機種 | タイトル | 概要 | 判定 | |
3DO | 宇宙生物フロポン君 | ワープの処女作。クセのあるルールを採用した落ちものパズル。CPU対戦未搭載なのが難点。 | ||
PS | 宇宙生物フロポン君P! | PS移植版。CPU対戦搭載で遊びごたえがアップ。 | ||
3DO | フロポンワールド(仮称) | 様々な派生ゲームも盛り込んだ続編。「フロポン君」を遊び尽くしたい人向け。 | ||
3DO | 突撃機関メガダす!! | 『スーパーマリオカート』バトルモードの流れを汲むハチャメチャFPS。安価タイトルながらも堅実な遊びごたえ。早すぎた『Twisted Metal』? | ||
3DO/SS | Dの食卓 | 3DCGの映像美をふんだんに発揮したアドベンチャー。ハード進化の過渡期を彩った、ワープ並びに飯野氏の代表作。 | 良 | |
PS | Dの食卓 コンプリートグラフィックス | 特典映像を盛り込んだ強化版。後にゲームとは関係ない面で物議を醸すきっかけに。 | ||
3DO | Dの食卓 ディレクターズカット | 映像の質を上げた完全版。3DO版無印と繋がる、隠された連動要素あり。 | ||
3DO | おやじハンターマージャン | いたいけな女の子をヘンタイおやじの魔の手から守れ!豪華スタッフも惜しみなく招いたアニメは必見。 | バカゲー | |
SHORT WARP | 当時としては異例の「コンビニ販売」で送り出した限定タイトル。ワープマニア必携、そしてワープマニア以外には絶対おすすめできないファングッズ。 | |||
SS/PC | エネミー・ゼロ | 『Dの食卓』の流れを汲む、大々的なプロモーションの元で送り出されたアドベンチャー。キャッチフレーズは「デジタルの悲しみ」である。 | 不安定 | |
リアルサウンド ~風のリグレット~ | 敏腕脚本家が送るラブロマンス。「一切画面を使用しない」というぶっ飛んだコンセプトは語り草に(DC版は環境映像を追加)。 | 賛否両論 | ||
DC | Dの食卓2 | 満を持して発売された続編は、かつての予告と全くの別物に。今作を最後にワープはゲーム業界から撤退した。 |
機種 | タイトル | 概要 | 判定 |
FC | ウルトラマン倶楽部2 帰ってきたウルトラマン倶楽部 | ワープ設立前、代表の飯野氏がプランナーとして手掛けたソフト。 | 良 |
FC | わんぱくコックンのグルメワールド | 同じく、プロデューサーを務めた作品。 | |
Wii | キミと、ボクと、立体 |
飯野氏が久々に手掛けたコンシューマ向けゲームソフト。 人間ならぬ「ニンゲ」を箱の上に飛ばして載せるユニークな作品。 同氏の遺作となった。Wiiウェアにつき現在は配信終了。 |
ワープは実力とやる気とセンスがあれば、いつでも、たとえば明日からでも働くことができます。
あとは今いる十四人と同じ夢が持てるか?それを支える体力があるか?が問題となります。
ワープは会社ではなく、バンドのようなものなので、たとえば自分の好きなバンドに入るためにはどうしたらよいか?を考えてください。ただし、今のところ採用予定はありませんので、どこかで(それは会社でなくても)目立つ動きをしていてください。ワープから声をかけます。出典:ゲ-ム業界就職読本 '97年度版(アスペクト社)
株式会社ワープとは、1994年から1999年にかけてゲーム業界で活動していたソフト開発会社である。
代表取締役の飯野賢治氏を中心とした、独創的な創作姿勢を特色としていた。
先鋭的な作風や、宣伝などで見られた独特なパフォーマンスは注目を集め、代表の飯野氏は90年代のゲーム業界における「時代の寵児」と評されている。
ユーザーを突き放しつつも自らを貫くその態度は、熱烈な支持と批判的な声の両方を生み出した。
挑戦的な姿勢はゲーム作品だけでなく広告・流通の分野にも及んでおり、後年から見て時代を先取りしていたと言える側面も多い。
1999年を最後にゲーム業界から離れ、その後は「スーパーワープ」「フロムイエロートゥオレンジ」と社名を変えつつ様々な事業を展開している。
設立者の飯野氏は2013年に心不全で死去。
その方向性は自他共に「バンド活動」と喩えられており、後年のインディーズゲームに通ずる物があった。
飯野氏は各作品を「アート」と評する事も多く、常識や評判にとらわれないスタイルが特徴となっている。
こうした方向性に目覚めたのは、糸井重里氏の『MOTHER』に感銘を受けたのがきっかけなのだとか。
パッケージ等に細かいネタを仕込むのがお約束で、初期作品ではゲームソフトを架空のCDジャケットに偽装できる謎の仕様を搭載している。
「平賀」「風船おじさんに捧ぐ」という本編と無関係な書き出しの『フロポン君』、街角にいたと思しき一般のおじさんを紹介した『おやじハンターマージャン』等、説明書もフリーダムさが全開。
特に『SHORT WARP』はこれらのふざけたノリの集大成とも言える作品に仕上がっている。
初期のワープは、ほぼマイナーハードのまま終わった3DOに注力していた事でも知られている。
これはワープの挑戦的な姿勢だけではなく、ロイヤリティの面も大きかったようである。
当時のゲーム業界では任天堂がトップシェアを誇っていたが、ソフト販売には大きなハードルが立ち塞がっていた。
任天堂はアタリショックの再来を防ぐため「初心会」と呼ばれる問屋を用意し、発売にあたって厳しい制約を設けていたのである。
これは国内外のソフトメーカーから反発を招いた一方、ゲームハードの新規参入を狙っていたライバル企業にとっては多くのメーカーを招く絶好の機会となっていた(*1)。セガもソニーも、そして3DO社も、ソフトメーカーに優しい流通環境と敷居の低さをアピールポイントに据えていたのである。
特に3DOはソフト販売に必要なロイヤリティが破格の安さであった。
任天堂はソフト一本当たり3500円だったのに対し、3DOは4ドルでROMを製造できたのだという。
3DOはこうしたソフトメーカー寄りの姿勢を徹底しており(*2)、インディーズ開発者にとっては夢の環境とされていた。
独立したばかりで資金のなかったワープにとっては都合が良く、『Dの食卓』を筆頭に3DOへの参入を決意させるきっかけになったのだという。
ちなみに3DOのインディーズ向け路線はそれなりの需要があり、後の大型タイトルへのステップアップに繋げた企業はワープ以外にもいくつか存在する(ノーティドッグ(*3)やグラムスなど)。
ワープはコンシューマーゲーム機にいち早く「安価な低予算タイトル」を持ち込んだ事でも知られている。
『SIMPLE1500シリーズ』の一作目が1998年発売なのに対し、ワープは1994年にこの方針を打ち出し、同社の初期を支える屋台骨となった。
ワープは元々『Dの食卓』販売を目指して作られた企業だったが、発売までにかかるコストは安いものでは無く、機材をそろえるのもままならなかった。
そこで「軽いタイトルを出して資金を工面しよう」という事になり、ワープのデビュー作『宇宙生物フロポン君』が4800円で販売された。
これは2023年現在の視点だとそこまで安くはないものの、当時のゲームは9000円弱〜10000円超えが当たり前だったため、破格の値段となっている。
今作はいわゆる「落ちものパズル」に分類されるタイトルだが、その開発期間は二ヶ月半という超突貫工事だった。
申し訳程度におまけゲームが付いているものの、対戦機能は無く、その他のフルプライスソフトに大して大きく見劣りする内容だったのは飯野氏も認めるところであった。
そこで「これを9000円で出すのは申し訳ない」という理由から、安価で販売されたのだという。
こうして「ちょっとしたタイトルを安価で販売する」というスタイルは初期のワープのスタイルとして確立され、3DOを中心にユニークなタイトルが送り出されていった。
サターンに本格参入した『エネミー・ゼロ』以降は、こうした小粒なタイトルが見られなくなった。
ただし飯野氏は2008年以降、iPhone/iPod touch専用アプリ4本やWiiウェアの『キミと、ボクと、立体』といった、初期の流れに回帰したタイトルをいくつか送り出している。
参考資料:『ゲーム Super 27 years life』(講談社)、『ゲームを変えた男 飯野賢治 E0事件の真相』(メディアファクトリー)