真 流行り神3
【しん はやりがみすりー】
ジャンル
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ホラーアドベンチャー
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対応機種
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Nintendo Switch プレイステーション4
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開発元
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ウィザードソフト
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発売元
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日本一ソフトウェア
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発売日
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2021年7月29日
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定価
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6,980円
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レーティング
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CERO:Z(18才以上のみ対象)
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判定
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なし
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ポイント
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やっとホラーゲームになった やっと『流行り神』になった
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流行り神シリーズ
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概要
都市伝説をモチーフにした怪奇事件を捜査し、「科学」または「オカルト」の立場を選択しながら物語を読み進めるホラーアドベンチャー『流行り神』シリーズの一作。
前作『真 流行り神2』は前々作『真 流行り神』で指摘された人物の掘り下げ不足や過剰な暴力描写といった問題点を多数解決していたが、途中からホラーゲームではなく、都市伝説の怪異を使ったドタバタコメディと化していった。
制作側はこのことを反省点として挙げており、『3』が制作される場合、『2』で特に恐怖面での評価を得たとされる第二話のテイストが貫かれるとしていた(参照)。
自社開発だった前作までと異なり、ウィザードソフトへの外注作品になった。スタッフも『2』のプロデューサー・シナリオ原案を務めた新川宗平社長や『2』までのディレクターが不参加、BGM担当者が追加と、制作体制が変化した。
舞台は前作のエンディングで、主人公・紗希と仲間の刹那(せな)が所属する、怪異事件を調べる「とくそう」の元に元捜査一課の纐纈(こうけつ)と新美(にいみ)が所属した後の物語となる。
なお、『2』は第1作をやっていなくてもストーリーにそれほど影響はなかったが、本作では第1作の登場人物が多数関わってくるため、『2』以降につながる第1作のルート「ブラインドマン編」に触れておくのも良いかもしれない。
ストーリー
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第一話「隙間女」
とあるマンションで起きた殺人事件は、部屋のあらゆる隙間が塞がれた状態で起きた奇妙なものだった。紗希は事件を捜査する中、自分の部屋で人が入れない隙間から女に覗かれていることに気づく。
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第二話「悪魔の人形」
紗希は鑑識官からある変死事件について相談される。この変死事件の写真には遺体と西洋人形が写っていたが、現場には人形などなかったという。
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第三話「人間シチュー」
新美が自宅の風呂で失神していた。新美の住むマンションでは男性の居住者が風呂でシチューのように溶けて死亡する事件が起きており、紗希たちは新美の件と関連する可能性を考えて捜査を始める。
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第四話「両面宿儺」
ある山で頭が2つ、手足が4つのミイラが発見される。紗希たちは発掘チームと落ち合うが、落盤により調査現場に閉じ込められる。
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最終話「死者からのメッセージ」
G県で死者を見た人間が死亡する事件が多発する。紗希たちが事件を調べるうち、今度は死者が発火して消滅する事件が発生。2つの事件の関連を探っていく。
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番外編「悪魔のメルヘンカルタ」
刹那の執事が五感を次々に失っていくという奇妙な事態が発生する。原因が執事のスマートフォンに届いた「悪魔のメルヘンカルタ」の画像であることに気づいた刹那は、画像を送った人物を探し出そうとする。
システム
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前作からほぼ変わりなし。勇気のいる選択肢で「カリッジポイント」を消費し、自問自答する「セルフクエスチョン」で考えをまとめ、嘘を操る「ライアーズアート」で対話し、話の中盤で科学ルートとオカルトルートに分かれる。
評価点
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改めてのホラーアドベンチャーへの回帰
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発売前に語られていた通り、前作で批判されたホラーからの逸脱が排除され、いずれの話も怖がらせることを主軸としたストーリーになっている。
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カリッジポイントの最大数が4に減った
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使わなそうで使い切りそうな絶妙な数字となっており、緊張感が増した。
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人物絵のクオリティの向上
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前作まで下手と言われ続けたキャラクターデザインはようやくまともと言えるレベルになった。
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スチルで人物と物体の比率がおかしいなどの違和感はややあるが、シリアスなムードのアドベンチャーとしては十分に成立している。
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無駄に多かった岐阜県の郷土料理ネタが減った
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刹那によるやたらと力の入った郷土料理の解説が激減。
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入れ替わるように都市伝説の話題が多数挿入され、ゲームの主題に沿うようになった。
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全く無くなったわけではなく事件前の平和な日常パートで少量差し込まれるため、良いアクセントになっている。
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ライアーズアート前のつぶやきが削除された
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前作では「ライアーズアート…」と呟いてから開始するというまるで必殺技でも出すかのような軽薄さがあったが、それがオミットされ不自然さがなくなった。
賛否両論点
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纐纈と新美の扱い
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前作であまり出番のなかった2人はメインキャラクターとなったことで大幅に登場頻度が増えた。
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またそれによってキャラクターも立ち、人物像がよく見えるようになり魅力のある存在となった。
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一方で新美から纐纈への依存性がやたらと際立つようにもなっている。特に纐纈への態度は「尊敬する上司」を超えて「片思いの恋人」にすら見えるものであり、賛否を分けている。
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旧シリーズキャラクターの合流
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前作では名前だけ登場していた、旧作『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』の霧崎水明と間宮ゆうかが、立ち絵を伴ってストーリーに参加するようになった。
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なまじ旧シリーズが伝説化していただけに評判の悪い真シリーズに登場したことを嘆く声はあるが、単純に旧シリーズが活かされていること自体を評価点とする向きもある。
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また、見た目や性格も旧作から大きなテコ入れはされておらず、懐かしさを感じさせる。
問題点
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引き続き新美の性格に難あり
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前作で「エリートだが若干幼稚さの残る性格」というキャラ付けのなされた新美は相変わらずその幼稚さが抜けていない。
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「僕」と言いかけて「俺」と言い直す癖や、30歳過ぎの社会人とは思えない刹那への悪態も継続されており、テンポを損ねている。
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前述の纐纈への異常な依存心と、この幼稚性とが相まってあまり良い印象を受けづらい設定になっている。
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一応、終盤で紗希達への信頼感を示すシーンはあるが、到底挽回できているとは言いづらい。
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とはいえ、一応フォローすれば旧シリーズからこうしたステレオタイプなキャラクターの運用はあった。
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例えば旧シリーズの相棒枠である「小暮 宗一郎」は極度の怖がりだが、続編が出るごとに怖がりを超えてパニックに陥る描写が多くなり、ストーリー進行を阻害する足手まといになっていった。
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その意味では旧作由来の指針であるとはいえる。
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科学ルートとオカルトルートがあまり差別化されていない
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科学ルートでもオカルト要素が多量に含まれているため、単にオカルトルートの劣化版であり、存在する意味があまりない。
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特に最終話の科学ルートでは、明らかなオカルト要素が何の科学的説明もされないまま受け入れられてしまう。
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旧作でも「結局科学的に解明できることとできないことが両方起きており、その一面しか見られない」といったシナリオ構成ではあったが、それと比較してバランスが悪く、科学ルートを選んでもオカルトオチに行きたそうな雰囲気が出てしまっている。
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第1作のキャラクター相関の拡大解釈
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前作『2』同様、『1』に登場した紗希の先輩が本来の描写以上に「かつての大切な相棒」として持ち上げられている。
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その上、明らかに前作よりさらに美化されている。第1作で先輩は好感の持てるキャラクターとしては描かれていないので、違和感が強い。
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そもそも第1作には先輩よりもよほど相棒らしい描写がなされた人物がいるのに、そちらは前作でも本作でも全く触れられていない。
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相変わらず存在するカルト組織
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引き続きストーリーの根底には怪異を利用するカルト組織が絡んでおり、むしろ前作よりも前面に出ている。
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ただでさえオカルト要素が人為的、しかもあまりに現実離れした組織的犯行というのはやる気をなくさせる上、組織の思惑で紗希たちが動かざるを得ないことすらあるのがやるせない気持ちになる。
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一応、旧シリーズからこうした「謎の組織」の存在はあったのだが、前作・今作に至ってあまりに露出が増えている。
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どれだけ都市伝説の怪異を恐ろしく描いたところで、それを利用する生身の人間が出てきたなら単なる制御可能な凶器と変わらない。そのため都市伝説の雰囲気といまいち合致していない。
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キャラクターデザインのミス疑惑
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第四話の登場人物である国木田は文章中では50代とされているのに、立ち絵では明らかに20〜30代の見た目であり不自然。
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他の中年・老人はそれらしい見た目なので発注ミスと思われるが詳細は謎。比較できる画像はこちら。
総評
2014年の『真』シリーズ始動から7年の時が経過し、3作目にして遂にホラーゲームと呼んで差し支えないものとなった。
あまりにも遅すぎるが、前作で指摘された問題点を確実に潰しているのは良いことだろう。
しかし、まだまだ「科学かオカルトか」というシリーズ最大の特徴が十全に活きているとは言い難い。
また、都市伝説の調理がうまく行っているとは言い切れない面もあるが、それでもホラーアドベンチャーとしては及第点の一作と評価することはできる。
その他の問題点もあるとはいえ、その一部は旧シリーズ由来であり、その意味ではシリーズの軌道修正が実を結んだと言える。
最終更新:2023年11月08日 11:33