シャッフルパックカフェ

【しゃっふるぱっくかふぇ】

ジャンル テーブルゲーム(エアーホッケー)
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 1Mbitロムカートリッジ
発売元 ポニーキャニオン
開発元 ブローダーバンドソフトウェア
発売日 1990年10月21日
プレイ人数 1人
定価 6,200円(税別)
判定 クソゲー
ポイント 元々PCでのマウス向きなのでコントローラでは不便
ゲーム中のBGMなし
難易度上昇がおかしい勝ち抜き戦と達成感のないエンディング
対戦相手はアクションや表情が豊富


概要

1990年10月にポニーキャニオンから発売されたエアーホッケーのゲーム。
元はAmigaなどの海外PCで発売されたゲームの移植である。
これを題材としたゲームはPCでマウスを使ってプレーするのが一般的なため、マウスに縁遠いコンシューマ機では珍しい。
また、エアーホッケーはアーケードでは対戦型の筐体ゲームとして馴染み深いものだが、本作は対戦不可で1人プレーのみ。


ストーリー

(説明書2~3ページより引用。)

 あなたは、この銀河系で有数の腕利きセールスマン。
久々のビッグセールスを達成し、ご機嫌で愛車"ナッシュ・ソンブレロ号"を飛ばしていたら、突然原子力エンジンに異常が……。
いかれた愛車をだましだまし、なんとか辿り着いたのは、裏さびれた薄気味悪い街であった。

 とりあえず電話をかけて、すぐにでも車を修理してもらわなきゃ。通りを渡って3つ先に明りのついた店がある。
「あそこで電話を借りよう。」
 店の前にいきドアを開け、ほこりだらけの階段を降りていこうとしたとき、何か得体の知れない小さなものが足元を通り過ぎていった……。
 暗がりにつまずきながらあなたが部屋にはいると、騒がしかった部屋は、宇宙空間のような静けさにつつまれた。
そして店中から、あきらかに敵意を持った視線が向けられた。
 あなたと電話機との間には、この宇宙におよそ不釣合いな8つの生き物+1台の旧式ロボットが立ちはだかり、この店の中央には、あのなれ親しんだゲーム《シャッフルパック》が据えられていた。
かれら8人と1台の目は、挑発的な目をあなたに向けている。

 どうやらあなたが電話をかけるには、彼らの挑戦を受けなければならないようだ。
そしてあなたはパドルにそっと手を伸ばした……。


内容

  • 上述の通りエアーホッケーに似つかわしくない宇宙規模の取って付けたような無理矢理なストーリーが設定上存在しているがゲーム本編ではまったく絡んでこない。
  • 8人+1台の対戦相手が用意されたエアーホッケーのゲームで、15点を先取すれば勝利。
    • アーケードの筐体ではゴールは中央部のみに限られるが、ゲームでは台の横幅一杯がゴールで、パックが自陣の手前ラインを突破されると得点になる。
      • 十字ボタンでパドルを操作しパックを弾く。Bを押しながら動かすことで速い振り、Aを押しながら打つと敢えて勢いを抑えたショットができる。
    • バレーボールやテニスのように2点差に満たない場合はデュースとなり、2点差がつくまで延長される。
    • 画面左上に現在の互いの点数が表記される。
      • 点数の表記は欧米で見られる画線法に基づいており、1点取るごとにやや傾いた縦線が1本ずつ書き込まれ、5点になると、それまでの4本すべてに重なるように長い斜線が描かれる。5点で一塊のような格好。
    • プレイヤーの名前は「Visitor」となる。
  • サーブはプレイヤーから始まり、相手と交互に行う。
  • スタートすると敵キャラクターの選択画面が表示される。
    • 対戦相手となる8人+1台がこちらを見ている一枚絵が描画され、十字キーでカーソルをキャラに合わせ、Aボタンで選択する形式。
    • 画面右上の「CHAMPION」と書かれた看板のようなものを選ぶと総当りの勝ち抜き戦となり、これをクリアすることでエンディングが見られる。
      • 勝ち抜き戦は数字6つのパスワード方式により中断・再開ができるが、パスワードが発行されるのは負けたときのみ。
  • ステータスの変更は個人との対戦中にスタートでメニューを出し「PADDLE CONTROL」・「BLOCKER CONTROL」を選択することで可能となる。
    • 勝ち抜き戦では、このコマンドそのものが出ないため個人戦を選んで行わなければならない。
    • ただし勝ち抜き戦の途中でも一旦終了して個人戦を行い、そこで設定を変更して勝ち抜き戦の再開は可能。

ステータス
()内はその初期値。最小は13、最大は100。

  • PADDLE SIZE(70)
    • パドルの大きさ。
  • PADDLE SPEED(50)
    • パドルの移動スピード。
  • ON FRICTION(30)
    • Aボタン押下時の摩擦の大きさ。
  • REFLECTION(30)
    • Aボタン押下時の反射率。
  • OFF FRICTION(80)
    • パドル自身の摩擦力。
  • REFLECTION(80)
    • パドル自身の反射率。
  • 「PADDLE SET UP」を選ぶと初期値に戻すことができる。

ブロッカーコントロール

  • BLOCKER SIZE
    • ブロッカーの大きさ。
  • BLOCKER SPEED
    • ブロッカーの動くスピード。
  • ON/OFF
    • ブロッカーの有無。
+ 対戦相手

ディーシースリー・オルソー

  • 練習用のマシーンということもあって、相手のステータスを自由に変更できる。
    • 勝ち抜き戦では登場しない。

スキップ・フィニー(洗濯屋)

  • 大きなパドルを持っているが気の弱い男。
  • 攻撃でも守備でもまるで無気力試合のようにノロノロとしか動かないので、こちらの攻撃にほとんど反応せずサーブのスピードもない。

ビジン・オーブ(大頭)

  • 落ち着きがなく、パドルをいつも素早く左右に振っている。ユーモアのセンスはあると説明書に書かれているが、それがゲーム中で発揮されることはない。
  • 大きなパドルを左右に高速で振っているので守りが堅そうに思えるが、動かし方自体は適当なためサイドを狙うと抜けることが多く、それほど強くない。
    • むしろサーブにしろ返しにしろ横の揺さぶりで強いショットが飛んできやすいので攻めが手強い。
  • 勝ち抜き戦では2回戦で戦うことになるが、少なくとも5回戦のザ・ジェネラルまでの相手よりは強く感じることは間違いない。

ビニー・ザ・ドウィーブ(なまけもの男)

  • 頭が良く驚くほどの正確なショットを打つことができる。
  • 初めてまともにこちらの動きについてきてしっかりと打ち返してくる相手だが、ショットにそこそこついてくるだけで勢いを付けたショットには対応しきれないことも多々ある。
  • サーブの番になると、スキップ・フィニー並のゆっくりなサーブしか打ってこない。

レクサン・スミス・ワシントン(へび男)

  • シャンペンが大好きでいつも酔っぱらっている。
    • 説明書のキャラ紹介によると、もし酔っていなければもっと強敵だった、とのこと。
  • 実力としては全体的にかなり弱い。ビニー・ザ・ドウィーブに比べるとサーブこそちょっと強いのを打てる程度で、守りとなると明らかに弱い。
  • パドルの大きさは中程度ながらそこそこ守備は上手くショットへの反応は良いが、速いショットをコーナーに決めると対応しきれない。ただしサーブはしっかりコーナーを狙ってくる。

ザ・ジェネラル

  • 強面の豚人間。パッケージ絵のセンターに陣取っているキャラクター。
  • やや攻めに寄ったタイプで、その分守りがおろそかになっている、レクサン・スミス・ワシントンの上位互換。
  • 攻めに寄っているとはいえ後述のプリンセス・ビジンやビフ・ランチのような猛烈な強打をビシビシ繰り出してくるわけではないので、勝ち抜き戦で5番目の相手とはいえかなり弱い部類に入る。

ネルーアル・トイル

  • この店のトッププレイヤーの1人でバランスの取れた強敵、とされている。
  • 実際にはバランスが取れていると言うよりは守りが鉄壁で、パックが小さいながらこちらのショットを的確に打ち返してくる。
    • 攻撃の方はあまり積極的でないが上記の通り守備巧者なので、こちらが強打を繰り出した際の反撃で痛い目を見やすい。

プリンセス・ビジン*1

  • パックをエリアの中央までワープさせてから打ち出すという、魔法じみたサーブを繰り出してくる。
    • このサーブは左右の端どちらかを的確に狙ってくるので打ち返すには片方にヤマを張らなければならない。
  • 上記のサーブだけでなくショットそのものも超強力だが、パドルが小さいこともあり、その威力を逆手に取って跳ね返せば得点することは難しくない。

ビフ・ランチ

  • この店のチャンピオンで筋骨隆々のモヒカン男。
    • 説明書では「あまり大差で勝たないことが身のためでしょう」と書かれているが、フレーバーテキストでありゲーム上の意味はない。
  • 全体的には上記のプリンセス・ビジンと似たようなパターンでショットの強い攻撃型。サーブを含め的確に様々な所を狙って速い一撃を繰り出してくる。
  • 攻略の方法もほぼ同じで、こちらから直接攻めに出ても止められやすいので、彼の繰り出す速いショットを逆に利用し、それを返すカウンターが有効。

問題点

  • 十字キー方式のコントロールでは、滑らかさに欠ける。
    • 元々このようなゲームはPCでのマウスありきのものなので、ファミコンの十字キーとは相性が悪い。PCで同様のゲームに慣れていると、その扱いにくさが一層感じられる。
      • ならばこんな時こそジョイスティックの出番……と思えば、こちらも元々コントロールの処理は十字ボタンと同じなので8方向以外は無効で、倒した方向に素直に動くと思いがちになる分、より直感的でないものになる。
  • BGMがまったくない寂しさ。
    • キャラ選択やタイトルではそこそこ雰囲気の良いBGMが流れるが、肝心なゲーム本編で無音(効果音のみ)というのは盛り上がりに欠ける。
  • 1人プレー専用なので対人の醍醐味を得られない。
    • そういうゲームといえばそれまでだが、ゲームとして楽しむ幅を狭めている。
    • 麻雀』や海戦ゲームのように1画面ではゲーム性が成り立たないものなら仕方ないが、別にそういうわけでもない。
  • 勝ち抜き戦をしていると、大事な設定変更が満足にできない。
    • そのため、いちいち個人戦をしてそれを設定した後で止めて、勝ち抜き戦を選びなおすと言う二度手間が発生する。
    • 「トーナメントでは決められたパドルでブロッカーなしという決まりがあるから」ということだが、ならば開始時に設定する方式ではダメなのだろうか?
  • 勝ち抜き戦の強さバランスが悪い。
    • 2回戦のビジン・オーブがかなり手強く、1回戦のスキップ・フィニーから急激に強くなりすぎる。
    • 逆に3回戦~5回戦の相手はいずれもあまり特徴がなく、プレースタイルがスタンダードなのであまり強くない。
      • 最初から徐々に強くなるバランスで考えたらビジン・オーブは5回戦に配置して、2回戦がレクサン・スミス・ワシントンあたりが適切なバランスになる。
    • プリンセス・ビジンやビフ・ランチは攻撃力こそ高いものの自分が放ったショットが跳ね返ると対応できずこちらの得点もしやすいので、守りに強くヘタにパワーでゴリ押そうとすると自分が痛い目を見かねないネルーアル・トイルの方が強いとも取れる。
  • エンディングは単なるキャラ紹介だけで、しかも対戦前のキャラ紹介の一枚絵をそのまま出しているだけ。
    • せめてここで何かメッセージでもあれば達成感も違っただろう。
    • またそれまでの勝ち抜き戦でも勝ったときは何の演出もなく次の相手に移行するだけ。
  • 負けないと発行されないパスワード。
    • この仕様のため、意図的に中断したかったら自殺点を繰り返すなどしてワザと負ける手間がかかる。

評価点

  • キャラはいずれも個性を持っている。
    • 実際ゲームとしてのバランスはメチャメチャだが、固有の技を出してくるなど見ていて面白い要素にはなっている。
    • 総当りの勝ち抜き戦はあるが、そんな面々といつでも対戦ができる。
    • 大仰な舞台設定が功を奏したものか、キャラクターも皆個性ある見た目をしている。

総評

エアーホッケーのゲーム自体が希少で、個性的なアルゴリズムで特殊な技を持った豊富な対戦相手・細かいカスタマイズなど光る部分はあるものの、難易度のバランスは悪くゲーム中のBGMもないので盛り上がりにも欠ける。
超難関の勝ち抜き戦を突破してオールクリアしても味気ないエンディングがあるのみで、達成感よりも虚無感の方が大きい。
またプレイヤー同士での対戦もできず楽しめる幅を狭めており容量でも1メガは3年ほど前のレベルでしかなく、これで価格だけでも安価ならまだしも6,200円ではまったく見合っていない。


余談

  • 概要の通り、エアーホッケーのゲームはパドルを動かすのにマウスを使うPC仕様が標準的だった。
    • だが当時マウスはまだ標準装備ではなく(マウスが標準化したのは日本では「Microsoft Windows 3.1」日本語版が登場した1993年頃)、バスマウスでさえ数千円、シリアルマウスに至っては2万円以上と大人でもおいそれと購入できるレベルではなかった。
    • 更にPC自体に至っては本体・モニタ・キーボードを揃えるだけで40万円超した時代であり会社や学校でも数えるほどの台数しかないことは当たり前*2。なので、当時の子供はこのようなゲームに馴染みがなかった者が多い。
    • 1990年8月にココナッツジャパンがファミコン向けに発売した『ゲームパーティー』にもエアホッケーが収録されており、あちらの方は2人同時プレイが可能、アイテムによる救済あり、コンピューターは最高難易度でも十字キーで再現出来るロジックでマレットを動かしているなど本作より遥かにマシな出来となっている。ただ、この作品自体そこまで売れていないためマイナーソフトに近い。
      • 因みにこの作品はエアーホッケー以外にもピンボール、アイスホッケー盤(サッカー盤)、バスケットボール盤、並び当てクイズと5種類のゲームで構成されており容量でも本作の倍(2メガ)ありながら価格は6,500円と本作に比べてわずか300円高いだけ。グラフィックが凝っているとはいえこれを見るとやっぱり割高な印象は拭えない。
    • 1992年にスーパーファミコンで『マリオペイント』発売に伴いスーパーファミコン専用マウスが発売されたが、エアーホッケーのゲームは1つも発売されなかった。
      • そのため本作はどちらかといえば売れていないマイナーな部類だが、当時の子供たちにとっては唯一プレーしたエアーホッケーゲームになった可能性が高い。
  • アーケードの筐体型エアーホッケーでは勝利となる規定点の他に制限時間が決められており、時間が切れると今出ているパックがどちらかのゴールに入った時点で打ち切られる*3システムだった。
    • そのため圧倒的な実力差がない限り、規定点までプレーできることはめったになかった。またデュースも適用されていなかった。
最終更新:2024年03月10日 11:00

*1 「ビジン」がビジン・オーブと共通しているが英字だとスペルが違う。あちらはVisine、こちらはBejin。

*2 PCが一般家庭に普及となると、インターネット文化が根付いた2000年以降

*3 同時に制限時間を過ぎるとエアーが出なくなって急激に滑りが悪くなった。