The Messenger

【ざ めっせんじゃー】

ジャンル アクション
対応機種 Windows 7~(Steam)
Nintendo Switch
PlayStation 4
Xbox One
発売元 Devolver Digital
開発元 Sabotage Studio
発売日 【Steam/Switch】2018年8月30日
【PS4】2019年3月19日
【One】2020年6月25日
定価 【Steam】2.300円
【Switch】1.980円
【PS4】2,016円
【One】2,350円
判定 良作


概要

往年の名作である『忍者龍剣伝』をリスペクトしていると明言している開発者により製作された忍者アクションゲーム。
「2Dサイドビュー」というクラシックなシステムを始め、「8bit級のドットグラフィック」「チップチューンで構成されたBGM」など、あらゆる面で「レトロ風」である事に徹底的に拘っている点が個性となっている。
「レトロ風」のゲームは今日でも数多く世に出ており、これ自体はさほど珍しい事とは言えない。
しかし本作は「その古いフォーマットである事がハンデにならないアクション性」と「レトロである利点と必然を備えている世界」この二つを擁している点において非常に評価が高い。
「The Game Award」における「Best Debut Indie Game」を受賞した経歴を持つなど、その地力の高さが世界的にも大いに認められている作品である。


ストーリー

滅びた世界の西端に立つ断崖の上に、死よりも隠遁を選んだ人類最後の生き残りが暮らす村があった…
いずれ訪れる運命に抗い、ただ生き残る為に、村では日夜鍛錬が続けられていた。
人類を根絶すべく、魔物の軍団が再び地上に現れるという言い伝えがあるのだ。
幸いにして、それと同時に西の海より英雄が飛来し、加護と英知を齎すとされている。
いつもと変わらぬ平凡なある日、一人の若き忍者が今正にその英雄と出会い、一族の存亡がかかった巻物を手に危険に満ちた世界へ旅立とうとしていた…


システム

  • 開始時のゲーム形態はオーソドックスなステージクリア型アクション。
    様々なギミックを潜り抜けながら道中を駆け抜け、奥に鎮座するボスを撃破し(ボスが存在しないステージもある)、また次のステージに挑む。これを繰り返す形でゲームが進行する。 但し…(後述)

  • プレイヤーキャラクターが持つ基本アクションは3つ「通常攻撃」「ジャンプ」そして「雲踏の術」
    • 「通常攻撃」は刀を前方に薙ぎ払う攻撃。リスペクトしていると言うだけあってそのモーションは忍者龍剣伝のそれにソックリ。
      ただ、「攻撃モーション中も移動を阻害しない」点だけは大きく異なっている。
    • 「雲踏の術」は本作のシステムの根幹となるアクション。
      これは空中で通常攻撃をヒットさせるともう一度ジャンプする権利が与えられるという物。
      初期状態では「敵の本体」または「判定のあるオブジェクト」だけが対象だが、最序盤のアップグレードで「敵弾」に対してもこれを行えるようになる。
      • ジャンプのストックは一回分のみ。よって攻撃を連続ヒットさせても一度ジャンプを消費しない限りは追加分はストックされない。

  • 各ステージには「ショップ」と「チェックポイント」が道中に点在している。
    • ショップはキャラクターのアップグレードを担当する施設。
      ゲームの進捗状況に応じて無償で、或いはステージ内で取得できる「時のかけら」を支払う形で様々な能力を追加する事が出来る。
      大抵の場合「新たなアクションの追加」といったゲーム進行に必須な物は前者、「体力上昇」や「遠距離攻撃の追加」等の、必須ではないがあると攻略が楽になる類のものは後者に属している。
    • 「チェックポイント」は文字通りプレイヤーがミスした際の再開場所として機能する。
      本作には「残機」の概念が無く、ミスの回数に制限はない。*1
      但し、再開後は「後払い」という形で、以降に取得した時のかけらの一定量を徴収されるペナルティがある。

評価点

  • 「単純ながらも奥が深い」を体現したアクション
    • 上記の言葉はほぼ全てのアクションゲームにとって理想であると同時にジレンマである。
      いくら簡単で取っつきやすくても底が浅ければ直ぐに飽きられてしまう。逆に奥深さの為に構造を複雑化すれば今度は敬遠される様になってしまう。
      本作の魅力の一つはこのジレンマを非常に理想的な形で克服している所にある。
    • その根拠となるのが本作独自のシステムである「雲踏の術」。
      仕組み自体は「ジャンプ中に攻撃し、またジャンプする」というシンプルな代物でありながら、これはプレイヤーの操作次第でどこまでもアクションの幅を広げられる可能性を秘めている。
      というのも、このプロセス自体にアクションの基本要素である 「移動」「攻撃」「回避及び防御」が全て内包されている からで、これに熟達する事は即ち、これらの基本要素を全て並列でこなしてゲームを攻略する事に等しい。
      これを使いこなせば、
      「本来足場を利用して移動する場面で、敵と敵弾を利用して大ジャンプ。ステージを大幅にショートカット」
      「障害である筈の敵キャラをダメージギミックを躱す際の"保険"として敢えて残しておく」
      「足場を崩しながら撃ってくる敵の弾を捌きながらジャンプを繋いで接近、そのまま脳天に一撃を叩き込む」
      といった正に「忍者アクション」と呼ぶに相応しいハイレベルな挙動を実現できるようになり、それがプレイヤーに与える高揚感・満足感は「現代風のゲーム」にも決して引けを取らない。
    • この基本操作だけでもアクションゲームとして十分なポテンシャルを備えているが、これに加えて
      壁に張り付けるようになる「手鉤」
      空中での滑空と(アップグレードにより)真下への攻撃が可能になる「凧布」
      敵やオブジェクトに引っかけて高速突進を発動する「縄標」
      など、ゲームの進捗に併せて新しい要素が次々に解禁されるにつれ、その表現の幅は更に広がっていく。
      極まってくると「本来想定された手順・ギミックを全て無視してひたすらボスを殴り続ける」といった、ゲーム側が用意した前提をひっくり返す様なプレイすら許されるようになる。

  • 「挑戦的ではあるが懲罰的ではない」難易度設定。
    • プレイヤーキャラクターの性能の高さに合わせた故か本作は決して易しいとは言えないが、常に「十分な歯ごたえを持ちつつも理不尽ではないライン」を保つよう、緻密な調整がなされている。
      先述した高度なアクションの数々は確かにこのゲームの醍醐味ではある。しかしメインコンテンツをクリアするだけならあくまでそれは「任意」の範囲であり、「強制」される場面はほとんどないと言っていい。
    • その一方で所謂寄り道要素である収集物の獲得の際には、総じて該当ステージより一つ上のレベルのアクションが求められる設計になっており、キャラクターのポテンシャルをある程度引き出す必要に迫られる。
      アクションが得意でなくても十分進行できる程度に収めつつ、高難度を求めるプレイヤーにとってもその技とモチベーションが腐らないようにしたこの難易度の棲み分けは有難い。
    • そして仮にミスが嵩んだとしても「残機の概念がなく」「チェックポイントはステージに多数設けられており」「ミスしても得るものが減るだけで失うものはない」ので、再挑戦は全くストレスにならない。
      アクションゲームである以上ゲーム側が提供する物は常に「困難」であるが、上記の様にカジュアルなプレイヤーにも、ハードコアなプレイヤーにも、それが決して「苦痛」のレベルにならない様最大限の配慮がなされている。
    • 因みに項目冒頭の言葉は公式ページのFAQにある「Is The Messenger a difficult game?」に対する回答の「It is challenging, but not punitive.」という文章にちなんでいる。
      ゲームをプレイしてもらえばこの「not punitive」が実に言い得て妙である事がわかってもらえるだろう。

  • 鮮烈かつインパクト抜群のドットグラフィック
    • 「レトロ風」である以上、グラフィックに関してはどうしても現代のゲームに一歩譲る形になる。
      …と思われがちだが、実の所この古さは本作にとってハンデになるどころか寧ろ長所であるといっても過言ではない。
    • 真っ先に挙げるべきはその色使い。
      8bit故の色数の少なさを逆手に取ったかの様に、ゲームの背景は「ステージ毎に扱う色の範囲」をかなり絞り込んでおり、大抵の場面では色調がほぼ統一、あるいは二極化されている大胆な構成になっている。
      これにより各ステージはまるで原色アートの様な鮮烈さを持つとともに、それぞれが持つ印象の差異をより明確なものとしている。
      新たな土地に足を踏み入れる度に移り変わりを見せるその色彩は、本作が正に「忍者が野を駆け、森を抜け、谷を下り、山を越えて世界の果てを目指す大冒険」であるという実感をプレイヤーに与えるに十分なインパクトを持つ。
    • ドット打ち込みの素晴らしさもその色のインパクトに負けていない。
      例えばボス戦においては、それぞれが非常に多彩なモーションを備えており、攻撃パターンは勿論の事、前隙や後隙、喰らいモーションまでもが丁寧に描き分けられている。
      これは単純に見た目が映えるだけではなく、戦闘の際のプレイヤーに攻防のメリハリをハッキリさせるという側面も持っている。
      時には戦闘中或いは戦闘前後の寸劇でプレイヤーを和ませるユニークなモーションを披露してくれる事も。これは後述するキャラクターの個性の強化に一役買っている。
    • 道中にも見るべき所は多い。例えば一部のステージではBGMと絡んでサビに入った瞬間にいきなり背景のキノコ共が一斉に歌いだす、といった具合に細かい仕掛けがちょくちょく施されており、冒険に添える程良いアクセントとなっている。
    • これらに加え、本作には更に「8bitである事がゲーム上重大な意味を持つ」"ある仕掛け"が一つ盛り込まれている。
      初見では驚く事間違い無しなので、それがどんな代物であるかは是非本編をプレイして確かめて頂きたい。
      + と、言いたいところだが、実はトレイラーの時点でネタバレされている。見たくない方の為に一応収納 中盤以降、主人公は「未来の世界」に旅立つことになるのだが、その際なんと 「8bit」であったグラフィックが「16bit」に進化する
      まるで現実の電子ゲームの進化過程を代弁しているかの様に、時代の移り変わりを「グラフィックの進化」という形で表現したこの手法は開発者も本作の売りとして大きくプッシュしており、実際の評価も非常に高い。
      この開発者自身によるネタバレを「ネタ」として扱いたいのか、このイベントの直前には
      「もうすぐこの旅も終わるのだろう」と呟く主人公に対して店長(後述)が 「予告編を見てないのがバレバレだぞ!」
      と返す、とってもメタいやり取りが挟まれる。

  • 耳に刻み込まれるチップチューンの数々
    • チップチューンというジャンルは使用する音源が非常に限られているという点に大きな特徴がある。
      そして上記のグラフィックに関する利点でも触れた様に、音の世界にも数が少ない故に得られるインパクトの強さというものが存在する。
      それが「ただ単純なだけに終わる」か「記憶に刻まれる程強烈になる」かは作曲者の実力が問われる所であろう。そして本作のBGMは間違いなく後者に属する。
    • それを証明している最も良い例が、竹林のステージで流れるBGMである「Bamboo Boogaloo」。
      イントロ直後からサビに入る直前まで呆れる程似たメロディを繰り返す一見単調な構成でありながら、その一音一音が持つ自己主張の強さはそれが「繰り返し」である事自体も相まって正に「一度聴いたら忘れられない」を体現したサウンドとなっており、ステージが醸し出す明るさと、休むことなく手を動かさなくてはいけないアクションの忙しさと併せて、否応なしにプレイヤーを高揚させてくれる。
      この曲は本作で最も人気が高い一曲なのである意味一番極端な例という事にもなるが、他のBGMも大なり小なりの違いはあれど概ね同じ長所を持っていると考えてもらって間違いない。
    • また道中キャラクターが水の中に入るとBGMがくぐもって聞こえるようになったり、ステージ終わり際になると曲が遠ざかって環境音だけが強調される場面があったりと、これまた細かい所にまで仕掛けが行き届いている。
      + そして勿論BGMの方も… こちらもグラフィック同様、未来に進むと音源が進化するギミックが仕込まれている。
      しかもゲーム後半戦になると各時代の切り替えは「能動的且つシームレス」になるので、BGMもそれに合わせてシームレスに切り替わっていく。
      同じ曲を途切れることなく「二種類の音源で聞ける」のはある意味とても贅沢な楽しみ方だと言えるだろう。

  • ユニーク且つコミカルなキャラクター達
    • 「人類最後の生き残りを掛けた重大な使命」というハードな舞台設定とは裏腹に、実は主人公の旅路は常にユーモアとコメディで溢れかえったものとなっている。
    • それを主に提供するのは各ステージのボス達。彼らは
      ・「威厳のありそうなその後ろ姿と口上に、正面の姿が全く釣り合っていないネクロマンサー」
      ・「ちょっとした誤解で主人公に襲われて本当は泣きたいくらい悔しい筈なのに"全くこれっぽっちも気にしていないからな?"と、精一杯強がって見せる精霊」
      ・「"逞しい上半身に比べて下半身が貧弱すぎる鬼"と、"鍛え上げられた下半身に比べて上半身がだらしなさすぎる鬼"のコンビ」
      等々、皆どこかしら間が抜けていてコミカルな一面を持っており、道中のアクションで強張ってしまったプレイヤーの神経を程よく解してくれる。
      そしてその戦闘も大抵の場合は力試しだったり、改心や洗脳の解除での決着だったりと、血なまぐさい殺生に至る事はほとんどない。負けて死ぬのは主人公だけである。
      • 更に「彼らが生存している事がキチンと後のストーリー展開に活きてくる」という点も見逃せない。
        これは彼らが生かされる必然があるという意味以上に、再び活躍の場を得る事で各人物(?)像の掘り下げが更に進み、それぞれが決して一時だけの使い捨てではなくなる事を意味する。
        よってゲームを進めればプレイヤーは自然と彼らに愛着が湧くようになってしまうだろう。
    • そしてもう一つの重要なユーモアの供給元がショップにいる 「店長」
      彼は前述の主人公のアップグレードを担当するNPCなのだが、新しいエリアに入る度に色々な雑談を提供してくれる一面も持っている。
      話を聞こうと思ったら「こんなに天気がいいのだから話なんて聞いてないで外で目一杯遊んで来い」と促してきたり、
      主人公の新しいコスチュームを気に入るばかりか真似までする様になって、挙句の果てに「お前の方が私の真似をしているんだろ?」と主張してきたり、
      「今はやるな」といっているゲーム側の要求に対してどこまでも反発しようとするゲーマーの性を見越して、それに対し ひじょ~~~~~に長いセリフでメタを張ったり *2
      と、相当お茶目な性格をしており、そのテキストの膨大さ*3とも相まって、存在感だけなら完全に主役を喰ってしまっているキャラとなっている。
      • そんな店長の真骨頂がエリアごとに一つ用意されている 「面白い話」
        話の内容は「有名な童話の一部」や「実在する思考実験のパラドックス」等、決して真新しい物ではない。
        しかし真に面白いのはその話に対する店長の感想や考察の部分。どれをとってもその切込み方が個性的且つ、思考も深い所まで練られており、「この話からよくそれだけの事が引き出せるな」と感心してしまう様なものばかり。
        ジョークのような「瞬間的な笑い」を提供する類ではないものの、プレイヤーを唸らせるという意味においては間違いなく「面白い話」である。
      • そしてそんな話の諸々に対して、悪気はないのだが察しが悪くとぼけた事しか言わない主人公のズレたリアクションも、良いスパイスとなってプレイヤーを和ませてくれる。
        時には彼の余りの察しの悪さに店長が「もう面白い話はしてやらない」と拗ねてしまう、微笑ましい(?)一場面が見られることも。
  • 隠し要素で、力の封印というアイテムがあるのだが、後半の強化で位置が全てわかるようになるし、1度取ればたとえ帰り道でミスしても取り直しになる心配は無いのが、親切。

賛否両論点

  • ゲーム形態の変化
    • ネタバレになるので詳細は下部に伏せるが、実は本作は途中から「ステージクリア型アクション」ではなくなる。
      これは「純粋にボリュームアップになる」「一つの作品で二つのジャンルが味わえる」という側面においては利点となる一方で、プレイヤーに課される「困難」の質が変化する事をも意味する。
      ステージクリア型の「踏破するやりがい」だけを本作に求めるプレイヤーにとって、これは蛇足となる可能性がある事は否めない。
      + 具体的には… ゲーム後半戦は一転して「探索型アクション」へとその形態を変える。
      多少乱暴だが、例えるならば『忍者龍剣伝』をプレイしたらいつの間にか『メトロイド』になっていた、といった具合。
      両方楽しめるのであれば大して問題とはならないが、そうでないプレイヤーは間違いなく一定数存在するだろう。

  • 雑魚敵の使いまわし
    • ステージ数の豊富さに対して、各ステージの雑魚敵のバリエーションは使いまわしが少々目立つ。
      特に「プレイヤーの座標に向けて放物線状に弾を放つ」「弾を二発間隔で真っすぐ放つ」二種の「河童」はゲーム全体を通して登場するので彼らには少々のマンネリを感じるかもしれない。
      ただ、「雑魚敵をギミックの一つとして利用できる」本作のゲームシステムにおいて、同じ敵を繰り返し登場させる事はプレイヤーの経験を無駄にしない配慮というポジティブな一面としても機能する。
      ステージ毎に敵を総入れ替えするよりは、定番の敵をある程度用意したほうが雲踏の術をうまく利用できる機会が増える事は明白。よってこれは一概に欠点として扱う事は出来ない。
  • アクション
    • 雲踏の術は、言わば2段ジャンプだが、逆に言うと、攻撃できる対象が無い場所では使えない。凧布は、滑空による到達距離が意外と短い。手鉤は、後述のように、いらないところで張り付いてしまいやすい。縄標は、真横にしか発射できないため、下からフックなどに掴まることができない。武器の手裏剣は、唯一の飛び道具だが、弾数が少ない。せめて、龍剣伝の忍術Pのようにエネルギー制ならよかったのだが。また、ボス戦では使い切ると補充できず、威力の面でもほぼ無力。
    • といった具合に、どれも少々中途半端な面がある。1つ2つ半端があっても仕方ないが、全部が全部半端というのは、いかがなものか。

問題点

  • 壁張り付きの判定
    • ゲームの最序盤で入手できる「手鉤」は壁張り付きの判定が非常に甘く、意図しない場面でも発動しやすい。
      これは最初の内は全く問題とならないのだが、アクションの難度が上がり「横からせり出してプレイヤーを押しつぶす壁」や「制限時間以内に駆け抜けないと通過できないゲート」等のギミックが登場する様になると、たちまち牙を向くようになる。
      特に前者は必然的に通り抜けるルートが狭くなるので、「ギリギリを通過しようとして張り付きが発動→不意を突かれて対処できずにそのままミス」といったパターンに陥りやすい。
      + 因みに… ゲーム後半、この手鉤を作成したNPCにその使い心地を尋ねられ、 「ごくたまーに下に落ちようとして張り付いてしまう事がある」 と主人公が洩らすシーンがある。
      「自覚してるなら対策してよ!」と開発陣に言いたい。

  • ストーリーの全体像
    • 「The messenger」のタイトルに相応しく主人公の行動は一貫してNPCの指示に従う「お使い」に終始する。
      そして「この行動がどんな意味を持つのか」「この冒険はどうすれば終わりを迎えるのか」に関する具体的な情報は最終盤まで明かされる事が無い。
      ようやくそれが明らかになる場面においても、事の始まりから全てを一気に語る形になるので、ゲームの進行との足並みが揃っておらず話に実感が持てない。
      そしてその置いてけぼり感を消化できないまま最終決戦にもつれ込む事になる。この辺りは多少改善の余地があった筈だと言えるかもしれない。

総評

プレイヤーの指先を十分に満足させてくれる骨太なアクション、両の目を常に楽しませてくれる鮮やかなグラフィック、いつまでも耳に残り続ける爽快なBGM、そしてゲームの困難さに荒んだ心を和ませてくれる魅力的なキャラクターの数々……と、どこの面を切り取っても「開発陣がプレイヤーを楽しませる為に全力を注いでいる」事を窺い知れる快作。

彼らは本作の出来に対して「革新的な所は何もない」と語っているが、良い物を生み出すのに本当に大事な事は、常に最先端である事ではない。
進化のペースが非常に早く、あらゆるコンテンツが驚くべき速さで消化され飽きられてしまうゲーム業界においてですら、それは決して揺らぐことがない真実である。
それをこの作品はその身をもって示してくれている。


その後の展開

  • 本作発売後から約一年後の2019年7月11日、追加コンテンツである「Picnic Panic DLC」がリリースされた。
    「DLC」と銘打ってはあるが、無料なので実質ゲーム全体のボリュームアップと見て差し支えない。
    • 今回の舞台はトロピカルな南国のリゾート地。
      メインの「人類の生存を賭けた戦い」とは直接関係がない「並行世界」である設定故か、キャラクター達のはっちゃけぶりは更にエスカレート。
      本編ではほぼ唯一のシリアス担当だったキャラが開幕からコメディリリーフになったり、ネクロマンサーのあまりにも意外過ぎる家族関係が暴露されたり、店長も「休暇」と称してお洒落に励んだりとやりたい放題。
    • ただ、そのお気楽さとは裏腹に全体的な難易度はかなり辛口に仕上げられている。
      仮にこのDLCで新たに追加された実績をコンプリートするまでやり込もうとするなら、プレイヤーは 「このゲームの忍者の本気」 を目の当たりにし、それに挑む事になるだろう。
    • ある条件を満たすと、新たなNPCが解禁され、ショップに住み着くようになる。
      「深くて面白い話」が売りの店長とは対照的に、彼は所謂「瞬間的な笑い」であるジョークの達人であるとの触れ込みだが、果たして…
    • そしてやはりというべきか、 ストーリー終盤ではプレイヤーを仰天させるサプライズが仕込まれている。
      これは流石にネタバレできないので、是非プレイして確かめて頂きたい。
最終更新:2024年08月16日 12:40

*1 厳密には特別なモードでのプレイに限り「ゲームオーバー」は存在する。

*2 ご丁寧な事にそのセリフを最後まで聞くことで獲得できる実績が存在する。

*3 文章で実感してもらうのは難しいが、例えるなら「店長が提供する話の量に比べれば、この頁で彼を言及するのに費やした文字数など"文章の内に入らない"」レベルだと言えば少しは伝わるかもしれない。その位膨大である。