F1ボーイ
【えふわんぼーい】
| ジャンル | F1レース |  | 
| 対応機種 | ゲームボーイ | 
| 発売元 | アスク講談社 | 
| 開発元 | レナール | 
| 発売日 | 1990年9月28日 | 
| 定価 | 3,300円 | 
| プレイ人数 | 1~2人 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | ゲームボーイ初のF1レースゲーム パッケージイラスト・タイトル画面がタイトルに反してF1ガール
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概要
1990年9月にアスク講談社から発売されたゲームボーイソフトのF1レースゲーム。
ゲームボーイソフトで初のF1レースゲームである。
それだけにマシンのバリエーションは多いものの全体的にシンプルな構成になっている。
このパッケージや実際のゲーム画面を見るや誰もが「F1ガールの間違いでは?」とツッコミたくなるところだが、タイトルの「ボーイ」とはゲームボーイを指すものだろう。ドライバーの少女が実は男の娘…というわけではない。多分。
イラストレーターは田宮模型で車に乗るマスコットキャラクターを描いた実績のある藤田幸久氏。
内容
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トップビュースタイルなF1レースのゲーム。常にレースは8台で行われる。
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操作は至ってシンプルで左右でハンドリング、Aボタンがアクセル、Bボタンがブレーキ、マニュアルマシンなら上でシフトアップ、下でシフトダウン(ギアは3速)。ターボ搭載のマシンならセレクトでターボを発動できる(回数限定)。
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ターボ残り回数は画面右下に表示されている。発動中はそのマークがグルグル回っている。マークはどう見てもハーケンクロイツ…
 
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ラフゾーンではスピードがガックリ落ちるが後述の作品のような障害物はない。
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『ファミリーサーキット』に似たスタイルだが若干異なり、マシン同士に当り判定がある。反面コース脇の障害物はない。
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マシン同士には基本的に当り判定があるため、ブロックもできるが衝突によって自身のスピードも落ちてしまう。
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ハンドルを切りすぎるとスピンしてしまう。またスピンは高速走行中に縁石に引っ掛けても発生する(F3000クラスを除く)。
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コースマップは画面右上に見えており、自身のマシンの現在地が大きな点で表示されている。
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コース自身でもコーナーが近づくとカーブサイン(「>」「<」といった矢印)による告知がある。
 
 
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通信ケーブルにより2人で同時にそれぞれのマシンでプレイすることも可能。
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ルールは1P時と同じでCOMP6人(1P時は7人)と合わせて8人でポイントを競い合う。
 
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クラスは「F3000」「F1」「SUPER」の3つから選択。
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「F3000」初心者向きのモードでライバルマシンのスピードが遅い初心者向き。更にこのモードではスピンは発生しない。
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「F1」両者の中間にあたりライバルマシンのスピードが速い中級者向き。
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「SUPER」ゲームオリジナルでF1を超えたカテゴリ。ライバルマシンのスピードが非常に速い上級者向き。
 
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上記クラスの他に、レースのプログラムを選ぶ。
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レース数(本戦)
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レース数は1・4・8・16戦から選ぶことができる。
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レースは常に8台で行い順位に応じて、優勝9点・2位6点・3位4点・4位3点・5位2点・6位1点(これは実際のF1グランプリと同じ)とポイントが得られ、その合計で最も高い者がチャンピオンとなる。自身がチャンピオンになればエンディングが見られる。
 
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レースでの周回数(3~30)も最初に決める(全戦均一)。
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実際のF1グランプリにあるタイムトライアルのプラクティス(予選)はなく、そのレースの順位に準じて次戦のグリッドが決まる。
 
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レースの順番は下記の通り。
 アメリカ→ブラジル→サンマリノ→モナコ→カナダ→メキシコ→フランス→グレートブリテン(イギリス)→ドイツ→ハンガリー→ベルギー→イタリア→ポルトガル→スペイン→日本→オーストラリア
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因みにこれは1990年のF1世界選手権のプログラムに準じておりコースも、それぞれが再現されている。
 ただしブラジルグランプリは前年までの開催地ジャカレパグアサーキット(別名:ネルソン・ピケ・サーキット)がモデルになっている(1990年からはインテルラゴスで開催)。
 
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最初にどのレースから始めるか(1レースの場合「どのレースを行うか」)を選択でき、オーストラリアまで達して終わらない場合はアメリカに続く。
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例えば日本をスタートに4戦なら日本→オーストラリア→アメリカ→ブラジル。
 
 
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トライアル
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仮想の敵車とのレースで、このモードではライバルのマシンのに当り判定がない。
 
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テスト
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仮想の敵車1台とのレースで、タイム計測がある。このモードでもライバルマシンは当り判定がない。
 
| マシンコード | ステア性能 | 最高速 | 加速力 | ミッション | ターボ回数 | 
| AUTO V8 470 T3 | B | 360km/h | A | オート | 3 | 
| AUTO V8 480 T5 | B | 356km/h | 超A | オート | 5 | 
| AUTO V10 490 T2 | A | 362km/h | C | オート | 2 | 
| AUTO V10 500 T1 | C | 366km/h | A | オート | 1 | 
| AUTO V12 510 | C | 370km/h | B | オート | なし | 
| MANU V10 520 T2 | 超A | 360km/h | A | マニュアル | 2 | 
| MANU V10 530 T1 | A | 364km/h | A | マニュアル | 1 | 
| MANU V12 540 | B | 380km/h | C | マニュアル | なし | 
| MANU V12 550 | C | 400km/h | D | マニュアル | なし | 
 
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マシンは上記の通りでそれぞれ、得手不得手がある。
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シフトチェンジの手間があるためか、マニュアルの方が性能が高めになっている。
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マシンコードの後ろに「T」があるものがターボマシンで、その後ろの数字がターボの使用可能回数となる。
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ターボ発動時は最高速を振り切って379km/hまで出すことができる。
 
 
評価点
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性能差のある豊富なマシンパターン。
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全9通りのマシンそれぞれに個性があるものばかり。
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コースに合ったものを選ぶことでより有利にできることで、シンプルなゲームでもたくさんのマシンを試せる面白味がある。
 
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オートマチックミッションタイプにより初心者でも手軽に始められるシステム。
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またトータルバランスではマニュアルの方が性能が高いので、プレイヤー自身もマニュアルにシフトアップすることでより戦いやすくなる。
 
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操作のスムーズさ。
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ハンドリングが重いマシンもあるとはいえ、支障をきたすようなレベルではない。
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また、それでいてハンドリングの軽いマシンの個性を殺すようなものでもない。
 
 
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ゲーム自体はかなり簡素になっているがコースの再現度の高さは目を見張る。
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実際、角度こそ若干変えてあるものもあるが全体的なコースレイアウトは現実に行われたコースそのものと言い切っても過言ではない。
 
問題点
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プレイヤーキャラに名前がない。
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後述の通りCOMPのレーサーは皆名前があるが、プレイヤーは「PLAYER1」「PLAYER2」と淡泊な名前になっており、少々浮いて見える。また自身との一体感を阻害している。
 
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F3000だろうがSUPERだろうが、1戦のみだろうが16戦だろうがエンディングは同じ。
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これでは最難関であるSUPERで16戦を戦い抜いてチャンピオンになっても、その達成感が薄いものになってしまう。
 
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コースマップがマシンに隠されて時折見えなくなってしまう。
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コースマップは常に右上に表示されているのだが混戦状態になると、処理の限界で見えなくなることが多い。
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コーナーが近づくと、どちらに曲がるべきかもガイドされるのでそのため、コースマップはあまり役に立たない。いっそないものとしてコースマップを頭に叩き込んだ方がいいぐらいである。
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またマシンも密集すると処理の限界で見えなくなってしまうため、衝突を繰り返していつの間にかスピードダウンしてしまうこともしばしば。
 
 
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長い周回数を選択する意義が薄い。
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上記のカテゴリ別同様、長い周回数をこなしたからといって特別なエンディングはない。
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ターボマシンはその回数が限られていることもあり長くなると使えなくなった後の不利ばかりが出てくるためマシンの公平性がなくなってくる。
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結局最低の3周あたりが一番バランスがいい。
 
総評
ゲームボーイ初のF1レースゲームということで、全体的にシンプルな構成になっている。
持ち運んだり短時間で楽しむには充分な内容で操作性も良く、多種多様なマシンから適正なものを選ぶことでレースを有利にできるなど戦略性もある。
コースの再現度や敢えてこれまでのブームを鑑みてジャカレパグアを採用するなど、プレイヤーの好みそうなポイントを押さえることにおいても的確である。
ただハードゆえの欠点である処理能力の低さから、ライバルマシンが密集するとマシン見えなくなったりコースマップまで隠したりとシステム面での欠点もいくらか露呈している。
また最上位カテゴリ「SUPER」でのチャンピオン時に特別なエンディング等がないのは目的意識を低くしており、その面でも惜しい。
余談
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上記の通り、本来ならこの年からブラジルグランプリはインテルラゴスに移ったのだが、ゲームでは前年までのジャカレパグアがモデルで作られている。
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実は旧来からブラジルグランプリはインテルラゴスでの開催だったが、1978年と1981~1989年の間のみ様々な問題から一時的にジャカレパグアに開催が移されていた。そのため別に情報がない新規のサーキットというわけではない。しかもこの年ブラジルグランプリが行われたのは3月25日と半年も前である。
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だが当時の日本でF1ブームが過熱した頃はジャカレパグアが根付いていたため、インテルラゴスはあまり馴染みのないサーキットだった。特にゲーム世代となれば尚更で、1980年ともなれば物心がつかないどころか生まれてすらいなくてもおかしくない年代なので、敢えて馴染みあるジャカレパグアの方を採用したものと思われる。
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なおジャカレパグア・サーキットは2016年、リオデジャネイロオリンピック開催の折にその会場とするため解体され現在は存在しない。
 
 
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作中のマシンではターボ搭載車も登場するが、現実のF1世界選手権のレギュレーションでは前年の1989年シーズンからターボそのものが禁止となっていた。
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本作はターボと自然吸気が混在しているため、直近では1987年・1988年シーズンに近い。
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パッケージには1990年に参戦したマクラーレン・MP4/5Bとティレル・018に似たマシンが描かれている。
 
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ライバルレーサーの7人の名前を見ると、当時の花形だったF1レーサーがもじられている。
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I.KENA(アイルトン・セナ)
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T.CROST(アラン・プロスト)
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N.TIKE(ネルソン・ピケ)
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G.DRGER(ゲルハルト・ベルガー)
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A.PUTEN(ティエリー・ブーツェン)
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S.NAKA(中嶋悟)
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J.AREJA(ジャン・アレジ)
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いかにもな面々ではあるが、何故か当時「四天王」と呼ばれたうちの1人でありF1を語る上で欠かせない存在であったナイジェル・マンセルのモデルが含まれていない。
 いずれ変名の仕方はローマ字読みしてもじる形(例・ネルソン・ピケなら「PIKE」をもじって「TIKE」)で共通しているせいと思われるがマンセルなら「MANSEL」を「MASEL」「MANSL」あたりにできそうなものなのに。
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またF3000は実在のカテゴリなのに、そのレーサーが登場するわけではない。
 
 
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現実にはF1の公式セッションに参加した女性ドライバーはマリア・テレーザ・デ・フィリッピス(1955年)に始まり近年ではスージー・ヴォルフ(2014年)等、長い歴史の中でもわずか6名だけである。しかもヴォルフはテストドライバーでリザーバーを兼ねていたとはいえ結果的には本戦に参戦する機会がなかったため実質的には5名ということになる。
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F1マシンはハンドリング1つ取っても一般的な乗用車とはわけが違い、スピードのためにその快適性を犠牲にしているため操る人間のパワーも必要とし、また超スピードで走ったり曲がったりに耐える三半規管の強さも必要とされ、一般人なら男であってもドライビングどころか「特別に設けられた別席に同乗してただ見ていること」すらままならず気を失ってしまうほどである。
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つまり女性である時点で、そのハンデは相当なものであり上記5名いずれもフル参戦はできておらず、ポイント圏内入賞を果たしたのはレラ・ロンバルディが1975年のスペイングランプリでギリギリ6位に入賞したのみ(マシンは「マーチ751」)。
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上記のヴォルフ含め6名はいずれも女性にしては大柄で逞しい体つきをしていたこともあってパッケージのようなかわいい少女のドライバーがF1を制する姿はFCやGB世代が生きている間に見ることはまず叶わないだろう。トップレーサーを男の娘にメイキングすれば話は別。
 
 
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本作はゲームボーイ初のF1レースゲームだが、すぐ後の11月9日に任天堂から『F1レース』が発売される。
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本作もそれなりには売れているが、この作品の方が本作とは比べものにならないほど売れているだけでなく、キャッチーでノリのいい歌仕立てのCM、更にゲームボーイ初の4人対戦対応などいろいろ内容が濃く、アッと言う間にゲームボーイにおけるF1レースゲームの代表作の地位をかっさらってしまった。
 
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海外では1992年にサンソフトが『Sunsoft Grand Prix』として当作を発売している。
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やはりというべきかターボのマークは全然違う形に変えられている。
 
最終更新:2023年11月04日 14:54