F1レース
【えふわんれーす】
ジャンル
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レース
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対応機種
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ゲームボーイ
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メディア
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1MbitROMカートリッジ
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発売元
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任天堂
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開発元
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テック 任天堂
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発売日
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1990年11月9日
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定価
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2,600円(税別)
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書換
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ニンテンドウパワー 2000年3月1日/800円/F×1・B×1
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プレイ人数
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1~4人
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周辺機器
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GB専用通信ケーブル、4人用アダプタ対応
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判定
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良作
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ポイント
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ゲームボーイ初の4人対戦に対応 ファミコン版無印F1とファミコングランプリのいいとこどり?
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概要
1990年に任天堂が発売したゲームボーイのレースゲーム。
ファミコンの『F1レース』(1984年11月発売)と根本的には同じタイトルだが、本作はロゴが『F☆1 RACE』と「☆」が入った独特なものになっている。またファミコン版ではハル研究所と共同開発だったのに対し、本作は任天堂とテックのコンビで開発が行われている。
FC版から6年を経ていることもあり、システム面でもかなり進化している。またゲームボーイで初めて4人対戦に対応したソフトである。
ただし「ゲームボーイ初のF1レースゲーム」ではない(アスク講談社の『F1ボーイ』が先)。
システム
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ファミコン版同様、フィールドビュースタイルのレースゲーム。
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ただし上記作品は走ってスコアを稼ぐタイムアタックでライバルのマシンは「動く障害物」でしかなかったが本作では、ちゃんと順位の判定がある。
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もちろん、タイムアタックスタイルのゲームモードもある。
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ざっくりした特徴としてはファミコンの『F1レース』と『ファミコングランプリ F1レース』(ディスクカード・1987年10月発売)のいいとこどりをしたようなイメージと思えばわかりやすいだろう。
マシンの特徴
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Aボタンでアクセル、Bボタンでブレーキ。上を押すことで「JET」を消費して急加速したり、最高速を出せたりする。
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つまり「JET」はニトロのようなものである。
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前にマシンがいて、その真後ろにつくと、スリップストリームに入り、一定時間マシンが急加速し本来の最高速を上回るスピード(JET未使用時は330km/h、使用時の最高速は380km/h)が出せる。
この状態になると、マシンが点滅する。
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ファミコン版のハイパーターボにも似ているように思えるがグリップ力のアップなどはなく、コーナーでスリップするのは普段通り。
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コース脇の障害物にぶつかったり、ブレーキをかけたりすると特定時間を待たずして解除される。
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FC版との違いとして、ライバルのマシンに衝突した場合、弾き合うだけで爆発してストップすることはない。コース脇の障害物にぶつかるとスピンしてストップすることになるが爆発はしない。
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AタイプとBタイプの2種類のマシンがあり、それぞれ一長一短になっている。レースの前にどちらを使うか選択可能。JETの積載量はレースによって異なる。
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Aタイプ(最高速度重視)
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JET未使用時の最高速は280km/h、使用時の最高速は360km/h。
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Bタイプ(標準速度重視)
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JET未使用時の最高速は320km/h、使用時の最高速は350km/h。
ゲームモード
GRAND PRIX
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ステージクリア型のモード。自身を含め10台で全9戦のレースを行う(2周)。
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優勝のみステージクリアで、それ以外はリトライとなる、
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各コースをクリアすると、マリオ、リンク、サムスなど任天堂キャラがレースクイーンに混じって祝福してくれる。
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9戦すべて優勝できればエンディング。
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すでに終わったレースは記録されており、モードやコース画面でセレクトを押すと、それまでのレースでクリアまでにかかった回数が記録されている(一桁の表示枠しかないので10回以上になると「×」表示)。
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各コースをクリアをなるべく少ないトライ回数でクリアすることが目的だが、トライ回数に制約はなく、エンディングも変わらない。
TIME TRIALS
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1周のタイムを競うゲーム。
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ただしゲームとしては2周を走るので、1回あたり2度のトライを行うような格好になる。
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8種類のコースと「SINGLE」か「OBSTACLE」を選ぶ。
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「SINGLE」…自分のマシン1台での単走。邪魔が入らず走ることにとことん集中できるがスリップストリームが利用できない。
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「OBSTACLE」…ライバルと一緒に走る。あくまで求めるはタイムのみなのでファミコン版同様ライバルマシンは「動く障害物」でしかない。
だが、これをうまく利用してスリップストリームを得ることができるので、理論上こちらのほうが最速タイムが出せる。
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選べるコースはオーストラリア・カナダ・アメリカ・ポルトガル・日本・ブラジル・ソ連・インドの8種類。
MULTI GAME
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いわゆる対戦モードで、プレイヤーとCPU合わせて4人で対戦するモード。
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どんな場合でも4人で対戦し、プレイヤーがいない枠をコンピュータが担当することになる。
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コースは3グループに分かれており、グループ単位で選択。
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グループ1…オーストラリア→カナダ→アメリカ→ポルトガル→日本
グループ2…日本→ブラジル→ソ連→インド→エジプト
グループ3…中国→ネパール→香港→ハワイ→オランダ
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レースは1・3・5回から選択可能。
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このモードのみ3周勝負となる。また抜いたり抜かれたりで順位が変動すると、画面上部にその順位が表示される。
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ポイントは1位=9点・2位=6点・3位=4点・4位=3点で、その合計点数を競う。
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最初のスターティンググリッドはランダムで決められるが、2レース目以降は、前のレースでの最速ラップタイムの速い順に配置される。
評価点
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ゲームモードは多彩。
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ファミコンのようなタイムのみのスタイルを貫くもヨシ、ライバル相手に勝つグランプリもヨシ、マルチゲームは本来対戦用のモードだが1人でCPU相手に楽しむことも可能。
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コースは14種類と豊富。
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しかもそれぞれが初心者向きなものから、ストレート、コーナリングなどの重要度まで様々で、各々が個性を持っている。
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白熱する対戦モード。
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本作最大の醍醐味がこれでそれぞれの画面で、各々の一人称視点でマシンを見て対戦できるのは、まさにアーケード感覚。
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先述の通り、スリップストリームは後ろのマシンほど使える機会が多くなるので、競り合ったバトルになりやすい。
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背景まで、それぞれのコースの国柄に合わせて描き込まれている。
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ゲームボーイということもあって、そこまで重要度は高くないものの、そういった部分まで抜かりがなく、コースの舞台をしっかり演出している。
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また、それらに凝りすぎるあまりスピード感がなくなるといったマイナスもない。
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スピード感は抜群。
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本作の最高速は380km/hだが、ファミコンのハイパーターボよりも見た目でのスピード感は速く感じられる。
賛否両論点
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コーナーの仕様
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本作のコーナーの処理はリアルな座標で管理されているのではなく「カーブの度合いによって、本来曲がる方向と逆のベクトルを与える」形となっている。
よって実はその強度が激しいシケインでは「(高速で)コーナーと逆にハンドルを切ることで車体に掛かるベクトル」が「コーナーの方向にハンドルを切る際にシケインから受けるベクトル」よりも小さくなる逆転現象が起こる。
また、「コースアウト」という概念もないので、車体がたとえコーナーから外れていても、ハンドルを逆に切っていても、障害物に当たってクラッシュするまでは問題なく前に進むことができてしまう。
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この2つが合わさると「インベタからJET全開で逆にハンドルを切る事でシケインを突破できる」という荒業が成立する。
物理法則を完全に無視したレースゲームにあるまじきテクニックだが、「コレも一つの攻略法」だとみなせばレースの爽快感が増し、遊びの幅が広がるのも事実。
この辺りの評価は少々悩ましい所。
問題点
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ファミコン版に比べるとマシンの特性が少々地味。
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一応、スリップストリーム状態でJETを使うことで最高380km/hが出せるが、ファミコン版の「ハイパーターボ」のようなインパクトはない。
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マシンラインナップが乏しい。
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先述の『F1ボーイ』では9種類もあったことを考慮すれば、2種類というのは極めて少ない。
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スリップストリーム状態のグラフィック変化は点滅で表現されるが、少々視認性が悪い。
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スピードに慣れるまでは、マシンに振り回されることもしばしば。
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ファミコン版と違い、飛びぬけたハイパーターボのようなものはないが、体感的なスピードは本作の方が速い上に、弾かれたり、点滅したりするので混戦で見失うこともしばしば。
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スリップストリームにしても、意図せずコーナーで急発動したりすると、ハイパーターボと違ってグリップ力まで上がるわけではないのでスリップしやすい。
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GRAND PRIXが全体的に不利。
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プレイヤーは常に1番後ろ(10位)のスターティンググリッドなので、本来のスタート地点よりかなり後ろからのスタートとなる。
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これにより5コース目の日本コースでは、ゴール直前の急カーブ→シケインの地点からのスタートとなり、スタートでクラッシュしやすく、全体的にカーブが多いことやコースの短さもあって事実上GRAND PRIX最難関コースとなってしまっている。
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MULTI GAMEでCPUがあり得ないラップタイムを出す。
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スターティンググリッドの調整のためかCPUとどんどん差を開けて1着でゴールしたとしてもCPUは余裕でプレイヤーのベストラップタイム-2秒くらいのラップタイムを叩き出していることがある。
総評
ファミコンのF1系レースゲームのようにセッティングの概念はなく、マシンは2通りとラインナップは乏しいが、適性を考えて選ぶ必要があるなどシンプルながらも変化を持たせられている。ゲームモードも3通り用意され、楽しめる幅が広い。
シンプルなゲームではあるが、アーケード感覚でできる4人対戦は友達同士での盛り上がりは申し分なし。一方で1人で楽しめるシステムも万全となっており、任天堂作品らしい高い完成度に仕上がっている。
余談
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ファミコン版でのコースナンバー6はそのまま鈴鹿モデルだったが、本作では少々デザインが変えられている。
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権利関係の問題かと思いきや、上記「F1ボーイ」では、普通にジャカレバグアなどが取り入れられているので意図的にオリジナルなコースにしたものと思われる。
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実際F1のオーストラリアグランプリで使われるアデレード市街地コースは、ゲームのようなただの丸いコースではない。
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CMでは、おもちゃ風なはりぼてのF1を被って4人対戦を全開でアピールしている。
最終更新:2024年08月18日 15:50