素もシリーズと関連性が薄い。
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過去作の自動車はおろかメーカーすらも登場しない。発売後しばらくしてからDLCで「フィエラ」「RC410」「ビゾンテ」が追加された程度。
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山や海辺を走る過去作のコースは全てオミットされており、街中を走る本作オリジナルのコースしか収録されていない。「リッジ」レーサーとは…
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雰囲気も大きく異なり、クローズドサーキットを走る従来作と比べ、「治安の悪い1つの街を暴走するアンダーグラウンドなレース」という側面が強調されており、「レイジ」とはまた違うダークさが出ている。
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恒例の「リッジサウンド」も、本作では重低音に重きを置いたダブステップやガバトランスなどが中心となっており、やはりシリーズとしては異質なテイスト。
個々の要素は、それ自体は完成度が高く概ね好評を得ているが、「今までのリッジと違い過ぎる」ことに批判の矛先が向けられやすい。
「リッジ」に思い入れのあるファンほどこういった要素に拒絶反応を向けるため、新規層からの評判は良いが、古参ユーザーの間ではかなり賛否両論分かれる。
評価点
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レースのバリエーション
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本作のレースは、車と建物を破壊しながら1位を目指す基本の「DOMINATION RACE」に加えて、ニトロを使っても破壊が起きず、堅実な走りが求められる「SHINDO RACING」や、ソロで走ってドリフトの上手さを競う「DRIFT ATTACK」に加え、時間内により多くの車両を破壊する「FRAG ATTACK」など、様々なモードが存在する。
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こうした工夫により破壊一辺倒の単調なレースに終始しておらず、プレイヤーを飽きさせない配慮が為されている。
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収録車両
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本作に登場する車両はほとんどオリジナルのものだが、3つあるクラスにそれぞれ初期状態で3台、ゲームを進めると各クラスに2~3台ずつ追加されていき、最終的にDLCを除いても合計で17台に増える。
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それぞれの車には「Speed (最高速)」「Accelaration (加速)」「Handling (操舵性)」「Strength (強度)」「Drifting (ドリフトの維持のしやすさ)」という5種類のステータスが5段階で割り振られており、性能が差別化されている。
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これにより、レーサーズから続いていた「ドリフトの回頭性とニトロ以外に差を感じにくい」事態から脱却し、どの車も同クラス内では一長一短の性能に仕上がっている。
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上位互換と呼べるものもほとんど存在しないため、実質的なボリュームは決して小さくない。
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そして最終レースでは…
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なんとサプライズで、「13th Racing」ことクリナーレが6のプロトタイプカー様のデザインで登場する。
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性能は加速、最高速共に最大とまさしく悪魔的だが、耐久力はかなり低く、ドリフトも暴れやすいというピーキーな仕上がりになっている。
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同レースで好成績を納めることで入手できる。ちなみに、カラーリング違いで「悪魔のマーク」がアンジェラスの「天使のマーク」に変化する。
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美しいグラフィック
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シリーズ恒例の良質なグラフィックは本作も健在。
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都会を彩るビルや鉄橋、下町の風情が滲む小さな店や電柱、木々や草まできちんと描画されており、建造物の壁に残り時間や敵車との距離が表示されるといった視認性への工夫もなされている。
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テラス席を吹き飛ばし、コンクリートの壁を粉々にし、ガソリンスタンドを爆破する爽快感がリアリティと共に伝わる。ただし、後述する見た目のこだわりのせいで問題点もある。
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車両の作り込みも細かく、モデルになった車両が比較的分かりやすくなっている。ぶつければ大げさにボディが凹み、ライトが故障し、致命的なダメージを受けると炎上し始め、クラッシュするとドアやボンネットが吹き飛ぶといった破損表現もバッチリ。
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なお変わるのは見た目のみであり、破損によって操縦性に悪影響を及ぼすといったストレスになる要素は存在しない。
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バランスの良いCPU
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本作のCPUはかなり頭が良く、急カーブを器用に曲がっていく。また速度補正は弱く、理不尽なスピードで抜かされることも、遅すぎて手応えが無いということもない絶妙な強さに仕上がっている。
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CPUはニトロを使う際、建物に対してFRAGをしない調整がされているため、「壊そうとしたら先を越されてしまった」とか、「リードを一瞬で縮められた」といった現象は起きない。
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ただし、プレイヤーがFRAGした後で出来たショートカットは使ってくる。また、プレイヤーに対して与えるダメージには下方補正がかかっているとはいえ、車に対しては普通にFRAGを狙ってくるので油断禁物。
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良質な楽曲群
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先程述べた通り、本作の楽曲はシリーズとしては異色な選出だが個々のクオリティは高く、アンダーグラウンドな雰囲気を高めることに成功している。
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細江慎治氏(Sampling Masters MEGA)、佐宗綾子氏(Sampling Masters AYA)、佐野信義氏(sanodg)などもはやシリーズの顔と呼べる面々が参加。
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この他に、その道で有名なSkrillex氏を始めとした海外アーティストによる楽曲が収録されているのも特徴。また『V』『6』『7』から作風に合うものが数曲再録されている。
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細かい点だが、走行中に十字キーで楽曲を変えられるのも本作が初めての試みであり、地味に便利。
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自由度の高いコースエディター
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本作には目玉機能として、自分でコースを作るコースエディターモードが収録されている。配置できるフィールドは正方形のグリッドで区切られており、そこにパーツとしてカーブやストレート、FRAGできる建物などをはめ込んでいく。さらにコース上には、ジャンプ台や空中ヘアピンカーブといったギミックを配置できる。
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自分好みのコースを幾通りにも作って暴走できるため、なかなかに飽きの来ないモードとなっている。また、オンラインで自分の作ったコースを共有して遊ぶことも可能だった。
問題点
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難易度が選べない
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本作に限らず近年のリッジレーサーに共通する仕様ではあるが、難易度は固定されている。前述した通り今作のCPUはそこそこ強いため、もし難しすぎると感じたとしても救済措置が無いのは不親切と言える。
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風景にあまり代わり映えがない
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今までのシリーズと異なり、舞台となっているのは1つの街なので、コースのレイアウトが変わってもビルと小店の連続といった景観にそこまで変化はない。
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『リッジレーサー』と言えば、コースが変われば美しい風景もガラリと変わるのが特徴だったため、この点は単純に不評。
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ただしコースエディターモードでは、ギミックの多さからマンネリ感を多少は改善することが可能。
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壊せる障害物と壊せない障害物の区別がつきにくい
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前述した通り本作のグラフィックは非常に細かく作りこまれているが、破壊可能なオブジェクトとそうでないオブジェクトも同じように作りこまれているため、覚えないと思わぬ場所で事故る。
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具体的には、1つ手前のコーナーで柱を破壊できたので、似た見た目の柱を同じように破壊しようとしたら激突してそのままクラッシュ演出に…ということが起きる。
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コース上に壊せる・壊せないものを混在させているのが一つの原因とも言えるため、何かしらの工夫は欲しかったところ。
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その他細かい部分
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MT設定がない
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マシンはすべてAT限定となっており、MTは選べない。タコメーターなども表示されない。
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コースマップが用意されていない
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次にどんな配置が来るかを瞬時に判断しなければいけないため、暗い場所では事故りやすく不親切。
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リプレイ機能なし
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自分の走りを確認したり、派手なシーンを見直すことが出来ない。また、収録曲をじっくり聴くこともできない。
総評
破壊を前面に押し出したド派手で爽快なゲーム性、飽きの来ないバリエーション豊かなレース、自分だけのコースが作れるエディターモードなどそれぞれの要素を鑑みると、細かい問題点はあれど充分良作と言うに相応しい内容となっている。
何故これをリッジレーサーにしてしまったのか。本作の批判点を端的に言えば、その一言である。
あまりにも趣向の変わった今作は、もはや『リッジレーサー』ではなく、『FLATOUT』や『Burnout』などに近い『Unbounded』という全く別のレースゲームと言っても過言ではない。
伝統的な『リッジレーサー』を前提に置かずにプレイできる方には、是非ともおすすめしたい一作である。
余談
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おま国
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Steamでは当初日本語販売ページが存在し、発売前に予約可能となっていた。また対応言語には「日本語」の表記があった。
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しかしいざ発売されると日本語未対応だったことが判明した上に、その後すぐに販売ページにアクセスできなくなってしまった。
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結局CS機日本語版が販売される気配もなく、いわゆる「おま国」状態となった。
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推奨される行為ではないが、海外の正規外部ストアを介してキーを購入することで、日本からもSteamでのアクティベーションは可能。
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また、PS3にはリージョンロックがかかっていないため、やはり非推奨だが北米版を購入すれば問題なく遊べる。
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2013年9月に、このゲームをベースにした基本無料のレースゲーム「Ridge Racer Driftopia」の早期アクセスが開始されていた。
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詳細は省くが、破壊された車両を復活させるために課金が必要と言ったシステムでプレーヤーから大不評を買い、正式リリースの日の目を見ることなく2014年8月にサービス終了した。
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本作はオンライン機能に対応しており、最大14人のマルチプレイや作成したコースの共有などが可能だった。
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2015年2月28日にオンラインサービスは終了してしまったが、現在でもオフライン部分のプレイや、DLCの購入といったことは問題なく行える。
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現状『Unbounded』は12作目にしてリッジレーサー最後の作品となっており、発売から10年が経過した2022年現在でも新作がリリースされる気配はない。
最終更新:2024年04月07日 16:00