おやじハンターマージャン
【おやじはんたーまーじゃん】
| ジャンル | テーブルゲーム |  | 
| 対応機種 | 3DO interactive multiplayer | 
| 発売・開発元 | ワープ | 
| 発売日 | 1995年7月14日 | 
| 定価 | 5,280円 | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| レーティング | 3DO用審査:E(一般向) | 
| 判定 | バカゲー | 
| ポイント | 『Dの食卓』の会社が手がけたカルトゲー 負けたおやじをボコす"逆"脱衣麻雀
 謎に起用された板野一郎
 ほぼイカサマ無しの真剣勝負
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| ワープ作品 | 
 
概要
3DO中期に発売された低価格タイトルの一つ。
90年代に何かと業界を騒がせたクリエイター・飯野賢治氏のプロデュース作品である。
当時のワープでは3DOのロイヤリティの低さを活かした低予算タイトルがいくつか送り出されていたが、今作もその一つである。
元ネタは『宇宙生物フロポン君』収録のミニゲーム「おやじハンター」。
こちらは得点をルーレットで決めてから敵を倒すというシンプルな内容だったが、今作はその得点を麻雀で決するシステムへとブラッシュアップされた。
飯野氏曰く「女の子を脱がせるマージャンはもうヤダ、女の子を助けるマージャンを創るんだ!と思ったのがきっかけ」とのこと(説明書より)。
参加スタッフ
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今作はステージの合間にアニメーションが挿入されるが、この監督を務めたのはあの板野一郎氏。
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アニメに詳しく無い人でも、「多数のミサイルが不規則な軌道を描いて煙を残しながら飛んでいく演出(板野サーカス)を発明した人」と言えば、その凄さが伝わるはず。
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起用されたのは飯野氏との縁故によるもの。かつて飯野氏と板野氏はクリエイター向けのスクールで講師を務めていたのだが、その際に「いつか一緒に仕事をしよう」と意気投合した結果、本作の企画に繋がったという(ソースは説明書のインタビュー)。
 
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当時アイドルとして活動していた宍戸留美氏が主題歌を担当。
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主役のおやじハンターを演じるのは松野太紀氏。
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『金田一少年の事件簿』で主演を務め、知名度を上げていくのは本作よりも後。
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決め台詞時とツッコミ役に回った時のギャップや、敗北時の情けないシャウトは必聴。
 
特徴
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今作は、変則ルールを採用した二人打ち麻雀で戦うゲームである。
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もちろん一人プレイ専用。
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ステージは全部で5つあり、全てクリアすると晴れてエンディングとなる。
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低価格タイトルだけに、ボリュームはそこまで多くない。
 
 
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主人公は、いたいけな美少女をおやじの魔の手から守るヒーロー。その名もおやじハンター。
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女の子が小型ライトでSOSを呼ぶと、どこからともなくやってきてはおやじ達をこらしめる。
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しかしおやじ達も負けてはいない。今作ではなぜか毎回おやじ達がむりやり麻雀勝負を仕掛けてきて、そこで決着をつけることになる。
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ハンターは「ハンターポン!!」「ハンターチー!!」などと叫びながら、最後は「ハンターロン!!」「ハンターツモ!!」などと叫び、次々と役を揃えていくことに……ヒーローたるもの必殺技名を叫ぶのが基本らしい。名前はともかく。
 
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ステージの合間には、そんなハンターとおやじ(と美少女の)戦いを描いたアニメシーンが描かれる。
 
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ルール
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一局の流れは普通の麻雀と同じだが、所々に独自要素が追加されている。
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ハンター(プレイヤー)がリーチした状態で流局になると、ハンターチャンスと呼ばれるイベントが発生する。
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このとき画面中央に14個の牌が横に並べられる。プレイヤーは、欲しい牌の位置をよく覚えておかなければならない。
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直後この牌は裏向きにされ、高速でシャッフルされる。ここでプレイヤーは、欲しい牌の位置を目で追いかける必要がある。
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そうしてシャッフルが終わったら牌をひとつだけ選び、手牌に加えることが可能。見事当たり牌を引き当てれば、特別にアガリ扱いとなる(海底は付かない)。
 
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通常の麻雀は手持ちの25000点を奪い合うゲームとなっているが、今作は代わりに体力の概念が設定されている。
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ハンターの体力は50000点だが、対戦相手のおやじはそれ以上の値。ステージが進むにつれて数値が増え、倒しづらくなっていく。
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ハンターがアガった場合、高速で回るルーレットを止めて倍率を決定させる。この時の値と、上がった時の点数をかけた値が攻撃力となり、おやじの体力が減少する。0点以下になればステージクリア。
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おやじが上がった場合は「おしおきタイム」となり、同様に倍率を決定させてから攻撃を受ける。ただしこちらの場合はルーレットでは無く、「倍率の描かれたカードがハンターチャンスが同じ要領でシャッフルされ、1枚を選んで適用させる」という物となっている。上手く狙えばダメージを0倍に出来る。
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どちらかの体力が0になるまで勝負は終わらない。
 
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リーチ時は通常の麻雀と同じく、体力を1000点支払うことになる。
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ノーテン罰符は無い。画面では中央に置かれた点棒が描かれているのだが、スタッフのミスだろうか。
 
 
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おまけ要素あり。
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これはワープの低価格タイトルですっかりお馴染みの要素であった。
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収録内容は以下の通り。
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『Dの食卓』『M2版Dの食卓2』の予告映像
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過去の低価格タイトル2作の体験版
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麻雀牌を使ったオリジナル落ちものパズル「マージャリス」
 
 
評価点
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予算の枠を超えて仕上がったアニメーション
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板野氏らしいキビキビしたアニメーションは全編に渡って健在で、ゲームの価格帯を考えると豪華な出来。
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現在の基準ではそこまで安くないが、今作は通常の3DOソフトと比べて半額くらいの値段であった。
 
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それもそのはず、説明書によると飯野氏が無茶振りをかました事で当初1500枚だったアニメーションが4300枚にまで増えたらしい。
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おなじみのミサイル描写も、飯野氏の要望で追加されることになったという。
 
 
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ゲームの雰囲気に違わず、バカゲーとしてはきちんと濃い内容。ふざけたノリを大真面目にこなす登場人物は必見である。
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先述の雑な必殺技もさることながら、「第一話で出したからもう説明不要だよね」と言わんばかりにサクッと出てくるSOS信号(妙にでかい)、助けた美少女のはっちゃけぶりにドン引きするハンターなど、ツッコミ待ちのシーンは多数。
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なんやかんやでストーリーには緩急も付けており、一本のコメディ映画として明るく楽しめるのもミソ。まさしく3DOらしい作風と言えるだろうか。
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そもそも何が楽しくて汚いおっさんのツラを拝みながら麻雀を打たなければならないのか、コンセプトとして誰が得するのか、色々突っ込んだら負けである。そういう意味のわからないことを平気でやるのがこの会社だし……
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一応クリア時に女の子の感謝の言葉をもらえるご褒美要素もあるので、その点はご安心を。
 
 
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ハンターチャンスが熱い
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とてもアガれないような配牌のときも、とりあえずリーチを打てば突破の可能性をグッと上げる事ができる。
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通常の麻雀よりもリーチが強化されており、いつもと違う戦略を楽しめる新鮮さも魅力。
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実際の麻雀で考えなしにリーチをするのは危険だが、今作では積極的に狙いに行く方が有効となっている。
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高得点の役は普通の麻雀より狙いやすく、ロマンが大きい。
 
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またシャッフル速度もそれなりに早く設定されており、リーチしたから必ずアガリになるとは限らないのも特徴。
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ハンターチャンスが始まったら、プレイヤーの集中力が試される。
 
 
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敵に厳しく自分に優しいダメージ仕様
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自分が攻撃を外すことはほとんど無いが、敵のダメージはかなりの高確率で回避が可能。どんな高得点を振り込んだとしても、動体視力を発揮させればオジャンに出来る。
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麻雀はどうしても運要素が強く、時にはなすすべなく負ける事も少なくないが、この仕様は回避不能なストレスを和らげてくれている。
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ダメージ回避の難易度も程よい塩梅で、ゲームバランスを崩してはいない。
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シャッフルの動きはかなり速く、目当てのカードにじっくり目を凝らさないと容易に見失ってしまう。
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一緒に混ざっている5倍・10倍は致命傷クラスなので、緊張感は大きい。
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ごくまれに0倍カードが含まれていない事もあり、必ずダメージを喰らう事もある。
 
 
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麻雀を知らない人への配慮
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今作は麻雀のルールが見られるモードを実装しており、説明書でもルール説明が見られるようになっている。
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「マージャンは知らないけど参加スタッフ目当てで買いたい」という場合も、今作は安心して手に取ることができる。
 
賛否両論点
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今作ではハンターチャンスを除き、「イカサマ」の類が一切存在しない。
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ズルと言えるのは、プレイヤーの意思で流局後に勝ち取れる「ハンターチャンス」と、どちらかが上がった後のプレイヤー有利な戦闘のみ。
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人によっては「二人打ち麻雀を真剣勝負として楽しめる」という魅力になるが、人によっては「ほぼ運ゲーになるので遊びにくい」という難点にもなる要素である。
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ギャンブル要素の無い対CPU麻雀に対し、どれだけ魅力を感じるかで評価が分かれる部分と言えるかもしれない。
 
 
問題点
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UIの出来が悪く、テンポが遅い。
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CPUのツモ切りやリーチ時等にいちいち短いロードが入るので、さくさく進めない。
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せっかくのコンピュータ麻雀なのに、対人戦のようなテンポでゲームが進む。
 
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アガリや流局が発生した後、敵の手牌が短時間しか公開されない。
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直後に得点計算を表示したウィンドウに隠されてしまうため、どんな手やどんな牌で上がろうとしていたかが確認しづらい。
 
 
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セーブ機能・ムービースキップ非搭載
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飯野氏の悪癖といっても良いシステムは今作も健在。
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運にもよるが、今作はクリアするまでに3〜6時間はかかり、中断セーブが一切できない。
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時間の都合でやり直した場合でも、一度見たムービーはもう一度フルで見る羽目になる。
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なお今作にはステージセレクトの裏技もあるため、こちらを知っていればある程度問題が緩和される。
 
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敵のおやじが硬すぎる。
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今作の敵は後半ほど異様な硬さとなり、ラスボスに至っては150000点のHPを備えている。現実の麻雀が25000点でハコテンになる事を考えると尋常ではない。
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万が一おやじにHPを削られるとステージの初めからとなり、著しくテンポを削がれることになる。
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それでいてコンティニューは3回限りなので気が抜けない。
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先述の通り、今作のゲームテンポは他の麻雀ゲーほど良くないので、余計にじれったさを感じる要因になる。
 
 
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AIの不備か、敵がやたらと単騎待ちを狙ってくる。
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リーチを前に戦々恐々としていたら、実はほぼ上がりようの無い待ちだったなんてことも。
 
総評
皆がためらうような悪ふざけにも全身全霊、そんなワープの作風を思いっきり体現した作品である。
後の『SIMPLEシリーズ』やインディーズゲームにありがちな、低予算ならではのバカゲーの先駆けと言えるかもしれない。
麻雀ゲーとしては粗削りな部分もあるものの、力の入ったアニメ・OPの色濃い世界観は唯一無二。
おなじみの遊戯を明るく摂取したい人は是非どうぞ。
もちろん参加スタッフのファンにもおすすめ。
余談
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当初はPSにも移植される予定だったが、後の飯野氏とソニーの確執もあってか、実現には至らなかった。
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『セガサターンマガジン』1996年10月11日発売号のインタビューによると、移植の際には厳しいコンプライアンス厳守を要求されており、これがソニーとの決裂に至る一番最初のきっかけだったという。
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ボンテージやSMの描写がアウトになった他、何故か尻を触る回数を4回から2回に減らすよう要望されたとのことで、もし移植できたとしてもアニメシーンがかなり別物になっていたと思われる。
 
 
最終更新:2025年03月20日 00:09