ファミリーボクシング

【ふぁみりーぼくしんぐ】

ジャンル スポーツ(ボクシング)
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ナムコ
開発元 ジャステック
ノイエデザイン
ウッドプレイス
発売日 1987年6月19日
定価 3,900円
プレイ人数 1~2人
判定 良作
ポイント 勝てば勝つほど強くなる育成ボクシング
育成しないデフォルトだけでもシンプルに楽しめる
ダウン無制限のデスマッチルール
ナムコットファミリーシリーズリンク


概要

ナムコが1987年6月に発売したボクシングゲーム。
この年はボクシングゲームが他に『エキサイティングボクシング』(コナミ)『マイクタイソン・パンチアウト!!』(任天堂)と3本も発売されたが、本作が最も早く、同時にファミコン初のボクシングのゲームでもある。
ゲーム本編はウッドプレイスがアーケードで展開していた『キングオブボクサー』の移植で、それに様々な肉付けを行ったアレンジ版となる。

『ナムコットファミリーシリーズ』としては『スタジアム』『ジョッキー』に次ぐ3作目にあたる。


内容

  • 名前の通りボクシングのゲーム。
    • 試合を勝てば勝つほど能力値が上がっていくレベルアップの機能を備えたゲーム性になっている。
    • パンチのヒット数が数えられており、5R戦って決着がつかなかった場合ヒット数の多い方が判定勝ちとなる。これも同数なら体力残量が多い方の判定勝ちとなる。
  • 選手の総合能力は「パワー」。この値を「パンチ」「スピード」「スタミナ」に試合ごとに毎回振り分けて戦う。経験を積むほどポイントが増加していく。
    • 「パンチ」…パンチの直接的威力。
    • 「スピード」…フットワークやパンチスピードの速さ。
    • 「スタミナ」…スタミナの量。高いほどパンチを喰らった時のダメージが小さい。
  • パンチを打つのは基本的にAボタン、防御はBボタン。
    • Aのみ・ストレートパンチ。
    • 上or下+A・相手とタテ方向に向かい合って相手のいる方向に向かいながらAでフックパンチ。
    • 左or右+A・相手とヨコに向かい合って相手のいる方向に向かいながらAでアッパーカット。
    • A+B・相手とヨコに向かい合ってBを押すと屈むので、その状態でAでボディブロー。
    • Bのみ・相手とのポジショニングでダッキング・スウェー・ガードのいずれかが発動。
  • 体力回復方法。
    • 相手にくっつくと確率でクリンチが発動する。この時両者ともかなり大きく回復する。
    • ダウンした状態でA・Bを連打すると、体力の回復度合いを高めることができる。
      • ダウンからの立ち上がりは完全オートなので、ボタン連打には無関係。
    • インターバル中にA・Bを連打すればするほど回復できる。
    • 他にイレギュラーだが後述のアイテムを取ることでもできる。
  • 観客席から時折、アイテムが投げ入れられることがある。
    • 「E」体力が満タンになる。
    • 「P」パワーのポイントが1つ増える(「トレーニング」でのみ出現)。
  • 必殺パンチ
    • きりもみフック
      エネルギーがある時に踏み込んだフックで発動し、コマのようにくるくる回転してダウン。
    • すっとびストレート
      相手が勢いよく踏み込んできたところにストレートでカウンターを決めると発動。ヨコ一直線に吹っ飛ばしロープでバウンドしてダウン。
    • ぶっとびアッパー
      エネルギーがある時に踏み込んだアッパーで発動。相手は高々と舞い上がり頭から落ちてダウン。
      ロープ際で決めるとそのまま相手を場外に叩き出しそのままKOまで確定する「場外必殺パンチ」となることがある。

ゲームのモード

トレーニング

  • トレーニングというよりは、練習試合のようなモードで、勝ちを重ねるほど「パワー」の値が上がっていく。
    • まず最初の3勝で1P、次は4勝で2P、その次は5勝で3P、それ以後は3勝ごとに2Pずつ得られる。
    • このモードで育成したボクサーはパスワードを介して下記のモードで使うことができる。

2P対戦

  • いわゆるプレイヤー同士の対戦モードで、5試合を行い、勝ち数の多い方が勝利となる。
    • 上記トレーニングモードで育成したパスワードを使わない場合、お互いに初期値の9ポイントを振り分けて戦うことになる。
    • 5試合制なので3勝すれば勝ちは確定だが、その時点で打ち切られることはなく5試合分は必ず行う。

ランキング戦

  • 世界ランキング・日本ランキング・新人戦に分かれ、それぞれ1~5位の選手がおり、上記のトレーニングで育成した選手の腕試しのモード。
    • 現実では1位とチャンピオンは別口だが、ゲームでは1位が実質チャンピオンで、それを破るとチャンピオンとなり上位のランキングへ移行する。
    • 初期状態の9ポイントでも世界1位に挑戦できるが、まず足元にも及ばず、勝てる見込みは限りなくゼロに近い。
    • 下位からスタートした場合、勝てば次は上位ランカーと対戦する。
    • 根本的には世界1位(実質世界チャンピオン)を目指すようなものだが、世界1位を破っても別に何かあるわけでもなく、以後もエンドレスに試合が続く。
      • それぞれのランカーの持ちパワー値は下記の通り。
ランキング 1位 2位 3位 4位 5位
世界ランキング 99 90 80 70 60
日本ランキング 50 44 41 38 35
新人戦 25 19 16 13 10

トーナメント

  • 8人制のトーナメントを戦うモードで、1~8人のプレイヤーで戦うことができる。
    • プレイヤー人数を確定させると、その後にパスワード入力画面になり育成した選手で戦わせることができる。

ウォッチ

  • ウォッチ1は上記「トーナメント」同様の方式で、プレイヤーにできることはダウン時とインターバルの連打による回復のみ。
  • ウォッチ2は最初に99のパワーを5選手に振り分けて、コンピュータ同士で戦わせる。
    • 試合方式は勝ち抜き戦ではなく、勝っても負けても次の選手に交代して1人ずつの総当りなので、1人に99ポイントフルに振っても、あとの選手はザコばかりになるので1-4の負けになるのがオチ。

対戦相手

8人のボクサーがおり、CPUのロジックパターンも兼ねている。

  • E.APOLLO
    • テクニシャンなタイプで巧みなフットワークを活かした回り込みが上手く、ロープ際へ追い込んでのラッシュがかけにくい。
  • S.ROPESS
    • 堅実型でディフェンスの上手いタイプ。連打の速さはあるもののパンチそのものの威力やスタミナに欠ける。
  • MAX FIRE
    • アウトボクシングの名手で、距離を取ってから踏み込んでの強力なフックやアッパーを狙ってくる。
  • A.MADMAN
    • ヒットアンドアウェーが上手く、クリンチによる逃げもうまい反面、打たれ強さや体力面で劣る。
  • C.ROCKY
    • 積極的にラッシュをかけてくる攻撃型ファイターで、パンチの威力そのものも強いが防御が苦手。
  • TOM-RUSH
    • サウスポーで左のパンチが強力。フットワークが苦手で、回り込みへの対応に弱い。
  • MAHACHA
    • 防御はおろそかながらガンガンラッシュ攻撃を仕掛け、典型的な打たせて打つ式のファイトスタイル。
  • J.CLUSH(WATCH1のモードでしか登場しない)*1
    • 全体的にバランスの取れた正統派なボクシングスタイル。

評価点

  • ゲームの根幹である試合そのものはわかりやすくてシンプルな構成。
    • パンチでダメージを与え同時にヒット数の多さでポイントを稼ぎ、そのまま時間切れならばその判定で決まるなど、現実のボクシングを知らなくても格闘アクション感覚で楽しむことが可能なレベル。
    • フックやアッパーなどの打ち方も非常にシンプルでわかりやすい。
  • ボクシングとして、やみくもに打ちまくるばかりでなく防御も大事になるゲーム性。
    • パンチを連打するだけでもスタミナを消耗してしまうので、やみくもに打ちまくればいいという単純な考えが通用しない。ヘタに打ちまくって空振りすることでスタミナが減りダウンしやすくなるデメリットがある点もシンプルな中に奥深さがある。
    • 必殺のストレートを出すためにカウンターを狙ったり、また間合いを取ってフックやアッパーを繰り出すこともスタミナの浪費を抑える上で大事なことであるなど、テクニックを磨く楽しみもある。
    • テクニック面では同時に相手の空振りを誘発させて、そこを狙う防御型戦法も有効なものになっている。
  • 試合をいろいろなスタイルで楽しめる。
    • 王道なボクシングを直接プレイするだけでなく『ファミスタ』から引き継がれたウォッチもトーナメントやフリースタイルなポイント振分けでできたりと直接操作しない遊び方でも変わった楽しみ方がある。
    • タイトル画面で選ぶゲームモードが6つもあるようなソフトは初でもある。
  • 育成対戦型ゲームとしても、操作の手軽さと、選手データ読み込みのパスワードシステムの好バランスが維持されている。
    • パスワードも短く、8文字の名前を含めても全部で20文字と言うのはかなりお手軽である。
  • 対戦相手のCPUロジックも豊富。

問題点

  • ボクシングなのに(日本の)基本ルールに即していない一面もある。
    • 実際のボクシングではダウンを奪う方が判定に大きく有利になるが、ゲームではダウンの有無にかかわらず多く当てた方が判定勝ちとなる(これは2013年以前のアマチュアボクシングでの判定ルールである)。
    • 3ダウンでTKO扱いにならない、10カウント中にラウンド時間切れのゴングが鳴った場合はゴング優先も日本ではあまり馴染みが無いが、前者は4大タイトルのうち「WBC、WBO、IBF」は3ダウンでTKOを採用していない*2
      • ただ10カウント中ゴング優先はほとんどの団体で採用していない、一時期WBAが「最終ラウンドのみゴング優先」という特殊なルーリングを採用していた程度。
  • ゲーム性自体はシンプルで比較的分かりやすい部類だが、パワーアップを繰り返していくには物凄く長い時間が必要となる。
    • 例えば初期状態のまま、世界ランキング1位に挑戦しても、まずなすすべなくあっさりやられるので、パワーアップのための長い戦いは必須に近い。
    • 世界ランク1位クラスの能力(パワー99)を得るにはストレートに行った場合でも138勝もしなければならない。
    • 1試合あたりの所要時間はさほど長くないのと、パスワードの文字数が短いのが救いと言えば救い。
  • ウォッチモード2は公平性を保つのに人間の自主性が必要となる。
    • 99ポイントの振分けを最初1Pが行い、次に2Pが行うためなんでもアリなら先に1Pの振分けを見て決められてしまう。

総評

最強選手を目指して育成をやり込むもヨシ、手軽な対戦やウォッチでのシミュレーション感覚の対戦もできるなどファミリーシリーズのスポーツゲームの中でも、かなり広い用途で楽しめる。
育成は時間がかかるとはいえ1試合あたりの時間は短時間でできるので、10試合ほど行っても、そうそうダレないバランスになっているのも良さを感じる部分である。またパスワードも長くないので扱いやすい。
試合の中身でも逆転を生みやすい必殺技まで完備しているなど抜け目も少なく、全般的に入門路線からやり込み路線まで網羅できているなどシンプルながら総じて出来は良い。


その後の展開

  • シリーズ作品では単発に終わるが1988年5月に『ファミリーボクシング MSXタイトルマッチ』がMSX2で発売。
    • ナムコではなくソニーによる発売だが、基本的には本作の移植作品である。
    • この作品では8人それぞれ固有の顔を持っているが、試合中のグラは本作同様、全員共通で具志堅用高っぽい顔になっている。
  • 海外では地域によって日本のAC版と同タイトルの『King Of Boxer』、もしくは海外AC・NES版タイトルの『Ring King』として発売されている。発売元はデータイーストUSA。
    • 尚、2019年12月10日にはプロジェクトEGGにて『リングキング』のタイトルでFC版の配信が開始された*3
  • 『ファミリーシリーズ』作品としては同年8月11日に『ファミリーマージャン』を発売。
    • シリーズとしては初のテーブル系ゲーム。
    • ゲームながら現実の麻雀再現に徹しており、ゲームの画面を使ってアナログ麻雀の事細かな解説に加えて物理的な点棒のやり取りまで見せているなど、ある意味麻雀の教科書のようなゲーム。

余談

  • 本作の説明書の最終頁のアドバイスのタイトルが「明日のチャンピオンたちへ」で、その項目が「あしたのために その1」~「あしたのために その5」となっている。
    • これはもちろん、あのボクシング漫画の金字塔『あしたのジョー』のオマージュである*4
    • あしたのジョー絡みのネタといえば、本作の「ダウン無制限ルール」は主人公ジョーこと矢吹丈がライバル力石徹と初めて少年院のリングで戦った試合で使われた特別ルールである。
  • また、場外吹き飛びKOという要素は『リングにかけろ』のオマージュであろう。
  • これまでの2作品『スタジアム』『ジョッキー』とも名前だけながらナムコキャラの出演があったが本作ではそういったものは一切ない。
    • この次『ファミリーシリーズ』でのナムコキャラ登場は1988年1月の『ファミリーサーキット』まで待つことになる。

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1987年 FC ナムコ SPG
最終更新:2025年01月03日 13:00

*1 本来のプレイヤーキャラをCPUが動かしているような位置付け。

*2 ただそこまで一方的の場合先にレフェリーが試合を止めてしまう場合が多いが。

*3 その後、2022年2月22日には元であるAC版の『キングオブボクサー』もプロジェクトEGGにて配信が開始されている。

*4 因みに本家本元の丹下段平いわく「あしたのためにその○」は15まであるとのこと。