女子プロレスSTORY 白いリングへ Twinkle Little Star

【じょしぷろれすすとーりー しろいりんぐへ ついんくるりとるすたー】

ジャンル シミュレーション
対応機種 スーパーファミコン
発売元 ポニーキャニオン
開発元 オペラハウス
メルヘンブレーカー
発売日 1995年10月27日
定価 9,980円
プレイ人数 1人
判定 クソゲー
ポイント 試合はSDのようなグラ+時間泥棒(マンガやGBのお供必須?)
ステータスの上げ方の仕組みが複雑すぎる
ギネス級なパスワード290文字
「手応えあり」もイマイチよくわからない
一応独自性あるゲーム



そして少女は戦いのリングへ



概要

1995年10月にポニーキャニオンから発売されたスーパーファミコンソフトで、女子プロレスラーの育成シミュレーションゲーム。
プレイヤーはLLPWに入門する一人の少女となって、様々な鍛錬、試合、レスラーとの出会いを通じて強くなり、デビューを経て最強のプロレスラーを目指すサクセスストーリー。
実在団体公認でLLPW、FMW、藤原組、みちのくプロレスの実在レスラーが実名で登場する。

完全なシミュレーションなので、育成を行うのみで試合は全て自動で行われる。


ストーリー

199X年、女子プロレス界は空前の多団体時代に突入し、様々な個性ある団体が互いの華麗さ、美しさ、人気、そして何よりも強さを競い争っていた。
その争いのクライマックスとなった東京ドームにおける「女子プロレス夢のオールスター戦」において、女子プロレス史上最強と言われる伝説のレスラー神取忍は、所属団体であるLLPWからの脱退を表明。新団体設立へと動き出すのであった。
最強レスラー神取離脱の真相は業界を震撼させた。彼女の団体離脱の真の理由は、強敵が周囲にいない事に対するいらだちだった。彼女は自分を燃えさせてくれる新たな強敵を求めていたのだ……。

神取がLLPW離脱表明したその日、ひとりの美しい少女がリング状に熱いまなざしを注いでいた。観客席で神取の強さを目の当たりにした少女は、拳を握りしめて思いを噛みしめるように一人つぶやいた。
「決めた。私の生きる道はこれしかない……」

数日後、神取離脱のショックも覚めないLLPWの道場に6人の新弟子が入門する。
それぞれの夢や希望を胸に抱き、女子プロレスと言う過酷な世界に飛び込んだ6人の少女達……。
その中には東京ドームで神取を見つめていたあのときの少女がいたのだった……

もうひとつの格闘少女伝説が始まる


内容

  • LLPWに入門する一人の女子プロレスラーの育成をする。
    • まずは、名前、星座、血液型を入れる。これらは後々成長度合いに関わってくるのだが、詳細は不明。
    • その後、小学校、中学校の9年間のクラブ活動を入力する。これらは、初期ステータスに影響する。
  • 入門すると同時に、まずはデビューに向けて進むことになる。
    • メインはトレーニングで、1ヶ月の予定を週単位で組んで実行し、トレーニングは「手応えあり」または「成果なし」が事後報告され、1週間が終わるとその結果(ステータス変化)が見られる。1か月の終わりには月はじめとの差を確認できる。
    • トレーニング予定はパートナーとなるレスラーを選ぶのみで種別はパートナーレスラーに紐づいており自由に選択できない。
    • どんなトレーニングもスタミナがなかったり、ストレスがたまりすぎていると成果は出ない。「成果なし」が出るほどストレスが溜まる。
      • 序盤はスタミナがないせいで「成果なし」が出やすく、それでストレスが溜まるためいかに「手応えあり」を増やせるかがカギとなる。
    • 休日はその場その場で何をするか選ぶ。根本的には休養してスタミナを回復させたり、食事や遊びでストレスを抜くが基本スタイルだが、ランニングやジム、道場などで自主的な練習も可能。
      • 他にリングスタイルを変える「美容院」(髪型)や「水着屋」(コスチューム)がある(ともに2年目から利用可能)。
      • 最初は「食事」「映画」「ランニング」「完全休養」のみ。この選択肢は時を経るごとに増えていく。
  • 基本的に休日はカレンダー通りだが、土曜は休みではなく*1、また祝日と日曜が被った場合の振替休日はない。また試合と日曜日が重なった場合も振替はない。
    • 1995年なので「成人の日」「敬老の日」「体育の日」などは現在とは異なる*2
  • デビュー後は試合が入ってくる。
    • 試合は完全にオートで行われるためプレイヤーは見るだけしかできない。
  • メインは上記のような流れだが、年月が過ぎるに伴い定期的な固定イベントやランダムのレアイベントが発生する。
    • レアイベントの中にはライバル団体FMWへの移籍や、様々なレスラーとの出会いなどがある。
    • 新しいレスラーと出会えば、彼ら彼女らが練習の新しいパートナーになることもある。
  • クリアーするとパスワード対戦の選手枠に登録できる。
    • 登録されたレスラーからは、その登録パスワードを見ることができる。そのパスワードを友達のカセットに入れることで登録でき、プレイヤー同士育てたレスラーを対戦させることができる。
    • 同キャラでの対戦も可能(どっちが勝ったのかわからないが)。

問題点

  • スーパーファミコンでしかも後期にあたる1995年の作品だというのに試合はまるでSDのような2.5頭身のレスラーが終始カクカクしたスローモーションのコマ送りのような動きでスピード感がまるでなくもっさりしていて見栄えが悪い。
    • 技1つ1つにしてもグラフィックパターンが少なく、それを組み合わせているだけ。10年近くも前の『タッグチームプロレスリング』(ナムコ・FC)に毛の生えた程度と言えばわかりやすいだろう。
    • せめてリアルな美少女のキャラグラだったならその代償でこうなったというのも納得できるが、上記の通りまるでSDのようなキャラグラでこれではファミコンやゲームボーイで充分だったのではないかと思いたくなるレベル。
      • 絞め技にしても内部的にはかけ続けている状態がグラフィックでは一旦技を解いてまたかけているような動きをするので余計に時間がかかる。
    • 上記の通り技にかかるアクションが遅いせいで時間がかかるため試合にかかる時間はリアルなものと同等クラスになっている。つまり、シングルマッチでも3分で終わればまだ早い方でタッグなどでは20分30分も当り前にかかる。試合終了後に発表されるその時間もリアルにかかった時間そのままである。
    • 試合展開も技に入る時に、画面上部(奥)に立っている方が技をかけて手前側がやられる方、組んだ時も右側が技をかけて左側がやられる方、ハンマースルーの場合は左側が技をかけて右側がやられる方(画面上部と下部が黒くなっていればハンマースルーになることが先バレしている)と固定な上に返し技のようなものもないので、先が丸わかりなのも面白味を大幅に削いでいる。
    • 試合展開にしても場外転落がやたら発生しまくるというリアル要素を追求したとは思えない展開。なのにリングアウト決着がない(リングに戻る時も二人一緒)。
    • タッグマッチでは、タッチ直後や場外乱闘などでのパートナーまで入り乱れた展開になることがない。つまりタッグの醍醐味ツープラトンは一切ない。
    • 説明書によれば試合は「じっくり見るべし 成長にしたがって技の種類も増えて試合が高度になります」とのことだが、このような体たらくではじっくり見ていたらヒマで眠ってしまいそうなレベルである。
      しかもいくら技が増えていっても大技などはあまりに見る機会が少ない。ロード地獄とは一味違った試合待ち地獄で、お供にマンガやゲームボーイ必須なレベル。
    • パスワードでの対戦も当然この通りのノッタリ試合なので見ていられたものではない。もっとも後述の通り、それまでの障壁が高すぎてそれを気にする以前の問題だが。
  • 後述の通り、ストーリーは多岐にわたるのだが、2年目の途中までは完全に固定。
    • そのため、同期6人のうち脱落する3人が変わるわけではない。
    • 同期でLLPWのうちに唯一戦う嶋村との初戦は必ず負ける*3
    • この固定の区間を走り切るだけでも1時間以上かかる。以降は上記のような試合も多くなるので、それまでに輪をかけて時間がかかる。最後までプレーするとなると数十時間に及ぶ。
      • そのため、肝心な多岐にわたるストーリーを体感する前に投げ出してしまう恐れもあり。
  • 主人公の名前に苗字と名前の区分がされていないため、初見時だけでなく最初から最後までいちいちフルネームで呼ばれる。
    • 他の登場人物は「神取」「イーグル」「嶋村」など自然な呼ばれ方をされているので、主人公だけが日常目線で見ればかなり珍妙な光景になる。そのせいでストーリーに入っていく気分を阻害しかねない。
  • 日常のトレーニングは、週ごとにパートナーとなるレスラーを選んでいく方式で、その内容はアドバイスをもらうことで大まかな内容が聞けることもあるが、本当に大まかな内容でしかない。
    • そのため、誰の何がどのようなスキルになるということさえ判断がつけにくい。
      • 「見て覚えろ」「先輩と行動を共にすることで自分から掴みに行け」「先輩から技を盗め」という昭和流スタイルなのだろうが、そのせいでゲームとしてはかなりわかりにくいものになっている。
      • その上序盤は、ほとんどが成果なしに終わるので実感がほとんど掴めない。
    • 休日にトレーニングを選ぶこともできるが「ランニング」「キックジム」「柔道場」「サンボクラブ」などざっくりしすぎていて、何が何になるかなどは一切明示されない。また、それだけでなくスタミナをどれだけ浪費する、どれほどのストレスになるなども一切明かされない。
      • これらは通常のトレーニングでもパートナー次第で見ることができるが、その場合との効果の違いもまったくわからない。
    • 休日で休養や遊びを選んでも、それによって「どれほどスタミナが回復したか」「どれほどストレスが抜けたか」は、その場では一切わからない。
  • これだけ長い時間をかけて育てた選手を友達のそれと対戦させることができるのだがパスワード制で、その使われている文字はアルファベット大文字のみの26通りと少ないとはいえ文字数は驚愕の290文字という尋常ではない長さ
    • いくら一度入れればOKで、初期のファミコンのように再開のたびに毎回入れるものではないとはいえこれはちょっとした英文並で、いくらなんでも常識を逸している。
    • 更にパスワード発行時は「48字ずつ(16字×3列)7分割」+「最後の2字」で8分割表示なのに、入力時は最後に入力した文字から手前8字しか視認できないため双方の表示方式が一致しておらず、書き写しも入力確認も非常に不便。
      • それに付随して入力済みの中に挿入することができないので、うっかり文字を飛ばして入れてしまった場合に、そこまで全部削除して入れ直さなければならない。

評価点

  • 多岐にわたるストーリー。
    • 2年目でデビュー以後は様々な展開が用意されている。
    • 出会うレスラーが変わったりすれば、FMWに移籍したりなど非常にバリエーションがある。
  • ストーリーパートのキャラグラは良い。
    • またタイトルデモのプロローグストーリーのBGMは非常に秀逸で、これをバックに展開されるプロローグストーリーは、いかにも格闘技系アニメの雰囲気が出ている。
      • それだけに、そんなキャラが躍動感あるプロレスを見せてくれないのが残念。
  • 他に例を見ない独創性あるゲームではある。
    • 一人の女子レスラーの数年に絞って中身の濃い育成をするというゲーム性は『ファイプロシリーズ』の「レスラーエディット」とは違う個性があり非常に斬新。
    • これで、もっとゲームとしてストレスのないシステムが実現できていれば「ニッチながらやり込みゲー」というポジションで受け入れられた可能性もあったのだが…

総評

一人の女子プロレスラーを徹底的に育成するというゲーム自体は独自性があるもののトレーニングにせよ休み方にせよ、それらがどう影響するかがわかりにくすぎてはゲームとして楽しめるレベルには程遠い。
当時はスポーツにせよ仕事にせよまだまだ昭和的な風潮が色濃かった時代なのでリアルに徹底して取り込んだと考えても、やっぱりゲーム化する以上はもう少し噛み砕いて実装するべきだっただろう。
またキャラクター面ではオリジナルキャラにしても実在の女子プロレスラーにしても美少女ゲーの雰囲気を匂わせながら、試合中のグラがSD同然では期待してガッカリだろうし、そんなキャラによる試合なのにプロレスの魅力である躍動感やスピードはまったく感じられない。
ゲームそのものの全体的な方向性自体は良かったものの、その魅力になる要素をほぼ全殺しにした上に、ゲームとしてのプレーしやすさがゼロでは高い障壁を乗り越えて楽しみたい気持ちすら起こせないだろう。
膨大な時間がかかる最悪な進行テンポ、その果てに完成したレスラーをカセット間でやり取りする290文字のパスワードという障壁を乗り越えて、本作の対戦モードで友達同士対戦した人は限りなくゼロに近いと思われる。


余談

  • ゲームでは神取忍は本編前のプロローグでLLPWを脱退してしまうが、現実ではプロレスに於いてはLLPW一筋を現在まで貫いている。
  • 逆に、半田美希は、本作発売当時はすでに引退していた。
  • 発売前に『白いリングへ オリジナルドラマCD』といった販促品も作られた。メインMCは井上喜久子が務めている。ただし大半はスタッフへのインタビューとシンセverのBGMトラックで占められておりドラマ要素は薄い。
    • 単体のサウンドトラックなどは発売されていないため、これが唯一のサントラがわりとなっている。
最終更新:2025年04月20日 13:19

*1 因みに当時は一般的な会社では週休二日が確立されていた。学校はその経過措置の時期で第2・第4が休みだった。完全に実現したのは2002年のこと(私立学校では例外あり)。

*2 ハッピーマンデー制度の導入は2000年のこと。この当時だと成人の日は1月15日、敬老の日は9月15日、体育の日(現・「スポーツの日」)は10月10日。

*3 1年先輩の青野相手のデビュー戦はまれに勝つこともある。