本作ではファミコン版『パンチアウト!!』と、バージョン違いである『マイクタイソン・パンチアウト!!』について併記します。判定はいずれも良作です。
Wiiの同名作については『PUNCH-OUT!!』を参照。
パンチアウト!!
【ぱんちあうと】
ジャンル
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スポーツ(ボクシング)
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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任天堂
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配布年
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1987年9月
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プレイ人数
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1人
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備考
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イベント景品につき非売品
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判定
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良作
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ポイント
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掟破りの無差別級ボクシング 個性豊かで多彩な技を持つ対戦相手 マリオがレフェリーとして登場
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パンチアウト!!シリーズ パンチアウト!! (FC / マイクタイソン) / スーパーパンチアウト!! (SFC) / Arm Wrestling / PUNCH-OUT!! (Doc Louis)
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概要
任天堂から発売されたファミコン向けボクシングゲーム。
1983年にアーケードでリリースされたボクシングゲーム『PUNCH OUT!!』のアレンジ移植作品で、1987年6月14日発売の『ゴルフUSコース』にて開催されたディスクファクスイベントの賞品として用意された非売品である。
対戦相手のキャラクターには1985年稼働の『PUNCH OUT!!』の続編『SUPER PUNCH OUT!!』からのキャラクターも含まれている他、同作で初採用されたダッキングでの回避も取り入れられている。
プレイヤーは主人公の青年リトル・マックとなり、並み居る強豪ボクサー相手に戦い抜きながらチャンピオンを目指す。
ストーリー
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LITTLE MAC(リトル・マック):ニューヨーク ブロンクスに住む17才の若者。ケンカ好きのファイター。
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DOC LOUIS(ドック・ルイス):年令58才。その昔、1954年にはアメリカ・ヘビー級の強豪(ハードパンチャー)だった……。しかし今では酒におぼれる毎日であった。
ある日、街で彼らは偶然に出会った。
そして、そこから全ては始まった。ドックは酒を止める決心をし、マックのトレーナーとなり、ボクシングの全てを教え込んだ。この物語は、栄光の勝利をつかむまでの実話である。
しかし、その道のりは長く、そして……。
(一般発売版の取扱説明書より引用)
ゲーム内容
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1ラウンド3分間の3ラウンドで、ダウンさせて10カウントを取れれば「KO」、1ラウンド中に3度のダウンを奪えば「TKO」で勝ちとなる。
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3ラウンド終了時に決着がつかない場合判定に持ち込まれる。
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試合中のポイントが一定の基準を上回っていれば「判定勝ち」とされる。
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一部の相手は、どれだけポイントを稼ごうが判定勝ちは不可能になっている。
つまり対象の相手では3R中にKOしないとどんなにマックが一方的に押している優勢な展開でも必ず負けになる。翌年のソウルオリンピックで起きるジャッジ買収事件をまるで予知していたかのようだ。
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パンチはBで左、Aは右、十字ボタンの上と組み合わせて顔面とボディーブローを使い分けられる。
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右パンチより左パンチの方が少し早いが、威力は弱め。
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特定のクリーンヒットを繰り出すと相手の頭上に星が出現し、アッパースター(☆マーク)が1つストックされる(最大3つまで、相手のクリーンヒットを喰らうと1つ減る)。
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アッパースターのストックがある状態ではスタートボタンを押すことで必殺技のスターアッパーが繰り出せる。アッパー1発につきスターを一つ消費する。
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画面上部にスタミナ(体力)ゲージが表示されている。
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相手にパンチを当てる、もしくは相手のパンチを喰らうと減少していき、ゲージが空になるとダウンとなる。
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相手にガードされたりかわされたりした場合、スタミナゲージの横に表示されたハートマーク(ファイティングスピリット)が1つずつ減る。また相手のパンチがクリーンヒットすると大きく減り、ガードで防いだ場合1つ減る。
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0になるとマックのグラフィックがピンク色に変化して疲労状態となり、パンチが出せなくなり、敵が連続して攻撃を繰り出してくるようになる。相手のパンチを何発か回避すると回復する。
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これの初期値等は試合毎に決まっている。
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相手のパンチは十字ボタンの左右でスウェー(回避)、下でガード。下を2連打するとダッキング(屈んでかわす)ができる。
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相手のパンチの中にはアッパーなど一部ガードで防げないパンチもあるが、ダメージの軽減にはなる。また、防げるパンチでも微量のダメージは喰らうことになる(スタミナも1つ減る)。
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スウェーの直後にパンチを当てると相手が驚いて一瞬硬直し隙ができる。この際にラッシュをかけるとかなりの勢いで連続パンチが決まる。この際、いつも以上のスピードで連続パンチが繰り出されることもある。
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本来ボクシングは体重別の階級制だが、このゲームはそんなものくそくらえである。
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実際ゲーム中では最軽量のマックが107ポンド(48.53kg)で、最重量のボールド・ブルが298ポンド(135.16kg)と3倍近い体重差でも試合をしている。
つまり事実上無差別級ボクシングである。
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試合中の画面も小人のようなサイズのマックが倍近い体格の相手に立ち向かうというシュールすぎる構図となっている。
それ以外の場面では標準体型なのは謎。
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初戦のグラス・ジョーは110ポンドとマックとはたった3ポンド(1.36kg)の差しかないはずなので本来ならば大差ない体格のはずが、ゲームではどう見ても五割以上は上回る体格をしている。
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1・2ラウンドの間か、2・3ラウンドの間で、どちらか1度だけセレクトを押すと、ドックの応援により次ラウンド開始時体力が回復する。
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元々満タンの状態でそれをやると逆に体力が減ってしまう(1ラウンド開始前の場合も含む)。
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勝利するとランクが1つ上がる。1位になるとタイトルマッチとなりチャンピオンと対戦する。
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タイトルマッチに勝つ(タイトルを奪取する)とマックがニューヨーク郊外をランニングするデモシーンが挿入され、遠景に自由の女神が映り込んだタイミングでパスワードが表示される。
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これにより次のサーキットの最初からスタートできる。
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以後、試合開始前マックのプロフィールが所持しているタイトル名に変わる。
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2連敗するとランクが1つ下がる。トータルで3敗するとゲームオーバー。
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タイトルマッチは1度負けるだけで即ランクが下がる。
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マイナーサーキット、メジャーサーキット時は1つ、ワールドサーキット時は一気に2つ下がる。
対戦相手
括弧内はゲーム中に表示されるプロフィール(英語をそのまま記載)。WEIGHT(体重)の単位はポンド。勝敗数は初戦のものを記載。
なお、キング・ヒッポーとピストン本田を除く対戦相手は2キャラずつ顔以外のグラフィックのパーツおよびモーションを共有したコンパチ関係となっている。
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マイナーサーキット
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グラス・ジョー(GLASS JOE / 1-99 1KO / FROM PARIS, FRANCE / AGE:38 / WEIGHT:110)
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AC版『PUNCH OUT!!』からの続投キャラクター。99敗という凄まじい敗戦成績を誇るザコで、つぶやきの中には「引退したい」と言うものもある。
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「ガラスあご」の名の通り、アゴが弱点。テーマ曲はフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」。
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画面右側に向けてダウンさせるといつも以上にふらつきながら倒れるのも特徴。
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フォン・カイザー(VON KAISER / 23-13 10KO / FROM BERLIN, GERMANY / AGE:42 / WEIGHT:144)
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本作初登場のキャラクター。「ドイツの鋼鉄マシーン」の異名を持ち、陸軍学校でボクシングの教官をしたことがある。トランクスの代わりにズボン(軍服?)を履いており、試合前のみ紫と白のガウンを着ている。1ラウンド目終了以降はインターバル時にタオルを首に掛けている。
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ジョーに次ぐザコで、攻撃の兆候がわかりやすい。テーマ曲は「ワルキューレ」第3幕冒頭。
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スターアッパーにも弱く、特にラッシュが狙えるタイミングで繰り出すと怯えているかのような特殊リアクションを見せる。
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ピストン本田(PISTON HONDA / 26-1 18KO / FROM TOKYO, JAPAN / AGE:28 / WEIGHT:174)
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試合前に巻いている「日本一」と書かれた鉢巻きや、ピクピク動く太い眉毛
とダウン時のバタ足が印象的な日本人ボクサー。
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AC版『PUNCH OUT!!』の「ピストン・ハリケーン」のリファインキャラクターであり、彼同様に左右ストレートのラッシュを仕掛ける必殺技「バンザイラッシュ」を使用する。予備動作は初戦ではAC版のグレート・タイガーを模した連続サイドステップ、ワールドサーキットでの再戦時はピストン・ハリケーン準拠のバックステップになっている。テーマ曲は「さくらさくら」。
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一般販売版ではマイク・タイソンとモーションと体格のグラフィックのパーツを共有している。
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名前やファイトスタイルはピストン堀口、容姿は浜田剛史が元ネタと思われる(前者に関しては大元のハリケーンの時点でモチーフにしていたのかもしれない)。
メジャーサーキット
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ドン・フラメンコ(DON FLAMENCO / 22-3 9KO / FROM MADRID, SPAIN / AGE:23 / WEIGHT:152)
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本作初登場のキャラクター。ハンサムを自称するナルシストだが実はヅラであり、プレイヤーに押されている状況でインターバルに入るとヅラが抜け落ちているのが確認できる。テーマ曲は「カルメン」で、薔薇をくわえて踊る。
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モーションと体格のグラフィックはグラス・ジョーと共有。トランクスの色はジョーと同じで、カイザー同様試合前のみ赤と白のガウンを着ており、インターバル時はタオルを首に掛ける。ワールドサーキットでの再戦時はグローブの色が水色からエメラルドグリーンに変化する。
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キング・ヒッポー(KING HIPPO / 18-9 18KO / FROM HIPPO ISLAND, SOUTH PACIFIC / AGE:?? / WEIGHT:???)
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本作初登場のキャラクター。南太平洋の架空の島ヒッポーアイランドの大酋長。極度の肥満体型と鉄壁のガードを誇る。テーマ曲はオリジナルと思われる南国風BGM。
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とにかくガードが固く、今までの対戦相手と同じ感覚で挑むと返り討ちに遭う初見殺しなキャラクター。一方、その巨体ゆえダウンさせられると自力で起き上がることができないため、1回ダウンを取った時点で勝利となる。
また、その性質ゆえ星が手に入れる事ができない唯一の選手でもある。
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グレート・タイガー(GREAT TIGER / 24-5 3KO / FROM BOMBAY, INDIA / AGE:29 / WEIGHT:132)
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AC版『SUPER PUNCH OUT!!』からのキャラクター。宝石付きのターバン姿が印象的なインド人ボクサー。
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AC版では上述したピストン・ハリケーンの作品跨ぎのコンパチキャラであり、彼と同じく正統派な立ち回りを見せていたが、本作ではそのポジションをピストン本田に譲り、妖しさ全開の挙動を見せる奇術師へと設定変更された。
その反面序列はポピンスキー(ドランケンスキー)と逆転してしまったが…。必殺技は分身しながら弧を描いて移動しパンチを繰り出す「マジックアタック」。
1ラウンド目は通常の入場BGMで何のリアクションも見せず試合を始めるが、2ラウンド以降は開始時にカイザーと同じ曲が流れ、それに合わせてリング中央へとテレポートする。また、マックに勝利するとアッパーのパフォーマンス後にテレポートでリングから去っていく。
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モーションと体格のグラフィックはフォン・カイザーと共有(その関係で、服装もAC版のトランクスからズボンへと変更されている)。ズボンの色はカイザーと違う。
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ボールド・ブル(BALD BULL / 34-4 29KO / FROM ISTANBUL, TURKEY / AGE:36 / WEIGHT:298)
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AC版『PUNCH OUT!!』からのキャラクター。「ハゲた暴れ牛」の異名を持つが、本人は自分をハゲ頭にした床屋に対して恨みを抱いている。また、ドックを侮辱するような台詞も妙に目立つが、詳しい関係は不明。
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遠距離から突進してアッパーを放つ「ブルチャージ」は今回も健在。
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彼のみ試合前の専用BGMやパフォーマンスが一切ない。賞品版ではトランクスが青、一般発売版では薄い水色になっている。
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なお彼は賞品版のパッケージを飾っていたり、AC版『SUPER PUNCH OUT!!』以外のシリーズや関連作『Arm Wrestling』にも登場したりと優遇されている。
ワールドサーキット
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ソーダ・ポピンスキー(SODA POPINSKI / 33-2 24KO / FROM MOSCOW, U.S.S.R. / AGE:35 / WEIGHT:237)
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AC版『SUPER PUNCH OUT!!』からの登場キャラクターで、その時の「ウォッカ・ドランケンスキー」から改名された。名前の通り
酒ソーダが大好きで、試合前やインターバル中にもソーダをガブ飲みし、泥酔したかの如く真っ赤っかになって試合をする。 本作に登場する選手の中では唯一のサウスポー(左利き)のボクサーであり構え方も逆向きとなっている。
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登場時やマックを倒した際には陽気な笑い声を上げる。トランクスの代わりにレスリングパンツを履いている。
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ここまでの対戦相手に比べて全体の挙動が独特であるうえ、その長身からは想像もできないほど素早いパンチを繰り出してくる。ゆえに総じて予備動作が掴みにくく、キング・ヒッポー同様に多くのプレイヤー
そして有野課長を苦しめた。必殺技は地団駄を踏んでからの連続ストレート。テーマ曲は「ヴォルガの舟歌」。
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Mr. サンドマン(MR. SANDMAN / 27-2 21KO / FROM PHILADELPHIA, PA. / AGE:31 / WEIGHT:284)
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AC版『PUNCH OUT!!』のラスボス。人を眠らせる同名の妖精が由来なのか、インターバル時のつぶやきもそれにちなんだものになっている。
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テーマ曲は無いが、観客の歓声が鳴り響く中で高速4連続アッパーを披露する演出は威圧感満載。
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予備動作が短くやたら素早いストレートに必殺の3連続アッパー、気絶時のラッシュもボディブローしか通用しない等、立場こそラスボスから降格したとはいえAC版の難攻不落ぶりはむしろ更に強化されている。また1ラウンドTKOを狙うにはかなり綿密な操作が要求される。
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モーションと体格のグラフィックはボールド・ブルと共有。トランクスの色はブルと違う。
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スーパー・マッチョマン(SUPER MACHOMAN / 35-0 29KO / FROM HOLLYWOOD, CA. / AGE:27 / WEIGHT:242)
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AC版『SUPER PUNCH OUT!!』のラスボス。ムキムキのボディービルダーで、登場時には誇らしげに胸筋を揺らす。
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AC版に引き続き、上半身を捻って回転パンチ(単発版・一撃必殺の連続版の2種類)を繰り出してくるが、本作ではスウェーで回避可能となっている。
かわした後の隙を狙うと後頭部を殴るような絵面になるのもAC版と同様。テーマ曲はカイザーやタイガーと同じ。
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モーションと体格のグラフィックはソーダ・ポピンスキーと共有。レスリングパンツの色はポピンスキーと違う。
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評価点
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シンプルで直感的な操作。
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Aで右パンチ、Bパンチで左パンチ、上を押しながらAかBで顔面パンチ、下でガードと、各アクションに沿ったボタン配置となっており、操作性がスムーズでレスポンスも良好。
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爽快感が抜群
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アクションはいずれも小気味よく操作性も良い。
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ダウンを奪うと跳ねるような甲高い音と共に吹き飛んだり、リング上を滑ってからダウンをする。アーケード版よりもリングが広く表現されている為、よりダイナミックにダウンする。
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加えて攻撃を当てた部位や技によって殴られた相手は表情豊でかつコミカルな顔でダメージを受ける。連続パンチが決まるとより爽快である。
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相手の動きの読みを重視するゲーム性
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ただやみくもに殴るだけでは容易に防がれてしまい、スタミナの浪費に繋がってしまう。対戦相手にはそれぞれ動きの癖があり、各自の必殺攻撃を繰り出す際にわかりやすい前兆が発生する。これらのパターンを的確につかまないと攻略は難しく、ただの単調な打ち合いに留まっていない。
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最初のうちはガードが甘い敵が多いので隙を見て殴る戦法も通用するが、早々にガードが固くなり、相手の動きを見切らないと勝負にならなくなる。
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基本的には「相手からの攻撃をあえて誘いカウンターで打ち込む」ことが戦法の基礎で、タイミングを計って覚えるという覚えゲー的側面が強い。
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相手によっては必殺技を放ってくることもあり、一撃でダウンを奪われたり、さばききれないほどのラッシュを受けて体力やスタミナがごっそり削られるといった非常に厄介な攻撃を繰り出してくるが、タイミングよくカウンターを当てる事で逆に一撃でダウンを奪えることも多い。
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必殺技の破り方はインターバルでドックが教えてくれることもある。強力な技を見切った時の爽快感は格別。
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カウント9で立ち上がると体力の回復量が増す。
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単純に早く立ち上がるだけでなく「いかにギリギリまで休んで回復させるか」というリアルな要素の追求になっている。
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BGMの出来が秀逸。
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AC版に存在しなかった試合中の音楽の追加により、対戦がより盛り上げられている。
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マックがダウンした際にはカウントダウンの緊張感を煽る曲調に変化するなど、リアルタイムでの戦況の変化が表現されている。
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また、特にタイトル奪取とランニングのシーンへのつなぎはまるで「タイトルを取った喜び」と「次なる高みへの挑戦」といった感じで雰囲気がよく出ている。
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各選手ごとの入場ジングルも出身国のお国柄を反映したものになっているなど国際色豊か。
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ゴング音や、ラウンド表示画面や勝利時に湧き上がる合成音声によるリアルな歓声も臨場感を盛り上げてくれる。
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個性豊かな対戦相手。
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ボクシングは基本単調なパンチの打ち合いのため、長いと少々冗長気味になるが、数々の対戦相手がそれぞれ特有の個性あふれる技を繰り出してくるので単調にならない。
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特にグレート・タイガー、ボールド・ブルあたりからそんな技が飛び交うスリリングな試合が体感できる。
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勝ち進んでいくほどにさらなる強敵が待ち構えているが、上述した圧倒的な体格差を感じさせる画面構成も影響し、強敵を撃破した際には文字通りのジャイアントキリング的な達成感を味わえる。
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また、それぞれの相手が見せるパフォーマンスも個性的で、見ていて面白い部分である。
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バラをくわえてフラメンコを踊るドン・フラメンコ、誇らしげに自身の胸筋を揺らしながら入場するスーパーマッチョマン、インド出身の親子二代のマジシャンという奇抜な経歴の持ち主で「分身で相手を惑わして殴る」という現実離れした奇天烈な必殺技を持つグレート・タイガーなど、全体的にコミカル色が強い。殴り合いが繰り広げられるゲームながら、こうしたユニークなコミカルさで殺伐さが適度に和らいでいる。
ラッシュが狙えるタイミングで見せる対戦相手のマヌケな表情も必見。
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大半の相手ボクサーは体のパーツやモーションを別のボクサーと共有しているが、顔の表情はそれぞれ個別に描き分けられており、かつパターンも非常に多い為、手抜き感はほとんどない。
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インターバル時の画面演出も秀逸。双方の選手のグラフィックはアニメーション付きで、ダウンの回数に応じて目元の腫れや絆創膏といったダメージ描写が追加されていく。テキストでは試合前はお互いの出身地や戦績等の基本情報、試合中はマックとドックの会話と相手の台詞が表示され、臨場感の向上やキャラクターの掘り下げに一役買っている。
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対戦相手のうち、ピストン本田、ドン・フラメンコ、ボールド・ブルの3人は2度対戦するのだが、再登場でも全く新しい相手に感じられる。
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もちろん同一人物なので、前のスタイルは引き継いでいるが、それを知っていながらも予定通りにいかない行動パターンでこちらを苦しめてくる。
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ピストン本田は純粋なパワーアップ版、動きが機敏になったほか、ストレートラッシュの前兆も変わっている。
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ブルの方はスターアッパーかブルチャージのカウンターでしか倒せない上必ず9カウント目で起き上がるという、あからさまなパワーアップがなされている。
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特に顕著なのがドン・フラメンコ。1回目はメジャーサーキット3位、2回目はワールドサーキット2位になっており、メジャーサーキット時でチャンピオンだったボールド・ブル(ワールドサーキットでは3位)よりもランクが上位になっている形で示唆されているように、同一人物ながら戦法の巧みさやタフさなどもまるで段違いにパワーアップしている。
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1回目はただ延々と「カモン!カモン!カモン!」と挑発し、その挑発に乗ってパンチを打つとガード後に大振りのアッパーを繰り出すという単調なルーチン。このアッパーは見た目通りスキだらけで、簡単にかわせる上に、かわした後は殴り放題というまるで弱い相手だった。
だが2回目は、そんな1回目の印象のままナメてかかると見事に痛い目に遭わされる。というのも、1回目のカウンター狙いのワンパターン戦法から一転し、そのときは使用しなかった素早いストレートを中心に、かなり積極的に攻撃を繰り出してくるのである。このせいでリズムを狂わされ、なすすべなく1ラウンドのうちにダウンをことごとく奪われ苦戦するプレイヤーが続出した。
そしてそのアグレッシブなストレートとフック(1回目ではマックのスタミナが切れた時のみ繰り出してきた)の連発で困惑させた挙句、途中から前回同様挑発して反撃を狙うパターンに戻る。だが、今度は必ずしも大振りアッパーで反撃してくるとは限らない(ガードするだけで終わるパターンもある)という嫌らしさも加わっているうえ、1回目で可能だった回避後のハメパターンもできなくなっている。
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使いやすいパスワード。
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当時としては恒例のパスワード式コンティニューだが、わずか10文字、しかも数字のみなので写し間違いのリスクはかなり小さい。
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しかもちゃんと細かい戦績までキープされている。
賛否両論点
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終盤戦では相手の空振り後のカウンターや相手がパンチを繰り出そうとしている瞬間でしかパンチが当てられない。
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ゲームとしては敵の強さに繋がっているので問題ないが、自分から積極的に攻撃できない展開を作り出してしまっている辺りは純粋なボクシングの再現としては難があると言わざるを得ない。
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もっとも、上記の通り体重差一切無視でほとんど倍以上の体重差の相手との試合ばかりなので「こうでもしないと勝てない」と解釈すれば妥当と言えなくもない。
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マックは通算4回目のダウンで負けが確定。
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マックは基本的にダウンしたらAB連打で立ち上がるのだが、ダウン回数を重ねるごとにAB連打回数が多く必要になり、通算4度目では連射パッドで最高にしても立ち上がれなくなる。
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片や対戦相手は6度目のダウンでも立つ時は立つと、上記の通りの体重差なので納得できなくもないものの不公平感は否めないところ。
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また、マックは完全に復帰するまでレフェリーのカウントがリアルタイムで進行するのに対し、相手は起き上がる素振りを見せた瞬間にカウントが一時的に止まるのもおかしい。
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キング・ヒッポーは一度ダウンしたら起き上がれずそのままKOだが、内部処理上はこの「立ち上がろうとしたものの再び倒れ込む」が発生して一時的にカウントが止まることがある。
問題点
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ダッキングの存在意義が薄い。
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初出のAC版『SUPER PUNCH OUT!!』ではスーパー・マッチョマンの回転パンチのようにダッキングでなければ回避できない技もあったのだが、本作では左右のスウェーで全て回避できる。2回入力というコマンドも咄嗟の回避動作としては扱いにくい。
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また左右のスウェーも特に使い分ける必要がなく片方だけで済んでしまう。
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メッセージが全て英語。
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ローマ字表記ではなく本格的な英語なので、英語に詳しくないとインターバルの会話の意味が理解できない。
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ドックのセリフには攻略のヒントが含まれているため、英語のわからない人には若干不親切。
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ポーズがかけられない。
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必殺技の発動にスタートボタンを充てているせいで、ゲーム中ボーズができない。
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『バレーボール』でも「サーブを打つ前」と限られていたが、こちらはラリー自体が短いのでさほど苦にならないものだったが本作では3分間ぶっ通しなので、少々扱いにくいところではある。
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ワールドサーキットのタイトルマッチでは負けると一気に2ランクも落ちてしまう。
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2位のドン・フラメンコ、1位のミスター・サンドマンはともにかなり時間のかかる相手なので、冗長気味になる。
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チャンピオンのスーパーマッチョマンに初顔合わせで一発勝利できるなら問題ないが、ダウンさせると必ず繰り出してくるスーパースピンパンチは喰らうと1発でダウンさせられる上、何回転するかわからないので慣れるまで相当かかる。
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一部キャラクターの描写に整合性がない。
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ファミコンのスペックでAC版のワイヤーフレーム表示を再現できないという事情はあれど、やはり試合中だけマックが小人のようなサイズになっているのは不自然と言わざるを得ない。
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また、マックは挑戦するサーキット毎に異なる色のグローブとトランクスを着用しているのだが、試合画面では開始前は白、リング中央に近づくとその色に変化し、対戦相手のダウン等で中央から離れてレフェリーが現れた瞬間に白に戻る…といった変化を繰り返す。
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サーキット制覇時やエンディングで表示されるマックの全身グラフィックでは、グローブは赤でトランクスは青、シューズは黒と青で固定。
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ピストン本田とキング・ヒッポーはそれぞれ鉢巻や王冠を着用しているのだが、試合中は外している。しかし、フォン・カイザーやドン・フラメンコのガウンとは違い、1ラウンド終了後のインターバルでも着用したままになっている。
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Wii版では両者ともに鉢巻や王冠を外さず試合をする。
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スーパー・マッチョマンはインターバル中はアーケード版同様に白髪と小麦肌だが、試合中はマックと同じ黒髪と白い肌になっている。
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少々寂しいエンディング。
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それまでの対戦相手の顔を見せて最後にファイテングポーズを取るマックと戦績だけ。
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ワールドタイトルのチャンピオン誕生を報じるシーンがエンディングともとれるが。
総評
単純にボクシングとして見ると、かなり不公平で理不尽に見える部分が多いが、個性豊かな対戦相手とそれぞれが繰り出す技の数々などもあって単調な殴り合いにとどまらない面白さがある。
また各選手がそれぞれ持っている特徴を対戦を繰り返すうちに覚えることで、手も足も出なかった相手を倒せるようになっていく。そうした、当時のゲームにありがちだったトライアンドエラーを繰り返して上達していくゲーム性も、幾たびとなく壁にぶつかりながら成長して強くなる現実のボクサーに相通じるものがある。ゲームを通してリアルに近いボクサー体験を味わわせてくれる一作と言えるだろう。
マイクタイソン・パンチアウト!!
【まいくたいそん・ぱんちあうと】
ジャンル
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スポーツ(ボクシング)
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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任天堂
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発売日
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1987年11月21日
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プレイ人数
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1人
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定価
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5,500円
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判定
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良作
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ポイント
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VS.マイク・タイソン!! 夢のドリームマッチ 幻のソフトは幻ではなくなった
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パンチアウト!!シリーズ パンチアウト!! (FC / マイクタイソン) / スーパーパンチアウト!! (SFC) / Arm Wrestling / PUNCH-OUT!! (Doc Louis)
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概要(一般販売版)
上記『パンチアウト!!』の一般販売版。賞品版はCMで「幻のソフト」と謳われていたが、同年の1987年11月21日に、当時の最年少で世界ヘビー級統一王者となり一躍時の人となったアメリカ人プロボクサー、マイク・タイソンとのタイアップ作として発売された。
基本的なゲーム要素はそのままに、マイク・タイソンが新たなラスボスに据えられている。
賞品版との違い
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概要の通り、マイク・タイソンがラスボスに据えられている。
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賞品版におけるワールドサーキットのラスボスであるスーパーマッチョマン戦での勝利後、ワールドチャンピオン誕生を報じる新聞のシーンの後にタイソンとのドリームマッチに突入し、勝利するとエンディングになる。
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この新聞記事にはパスワードが出ており、これを入れるとスーパーマッチョマンとのワールドタイトルマッチから再開できる。
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マイク・タイソン(MIKE TYSON) アメリカ合衆国・ニューヨーク州キャッツキル出身、21歳、220パウンド、31勝0敗27KO。
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グラフィック及びモーションはピストン本田と共有となっている。
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電源ON後のタイトル画面
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賞品版はON直後にタイトル画面が表示されるが、一般販売版はマイク・タイソンからのメッセージが顔グラと共に表示されてからタイトルへ移行する。
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双方のパスワードに互換性はない。一般販売版でのみ使える裏技的なパスワードも存在する。
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賞品版でも電話のコール音が流れるパスワードは何故かそのまま使用できる。
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裏技で裏面「アナザーワールドサーキット」がプレイできる。
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マックは9位から始まり、チャンピオンがタイソンというものである。
タイソン戦同様マックの所持しているタイトルにワールドサーキットも含まれており、実質2周目である。
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最初の対戦相手はキングヒッポーで、以後は表面のメジャーサーキットとワールドサーキットの相手と戦うことになる(ピストン本田、ドン・フラメンコ、ボールド・ブルは2回目のみ)。
1周目で最初に対戦するグラス・ジョーとフォン・カイザーはエンディングの選手紹介以外一切出てこない。
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このモードではエンディングのタイソンからのメッセージ画面にクリアまでのタイムも表示される。
評価点(一般販売版)
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実在ボクサーとのタイアップによってより盛り上がるゲーム展開
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実在のボクサーとのタイアップということで、最終対戦相手となるマイク・タイソンは一撃でダウンさせるほどの威力を持つ連続アッパーや、かなりの速さのストレートやジャブなどを打ってくるなど、まさに鬼のような強さを誇る難敵として登場する。倒すのも一苦労だが、それだけに倒した時の感動もひとしおである。
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賞品版では寂しかったエンディング演出も、タイソンからの祝福のメッセージが表示されてエンディングに移行するという感慨深さを増したものになった。
さらにあるパスワードを入力することで隠しスタッフロールも見ることができる。
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変化に富んだタイソンの攻撃。
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1R目は一撃必殺のタイソンアッパー連発。これを乗り切ればショートフックに切り替えてくるので脅威はグッと落ちる。2R目は一撃でダウンさせるような必殺級のパンチを打ってこないので、ラウンド開始直後のストレート連発をガードで乗り切れば比較的ラク。
しかし、3R目の読めない展開こそ、ラスボスらしくが一筋縄ではいかない強さに繋がっている。ノーモーションから急にスキのないストレートをズン!ズン!ズン!と3連発で繰り出してきたり、それを警戒してガードしていたら、ウラをかいてガード貫通する(一応軽減にはなる)タイソンアッパーを繰り出してきたりと変幻自在で、それまでノーダウンで乗り切ってきても初見ではここでリズムを狂わされて一気に3ダウンで負けることもザラ。
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2Rで3ダウン奪って勝つことも不可能ではないが、普通に進めていれば初のタイソン戦は判定に持ち込む道を取ると思われるので、これが鬼門となる。単純に見れば必殺のアッパー連発の1R最初が最強に思えるが、この3Rの読めない攻撃こそまさにラスボスらしい貫禄と言えるだろう。
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いきなりタイソン戦から始まるパスワードも存在するがこれは数字の語呂合わせになっておりかなり覚えやすい。
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なお、これを利用してタイソン慣れしていると普通にプレーした時や、アナザーワールドでサンドマンやマッチョマンに勝てないという逆転現象が起きやすい。
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またこのパスワードで、マックの戦績は「0勝2敗0KO」なので、これに勝ったエンディングでは「1勝2敗1KO」または判定勝ちの「1勝2敗0KO」としまらないものになってしまうため、ちゃんと正攻法プレイする価値は失われない。
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賞品版ではインターバル間の会話シーンのセリフについて注釈が一切存在しなかったため不親切だったが、本作では全てのセリフの日本語訳が掲載された辞書が付いてくるため、英語が読めなくても安心である。
賛否両論点(一般販売版)
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付属の辞書は全体的に意訳が目立つ。
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ドックの台詞は攻略のヒントとなる部分はしっかり押さえているため問題はないのだが、対戦相手の何気ない台詞は原文のニュアンスとかけ離れているものが多い。
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これについては辞書の冒頭で"「ゲーム中の英語部分をおもしろおかしく解説した辞書です。したがって、皆さんが学校で習う英語とは違う所がたくさんあるかもしれませんが、ご理解ください。」"と断りを入れている。
問題点(一般販売版)
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1Rと2R以降のタイソンアッパーは全く別物なのに見た目が同じ。
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上記の通り開始早々から打ってくるタイソンアッパーは一発でダウンさせてくる超強力な必殺技に近いもの。
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2R以降にタイソンが時折打ってくるアッパーはそれなりに強力だが一発ダウンさせる1Rのそれを思えば威力が非常に小さい。
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この通り威力の上では全然別物な扱いなのに両者の見た目がまったく同じなのは少々違和感がある。
総評(一般販売版)
根本的なゲーム性は賞品版からそのままであるが、著名な実在ボクサーを強力なラスボスとして据えたことにより、より一層盛り上がるゲーム展開となった。
残念なことに、著名人とのタイアップという都合でネット配信版では触れることができない。ソフト自体は賞品版に比べて比較的入手は容易であるため、プレイ環境を整えられる機会があれば、実在プロボクサーとのより一層手に汗握る白熱した戦いを体験してみていただきたい。
その後の展開
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1998年3月にニンテンドウパワー専用ソフトとして『スーパーパンチアウト!!』が配信開始された。
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海外で1994年に先行発売されていた『SUPER PUNCH OUT!!』の配信版で、公式ではAC版『PUNCH OUT!!』のリメイク作と喧伝されているが、内容自体は初代AC版の続編として発売された同名タイトルのアレンジ移植作となっている。ニンテンドウパワーそのものの認知度が低かったため、知名度が低い。
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対戦相手は本作同様に大半が初出キャラクターとなっており、ボールド・ブル、Mr.サンドマン、スーパー・マッチョマン以外の本作の登場キャラクターは全員リストラされた。一方で、AC版シリーズからはピストン・ハリケーン(初代)、ベア・ハッガー(スーパー)、ドラゴン・チェン(スーパー)が再登場している。
AC版において存在した「反則技を使う選手」が増えており、さながら異種格闘技戦の様相を呈しているのが特徴。画面構成にアレンジが加わっていたファミコン版に対し、AC版をほぼ忠実に再現している。
特筆すべき点として本作はキャラクターボイス付きだが、その全てのボイスをマリオでおなじみのチャールズ・マーティネー氏が担当している。
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リアル志向ボクシングゲーム『Fight Night Round 2』のGC版に海外版が収録されたほか、Wii・WiiU・New3DSのバーチャルコンソールでも配信されていた。
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なお、プレイヤーキャラクターは固有の名前はなく、見た目も本作のマックやアーケード版の主人公とも別人だが、『Fight Night Round 2』本編にもこのプレイヤーキャラクターを3D化した選手がLITTLE MACの名でゲスト出演している。
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2008年発売のWiiソフト『キャプテン★レインボー』にマックが登場。しかし「落ちぶれたキャラを更生させる」事が題材の作品のため、丸々と太って別人のような姿に。
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減量に成功すると元の姿に戻り、本作をモチーフとしたミニゲームで遊ぶことができる。
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2009年にはWiiソフトとして『PUNCH-OUT!!』を発売。
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ファミコン版をベースとしたリメイク作となっている。マックの描写は「アメリカ人男性としては小柄」レベルの体型へと改められ、アーケード版に近い画面構成となった。
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公式サイトでは歴代シリーズについて触れられているが、ファミコン版については賞品版をメインに紹介しており、一般販売版については「1987年11月21日に製品版が発売されました。」と軽く触れるにとどまっている。
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SFC版とは逆にマイク・タイソン/Mr.ドリームを除く本作の対戦相手が全員再登場しており、そこにベア・ハッガーとSFC版初出のアラン・ライアン、そしてAC版『PUNCH OUT!!』に登場したキッド・クイックをリファインした新規選手ディスコ・キッドを加えた顔ぶれとなっている。
アランに関しては何があったのかほぼ別人の如き変貌を遂げてしまったが…。
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『どうぶつの森+』では1990年に海外でのみ再版されたバージョン(後述)が移植されたほか、Wii・WiiU・3DSのバーチャルコンソールでも配信されていた。
スマブラへの参戦
余談
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海外ではディスクシステムが未発売だった関係でディスクファクスイベントも行われていなかったため、賞品版は国内のみの流通となっていた。
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一般販売版は、米国では日本に先駆けて1987年10月18日に、欧州では日本国内発売の翌月の1987年12月15日に発売された。
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その後、海外でのみ1990年に「Punch-Out!! Featuring Mr.Dream」のタイトルで、ラスボスを架空のボクサー「Mr.Dream」に差し替えた再販版がリリースされた。(恐らくは肖像権及びタイソン氏が起こした不祥事の都合)。『どうぶつの森+』及び国内のバーチャルコンソールで配信されていたのはこちらのバージョンとなっている。
これに関しては任天堂とタイソンのライセンス契約が1990年で失効した事による変更と見られる。
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Mr.ドリーム(MR. DREAM) ドリームランド出身、年齢不詳、235パウンド、99勝0敗99KO。
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茶髪の白人ボクサーで、ファイトスタイルや台詞に至るまでタイソンの完全なるガワ替えキャラとなっている。その容姿や驚異的な戦績、プロフィールの既にこの世の存在ではないイメージから、モデルはロッキー・マルシアノではないかと推測されている。ちなみにトランクスは赤地に緑の境界線という色相的に無理のある配色になっている。
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上記の例がそうであるように、タイソンの肖像権が絡むせいで一般販売版は二次的な使用が難しい扱いになっている。
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CSで現在も放送中の番組『ゲームセンターCX』において過去に挑戦が行われた回があるが、この時も、比較的安価で入手しやすいはずの一般販売版ではなく、得難い高価な賞品版を中古屋で探し出しての挑戦となった。
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上述の扱いとは対照的に、タイソン氏本人は本作に思い入れがある様子を見せており、後年、本作をゲーム内の自分に瞬殺されながらもノリノリでプレイしていたり、
Wii版の「PUNCH-OUT!!」に対してはTwitter(現:X)上で「任天堂がオレに断りなく新作を作ろうとしている、オレのノックアウトがゲームを作ったというのに、そりゃひどい」や、Mr.Dreamに差し替えられた「Punch-Out」の配信に対し「Mr.Dream?パンチアウトと聞いて誰を思い浮かべるんだい?」といった内容のツイート(ポスト)をしている。
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マイク・タイソンがマイク・タイソンを殴ろうとする
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賞品版で使用されたカートリッジは後に光栄のFCソフトやポニーキャニオンの『A列車で行こう』等の大容量のデータを使用しているソフトに流用された。
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こちらではカートリッジの刻印が"Nintendo"から"FAMICOM"へと変更されている。
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上述のSFC海外版が収録された『Fight Night Round 2』では、他にも本作を彷彿とさせる要素が存在する。
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エディットモードの選手のニックネーム(選手名代わりに読み上げられる)の中に"THE SANDMAN" "HURRICANE"がある。
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アナウンサーの読み上げは数パターン用意されているが、前者を選んだ場合は"MR. SANDMAN"と読み上げられるパターンも存在する。
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お互いに小人体型になって試合をする裏技がある。
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「喧嘩の強い若者が落ちぶれた元プロボクサーと出会い、彼にボクシングを教わってチャンピオンを目指す」というストーリーや、ゲームオーバー時のバンデージ姿で椅子に座ってうなだれるマックのグラフィック等、『あしたのジョー』の影響が少なからず見受けられる。
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なお、このゲームオーバー演出はSFC版でも継承されているが、同作では落ち込む主人公を斜め前から映しており、より元ネタに近い構図になっている。
上記『キャプテン★レインボー』ではマックのテーマ曲が「あさっての情」というタイトルであり、こちらは明らかに狙ったものとなっている。
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タイトル及び選手紹介デモにおけるBGMはAC版シリーズから引き継がれている曲だが、元をたどればこの曲自体は1942年から60年の間に渡りアメリカで放映されていたスポーツ番組「Gillette Cavalcade of Sports」のテーマ曲『Look sharp march』のアレンジである。
番組内では様々なスポーツ競技が取り上げられており、特にボクシングの放映に力を入れていたという。
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ラウンド入場曲とランク落ちに流れる曲もAC版シリーズから引き継がれている曲だが、こちらはHAL研究所から発売されたFCソフト『スター・ゲイト』にも使用されている。
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1984年に発売されたゲーム&ウオッチマイクロVSシステムの『ボクシング』は海外では後期タイトルが『PUNCH-OUT!!』の名で発売された。
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こちらのバージョンのパッケージにはグラス・ジョーとMr. サンドマンらしき選手が描かれている。
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海外では「スクラッチオフ」というゲームカードが発売された。
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カード上に複数箇所ある銀色のスクラッチ部分を削ると「3つ集めるとKO勝ち」等のマークが現れるので、一つずつ削ってカードに描かれた対戦相手と勝負するというもの。
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描かれている対戦相手のうち、原作でズボン姿であったフォン・カイザーとグレート・タイガー、レスリングパンツ姿であったソーダ・ポピンスキーとスーパー・マッチョマンはトランクスに統一されている。その他のキャラもトランクスの色を始め、ビジュアルが全体的に原作と異なる。
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特にピストン本田は鉢巻のデザインが旭日旗を模したものに、Mr. サンドマンは白人のような肌の色になっている。また、スーパー・マッチョマンは本作の試合中のグラフィックを元にした黒髪&白い肌になっている。
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ゲームでのタイソンの成績「31戦無敗27KO」は、同年8月1日にトニー・タッカーとのタイトルマッチを判定で勝って3団体統一王座になった時点のものである。
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実際には発売の前月である10月16日にテイレル・ビッグスと3団体統一チャンピオンとして初のタイトル防衛戦を行いKO勝ちしているため、発売時点での戦績は「32戦無敗28KO」であったが、さすがに発売までにこれを加算するのは間に合わなかったようだ。
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1990年2月に東京でジェームス・バスター・ダグラスに初黒星を喫するまで無敗記録を伸ばし(37連勝)最終的な戦績は「58戦50勝6敗44KO(無効試合2)」であった。
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攻略記事などでは「タイソンとの試合で1R目1分30秒まで連続で繰り出してくるタイソンアッパーは喰らうと必ず1発ダウンさせられる」とよく見られるが、厳密にはマックの体力が満タンの状態でガードしていれば1発だけは耐えられる(それでもダウン寸前まで減らされるが)。
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相手の動きには必ず法則があるが、中には観客の合図で見極める選手も存在する。
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ボールド・ブル、ピストン本田(2回目)、スーパー・マッチョマンの3名がこれに該当する。
なお、これに気が付くとマッチョマンの1回転パンチを避けるタイミングがつかみやすく、多少楽になる。
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ポピンスキーの笑い声はブル・サンドマン・マッチョマンの勝利ポーズにも流用されている他、海外版『リンクの冒険』のゲームオーバー時に現れるガノンの笑い声としても使用されている。
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サーキット制覇後のマックが自転車を漕ぐドックに付いてジョギングをするシーンは、海外では自転車泥棒とネタにされている。
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ただし、元になったミームでは黒人に対する差別用語が含まれているため、ネットコミュニティでネタにする際は注意。
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デモ画面はボールド・ブルとの対決を写したものになっている。
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この画面をよく見てみると賞品版はパネルの色が本編には出てこないピンク色の物に、一般販売版ではマイナーサーキットと同じ色合いのアリーナとなっている。
さらにマックのハートマーク所持数はゲーム中ではありえない99となっている。
ちなみにゲーム中で最も多いハートマークの値はグレート・タイガー戦の77である。
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ピストン本田の台詞には"Where is the NHK TV camera? Hello, Tokyo!"(NHKのテレビカメラはどこだ?東京の皆さん、見てるかい。)というものがある。
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バーチャルコンソール版では前半の台詞が"Where is my camera crew?"(俺のカメラクルーはどこだ?)に変更された。
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一般販売版の「アナザーワールドサーキット」におけるタイソンの名前を見ると…
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一般販売版は先行する賞品版に多少のアレンジを加えて発売した程度にすぎないのだが、タイソン本人を起用したCMで話題になった。
CM内の"Now You're Playing With Power"のコールは海外のNESのCMに用いられていたフレーズである。
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CMでも微かに聞こえるが本来ならばパッケージの英語表記の通り「マイクタイソンズ・パンチアウト(Mike Tyson's)」である。
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賞品版も『ゴルフUSコース』の「♪参加参加参加参加」という独特のフレーズでイメージに残りやすいCMで紹介されていただけに、わずか1万本の非売品でありながら一般販売される前でも決してマイナーな存在ではなかった。
最終更新:2025年04月12日 03:15